コラム「春秋一話」

 年/月

2021年1月18日 第7075号

丑年生まれは1066万人

 丑年に生まれた人は1月1日現在で1066万人。総務省統計局の推計で、男性は517万人、女性は549万人。総人口1億2556万人(男性6110万人、女性6446万人)の8.5%を占め、十二支の中では3番目に多い。ちなみに最も多いのが子年の1138万人、次いで亥年の1122万人。
 年齢別では、第1次ベビーブーム(昭和22~24年)世代で、今年に72歳となる24年生まれが211万人と最多。第2次ベビーブーム(46~49年)の48歳になる48年生まれが203万人、60歳になる36年生まれが149万人と続く。最年少の平成21年生まれで12歳を迎えるのが106万人、12年生まれで84歳になる109万人より3万人も少ない。なお、96歳となる大正14年生まれは19万人。
 また、新成人(1月1日現在で20歳、平成12年生まれ)は124万人。男性は64万人、女性は60万人。男性が4万人多く、女性100人に対して105.6(人口性比)となっている。総人口に占める割合は0.99%。前年に比べると2万人ほど増え、0.02ポイントの上昇。2年振りの増加・上昇となったが、総人口に占める割合は11年連続で1%を下回っている。
 推計を開始した昭和43年からの新成人の推移を見ると、第1次ベビーブーム世代の24年生まれが成人に達した45年が246万人(総人口に占める割合は2.40%)と最も多くなった後、減少に転じて53年には152万人(同1.33%)となった。その後、50年代後半から再び増加傾向となり、第2次ベビーブーム世代が成人に達した平成6年の207万人(同1.66%)をピークに減少傾向に戻り、23年からは総人口に占める割合も1%を切っている。
 今年の新成人は21世紀の始まりとともに歩んできた。インターネットやSNSなど情報革新の波に洗われ、大きな変化の中で育ってきた。新型コロナウイルス感染症の影響で、今年は成人式がオンライン開催や中止となった自治体も多い。新たな門出に晴れ姿を見せられないのは辛い思いだろうが、これも糧にして逞しく生きて欲しいと願う。
 十干十二支では今年は「辛丑」(かのとうし)。「辛」は思い悩みながら、痛みを伴う幕引きを意味し、「丑」は発芽直前の曲がった芽が硬い殻を破ろうとしている状態で、命の息吹という。「辛丑」は変化が生まれ、新たな生命が萌し始めることで、新しいことにチャレンジするのに適した年ともされる。
 ひと巡り昔の「辛丑」は60年前の昭和36(1961)年。戦後社会も大きく変わりつつあった。首相は所得倍増計画を打ち出した“経済”の池田勇人。高度経済成長の初期として、3年後の東京オリンピック開催に向け、経済は活気づいていた。テレビ、洗濯機、冷蔵庫の“三種の神器”も急速に家庭に普及しつつあった。人々は「上を向いて歩こう」(坂本九)、「スーダラ節」(植木等)、「銀座ドドンパ娘」(渡辺マリ)、「銀座の恋の物語」(石原裕次郎、牧村旬子)といった流行歌を口ずさんだ。
 NHK朝の連続テレビ小説も始まる。初回は獅子文六原作の「娘と私」。スキー客が100万人を突破、登山者は224万人にのぼりレジャーブームと言われた。大鵬、柏戸が同時に横綱に昇進、“柏鵬時代”が幕開けた。一方で少年少女の睡眠薬遊びが社会問題に。気象用語の「不快指数」もこの夏から使用が始まった。
 海外ではソ連のユーリイ・ガガーリンを載せた有人宇宙船が地球一周に初成功。「地球は青かった」の言葉を残す。アメリカでは第35代大統領にジョン・F・ケネディが就任、史上最年少の43歳、ニューフロンティア精神を強調。しかし、東ドイツは東西ベルリンの境界に壁を構築、冷戦の危機は世界を揺るがせた。
 1億総中流社会の形成への弾みとなった高度経済成長、多くの矛盾や公害などの社会課題も生じた。ただ、生活が豊かになるのではとの高揚感もあった。若かりし頃に当時を生きた者の単なる郷愁と言われるだろうが。
 60年が経った今、再び東京オリンピックが開催されようとしている。しかし、厚いとされた中流層も崩壊したと指摘され、非正規の増加による格差社会、貧困も自己責任という社会の在り方を今一度考えさせられる状況だ。価値観も多様化している。
 さらに、昨年から世界を覆うコロナ禍が今も続く重苦しい状況を思えば、新たな生命の萌芽という「辛丑」の意味にもすがりたくなる。人と牛との付き合いは長い。牛は従順な家畜として昔から親しまれてきた。「角を矯めて牛を殺す」のように、些末なことに捉われて物事全体をだめにしてしまうことなく、「牛の歩みも千里」と努力を怠らなければ成果があがることを信じて、コロナ禍を克服、明るい展望が開けることを望みたい。
(和光同塵)

