コラム「春秋一話」

 年/月

2022年1月24日第7128号

「お客さま第一」の実践とは

 今年も日本橋郵便局で2022年年賀元旦配達出発式が行われた。日本郵便は2022年元旦に配達された年賀郵便物数の速報値が前年比11%減の10億3000万通だったと発表した。
 2011年に20億枚を超えていた年賀状も毎年減少している。以前から虚礼廃止により企業が年賀状を取りやめる話題はあったが、今年はさらにSDGsへの機運の高まりや新型コロナ感染の影響もあったのではないだろうか。
 社会環境やお客さまの意向により製品の売上が左右されることはあるが、お客さまに自社商品やサービスを選んでいただくためには従業員一人ひとりが「お客さま第一」の意識を持つことが欠かせない。
 先日、本紙に「変化を読む経営」を連載している小宮一慶氏が主催するセミナーで「お客さま第一」の実践についてある企業の話を聞いた。
 その企業は「神奈川ナブコ」という自動ドアのメンテナンスを主な事業としている会社である。創業は1965年、2000年に創業時の社長である父から現社長の原信治氏が会社を引き継いだ。
 会社では創業当初から、お客さまを大切にするという考え方に基づき会社が運営されていたが、原氏が引き継いだ時点でも全社で徹底されているという状態ではなかった。また、24時間休日もなく自動ドアのメンテナンスをしている関係から労働時間の問題等があり、離職率が高いことも新社長にとっての課題だった。
 そこで原氏は試行錯誤の後に、社員に対して「お客さまに喜ばれる行動目標」を立てさせることとした。
 新たな施策の導入に対してよくあることだが、やはり初めは抵抗勢力が出たという。しかし3年目くらいからお客さまの評価が変わってきた。あるお客さまから請求した金額よりも2万円多く振り込まれたことがあり、問い合わせすると、あれだけの仕事をしてくれたのに安すぎると言って多く振り込んだと言われた。
 最初は抵抗勢力だった社員が始めると、他の社員も熱心に取り組みをし始めたという。中でも抵抗勢力の一人で電話を受け付ける女性内務社員がいた。自動ドアの故障の電話を受け付けるのがほとんどで、以前はメンテナンス担当者にそのまま取り次ぐだけだったが、行動目標として自分で何かできないかと電話があった際に、自分でマニュアルを調べお客さまへの対応をすることにした。
 そのことで故障の電話の5割が修復してお客さまから大変喜ばれ、自分自身にも喜びになったとのことである。また、その頃から離職する社員もほとんどいなくなったそうである。
 小宮氏は「良い仕事」の定義は3つあり、「お客さまが喜ぶこと」「働く仲間が喜ぶこと」「工夫すること」だと言う。
 一人ひとりの社員が工夫をして行動することにより、そのことが結果的にお客さまの喜びや働く仲間の喜びに繋がっていき、そして会社が発展していく。このような会社が「良い会社」と言われるのではないだろうか。
 日本郵便の衣川社長は1月3日号に掲載されたインタビューで「『人』すなわち『社員』が事業発展の原動力であると考えており、『社員を大切にする企業』を目指していきたいと考えている」と述べている。
 昨年10月からの土曜日の配達休止、今月から始まる送達日数の繰り下げ、4月からは金融渉外社員の転籍など、お客さまへのサービスが変革する年、社員一人ひとりの工夫、そしてそれをフォローする会社の体制が試される一年になるのではないだろうか。
(多摩の翡翠)

2022年1月17日第7127号

寅年生まれは1025万人

 今年は寅年、各地の神社仏閣での初参りは、昨年に比べ人出が多かったという。長引く新型コロナウイルス感染症、新たなオミクロン株の拡大も懸念されるが、今年こそは平穏な日々をとの願いも強かったのだろう。
 初寅の秘仏の扉開きけり(野沢翠葉)
 発寅とは新年最初の寅の日に、毘沙門天に参詣すること。牛若丸(源義経)が修行したとして知られる京都市の鞍馬寺、国宝の毘沙門天三尊立像が祀られている。「寅の月、寅の日、寅の刻」に鞍馬山へ毘沙門天が出現したと伝わる。毘沙門天の使いは虎とされ、金堂前に阿吽の虎が訪れる人を迎える。
 毘沙門天は、古代ヒンドゥー教で金運と福徳の神だったことを引き継ぎ、日本でも財福の神として信仰されることがあるが、戦いをつかさどる「武神」として広く知られる。右手に宝棒と呼ばれる武器、左手に仏舎利が納められた宝塔を持ち、邪鬼とされる鬼形の上に乗っている姿が多い。宝棒で邪鬼を払い、宝塔で豊かさを授けるとされる。
 十干十二支では今年は「壬寅」(みずのえとら)。「新しく立ち上がること」や「生まれたものが成長すること」といった縁起の良さを表している。今年は芽が「成長」、新しい日常が「始まる」年になって欲しいものだ。
   
