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2021年6月28日 第7098号

【主な記事】

日本郵政・日本郵政キャピタル
ACSL社へ約30億円を出資
ドローン配送実用化へ提携


 日本郵便と日本郵政キャピタル(小野種紀社長)、ドローンメーカーの「自動制御システム研究所」(ACSL、鷲谷聡之社長兼COO)の3社は6月15日、資本・業務提携を締結した。ACSLに約30億円を出資し、国産ドローンの実用化に向けて郵便・物流分野で連携を強化する。日本郵便の衣川和秀社長は「あらゆる可能性を夢に描き、国産ドローンの実用化に向けて物流のイノベーションに挑戦したい」と抱負を語る。

 日本郵便とACSLは2017年からドローンによる配送実証実験を行っているが、資本・業務提携により、郵便・物流のラストワンマイルの技術開発を更に加速させる。
 ドローン機体の開発や日本郵便への機体の供給(量産)、飛行に必要な各種認証を取得し、2023年の実用化を目指す。
 日本郵政キャピタルは、ACSLの第三者割当増資を引受け、29億9900万円を出資する(7月5日予定)。出資比率は10.36%。
 衣川社長は「日本郵便は郵便局ネットワークを基盤に生活に必要不可欠な社会インフラを高度化していくことを目指している。ACSLは最先端のロボティクス技術を追求し、日本の物流イノベーションに挑戦するというビジョンを掲げている。共に次世代に向けて共通の理念がある」と業務提携に踏み切った理由を語る。
 日本郵便は「ドローンを活用することで、差し出し易さや受け取り易さといった利便性やコスト削減で、荷物の需要拡大や収益向上につなげたい」という。
 現在は無人地帯・目視外飛行でのドローン配送「レベル3」の実証実験を行っているが、2022年度の航空法の改正を見据え、次の目標を有人地帯での目視外飛行「レベル4」に置く。
 郵便・物流の将来イメージについて、衣川社長は「ドローンに加えて配送ロボットやAIを活用した次世代のオペレーションを構想している。ドローンは山間地や離島、コンビニ、郵便局への配送に活用する。配送ロボット、移動する宅配ボックス・ポストも含めてハイブリッドで配送システムを高度化したい」と説明する。
 ACSLの鷲谷社長は「ドローンの配送は大きな転換期を迎えている。レベル4に向けて航空法の改正も参議院で可決され、安全・安心やセキュリティへの関心が高まっている。技術開発や社会受容性向上に取り組みたい。レベル4の認証取得に向けた協力体制や機体運行環境の提供、配送ロボットと組み合わせた効果的な配送方法についても検討したい」と話す。 同社内に郵便・物流専門の組織を設置する意向も示した。
 日本郵政キャピタルの小野社長は「日本郵政グループとシナジー効果がみられる企業に出資しているが、ドローン技術は郵便の配送にも活用できるということで、シナジー効果が期待できる。株主の立場から技術開発をモニターしていきたい」と語る。
 通信文化新報は「奥多摩のドローン配送を取材したが、小さいものしか運べない、少し強い風が吹くと利用できない(風速15メートル以上は飛行不可)、機体本体価格が高いなど、実サービスまでにはクリアしなければならないこともあると思うが、技術開発やコスト効率化についてどのようなスケジュールで解決するのか」と質問。
 鷲谷社長は「奥多摩で使われた機体は、巡航速度は時速36キロで、2キロの重さのものを運べる。社会実装に向けての技術開発は、運べる重量を大きくすること、耐空性能、雨などの耐環境の向上が必要な技術開発。合わせて何日以内に運ばなければならないかという運航規程に対してどう技術向上させていくか。2023年度の初期実装に向けて技術開発を進めていきたい」と答えた。
 またコストについて、通信文化新報は「衣川社長からドローン配送はコスト削減や収益向上につながる、という発言があったが、機体の価格を下げていき、全体の配送コストを下げることも必要なのではないかと思うが」と質問した。
 ACSLは「機体のコストダウンや耐久性を上げることも重要なテーマ。実用化を実現していく上では、目標コストなどを日本郵便と協議しながら進めていき、2023年度を目処に達成したい」と答えた。


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