2021年1月11日 第7074号

企業にとって経営理念とは

 本紙に「変化を読む経営」を連載している小宮コンサルタンツCEO小宮一慶氏の講演を、10年ほど前に当時の郵便事業会社東京支社での支店長会議の中で聞いたことがある。その講演の中で、就職活動をしている学生に「良い会社の見分ける方法」を伝えているという話がとても印象深かった。
 その方法とは、就職活動の面接の際に、相手からの質問に答えるだけでなく、こちらから次の3つの質問をしてみると、そこが良い会社かそうでないかがわかるというものである。その3つの最初の質問が「御社の経営理念は何ですか」である。面接担当者が「弊社の経営理念は…です」と即答できれば、その会社は間違いなく良い会社と言っていいだろうということである。
 経営理念をどのように扱っているか、経営理念を定めていない会社、経営理念はあるが掲げられているだけの会社、経営理念を社員がきちんと受け止めている会社など、世の中に多くの会社があるが、社員が自分ごととして実践しているとまでになるとそのような会社はなかなかないのではないだろうか。
 経営理念についてよく紹介される企業として、米国の「ジョンソン・エンド・ジョンソン」がある。日本では、綿棒、バンドエイド、リステリンなどで有名だが、この会社でよく知られているのが「我が信条(アワー・クレド)」と呼ばれる企業価値基準を示した企業理念である。
 そこには、顧客、社員、地域社会、株主に対する「全社員が担う4つの責任」を明記しており、全社員が常に携帯し意識して実践していると言われ、1982年に米国で発生したタイレノール毒物混入事件の対応などはその企業理念が企業のトップから全社員に浸透していることを示した事例としていまだに様々な機会に紹介されている。
 国内でよく紹介される事例として、稲盛和夫氏が創業した京セラの経営理念がある。京セラの経営理念は「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」であるが、それを実践していく行動指針として「京セラフィロソフィ」という信条があり、それをまとめた手帳を全社員が携行しているという。
 一昨年夏の営業自粛から一年を経て、昨年10月から業務運営を再開した日本郵便であるが、新たな年にどのような展開が見られるだろうか。
 本紙新年号のインタビューで日本郵政株式会社の増田寛也社長は「経営理念に立ち返ろう」として次のように述べている。
 組織自らが招いたことで不振に陥った際に、必要なことは原点に返ることです。改めて経営理念を見つめ、「何のために会社は存在するのか」「何のために仕事をするのか」に立ち返り、自らの行動が反していないかを都度確認することです。
 インタビューの際、増田社長は自身の内ポケットから「経営理念ハンドブック」を取り出し、日本郵政グループの全社員がこの冊子を携行し、常に自分たちの会社の存在意義、会社の目的を意識してほしいと話をされていた。
 40万人を超える日本郵政グループの全社員が、この経営理念を意識して実践していけば、信頼回復はそれほど困難な道のりではないだろうし、さらに大きく発展していくことも決して難しいことではないだろう。新しい年の確実な実践を期待したい。
 さて、冒頭の小宮一慶氏の3つの質問の残りの2つだが、2つ目は「御社の主な取引企業はどちらですか」であるが、これに対して企業名に敬称の「様」をつけて答えるかどうか、そして3つ目は「あなたは毎日出社する際にワクワクしていますか」というもの。
 入社希望の学生からこの3つの質問をされて、企業の面接担当の方はどのように答えるだろうか。


(多摩の翡翠)