 総務省統計局は1月Ⅰ日現在の寅年生まれ、いわば「年男・年女」は1025万人と公表した。男性が499万人、女性は526万人。総人口1億2545万人(男性6099万人、女性6447万人)に占める割合は8.2%、十二支の中では9番目となる。ちなみに最も多いのが丑年の1139万人、次いで子年1126万人、亥年1111万人。
 年代別では48歳になる1974(昭和49)年生まれが198万人と最も多い。第2次ベビーブーム(昭和46~49年)世代だ。第1次ベビーブーム(昭和22~24年)世代に続く1950(昭和25)年に生まれ、72歳となる人が185万人、60歳となる1962(昭和37)年生まれが153万人。
 最年少の2010(平成22)年生まれで12歳を迎えるのが106万人。最も多い48歳になる人の約半数に過ぎない。なお、96歳となる1926(大正15・昭和元)年生まれは19万人となっている。
 また、新成人(1月1日現在で20歳)は120万人。男性61万人、女性59万人。男性が2万人多く、女性100人に対して104.6(人口性比)となっている。総人口に占める割合は0.96%。前年に比べ4万人の減少で過去最少を更新した。
 新成人の推計を開始した1968(昭和43)年からの推移を見ると、第1次ベビーブーム世代の1949年生まれが成人に達した1970年が246万人(総人口に占める割合は2・40%)と最も多くなった後、減少に転じて1978年には152万人(同1.33%)となった。
その後、再び増加傾向となり、第2次ベビーブーム世代が成人に達した1994(平成6)年の207万人(同1.66%)をピークに減少傾向に戻り、2011(平成23)年から総人口に占める割合も1%を切った。
 新たな門出を迎えた現在の新成人はインターネットやSNSなど情報革新の波に洗われ、大きな変化の中で育ってきた。新型コロナウイルス感染症の影響で、まだ成人式も思うようには開けない自治体も多かった。これも糧にして逞しく生きて欲しいと願う。
   
 寅年だが、実は絶滅が危惧されている。トラはアジア地域に広く分布していたが、大幅に減少、かつての生息地の93%から姿を消したという。原因は開発などで生息環境が奪われたことだ。食物連鎖の頂点にあるトラは、森林の再生を妨げる恐れのある草食動物の侵入を抑制するなど、生態系の保護にも重要な役割を果たしているとされる。
 人類の活動によって陸地の75%が改変されているとされ、地球環境に与える影響が温暖化や異常気象となり、逆襲とも言えるように人類の生活を脅かしていることは、もはや論を俟たない。野生生物の絶滅や農業、漁業への影響も大きい。経済活動の見直しや自然環境の保全・再生などは待ったなしだ。
 古来より中国ではトラは百獣の王として崇敬されてきた。一方で「苛政は虎よりも猛し」(礼記)との言葉もある。過酷な政治が人びとに与える害は、トラの被害よりも酷いものがある。悪政を戒めるものだ。格差拡大やコロナ禍への適切な対応、政治の役割はいつの時代も重い。今年こそ明るい展望が開けることを望みたい。
(和光同塵)

