「通信文化新報」特集記事詳細
第6968・6969合併号
【主な記事】新春インタビュー
郵便局ネットワークは維持
唯一無二の絶対価値
[日本郵便]横山邦男社長
全国に2万4000の郵便局ネットワークを持ち、日本郵政グループの中核をなす日本郵便の横山邦男社長は、新年を迎え改めて「一番の財産、魅力は2万4000の郵便局ネットワーク、これこそが絶対価値。この唯一無二の存在である郵便局ネットワークを維持、強化することによってこそ、将来にわたって安定的な利益を確保できる基盤を構築していくことが可能」と強調する。そして「日本で最も成長ポテンシャルが高い会社。郵便局社員のアイデアと創意工夫によって、地域ごとのマーケットに応じた「個性」を発揮した『ワクワク郵便局』を一緒に作っていこう」と呼びかける。
(インタビュー=通信文化新報・永冨雅文)
中計初年度に手ごたえ
明けましておめでとうございます。本社が官庁街の霞が関からビジネス街の大手町に移り、初めて迎えられたお正月です。
高層の本社ビルができ、日本のビジネスの中枢とも言える所に移ってきました。こういう素晴らしい環境にいるからこそ、本社社員は従来よりも生産性を上げ、お客さま、そして全国の郵便局のために良い仕事をしていかなければなりません。
従来にも増して新しいビジネスの展開をいかに構築していくかということを、みんなが考えてくれていると思います。
今年度は新しい中期経営計画の初年度として、様々な施策に取り組まれてきたと思います。
2019年3月期の中間決算では、日本郵便の発足以来、初めて上半期が黒字になりました。改めて中期経営計画の初年度としての手ごたえはいかがですか。
中期経営計画の初年度は「構造改革元年」として取り組んできました。そういう中で増収増益、上期営業黒字を達成できました。
初めて上期営業黒字になったことは画期的であり、たいへん嬉しいですね。
今年度は全国各地で自然災害が多発したにもかかわらず、社員が業務運行の確保、ゆうちょの集中満期対応もしっかり行ってくれました。また、ゆうパックについても、戦略的商品として単価改善に取り組んでもらいました。
このような社員の創意工夫や懸命な取組みが実を結んだ成果であり、社員には深く感謝したいと思います。
中期経営計画の初年度としては、たいへん力強いスタートを切ることができたと感じています。
郵便局の魅力の向上を
郵便局ネットワークの将来像について検討を進められています。地域のニーズに合ったサービスや商品の提供、営業時間の多様化などが想定されていますが、今後の郵便局ネットワークの方向性について聞かせてください。
我々にとっての一番の財産(魅力)は2万4000の郵便局ネットワークで、これこそが絶対価値です。他と比較して優れているということではなく、我々にしかない、一朝一夕では作れないネットワークです。この唯一無二の存在である郵便局ネットワークを維持、強化することによってこそ、「将来にわたって安定的な利益を確保できる基盤を構築」していくことが可能だと考えています。
地域に寄り添い、地域と共生することが、当社の社会的使命であり、郵便局に対する期待です。これがあるから、お客さまから信頼をいただいているわけですが、それだけではなく、顧客構造も含めたマーケットの状況などに応じて、立地や店構え、あるいは商品・サービスのあり方など多様なものをそれぞれの郵便局が考えてほしいという宿題を出しています。
現在は将来像の大枠の考え方を示していますが、2万4000の郵便局ネットワークは維持します。維持するからこそ、それぞれの一つひとつの郵便局の強み、魅力を向上させよう、そのためにみんなが考えようということです。
これから様々な知恵が出てくると思います。「現場、現物、現実主義」を経営の基軸にしていますので、現場を預かり、現物、現実を直視している郵便局長の皆さんたちが、自分たちはこんなことをやってみたいというのであれば、大いに挑戦していただきたいと思います。
今年は特徴的な郵便局が具体的にどんどんと出てくると期待できますか。
これからだと思います。東京の立川には金融コンサルティングに特化した店舗というものもできます。これも新しい郵便局のあり方です。他にもやってみたいという声もありますので、これからも新しい形の郵便局が出てくるのではないでしょうか。
高い成長ポテンシャル
人口減、高齢化、過疎化などが進んでいます。特に、地方では郵便局を維持するのも大変だという声も聞きます。郵便局は地域での存在価値を高め、社会的使命を果たすことが求められていますが、今後も地域の郵便局は維持されていくのでしょうか。
郵便局は維持します。これは確約します。そういう中で、郵便局があるというだけで、その地域の皆さまの安心感につながるのかもしれませんが、同時に郵便局に行きたい、行って良かったと思っていただけるような郵便局を作っていきたいと思います。それが着任以来、強調している『ワクワク郵便局』です。
日本郵政グループにとっての価値は全国の郵便局ネットワークで、それを中心にグループ全体が動いていくのだという指摘がされています。
ゆうちょ銀行やかんぽ生命が運用できるのも郵便局があるからです。郵便局がお客さまから資金をお預かりするからこそ、運用ができるわけですね。郵便局ネットワークは日本郵政グループの財産です。この郵便局を中心とした体制というものは、グループの全社員が強く認識していくべきだと思います。