2021年1月4日 第7073号

今週はお休みです

今週はお休みです

2020年12月21日 第7071・7072合併号

流行語で見る令和2年

 毎年恒例となっている「2020ユーキャン新語・流行語大賞」(現代用語の基礎知識選が)が12月1日に発表され、年間大賞には「3密」が選ばれた。
 「3密」は、新型コロナウイルス感染拡大につながるとされる「密集」「密接」「密閉」を表しており、東京都の小池百合子知事が感染を避けるために取るべき行動として、会見でよく口にしていた言葉だ。
 オンラインで表彰式に参加した小池知事は「3密をさらに確認していただきながら、協力をお願いしたい」とコメントしている。
 他に選ばれたトップテンの新語・流行語は「愛の不時着」「あつ森(あつまれどうぶつの森)」「アベノマスク」「アマビエ」「オンライン○○」「鬼滅の刃」「GoToキャンペーン」「ソロキャンプ」「フワちゃん」。
 「愛の不時着」は日本でも配信された韓国ドラマ。「あつ森」は、任天堂から発売された無人島を舞台にスローライフを楽しめるゲーム。
 「アベノマスク」は、新型コロナウイルス感染症流行を受け、全国で発生しているマスク不足を解消しようと、時の安倍内閣が全世帯へ配布した布製マスクの俗称。
 「アマビエ」は、疫病に際して、自らの姿を描き写した絵を人々に見せよ、と予言し、海に帰って行ったとされる妖怪。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、「疫病退散にご利益がある」とクローズアップされ、広まっていった。
 「オンライン○○」は、新型コロナウイルス感染拡大を受け、密を避ける観点から、研修や会合等で密閉された空間に多人数が集まらずに、インターネットを活用して自宅や勤務先等でシステムを導入して、WEB上で画像と音声でやり取りをするもの。オンライン会議、オンライン研修、オンライン飲み会などが話題となった。
 「鬼滅の刃」は、漫画家・吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)による漫画で、週刊少年ジャンプに連載されたほか、アニメ化・ドラマ化もされ、今まさに大ブームを巻き起こしている。
 「GoToキャンペーン」は、国内の観光等の需要を喚起し、コロナの影響による休業要請でダメージを受けた経済を復興させることを目的とした、政府による経済政策。最近では、旅行による人の移動が感染拡大につながっているという指摘も多い。
 「ソロキャンプ」は、お笑い芸人のヒロシさんが1人でキャンプをしている動画が話題となったことから広まった。「フワちゃん」は、今年最もブレイクしたと言われるユーチューバー芸人。テレビで見ない日はないくらい、引っ張りだことなっている。
 こうして見ると、新型コロナウイルスに関係した言葉が多くなっているのが、今年の流行語の特徴だ。コロナのことばかりの1年だったな、と思ってしまう。
 さて、令和2年を振り返ると、コロナ以外では安倍晋三首相が辞任し、菅義偉新内閣が誕生したこと、アメリカ大統領選挙でバイデン氏が勝利したこと、小惑星探査機「はやぶさ2」が計画通りにカプセルを地球へ帰還させたこと、芸能界ではお笑い第七世代と呼ばれるお笑い芸人たちが台頭してきたこと、それくらいしか思い出せないことが寂しい。
 令和3年は、延期となった東京オリンピック・パラリンピックの開催も予定されている。新型コロナウイルス感染症拡大が早く終息し、新しい生活様式も踏まえながら、すべての国民にとって安心・安全に暮らせる1年となることを願ってやまない。(九夏三伏)