2022年1月3日第7125・7126合併号

休載

休載

2021年12月20日第7123・7124合併号

不祥事の陰にある同調圧力

 11月初旬、新聞に掲載されていた死亡記事に目が留まった。社会人類学者で、東京大名誉教授の中根千枝さんが10月に94歳で亡くなったとの記事だった。
 中根千枝さんは1967(昭和42)年に「タテ社会の人間関係」を著し、序列偏重の日本社会を考察した。その著書は半世紀以上にわたり読み継がれ100万部を超えるベストセラーとなっている。
 この著書の中で、日本社会では「場」、つまり会社や学校という枠が重大な役割を果たし、その中では「タテ」の関係が発達して序列偏重組織を形成し、大きな影響を及ぼすという日本独特の特徴を説いている。
 中根千枝さんは、その後もこの日本の特徴に関する著書を出版し続けていたが、最近では亡くなる2年前の2019年に出版した「タテ社会と現代日本」がある。
 その中では、現代社会を捉えて「日本型経営がかたちを変えつつあり、年功序列のような制度が薄らいだとしても、タテのシステムは残るところには残る」として、昭和40年代に論じたことが現代でもそのまま当てはまって残っていることを説いていた。
 最近はこのような日本の特徴が「同調圧力」という言葉で注目されており、コロナ禍を契機に関連する書籍が多数出版されている。
 同志社大学政策学部教授で組織論の専門家である太田肇氏が最近出版した「同調圧力の正体」という著書もその一つである。
 この著書で同氏は社会の中の集団を「基礎集団」と「目的集団」の2つに分類し、「基礎集団」は、家族やムラなどの自然発生的な「共同体」、「目的集団」は企業や学校、政党、競技団体などの具体的な目的を達成するための「組織」と解説している。
 そのうえで、日本では典型的な組織である企業や学校などが共同体のような性質を併せ持ち、いわば組織が共同体化してしまっているとして、その要因を3点挙げている。
 一つには「閉鎖性」、二つには「同質性」、そして最後に「個人の未分化」を挙げている。「個人の未分化」とは、個人が組織や集団の中に溶け込んでしまっていることを指し、そのことにより一層同調圧力を受けやすくなるという。つまり日本では「閉鎖的」「同質的」な組織や集団は共同体になりやすく、個人が未分化だと同調圧力に対して無防備となってしまう。
 太田氏は、平成時代の後半から特に目立って起こった企業や役所などの組織的な不正、職場や各種団体で発生したいじめ、パワハラ、セクハラなども同調圧力をもたらす3つの要因のもとで起きているという。
 例えば、東芝 の 不適切 な 会計 処理 をめぐって は、経営 陣 が あまりに も 高い 収益 目標 を 設定 し、現場に強く迫ったことが長年にわたる不適正な会計処理を引き起こしたと言われているが、組織の中での同調圧力が未分化されていない個人の思考停止を招き、不祥事につながった。
 そして不祥事が明るみに出ると「管理徹底」や「綱紀粛正」を唱え、周囲もそれを受け入れる。その結果、当面は不祥事を防ぐことができても問題意識や責任感は醸成されず、管理強化に無批判に追随することにより、新たな不祥事を発生させることにつながる。
 東芝に限らず様々な企業や組織で不祥事が発生し、監督責任の名のもとに管理監督者が責任を問われ組織の中で役職から排斥されることがあるが、そのことが真の病根を摘んでいるとは言えない。企業として行うべきことはこの同調圧力の要因を理解し、そのうえで組織の中に未分化されない個人を活かす経営を行う努力を続けていくべきではないか。
 失われた30年と言われている現代日本、浮上のカギはこのようなところにもあるのではないだろうか。
(多摩の翡翠)

