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2021年12月6日第7121号

【主な記事】

沼津郵便局でも実証実験
カーボンニュートラル化推進


 カーボンニュートラル化推進に向けた実証実験が、静岡県の沼津郵便局(菅沼達也局長)でも11月18日に始まった。日本郵政、日本郵便、東京電力ホールディングス、三菱自動車が参加するプロジェクトで、栃木県の小山郵便局に次いで2例目。
 郵便局に急速充電器や太陽光パネルを設置するほか、郵便局の配達用EV車両の走行データを取得することで、日本の電気自動車の性能向上にも役立てる。同日、関係者が出席し記者説明会やセレモニーが行われた。
 実証実験では、一般車両向けのEV車用急速充電器を駐車場に設置、配送用EV車両15台も配備する。三菱自動車が走行データを取り、性能向上に役立てる。また、屋上には太陽光パネルを設置し、局内の電力として使用する。東京電力からは電気利用の仕方に応じた省エネの提案も受ける。
 説明会では、日本郵便の中井克紀東海支社長が「EV車を導入しているが、都市部が中心。距離を走る車両でのデータを取り、次の開発につなげてもらいたい。市民の皆さまへの活用については、災害時の電力の供給源になること以外にも使うことがあれば、沼津市と協議させてもらいたい」と述べた。
 また「郵便局では共創プラットフォームを提供している。やりたいことや、将来に向けたトライアルなど、新しいものを創り出すことに協力したい。この取組みがカーボンニュートラルと地域社会への貢献につながればよいと思う」とあいさつした。
 東京電力ホールディングスの長㟢桃子常務執行役は「徹底した省エネ、電化(EV化)、再エネの3つの取組み(SDS)を行っている。実証実験で取得する車両データと急速充電器のデータを共有し、効率的な充電や走行の仕組みを一緒に検討したい。何がカーボンニュートラルに一番近道なのか、共に検証していきたい。沼津がカーボンニュートラルと強靭な町づくりのハブになって、全国に広がっていくような取組みになればと思う」と述べた。
 三菱自動車の若林陽介執行役員は「商用のEV自動車は1回の充電での航続距離が大きな課題。実証実験で得られた車両データは、郵便局の車両はもとより商用EV車全体の走行性の向上に役立てたい」。
 沼津市の頼重秀一市長は「多くの人が訪れる沼津郵便局で、このようなEV車の普及のための取組みが行われれば、市民は間近で見るという形になる。環境問題を深く考え、自分たちのこととして捉える良い機会になると思う。この取組みが大きなうねりとなり、全国に広がっていくことを期待している」。
 駐車場に設置された急速充電器の前で、中井東海支社長、菅沼局長、長㟢常務執行役、若林執行役員、頼重市長によるテープカットが行われた。
 セレモニーの後、記者の質問の場が設けられ、通信文化新報は東京電力に「世界もEV化に舵を切ったが、電気自動車は充電が必要で電力を消費する。日本の場合、このまま電気自動車が増える一方で再エネ化が思うように進まなければ、カーボンニュートラル化に逆行することになるのではないか」と質問した。
 東京電力ホールディングスの河野秀昭EV推進室長は「政府は2050年度にCO2排出ゼロを掲げている。その手前では火力は残る。燃料に水素やアンモニアも取り入れるがすぐには変えられない。太陽光発電は、九州では季節や時間帯によっては電気が余ることもある。再エネ電力がたくさん余った時はゼロ円に近い価格になる。捨てている時間帯もある。再エネ設備が増えていくとともに、それが増えることも予想される」と話す。
 その対策について「充電器を介してEV車でそれを吸い取れば、有効活用できる。電力会社などが料金メニューを変えなければならない。余剰電力を利用してもらうための社会システムが必要」と提言する。
 EV車の普及では、充電設備の配備が遅れていることが指摘されている。再エネに余剰が出る地域に、先行した充電設備の配備といった工夫もあるだろう。


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