2020年12月14日 第7070号

改正郵便法が全会一致で成立

 土曜休配や送達日数の緩和などを内容とする「郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律」が、11月27日に自由民主党・国民の声、立憲民主・社民、公明党、日本維新の会、国民民主党・新緑風会、日本共産党の各会派の全会一致で成立した。
 改正の背景には、郵便物の減少や人手不足への対応、深夜の区分作業者の労働環境の改善がある。郵便物はピーク時の2001年度の263.1億通に比べ2019年度は163.5億通と減少傾向。一方で、Eコマース市場の拡大などにより、荷物は増加している。郵便局の現場では、必要な社員数が集まらない現状もある。
 改正法の国会提出に当たって武田良太総務大臣は「郵便の役務をなるべく安い料金により、あまねく公平に提供するため、郵便業務管理規程の認可基準のうち郵便物の配達日数及び送達日数に係る基準の緩和並びに配達地により異なる額の料金を定めることができる郵便物の範囲の拡大を行う必要がある」と提案理由を説明した。
 改正の柱は「通常郵便物配達頻度を現行の週6日以上を週5日以上にする(土曜休配)」「送達日数を原則3日以内から4日以内とする」「割引が適用されている郵便区内特別郵便物の範囲を地域区分局に拡大する」などが内容。書留や速達、ゆうパックは土曜・日曜も配達し、原則翌日配達を維持する。選挙運動用はがき、山間地に配達される日刊紙は土曜配達を実施する。
 日本郵便によると、郵便物の土曜日の配達のために出勤している社員は約5万5000人。このうち約4万7000人が他の曜日の業務、あるいは荷物等の業務に再配置可能になると見込む。送達日数の1日繰下げでは、郵便物の仕分業務のために夜間、深夜帯の勤務に配置している約8700人のうち、5600人が昼間帯の業務や他の業務に再配置ができるとする。
 増加傾向にある荷物分野の人員が確保でき、サービス改善にもつなげられる。成長が見込まれる荷物分野への要員シフトによる事業拡大を通じて、経営基盤の強化が期待される。
 郵便事業についても引き続き効率化の努力を続けていくとしているが、要員の一部を人手不足の中で超過勤務、休日出勤などで対応することを余儀なくされている業務への再配置で、超過勤務や休日出勤を減らし、働き方改革を行っていくことの意義も大きい。
 日本郵便は「社員にとっても雇用の確保や賃金の改善に資することになる」との考えを示している。また、土曜日配達や深夜帯の郵便業務からほかの業務にシフト可能となる要員の人件費、関連して削減可能となる物件費等を合わせると約500億円強を見込んでいる。
 改正法の成立に当たっては、将来にわたってユニバーサルサービスが維持できるように政府が務めるべきなどを内容とする附帯決議が採択された。ユニバーサルサービス維持の支援とともに、郵便サービスの水準を維持するため基本料金の見直しの検討も行うとしている。
 さらに、非正規雇用を含めて全ての社員が長時間労働を招くことがないようにすることや同一労働同一賃金の具現化も求めた。このほか、デジタル時代の郵政事業として、ユニバーサルサービスを維持しつつ、多様で柔軟なサービスを展開し、地域社会への貢献を推進することができるように必要な環境整備を行うことも盛り込まれている。
 武田総務大臣は「他の金融機関が撤退した地域など少子高齢化の進む地域社会において、郵便局が生活インフラとして大きな役割を担っている。絶対にユニバーサルサービスは安定的に維持していかなくてはならない。ユニバーサルサービスが確保され、地域との連携が進むよう取り組んでまいりたい」との認識を明らかにしている。
 ユニバーサルサービスのコストをいかに負担するかの議論も深め、国民生活に不可欠な郵政事業、郵便局への政策的な議論を深めてもらいたい。
(和光同塵)

2020年12月7日 第7069号

本を探しに本屋へ行こう

 10月27日からの2週間は読書週間。読書週間が定められたのは終戦まもない1947年(昭和22)年、出版社・取次会社・書店と公共図書館、そして新聞・放送のマスコミ機関も加わり11月17日から第1回『読書週間』が開催され、大変好評だったため翌年の第2回からは10月27日~11月9日(文化の日を中心にした2週間)に定められ開催されている。。
 例年この期間を中心に全国で様々な催しが開催されてきたが、今年はコロナウイルスの影響を受け千代田区神田神保町の古書店街が主催する「東京名物神田古本まつり」をはじめとした古本市が中止を余儀なくされた。神保町の古書店組合では代替えの古本市として、通常から行っているインターネット上の古書販売に加え、老舗古書店の参加により「2020神田古本まつり『バーチャル特選古書即売展』」を開催した。
 本を購入する手段にインターネットが利用されるようになったのは2000年11月にアマゾンが日本語販売サイトを開設したことで本格化したと言われている。調査会社アルメディア(東京・豊島区)によると2019年5月時点の書店数は1万1446店で20年前と比較して半減しているという。
 書籍だけでなく新聞も購読者が減少しているが、インターネットのニュース記事で読めるから宅配契約をする必要がないことが理由だという。確かにインターネットのニュースサイトは数多あり読み放題でもある。しかし、インターネットでは自身の検索ワードやトップニュースから関心のある項目を読むことが中心になり、関心のないニュースや、普段触れない話題を読む機会は減少する。
 こうした人間の傾向とネットメディアの特性の相互作用による現象を「フィルターバブル」というそうだ。アルゴリズムがネット利用者個人の検索履歴やクリック履歴を分析学習することで個々のユーザーにとっては望むと望まざるとにかかわらず見たい情報が優先的に表示され、利用者の観点に合わない情報からは隔離され、自身の考え方や価値観の「バブル(泡)」の中に孤立するという情報環境を示す言葉である。
 インターネットで本を検索していると「あなたがお探しの本に近いものはこちらです」などとメッセージが表示され購入することがあるが、これを繰り返していると自身の価値観の「バブル」の中に閉じこもり、外が見えなくなるということである。価値観には合わないが貴重な本に巡り合う機会がなくなってしまう。一方、実際の本屋で本を選ぶ際には目的の本だけでなく他の本も目にすることになり思わぬ本に出会うこともある。
 10年ほど前だが本屋の新書コーナーで1冊の本が目に入ってきたことがある。その本はまるでかぐや姫が出てきた竹の節のように本棚で1冊だけ光輝いているように見え、その本が私に「あなたのための本だよ」と話しかけているような気がして購入し一気に読んだ。その本の著者が現在本紙で連載を執筆中の前川孝雄氏であり、その後の私の人生を大きく変えた1冊となった。
 コロナ禍でネット上の書籍販売は売り上げが伸びており、さらにリアル店舗が少なくなることが懸念される。稀代の読書家として知られる出口治明氏(立命館アジア太平洋大学学長)は「人、本、旅」が人を成長させると説いている。感染予防に万全を期しながら本との出会いを探して街の本屋へ行ってみてはどうだろう。
(多摩の翡翠)