2021年12月13日第7122号

看護・介護・保育士の処遇改善

 「姑は99才です。介護を受けながら一人住まいです。(略)ある日『私一人が死んでいても誰も悪うないけんね』と、ぽつんと言った。私は年齢を重ねた姑への寂しさや切なさを感じた。姑様、あなたの人生が幸せだったと言える様願っています」
 「一言の願い」をテーマに綴る第7回「はがき名文コンクール」が今年も大賞や日本郵便大賞が決まり、11月27日に奈良県御所市の郵便名柄館と近くのアザレアホールで表彰式が行われた。出山月惠さん (73歳、広島県)の義母を取り上げた作品が大賞となった。
 「願い事をはがきに書いて、郵便ポストへ。」。郵便名柄館に寄せられた「胸を打つ願い」「磨かれた言葉で書かれた願い」のはがきを選ぶコンクール。選考委員は作家の五木寛之さん、村山由佳さん、明治大学教授の齋藤孝さん。 日本郵便が協力している。
 今回の応募総数は2万5000を超えた。大正3(1913)年に建築された郵便局舎を、平成27(2015)年に御所市のプロジェクトによって当時の姿に復元したのが郵便名柄館。貴重な郵便資料も多く展示されている。その再生を記念して始まったのがコンクール。
 近くには古事記にも記された一言主大神を祀る一言主神社がある。正式名称は葛城坐一言主神社。全国の一言主大神を祀る総本社だ。地元の人々は「一言さん」と親しみを込めて呼び、一言の願いであれば何でもかなえてくれると信じられている。コンクールはその言い伝えにもちなんだ。
 「『鼻血が止まらへん』と起きてきた朝、夫は即、入院となりました。コロナ禍で、私は病室に入れず、詰所で着替えを渡す日々。そんなある日、子供と孫達が鴨川の堤防に立ち、対岸の夫の病室に一生懸命手を振っています。見ると、看護師さんに体を支えてもらって、じっとこちらを見ている夫の姿が…」
 「子供達と看護師さんの心配りに涙がこぼれました。その数日後、夫は亡くなりました。神様、ずっと会えなかった夫と肩を並べ、鴨川の流れに心を和ませる夢をみたいです」。日本郵便大賞の一つに選ばれた日尾千恵子さん(73歳、京都府)のはがきだ。時代を反映して、介護や看護などの思いを綴ったはがきが目についた。
 筆者の父も遠く離れた地方都市の施設に入所している。近くには兄が住んでいるが、コロナ禍でなかなか思うようには面会できない状況が続いた。高齢者を入所させざるを得なかった多くの人たちも、会いたいとの思いをどんなに嚙み締めた日々だろう。
 それに、施設の人手不足が拍車をかけている。散策も自由にできないという。車いすを押す人手や時間が足りないのだ。部屋に居るだけでは気分転換もままならない。久しぶりに会った父は、自分の住んでいた家に帰りたいとこぼした。その故郷の家には、もう誰も住んではいない。
 看護や介護、保育などの現場で働く人の処遇を政府が改善するという。経済対策として賃金を3%程度(月額9000円)引き上げることを盛り込んでいる。厚生労働省によると全産業の役職者を除いた平均賃金が月額35万2000円なのに対し、介護職員は29万3000円、保育士は30万3000円と低い。介護職員は39万4000円と高いが、こうした分野では人手不足も課題で、長時間労働など待遇改善の必要性が長く指摘され続けている。
 介護などのサービス価格は「公的価格」として保険料や税金、利用者負担などを基に政府が決定することになっている。介護報酬や診療報酬を改めることも想定されているが、国民の看護保険料や利用者負担の上昇の懸念も大きい。賃上げは介護報酬の加算ではなく一般財源から求めるとの声も高い。
 そもそも消費税の引き上げでは、常に全てを福祉に回すとされてきた。2020年度において消費税21.0兆円、所得税19.2兆円、法人税11.2兆円と消費税が最大の歳入になっている。少子高齢化に伴い社会保障支出が高まることは分かっていた。
 子育てや介護・看護などへの支出は先進国では最低水準だ。ホームヘルパーの2020年度の有効求人倍率は14.92倍とされているが、やり甲斐はあっても激務で給料が少ないと辞めていく人も多い。雇用が増えても多くは非正規にとどまり、給与格差は固定される。
 社会構造の変化に合わせて、求められる分野での要員増、そして働く人々が喜びを感じられる政策が急務だ。
(和光同塵)

