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2024年05月06日 第7247・7248合併号

【主な記事】

国定勇人衆議院議員 「公的サービス」を本来業務に
郵便局は地域の「最後の砦」
ネットワーク維持に財政支援も


 自民党の「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(郵活連)事務局次長として、民営化法改正に取り組む国定勇人衆議院議員は、郵便、貯金、保険に加えて、公的サービスを日本郵政グループの本来業務と位置づけ、「郵政四事業」に転換すべきだと強調する。そして、その転換によって政府が財政支援する正当性も認められると主張する。(坪内隆彦)


■国定議員は、総務省(郵政省)のキャリア官僚、新潟県三条市長を経て、2021年に衆議院議員になられました。郵政事業のあるべき姿を考えるうえで、そうした経験はどう生かされているのでしょうか。
 私は2006年11月に三条市長に就きましたが、その1年後の2007年10月に郵政民営化がスタートすると、状況は一変しました。それまで毎年呼ばれていた年賀郵便の元旦配達出発式に呼ばれなくなったのです。また、私が市長になる前から続いてきた三条市の幹部職員と郵便局長との意見交換も打ち切られました。
 強い使命感を持って、公的な役割を果たしてきた郵便局長さんたちが、民営化後には一般の民間企業の支店長と何の変わりもない意識しか持たなくなってしまったことを残念に感じました。局長さんたちは、公的な地位を自ら捨ててしまったのだと思います。民営化によって失われたものがいかに大きいかを痛感しました。
 「これではいけない」と考え、2017年2月に私は民営化後に途絶えていた三条市と郵便局の意見交換会を10年ぶりに再開しました。ちょうどその前年の2016年、三条市出身のジャイアント馬場さんを三条市の名誉市民に認定したところだったので、郵便局からジャイアント馬場さんの記念切手を作ろうと提案いただき、市主催の記念イベントに合わせて発売してもらいました。
 以来、1年に1回、市の幹部職員と郵便局長さんたちとの意見交換の場を設けてきました。三条市のように郵便局とうまく共同歩調をとっている自治体はかなりあります。私は市長としての経験を通じて、郵便局は単に郵政三事業を提供しているだけではなく、公的な役割を担い、地域にとっての信頼の象徴になっていると強く感じていました。
 2021年の衆議院議員選挙に新潟4区から出馬することになり、14年間務めた三条市長を辞職しました。選挙に向けて、毎日地域を歩き回るようになり、郵便局の重要性に改めて気づいたのです。
 特に中山間地域を訪れると、小学校も、スーパーも、農協も、公的機関も全くないのです。唯一、郵便局の光だけが灯っていました。どの谷筋を歩いても、すべてそんな光景なのです。過疎地域では、郵便局が「最後の砦」になっていると改めて感じ、約2万4000の郵便局が維持されてきたことの尊さを実感しました。
■人口減少、過疎化が進む中で、郵便局ネットワークの重要性がますます高まってきています。
 郵便局の役割に対する期待値は上がっているのです。特に、地方に住んでいる人にとっては大きな期待感があると思います。そうした期待に応えられるように新たな道へ踏み出していくべきです。
 人口減少など郵便事業を取り巻く環境が厳しくなり、独立採算で事業を維持していくことが困難になっていますが、「じり貧になっているから何とかしなければいけない」という発想ではなく、郵便局に対する期待値が相対的に高くなっていることを奇貨として、新しいことにチャレンジするという発想で取り組むべきだと思います。
 地域に住む住民は、郵政三事業のサービス向上よりも、むしろ公的サービスにおいて郵便局が果たす役割に大きな期待を抱いているのです。したがって、郵政は郵便、貯金、保険の三事業に公的サービスを加えた四事業化を目指すべきだと思います。それが、地域社会において日本郵政グループが果たすべき新しい役割だと信じています。
 ただ、国営の時代にも、そして現在もなお、郵便局員さんには「郵政三事業だけをやっている」という意識はあまりないと思います。いまでも地域の郵便局では、郵便局長さんは、高齢者の方たちから「この市役所の手続きはどうすればいいの」と聞かれれば、それに対応しているのです。
 これまで郵便局長の皆さんが縁の下の力持ちとして地域のために頑張ってきたことを、いまこそ会社が担うべき本来業務として高らかに掲げることが、郵便局ネットワークを守っていくことに繋がるのではないでしょうか。
■民営化法を改正し、公的サービスを日本郵便の本来業務として明記する必要があるということですね。
 そう思います。きちんと法律に書き込むことで、郵政三事業プラスアルファではなく郵政四事業と位置づけられることになります。それによって、郵便局が郵政三事業を提供するだけの存在ではないということが法的に担保されることになります。
 郵便局の公的な地位が法的に認められれば、郵便局の維持に対して、郵政三事業から得られる収益だけではなく、政府が財政支援する正当性が認められると思っています。つまり、郵政四事業と位置づけることと政府の財政支援を、表裏の関係として法律で規定する必要があるのです。(2面につづく)


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