2020年11月30日 第7068号

時代に合った人材育成を

 今年のプロ野球は当初3月20日にセ・パ同時開幕を予定していたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で延期となった。交流戦やオールスターゲームは中止、ペナントレースは約3か月遅れの6月19日に開幕した。
 開幕直後は無観客で開催され、その後、観客数を大幅に減らし、外野席には入れないなどのコロナ対策を講じて試合が行われた。
 セ・リーグは読売ジャイアンツが2年連続47度目のリーグ優勝、パ・リーグは福岡ソフトバンクホークスが3年ぶり19度目のリーグ優勝を果たした。
 今年に関しては、セ・リーグはクライマックスシリーズが行われずに、ジャイアンツが日本シリーズ出場を決めた。パ・リーグは1位のソフトバンクと2位の千葉ロッテマリーンズの間で行われ、ソフトバンクが2連勝で日本シリーズ進出を決めた。11月25日にソフトバンクが圧倒的な力で4連覇を達成した。
 さて、ジャイアンツもソフトバンクも人気球団であり、資金面でも12球団の中でトップクラスだ。両チームともこれまで、FAや外国人選手獲得に多額の資金を費やしている。特にジャイアンツは一時期、メジャーリーグで名の知れた選手の獲得や、他球団でFA資格を取得した主力選手をどんどん獲得していた。メディアもジャイアンツのことを「金で選手を寄せ集める金満球団」などと揶揄している。
 プロ野球全体では、2005年から育成選手制度が発足。ジャイアンツでもその頃から、選手の育成の本格的に力を入れており、これまでに育成から這い上がり、1軍で活躍した代表的な3選手がいる。
 山口鉄也投手は、2007年5月に育成選手として初勝利を挙げたのを機に、セットアッパーとして定着し、新人王も獲得したほか、育成出身で初となる最優秀中継ぎ投手のタイトル獲得、2009年のWBC選出など活躍し、1億円プレーヤーにまで上り詰めた。
 松本哲也選手は2009年にセンターのレギュラーポジションを獲得し、育成出身の野手として初となる新人王を受賞。俊足と攻守を武器にチーム日本一の原動力となった。
 増田大輝選手は、一度は野球から離れるものの、高校時代のコーチの薦めでトライアウトを受け、独立リーグの徳島インディゴソックスに入団。そこでの活躍が目にとまり、2015年の育成ドラフトでジャイアンツから1巡目で指名を受けた。
その後、支配下選手登録を経て、2019年に1軍に昇格。ここぞという場面での代走など、武器である俊足に加え、多くのポジションをこなせるユーティリティープレーヤーとして、活躍し続けている。
 他球団等から獲得した選手が活躍してくれることも嬉しいが、やはり生え抜きの選手が一生懸命に練習を重ねて成長し、活躍してくれることはまた特別な思いがある。
 一般企業においても、入社した社員が紆余曲折を経ながら、様々な経験を積み、部署を、組織を支えていく、リーダーとして周りを引っ張っていく存在になってくれたら、これほど心強いことは無いと思う。
 人材育成はいつの時代でも大きなテーマとなっているが、多様性が叫ばれる昨今、時代に、そして、その人に合った人材育成がこれからますます求められてくるだろう。
 前述の3選手とも、与えられた、あるいは巡ってきたチャンスをしっかりと自分のものにしている点で共通している。本人の努力ももちろんさることながら、コーチや指導者の存在もあったのだろう。
 飛躍に至るターニングポイント、そこに自らが、周りが気付けるかどうかもまた、一つのポイントとなるのかもしれない。
(九夏三伏)