2021年12月6日第7121号

2021年 郵政の10大ニュース

 いよいよ師走を迎え、少し気が早いが、今年の10大ニュースを考えてみた。
1 郵政創業150年=近代郵便が開始されてから大きな節目の記念すべき年であった。しかし、コロナ禍で式典も行われず、かんぽ不適正営業事案を引きずり、精神的には盛り上がり不足の感が。8月に横浜での日本国際切手展2021で記念展示は行われたものの、やや寂しい記念の年であった。
2 日本郵政株式の第3次売出し=政府が保有する日本郵政株式は、郵政民営化法に規定されている保有義務分「3分の1超」を除き、できる限り早期売却が求められていた。次は、日本郵政が保有するゆうちょ、かんぽの株式の売却が控えている。
 日本郵政の自己株式取得・かんぽ生命株式売却=日本郵政は2500億円の自己株式を取得し、また保有するかんぽ株式を売却した。2、3とも、後述する中計に記載された資本戦略である。金融事業の自由度拡大は悲願であるが、郵政グループ内で過度の遠心力が働かないような具体策を期待したい。
4 中期経営計画(JPビジョン2025)の策定=金融2社株式の保有比率を50%以下とする目標や、デジタル化をはじめ共創プラットフォームを目指し成長に向けた意欲的な各種取組を行う内容で、これらの推進は必要不可欠。しかし、それでもまだ2025年の目標数値は物足りず、更なる上積みをいかに行うかが問われる。
5 新しいかんぽ営業体制の構築の動き=お客さまの信頼回復の取組は一定の成果があったと9月のJP改革実行委員会の評価も得て、お客さまのお困りごとを解決する提案を行う営業にフェーズが移っている。しかし、足元の契約の伸びは低調。冷え込んだ営業マインドを温め直し、コンプライアンスを両立させながら実績を拡大できるか、正念場である。
6 郵便法改正に伴うサービス見直し=10月から普通扱いの郵便等の土曜日休配が始まり、来年1月下旬からは送達日数の繰下げが本格実施の予定。今後、これらの効果が金額的にどの程度刈り取れるのか、また荷物分野へのリソースシフトをいかに円滑に進められるか。ただし、荷物の取扱いが増えないことには話にならないことも指摘したい。
7 楽天との資本業務提携=Eコマースの起点から配達までを囲い込む戦略の意義は大きい。今後、楽天市場での販売拡大と、JP楽天ロジの倉庫から、目論まれた数のゆうパックが差し出されることを期待したい。
8 佐川急便との協業=お互いの弱みを補完しあうという趣旨は非常に分かりやすい。ヤマトのDM便の受託配達のような一方的な請負でないのが良い。佐川の営業に取り込まれず、いかに日本郵便の利益に繋げられるか楽しみである。
9 トールのエクスプレス部門の売却=赤字部門を切り離し、足元の経営状況は改善しているように見える。目下好調なフォワーディングに頼らず、国際物流、関連する国内分野をいかに伸ばしていくのか、具体的な戦略が求められている。
10 ゆうちょ取扱い料金の新設・改定=来年1月から引上げ、新設となる各種手数料は、やはり必要なもの。やりすぎとの声もあるものの、お客さまの理解を得つつ、持続できる経営をいかに実現していくか、重要な一歩を踏み出したといえる。
 10大ニュースに無理矢理まとめたが、このほかに、複数の現金詐取等各種不祥事案や、最近でも会社経費で調製したカレンダーの配布問題への処分といった重要なものもある。紙幅の関係上触れる余裕がないが、信頼回復に水を差す出来事である。
 振り返ると、創業150年にふさわしい話題が豊富な年だったとも言える。他方、不祥事の対応はじめ、郵政グループが将来にわたってユニバーサルサービスを提供し、企業体として発展していくためには、個別には繰り返さないが、課題山積の2022年の出帆前夜でもある。
(連環子)