全国の郵便局では地域の活性化などを目的に、地方創生に取り組んでいます。
改めて言うまでもありませんが、社会に寄り添い共生するというのが当社に課された社会的使命だと思います。おそらく、企業として日本で最大の社会的使命を果たしているでしょう。社会的使命の全うなくして成長なしですが、我々の成長ポテンシャルというのは、非常に高いものがあると考えています。
他の金融機関が店舗の効率化を行う中で、我々は店舗を維持していきます。これには理由があります。お客さまとの書類のやり取りも含めて、事務効率のためにAIの活用、IT化は進めていきますが、結局はどんなにIT化が進もうと、コンサルティングのところでフェイス・ツー・フェイス、ハート・ツー・ハートが大事だからです。
商売というのはITがどんなに進もうと、結局は人間関係、心の通い合いです。そこは我々の強みだと思います。お客さま、地域が大切と思う150年近い歴史の中で培われてきた郵政のDNA、これをさらに発展させることです。ここが効率化、店舗縮小を行う他の金融機関とは違うところです。
逆張りの戦略かもしれませんが、それだからこそオリジナリティがあると思います。2万4000の郵便局ネットワークを非効率だと言う人がいるかもしれませんが、2万4000だからこそ魅力があるのであり、最大の強みとなるのです。
地域貢献、地方創生では、これまでに都道府県との包括連携協定は24に達しました。この2年間でたいへん急速に進みました。最近も昨年12月3日に静岡県の川勝平太知事と締結しましたが、やはり知事の皆さんからの郵便局への期待は大きいものがあります。郵便局は地域におけるインフラだと言ってもらっています。
連携では郵便配達の途中で道路の損傷や具合の悪い所を見つけたら情報提供する、観光PRや物産展の開催、Uターンする人への情報提供など様々なことがあります。福島県は一歩進んで車に放射能の測定器等も付け、異常を検知することも行っています。特産品や観光のPRでは、霞が関の本社やKITTEでも行いましたが、たいへん人気がありました。
私の故郷の宮崎県では河野俊嗣知事、宮崎銀行の平野亘也頭取からも「こんなに売れるもんですね」と言われました。郵便局ネットワークを活用して地域の魅力を発信することは役に立っていると思います。ですから、もっともっと我々を使っていただきたいですね。
また、地方自治体などとも様々なビジネスが展開でき、ウィン・ウィンの関係ができ上がっていくようにしたいと思っています。
自治体との連携という面では、特に過疎地などでは業務を受託し、住民の皆さまの利便性の向上に役立てることも想定されています。
できるところはどんどん請け負っていきたいと思っています。地方銀行が支店を閉じる場合と共通しているかも知れませんが、協力できることは進める方針です。
『ワクワク郵便局』を発展
郵便局ネットワーク維持ということで拠出金・交付金制度が創設されました。
郵便局ネットワークを維持・強化していくということが使命ですから、今回の制度創設はたいへんありがたいもので感謝しています。これを有効に活かしていきたいと考えています。
総務省の郵便局活性化委員会に、土曜日休配や配達日数の見直しということを要望されました。
要望の背景というのは労働力不足が解消しないまま、eコマースが生活にビルトインされ、ゆうパックをはじめとする荷物の量がどんどん増えてきているという状況にあります。何でも送ってもらう世の中になっています。これはもう絶対に変わらないでしょう。
そういう中で、ユニバーサルサービスの郵便も事業全体として守っていくために、土曜日休配にすることなどで人員をある程度は余裕を持たせることができます。休日や深夜に勤務している人たちもたいへん多くいます。こうした勤務体系を変えることで、会社全体としての働き方改革になります。
大事な資源資産である人員の多様な配置ができることになります。資源配分によって働き方改革につながり、ぜひ進めていただきたいとしてご理解をお願いしたいと思っています。
改めて新年に当たって郵便局長、社員の皆さんにメッセージをお願いします。
社員みんなの創意工夫によって、会社全体の構造改革が進み、経営そして業績が健全な形で成長していく形になってきたと思っています。こうなれば、社員の処遇、そして会社全体としての成長投資も可能になるということです。この好循環を確固たるものにしていきたいと思っています。
今年も社員の皆さん一人ひとりが、それぞれの持ち場で少しでも創意工夫をして生産性を上げていくことができれば、40万人の社員ですからものすごい勢いになると思います。上期は営業黒字になりましたが、まだまだ目指すところは高いものがあり、それができる会社だと思います。
成長ポテンシャルが非常に高い会社と申し上げましたが、日本で最もポテンシャルの高い会社だと思います。郵便局社員のアイデアと創意工夫によって、地域ごとのマーケットに応じた「個性」を発揮した『ワクワク郵便局』を一緒に作っていきましょう。
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