2020年11月23日 第7067号

渋沢栄一の「道徳経済合一」

 真の成功とは「道理に欠けず、正義に外れず、国家社会を利益するとともに、自己も富貴に至る」ものでなければならない。「近代日本経済の父」「日本資本主義の父」と言われる渋沢栄一が改めて脚光を浴びている。今年は生誕180周年となる。昨年4月には、新一万円札の肖像に決まり、2024(令和6)年の発行が予定されている。来年のNHK大河ドラマ「晴天を衝け」の主人公でもある。
 紙幣の肖像では、渋沢が初代の紙幣頭(後の印刷局長)だったこともあり、実は過去に何度も候補にあがったという。1963(昭和38)年に発行された千円札では、最終選考まで残った。伊藤博文が採用されたのはヒゲがあったから。当時は偽造を防ぐためにヒゲがある人物が用いられた。
 渋沢は1840(天保11)年2月13日(新暦3月16日)、現在の埼玉県深谷市の農家に生まれ、1931(昭和6年)11月11日に92歳で亡くなった。命日の11日、深谷市内の小中学校では、渋沢の好物だった郷土料理「煮ぼうとう」が給食に出された。JR深谷駅北口の「青淵(せいえん)広場」にある銅像前では献花式が行われ、地元出身の偉人の業績をしのんだ。
 明治政府に出仕、退官後は近代日本のあらゆる産業を興したと言ってよいほどの活躍をした。半面、単なる利益を目指すだけの実業家ではない。文化活動の支援、障がい者や貧しい子どもたちの施設を助け、女子教育や国際交流にも力を尽くした。
 渋沢の著書「論語と算盤」が有名だが、人生の模範としたのが論語。いつもポケットにしのばせていたという。論語を道徳、算盤を経済と普遍化した概念に置き換え、「道徳経済合一」を説き続けた。道徳と経済の一致で、企業倫理の徹底を求めた。企業経営自体も社会事業として捉え、利益を社会に還元するという信念。道徳観や倫理観の欠如から不祥事を起こしている企業が多い昨今、改めて注目される。
 生涯関係した企業が500とされるが、それ以上に600の福祉・教育・学術などの社会公共事業にも関わり続ける。近代化の中で取り残された施設の構築などを援助する。日本の社会福祉事業の創始者との一面があったことは注目されよう。
 社会福祉事業への端緒となったのが東京養育院の改革。東京都板橋区に東京都健康長寿センターがあり、お年寄りの健康を支えているが、そこには以前、職を失った旧士族、貧しい人を収容するだけの施設があった。改革に取り組み、手に技術を持たせて社会復帰を支援、子どもには教育の機会を与えた。
 「困った人々を助けるのは社会を治めるのに必要な義務。社会が手を差しのべないと経済が発展しない。それは本当の国家ではない。貧民が多くなるのは社会的な経済合理性に合わない」と、亡くなるまで院長を務め、貧しい人々の救済に奔走した。保育所の構想も持っていたという。終生、福祉事業活動を続けた。新自由主義によって格差が拡大している現在を、渋沢はどう見るのだろうか。
 「救護法」の制定にも尽力、1929(昭和4)年に実現する。貧困の救護を国や自治体に義務づけ、現在の「生活保護法」につながるものだ。しかし、政府の緊縮財政政策のため実施は延期された。91歳の渋沢は病をおして内務大臣を訪ね、「渋沢の最後のお願いです。救護法を実施してください」と頼んだ。実施を見ることなく31年に永眠したが、その熱意は翌32年に実現した。
 「仁義道徳と生産殖利とは元来ともに進むべきものであります」。長期的視座で日本の近代社会を見据えた事績や思想は、決して古びてはいない。企業の果たすべき責任として、視点の先には常に公益の追求があった。資本主義に内在する貧富の拡大をいかに調整していくか、社会福祉政策こそ最大の利益追求という観点からも、現在のセーフティネットの在り方を考えさせられる。
 また「郵便の父」前島密とも交流があった。1869(明治2)年の春、渋沢が静岡で企てた商法会所へ前島が訪ね、これから先の世について意見交換をしたという。その後、共に明治政府に出仕、親交を深めた。渋沢は「独創的な考えを持ち、応用の才を発揮し、新機軸の種々の方法を出す人物」と、前島に大いに敬服している。
 こうした事績を知る「渋沢栄一伝~道理に欠けず、正義に外れず」が11月1日に発刊された(ミネルヴァ書房、2400円+税)=写真=。渋沢資料館の井上潤館長が、多面的な魅力を語る。東京都北区にある渋沢資料館は、かつての渋沢邸跡地に建つ。事績に関する資料を収蔵・展示している。
 また、東京支社では北区が広告主となった広告付年賀はがきとフレーム切手「近代資本主義の父 渋沢栄一」を発売している。多くの人に渋沢の事績を知ってもらうことは意義深い。
(麦秀の嘆)