2021年11月22日第7119・7120合併号

流行語は明るいものが良い

 2021ユーキャン新語・流行語大賞のトップテンと年間大賞が12月1日に発表される。それに先立ち、11月4日に30のノミネート語が発表された。
 ノミネートされたのは「イカゲーム」「うっせぇわ」「ウマ娘」「SDGs」「NFT」「エペジーーン」「推し活」「親ガチャ」「カエル愛」「ゴン攻め/ビッタビタ」「ジェンダー平等」「自宅療養」「13歳、真夏の大冒険」「ショータイム」「人流」「スギムライジング」「Z世代」「チキータ」「チャタンヤラクーサンクー」「ととのう」「ピクトグラム」「フェムテック」「副反応」「変異株」「ぼったくり男爵」「マリトッツォ」「黙食/マスク会食」「ヤングケアラー」「リアル二刀流」「路上飲み」。
 この中で、すぐにイメージできるものといったら、次の言葉くらいだ。
▽うっせぇわ…歌手・Adoの楽曲で、若者を中心にヒット。
▽SDGs…「Sustainable Development Goals」(持続可能な開発目標)。誰一人取り残さない、持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため、2030年を年限とする17の国際目標を指す。
▽親ガチャ…「ガチャ」=「自分では選べない」を親にかけて「親は自分で選べない、どんな境遇に生まれるかは運」という意味。ネット上のスラングとして、若者たちの間で広まった。
▽ジェンダー平等…一人ひとりの人間が性別にかかわらず、平等に責任や権利や機会を分かちあい、あらゆる物事を一緒に決められることを意味し、SDGsにも設定されている。
▽自宅療養…新型コロナウイルス感染拡大で医療がひっ迫し、自宅療養する人が増えた。
▽13歳、真夏の大冒険…東京2020オリンピックのスケートボード競技で、13歳の西矢椛選手が日本選手史上最年少で金メダルを獲得した時に、倉田大誠アナウンサー(フジテレビ)が実況で表現した言葉。
▽ショータイム…ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が、登場する際に使用されるキャッチフレーズ「イッツ、ショー(翔)タイム」から選出。
▽人流…コロナ禍における人の流れの増減の様子などを表す。
▽ピクトグラム…東京五輪開会式で大きな話題となった。パントマイムで競技アイコンを表現し、多くの人たちを魅了した。
▽副反応…新型コロナウイルスのワクチン接種で、発熱や肩痛、頭痛など様々な症状が発生すること。
▽変異株…新型コロナウイルスの感染力が非常に強い変異株「デルタ株」が夏場に流行し、感染が大きく拡大した。
▽ぼったくり男爵…アメリカ紙『ワシントン・ポスト』がIOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長を揶揄した言葉。
▽黙食/マスク会食…新型コロナウイルスの飛沫感染防止のため、食事中は会話をせずに黙って食べ、食べるとき以外はマスクを着用すること。
▽リアル二刀流…ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が、投手として9勝を挙げ、打者として46本塁打を放つなど大活躍したことから生じた言葉。
▽路上飲み…新型コロナウイルス感染拡大で、飲食店が営業自粛や時短営業、酒類提供禁止となったことから、路上で飲酒をする人が増えて広まった言葉。
 今年も新型コロナウイルスの関係を中心に、暗い話題が多い1年だったと思う。その中で、開催前は根強い反対論もあった東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は、数々の名場面を生んだ。
 今年の流行語大賞、もしも私が一票投じられるとするならば、事前にシナリオがあったわけではなく、競技を実況中継しながらとっさに出た倉田アナのフレーズ「13歳、真夏の大冒険」に一票入れたい。
(九夏三伏)

2021年11月15日第7118号

郵便サービス変更を効果あるものに

 NHKの大河ドラマ「青天を衝け」が話題だが、10月6日の放送では新政府による改革の一環として前島密が郵便制度を提案し、翌明治4年に実施される場面が放送された。その郵便創業から150年の今年、郵便制度は大きな節目を迎えた。
 郵便配達は創業当初から土曜、日曜に関わらず毎日配達されていたが、1968(昭和43)年に日曜日の普通郵便の配達が休止された。
 この年は郵便番号の導入もあり、機械化など業務の効率化が図られた年である。本年10月2日(土)から始まった土曜日の配達休止はこの時以来の大きな変更となる。
 働く環境を改善しサービスを安定的に続けるため、郵便法で週6日以上となっていた配達日が去年の法改正で週5日以上に変更されたことから土曜日の配達が休止された。
 これまでは普通郵便を週に6日配達し、加えて夜間や休日に速達やゆうパックなどの配達を行うための要員が必要だった。
 社員の勤務時間は週40時間であるため、週2日の休日、さらに有給休暇などもあり、必要人員の配置は職場での重要な課題であった。
 週40時間の適用は正社員だけでなく非正規社員にも適用されるので、今回の土曜日配達休止により普通郵便の配達を担当する非正規社員については土曜、日曜に休暇を充てることができる。
 現在のような人手不足の中では配達要員を採用しようにも応募者がいないというが、このような人手不足にも対応できることとなり、外務社員の働き方だけでなく将来にわたる安定的な配達業務の確保にも資することとなるだろう。
 日本郵便は、土曜日に出勤している約5万5000人の配達員のうち約4万7000人の再配置が可能になり、約500億円の収益改善効果があると公表している。
 一方もう一つの大きな変更は、来年1月以降に始まる送達日数の繰り下げである。郵便法の改正により普通郵便の送達日数制限を現行の「差出日から原則3日以内」から1日繰り下げて「原則4日以内」とすることとなった。
 1984(昭和59)年2月に、鉄道中心だった輸送方法を自動車便による輸送体系に変更し、同時に同一都道府県内において翌日配達、その他の府県宛はできる限り翌日配達、それが困難な地域においては翌々日配達という体制が確立された。その後の様々な輸送体系の見直しにより翌日配達地域は拡大され今日に至っていた。
 今回の送達日数の繰り下げはこれを見直すもので、普通郵便の翌日配達地域はなくなる。このことにより、主に郵便内務の業務の流れが大きく変わり、これまで深夜帯中心だった流れが、日中帯中心に変わる。普通郵便以外は翌日配達体制が維持されるので全てが変わるわけではないが、特に地域区分局などでの深夜帯の従事者が少なくなる。
 また、早朝に業務が集中していた配達局においては作業が前日の日中帯に移行することになる。
 早朝の労働力として頼らざるを得なかった短時間の非正規社員を日中帯に移行することにより、安定的な雇用が可能となり、管理者が早朝から夜間まで業務に従事することもなくなるのではないだろうか。
 今回のサービス変更は地域区分局、集配局などいわゆる単マネ局のオペレーション、マネジメントに関わるものであるが、コロナ禍を契機に変わってきた世の中の変化とともに、社員にとっての働き方改革だけでなく管理者にとっての働き方改革にもつながることだろう。
 利用者にはサービスダウンとなる変更だが、日本郵便社内においては効果的に活用し、現代の日本の経営課題でもある後継者人材の育成につなげるなど実のあるものとなることを期待したい。
(多摩の翡翠)

