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2020年9月14日 第7057号

【主な記事】

再発防止の仕組みを
[郵政民営化委]かんぽ問題で指摘

 第216回郵政民営化委員会(岩田一政委員長)が9月3日に開かれた。「日本郵政グループ2021年3月期第1四半期決算」「日本郵便の業務区分・郵便事業収支」「業務改善などの取り組み」について関係者にヒアリングを行った。今回、初めてWebによる委員会会議と委員長会見を実施した。かんぽ生命保険の不適切募集問題について委員からは「構造的な仕組みがあったのではないか」との指摘を受けた。

 日本郵政グループが取り組む業務改善の取組状況について、委員から「悪意がなくても、このような不正販売をしてしまう構造的な仕組みがあったのではないか。今回の事例を構造的な問題として捉え、再発防止の仕組みを作るとともに、顧客の信頼を取り戻せるような社風を醸成してもらいたい」との要望があった。
 人事処分の進捗についての質問に、日本郵政は「全体の4分の1程度まで人事処分を行ったところ。日本郵便の人事処分については、かんぽ生命の募集人資格に係る処分の後に行う必要があるため、時間を要しているが、かなり進んできた。残りの人事処分についても、年内を目途に大どころは終わらせられる」と答えたという。
 日本郵便の子会社で豪州のトール社について、委員からは「国際物流事業で、トール社がアジアのロジスティクス事業が収益に貢献したということだが、今後の採算性はどのように考えるのか」との質問があった。
 日本郵便は「今回はアジアで大口の取扱いがあったが、恒常的なものではないと考えている。アジア地域のロジスティクス事業は収益を確保しており、アジア地域の成長を踏まえれば、成長のドライバーになりうる」と回答したという。
 また記者からは「トール社は採算が悪化している。買収後5年が経過しているが改善ができていないことについて、どう考えるのか」、更に日本郵便とのシナジー効果について「日本郵便の中でシナジー効果についての見通しが立っていないのではないか。その活かし方についてどう考えるのか」という質問があった。
 岩田委員長は「新型コロナウイルス関連でアジア地域での大口取引により、売上も伸びたが、その分、費用も発生した。その結果、若干のプラスとなった。以前、私もシンガポールのトールシティを視察したが、倉庫が完備されており、アジアのeコマースのハブとして期待できると考えている。会社としては赤字が続いており、減損処理や経営陣の交代も行ったが、その効果は十分に出ていない。有望な分野に特化していくことや事業領域の見直し、コスト削減が求められていると思う」と、国際物流事業のリストラクチャリングを求めた。
 日本郵便やトール社の日本国内子会社(JPトールロジスティクスなど)とのシナジー効果について、岩田委員長は「以前から指摘してきたところだが、トール社はBtoBが強み。国内子会社との協力・連携するのを手始めに、シナジー効果を高めていくことはできると思っている」と考えを述べた。
 郵便・物流事業については、委員から「国内の郵便・物流事業ではゆうパックが主力であると考えられるが、現状では力不足であるように思われる。今後、積極的に拡大していく考えはあるか」との意見があった。
 日本郵便は「今期は巣ごもり消費の増加に伴うEC利用の拡大で、ゆうパックの取扱いも増加した。今後も物流業界の変革に合わせて、利用者の利便性向上を図るため取り組んでいく」と述べたという。
  また、委員から「ゆうパックの取扱いは増加したが、同業他社の状況は」との質問に、日本郵便は「ヤマト運輸・佐川急便とも増収増益。日本郵便は国際郵便一部引受停止などにより、トータルでは減収減益だが、ゆうパックの取扱数は他社と同等の増加」と回答した。
 ゆうちょ銀行の決算について、委員からは「投資信託の特別分配金が、決算で収益として認識できなかったなどの影響があり、進捗率は15%程度(経常利益に対する進捗率は15.2%)となっている。低金利が少なくとも今年度いっぱいは続くことが考えられ、未達となる可能性が高いと思うが」との質問があった。日本郵政は「投資信託の特別分配金の収益認識できなかった件については、来期以降に認識できる保証はなく、業績目標達成には大きな危機感を持っている」と答えたという。
 進捗率の未達について、岩田委員長は「四半期ベースでは25%の進捗であってもらいたいが、低金利のほか、特殊な要因もある。投資信託の特別分配金(元本払戻金)478億円が計上されていない(投資信託の決算時の基準価額が元本より下がった場合は収益として計上されないという会計ルールがあるため)。この先も低金利は続き、進捗率の大幅な改善は厳しい状況にあるのではないかと認識している」と述べた。
 進捗率について、ゆうちょ銀行は「上半期はコロナウイルス感染症の影響が大きいと見込んでおり、上四半期の当期純利益に対する進捗率16.6%は想定の範囲内」としている。
 また、貯金残高について、委員は「貯金残高が2020年3月末比で4.3兆円増加している。上限改正による資金シフトとの関係は」との質問に、ゆうちょ銀行は「第1四半期の変動要因は、特別定額給付金の入金などの特別事情により増加しており、他の金融機関の預金残高の増加は、相対的にゆうちょ銀行より高いことから、上限改正の影響ではないものと考えている」と回答したという。
 業務収支区分について委員から「第4号業務(ゆうパック、不動産、物販などのその他の業務)は今後、大きな収益の柱になると認識しているが、コロナ禍において、どのような展開を予想しているのか」との質問があった。
 日本郵便は「ゆうパックなどの荷物については、eコマースの拡大により引き続き拡大していくと認識している。競争が厳しく、人材不足の問題のある分野だが、デジタルトランスフォーメーションにより利用者の利便性を高め、オペレーションの効率化を図ることによって、引き続きこの分野の成長を図っていきたい。また、それ以外の業務では、不動産は引き続き再開発を行っており、そうしたところでユニバーサルサービス以外の事業についても拡大を図っていきたい」と述べたという。


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