2020年11月16日 第7066号

肥満の男性が33%に、増加傾向

 成人男性の肥満が一段と進んでいる。厚生労働省が2019(令和元)年の「国民健康・栄養調査」の結果を10月27日に公表した。健康増進法に基づき、国民の身体や栄養素摂取量、生活習慣を把握することを目的に毎年実施している。19年は4465世帯を無作為に抽出し、2836世帯から回答を得た。
 BMI(Body Mass Index)の25以上が肥満とされる。BMIは体重と身長から算出する肥満度を表す体格指数。肥満の割合は男性33.0%、女性22.3%。09年からの10年間では、男性が13年まで1.9ポイント減だが、その後は4.4ポイントも増加した。女性は13年まで0.5ポイント増、その後は2.0%ポイント増と有意な変化は見られなかったという。男性のみがなぜ増えたのか、厚生労働省は今後の分析が必要としている。
 年代別の肥満の割合は、男性の40~49歳が39.7%、50~59歳が39.2%、60~69歳が35.4%と高い。女性は60~69歳が28.1%、70歳以上が26.4%、50~59歳が20.7%。一方で女性の20歳代の20.7%をやせている人が占めるのも気になる。
 肥満の人に食や運動の習慣を改善する意思の有無も質問した。食習慣では「関心はあるが改善するつもりはない」が最も多く、男性は25.0%、女性は25.1%。「改善することに関心がない」と合わせると男性39.3%、女性33.1%を占める。運動習慣でも「関心はあるが改善するつもりがない」が最多で、男性24.4%、女性27.7%。「関心がない」との合計では男性34.9%、女性も36.3%。
 肥満でない人を含めて1か月~半年以内に食や運動習慣を改善する意向がある人に、妨げとなっていることを聞くと、「仕事(家事、育児)などで忙しくて時間がない」が最多だった。「面倒くさい」「外食が多い」「自分を含めて家で用意する者がいない」「経済的に余裕がない」なども理由となっている。
 生活習慣病のリスクを高める飲酒をしている人の割合は、男性で14.9%、女性が9.1%。リスクを高める飲酒とは1日当たりの純アルコール摂取量が、男性で40グラム以上、女性で20グラム以上の場合。10年からの推移では、男性はほぼ横ばいだが、女性は増加している。習慣的に喫煙している人は男性27.1%、女性7.6%。この10年間でいずれも減少した。
 定期健診でメタボリックシンドロームと指摘されても、なかなか生活習慣を変えられず、また禁煙に何度も挑戦した経験のある人も多いだろう。運動不足や食べ過ぎなどで内臓脂肪が増えると動脈硬化が進行しやすい。日本人の死因で多い急性心筋梗塞や脳卒中などを発症するリスクが高まる。新型コロナウイルス感染症の影響で家飲みも増えたと言われる昨今、生活習慣を見直す良い機会にしたい。
 「国民健康・栄養調査」では災害時に備えて非常用食料の用意状況も聞いた。用意している世帯は53.8%だが、地域ブロック別に見ると差がある。最も高いのは関東Ⅰ(埼玉、千葉、東京、神奈川)で72.3%。次いで東海(岐阜、愛知、三重、静岡)が60.6%、関東Ⅱ(茨城、栃木、群馬、山梨、長野)が57.0%。最も低いのは南九州(熊本、宮崎、鹿児島、沖縄)で33.1%。北陸(新潟、富山、石川、福井)が34.0%、近畿Ⅱ(奈良、和歌山、滋賀)が36.5%となっている。首都圏直下型や東南海地震が想定されている地域は関心が高い。
 非常用食料を備蓄している世帯のうち、3日以上が69.9%。種類は主食(レトルトご飯、乾燥させた加工米、乾パンなど)が80.0%、副食(肉や魚などの缶詰、カレーやシチューなどのレトルト食品)が79.0%、飲料(水やお茶など)が90.3%である。
 なお、地域のつながりに関する状況についても調査しているが、「お互いに助け合っている」と思うのは50.1%、「地域の人々のつながりは強い」は40.2%。どちらも年代が高くなるほど思うと回答した割合が高い。社会活動への参加は「町内会や地域行事など」が男性42.8%、女性43.4%、「ボランティア活動」「スポーツ関係のグループ活動」「趣味関係のグループ活動」などは、いずれも2割程度だった。
(和光同塵)

