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2020年11月16日 第7066号

【主な記事】

[全国初]郵便局に市役所支所
石川県加賀市 山中局内に山中温泉支所


 石川県加賀市湯の出町の山中温泉支所が11月2日、山中郵便局(西園嘉博局長/〒922-0199加賀市山中温泉本町二丁目ソ22)内に移転することとなった。山中局は山中温泉のメインストリート「本町通り」に面しており、移転距離は200メートル余り。山中局内のスペースを有効活用し、窓口課・振興課などの業務を行う。

 山中温泉は開湯して約1300年、奈良時代の高僧・行基が発見したと伝えられている。元禄時代には、俳聖・松尾芭蕉が弟子の曾良を伴って訪れ、山中の湯を「有馬」「草津」と並ぶ「扶桑の三名湯」と讃え、「山中や 菊は手折らじ 湯の匂ひ」の句を読み、豊かな自然と伝統文化が残る渓谷の温泉地として、多くの人が訪れている。
 山中温泉支所(山中庁舎、旧山中町役場庁舎)は、1959(昭和34)年10月に旧山中町役場として竣工。以来、町民の暮らしを長年にわたり守ってきたが、築60年を超えており、未耐震の上、老朽化が顕著であった。
 町の合併後は事務の本庁移管が進み、鉄筋コンクリート3階建の1階部分でのみ執務が行われていた。折から、包括連携協定を締結している日本郵便から、山中局内の余裕スペースについて市へ情報提供。協議の結果、移転が決定した。
 山中郵便局は1872(明治5)年4月に山中郵便御用取扱所として開局。2度の改称を経て、1987(昭和62)年11月に現在地に移転し、局舎は6代目。リニューアルした局正面の看板には、左に「加賀市山中温泉支所」、右に「郵便局」のロゴが並ぶ。入口をくぐり、左折すると支所、右折すると郵便局、それぞれの窓口に繋がるレイアウトになっている。
 業務開始前日の11月1日に行われたセレモニーでは、新型コロナウイルス感染症対策として、演台正面には飛沫感染防止のビニールを設置。局内の換気、参加者のマスク着用なども徹底された。
 北陸支社の田村浩紀支社長、本社改革推進部の篠原勝則部長、石川県加賀南部地区連絡会の村本吉広統括局長(小松大川)、加賀江沼部会の細野幸伸部会長(大聖寺菅生)、中川裕雅副部会長(動橋)、渡辺宣行副部会長(橋立)、杉本博昭副部会長(勅使)、南出敏明局長(CS担当/河南)はじめ地区連絡会の局長が応援に駆け付けた。
 来賓として加賀市の宮元陸市長、加賀市議会の中谷喜英議長、今津和喜夫副議長、山中商工会の櫻井比呂之会長ほか、多くの関係者が参加した。
 加賀市山中温泉支所の永田祥二支所長が移転に関する経過を報告。続いて、宮元市長が「日本郵便とは包括連携協定を締結、昨年10月には、全国の市町として初めて橋立郵便局での行政事務の包括受託開始など、かねてから連携を深めていた。職員が常駐する市役所の支所が郵便局舎内に移転し、住民サービスの向上を図る事例は今回が全国初だと聞いた。英断に敬意を表する。日本郵便とは先進的な試みをどんどん積み重ねていき、日本のモデルとなる自治体になることができればと思っている」と期待を述べた。
 田村支社長は「支所移転の話から約1年間の協議・準備期間があった。郵便局の中に支所機能が入るというのは前例がなく、全国初のケース」と振り返り、「加賀市とは、ふるさと納税返礼品における協力、オリジナル年賀はがきの発行、マルチコピー機の設置等を通じて、長年にわたり連携を深め、全国の先駆けとして様々な取組をしてきた。地域に根ざし、地域と共に成長・発展することを目指している日本郵便として、今まで以上に地域の皆さまに、山中郵便局を利用いただきたい」と希望した。
 篠原部長は「全国2万4000の郵便局ネットワークで、地域の困りごとに対して協力出来る事がないかと考え、地方創生に取り組んでいる。加賀市には、新しいことにチャレンジするモデルを作っていただいており、我々としても市の取組みを全国に伝えることで、各地域が続き、拡がりを見せていくのではないかと期待している」と語った。
 また「山中温泉という歴史ある土地で、地域の皆さまとしっかりタッグを組み、安心・安全と、対面でのサービスを提供し、発展する方策を見つけていくというのが大きな柱。行政と郵便局のサービスを同じ建物で提供でき、利便性が向上する。地域の一層の活性化に繋がるよう、観光促進策等についても連携・協力したい」と力を込めた。
 村本統括局長は「故郷はここ山中町。子どもの頃に大きな町役場ができ、将来働きたいと憧れた。そして、郵政人生のスタートは山中局。スタートの場所と、憧れた役場が一緒になり、地域サービスの向上のために頑張っていけるということが非常にうれしく、感慨深い。郵便局のDNA、志として常に胸にあるのは地域貢献。これからも、町、支所、そして市に貢献できるような局づくりをしていきたい」と自己紹介を交えて語った。他にも中谷議長、櫻井会長、今津副議長が祝辞を述べた。
 テープカットに続きメディアに対して内見会が行われ、関係者が対応に追われていた。
 庁舎の跡地については、来年度以降、共同浴場「菊の湯」の利用者や観光客のための駐車場として、再整備が予定されている。温泉中心部にまとまった駐車場を確保することで、新たな賑わいの創出と地域住民の利便性の向上に繋がると期待されている。


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