2021年11月8日第7117号

子どもたちのメンタルヘルス

 新型コロナウイルスの感染者数も頭打ちになってきたが、依然として注意が必要。長引くコロナ禍は、経済のみならず未来を担う子どもたちにも大きな影響をもたらした。昨年度、児童や生徒の自殺は初めて400人を超え、小中学生の不登校も19万人以上と、いずれも過去最多となった。
 文部科学省は「極めて憂慮すべき事態。コロナ禍による環境変化が子どもたちの生活に大きな影響を与えた」としている。全国の小中学校、高校、特別支援学校を対象に「問題行動・不登校調査」を毎年実施しており、10月13日に昨年度の結果を公表した。
 自殺は小学生7人、中学生103人、高校生305人で合計415人と前年度から100人近く増えた。この10年で約2.7倍になった。415人の置かれていた状況を複数回答で聞いているが、最多は「不明」の218人で全体の半数を超えたのが特徴。
 また、学校を30日以上欠席した不登校の小中学生は19万6127人で、前年度から1万4855人も増加した。不登校の割合は10年前に比べ、小学生は約3倍となる100人に1人、中学生は約1.5倍の24人に1人だ。
 主たる要因で最も多かったのは小中学生ともに「無気力・不安」。前年度より7ポイント上昇し47%に。続いて「生活リズムの乱れなど」が3ポイント高くなり12%。「いじめを除く友人関係を巡る問題」は4ポイント余り減り11%に。
 文部科学省は、コロナ禍により物理的な接触が減ったことや、休校で授業日数が少なかったことなどが背景にあると見ている。
 また、今回の調査は「感染回避」の目的で30日以上休んだ自主休校なども調査された。小中学生と高校生を合わせて3万287人に上った。小中学生では2万905人となった。このほかの長期欠席者は、病気やけがによる入院や自宅療養の小中学生が4万4427人、保護者の無関心や家族の介護の家庭事情などが2万6255人となっている。
 不登校が増えたのは「元々のリスク要因の家庭不和や親からの叱責が、コロナ禍によるステイホームやテレワークで悪化し、友達と会うなどのストレス対処法も制限されたことが相まったと考えられる。学校に行く楽しみがなくなったことが大きい。大人が想像している以上にストレスを感じているのだろう」と専門家は指摘する。
 日本だけでなく、子どもや若者がストレスを感じているのは世界的な傾向。ユニセフ(国連児童基金)は10月5日に『世界子供白書2021』を発表。コロナ禍による子どもや若者のメンタルヘルスへの影響を「今後、何年にもわたって受け続ける可能性がある」と警鐘を鳴らす。
 最新の推計では「世界の10~19歳の7人に1人以上が、心の病気の診断を受けている。この年齢層の若者は毎年4万6000人近くが自殺しており、死因の5位に入っている。さらに、16億人以上の子どもたちが学習機会を失った。日常生活や教育、娯楽が妨げられ、家計収入や健康への不安もあり、多くの若者が将来への不安を感じている」と指摘する。
 一方で、メンタルヘルスに関するニーズと資金の間には大きなギャップがある。報告書は世界で政府の保健・医療分野予算のうち、メンタルヘルスに関する支出に割り当てられているのは、わずか2%だとする。
 「コロナ禍は、特に子どもたちにとって、とてつもなく長い時間だった。ロックダウンや移動制限により、家族や友人、教室、遊びなど、幼少期にとって重要な要素から切り離され、人生において消すことのできない年月を過ごした。影響は大きいが氷山の一角に過ぎない。コロナ禍の前から子どもや若者は、メンタルヘルスの問題に対処する十分な投資がない中で苦しみを背負ってきた。これらの重要なニーズに対応するための政府の投資は、あまりにも少ない」と述べている。
 パンデミック発生から3年目を迎えようとしているが、子どもと若者のメンタルヘルスと幸福に与える影響は、重くのしかかり続けている。若者の心の病気によって生み出される人的資本の損失は、年間約3900億米ドルとの推定もある。
 報告書の「各国政府は子どもたちの可能性を最大限に引き出すための重要な要素に対する理解と投資があまりにも不足していた。保健分野にとどまらず、様々な面で子どもと若者のメンタルヘルスに緊急の投資を行う必要がある」との指摘は重い。
(和光同塵)