2020年11月9日 第7065号

生活の充実と運動・スポーツ

 前回の東京オリンピックが開催されたのは1964(昭和39)年、当時と比べて2019(令和元)年の10~19歳の青少年の体格は、男女ともに身長、体重ともに大きく向上している一方、握力は14歳まではほとんど差が見られないものの15歳以上は下回っているという調査結果が明らかになった。
 スポーツ庁が10月18日に「令和元年度体力・運動能力調査」の概要を公表した。64年から毎年実施し、2019年は6~79歳の約6万3000人を調査。来年に延期となっているが、再び東京オリンピック・パラリンピックが開催されることから前回と比較したという。
 50メートル走、持久走、ボール投げも比較。50メートル走はいずれも男子は17歳、女子は14~15歳でピークに達し、加齢とともにゆるやかに低下するが、記録は現在の方が良かった。持久走は大きな差はないが、ボール投げは前回が上回った。身長や体重といった体格は向上しているが握力が低下、ボールを投げるという経験も少なく、体の動かし方が身についていないのではないかと指摘される。
 また、前回の開催を経験した世代は、その後も体力や運動能力の高い者が毎年増加しているという。経験していない世代、特に40代前半の女性は低い値のまま推移している。経験した世代、していない世代ともに体力・運動能力の評価が高いのは、当然のことながら週1回以上の運動を行っている。
 小学生(6~11歳)でも入学前の幼児期に外遊びをよくしていた子どもは、日常的に運動をして、体力も高いという結果だ。幼児期に外で身体を動かして遊ぶ習慣を身につけることが、運動習慣の基礎を培い、体力向上の一要因になっていると考えられる。幼児期の外遊びは重要。
 青少年期の子ども(15と18歳)についても、日常的に運動・スポーツを実施している者の多くが「達成意欲(何でも最後までやりとげたいと思う)」が高い。達成意欲と運動習慣・体力に因果関係が見られるという。
 成人(20~79歳)の運動とストレス解消効果では「大いに感じる」とする人が多い。日常的な運動・スポーツのストレス解消効果を高く評価している。効果を肯定的に捉えている人は、年代や男女を問わず90~97%にも達した。ただ、年代によって意識と行動に差がある。
 週1回以上の割合は、男性の30~54歳、女性の20~49歳で50%を下回る。運動の効果に対する意識が実際の行動に結びついていない。仕事や子育てで忙しく、運動の時間がなかなか持てないのかも知れない。働き方の見直しや運動のできる環境整備が求められるだろう。
 生活の充実にも運動は深く関わる。比較的運動している人では、充実していると感じる割合が高い。週1回以上運動・スポーツをしている人は、毎日の生活が充実していると回答した割合が、男女ともに全ての年代で高くなっている。
 生活の充実では、高齢者(65~79歳)について日常生活の基本となる歩行との関連について分析。男女とも生活が充実している人は6分間で歩行できる距離が長い。男性で①充実は619メートル②まあ充実は611メートル③あまり、全く充実していないは599メートル。女性では①573メートル②577メートル③566メートルとの結果だった。
 運動・スポーツの日常的な実施は、長い時間を歩くことに代表されるように全身の持久力に影響を及ぼす。人生100年時代と言われるが、いかに「健康寿命」を伸ばすかが重要。改めて運動・スポーツの効果を考えてみたい。
(和光同塵)

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