2021年11月1日第7116号

郵政の個人情報利用の期待と不安

 10月15日、総務省は「郵便局データの活用とプライバシー保護の在り方に関する検討会」(以下単に「検討会」)の第1回会合を開催した。「郵便局が保有・取得するデータの活用とプライバシー保護の両立」を目指して検討を進めることが目的で、初回会合は金子総務大臣、中川総務副大臣が出席して挨拶を述べるなど、高い位置付けの舞台上で議論が開始された。
 既に「デジタル時代における郵政事業の在り方に関する懇談会」最終報告書(本年7月21日)では、今後の郵政の発展のためにデータ活用に関しても前向きな提案が行われている。また、役所としては、個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律(令和2年法律第44号)を受け、「郵便事業分野における個人情報保護に関するガイドライン」(平成29年総務省告示第167号)の改定を行う必要があるという背景もある。
 郵政は公共性を持つ一方、民間の事業体であり、どこまで公的な役割が期待され、ビジネスベースで個人情報を(加工を含め)利用できることとするのか。デジタル社会において、郵政が保有している(また、これから保有できそうな)情報の利用について、いかに前向きに議論できるかが大きなポイントの一つだ。
 他方、情報利用に対する懸念も大きい。一部メディアで事前に報道された内容が不安をあおった。郵便局はどの家庭がどのような自動車を所有しているかを把握しているかのような報道だ。ネットでは「そんなことをしているのか。やりすぎだ。不安」という意見が噴出。検討会の場では、郵政からこの報道内容は否定された。今後の議論に不必要な疑念を抱かれ、郵政にとっては甚だ迷惑な話だが、考えようによっては、あらかじめ世論の感触を知ることができたと前向きに捉えることもできる。
 検討会では、まず郵政がどのように個人情報を取り扱っているかという現状と、データ活用のユースケース(利用方法)案を郵政からたたき台として提出するよう求めている。
 今後のスケジュールを見ても、帰納法的に議論を進めたいという検討会の考え方が見て取れる。情報の利用という案件の性質上、具体的なケースを見ながらでないと議論がしづらいという面があり、理解できるところだ。しかし、踏み込んだ個人情報の利用について世論の批判や不安が大きい中、大胆な個人情報の利用案は、郵政は出しづらいのではないか。
 そうした場合、検討会では追加で事務局や委員からの利用例を俎上に載せ、結論を導き出すのだろうか。前広な議論を期待したいが、郵政は、通信の秘密も個人情報も、これらの利用についてこれまで「抑制的に」運用してきたところであり、それが今後もあまり変わらないのであれば、せっかくの議論がもったいないことになる。
 逆に、演繹法的に、情報利用のあるべき姿から一定の境界線を導き出すなど、制度・法律面等、理屈からの整理というアプローチもあり得るのではないかとも思う。その際、法律論として、憲法に基づく信書の秘密と個人情報保護法制の法体系上の整理など、難しい論点もあろう。
 郵政にとっては、手付かずの宝の山である(と思われる)未利用の情報を活用できるかもしれない好機であり、積極的に参画してもらいたいところだ。検討会には、多くの国民が納得できるような形で、利用と保護が両立できる具体的な成案を得られるよう、活発かつ意欲的な議論を期待したい。
(コン・ブリオ)

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