コラム「春秋一話」

 年/月

2023年12月04日 第7225号

あせらず、あきらめずに信じること

 今年も既に12月。もういくつ寝るとお正月…。いや、その前にクリスマスがある。いずれにしても、冬になったということだが、今年は9月、10月も暑い日が続き、いったい秋はどこに行ってしまったのだろうと感じている人が多いのではないか。
 秋と言えば、「行楽の」とか「食欲の」「読書の」など「〇〇の秋」と形容されるが、私にとっての今年の秋は「スポーツの秋」だった。と言っても、自分がやるのではなく、もっぱら〝観戦〟するほうなのだが。
 特に力が入ってしまったのが、野球では、阪神タイガースの18年ぶりのセ・リーグの〝アレ〟と38年ぶりの日本一。11月19日に決勝戦が行われたアジアプロ野球チャンピオンシップで日本が優勝したこと。そして、海の向こうで、MBLロスアンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が、日本人初のホームラン王と2回目のシーズンMVPを満票で獲得したことに尽きるだろう。
 また、野球以外では、7人制ラグビーで男子チーム、女子チームともに2024年パリ・オリンピックのアジア予選で優勝し、出場権を獲得したことと、11月26日に宮城県で開催された「クイーンズ駅伝(第43回全日本実業団対抗女子駅伝競走大会)」で日本郵政グループ女子陸上部が準優勝したことが記憶に新しい。
 ここに挙げたものは、野球、ラグビー、陸上競技といずれもチーム競技である以外の関連性がなく、脈絡が無いように感じられるかもしれない。確かに競技そのものの関連性はないが、私にとっては共通点があるものだ。
 阪神タイガースは、オリックスバファローズとの日本シリーズで3勝2敗と王手をかけたが3敗目を喫し逆王手。そして迎えた最終戦では、あせらずに自分たちのペースで試合を進めて日本一を勝ち取り、ファンの38年間のあきらめない(あきらめの悪い?)声援に応えた。
 アジアチャンピオンシップでは、韓国との決勝戦が延長戦となり、1点先行され後がなくなった。あせりがでそうなところであったが、練習を積んだいつものプレーを確実に決めて同点、そして逆転で優勝した。
 大谷選手は8月下旬に右肘靭帯損傷が判明したあとも、打者としては出場を継続し、ホームラン王を獲得した。
 7人制ラグビーは15人制と同じ広さのグラウンドで前半と後半7分ずつで行われるスピーディーな展開が魅力な競技。女子は中国と対戦。先制されるも逆転し、後半へ。終了間際まで攻め込む中国をしのいで、優勝した。
 香港との決勝戦に臨んだ男子は、前半、リードを許す苦しい展開だっが、後半、同点に追いつき、試合終了のホーンが響いた後のラストワンプレーで、逆転のトライを決めて優勝。
 クイーンズ駅伝は、1区で25チーム中12位とやや出遅れたが2区で6位、3区では2位にジャンプアップ。4区5区で少し順位を落としたが、最終6区で逆転、準優勝した。
 野球、ラグビー、陸上。競技は違えど、いずれも根っこにあるものは、自分が練習で培った力とチームメイトを信じて、あせらずに行動したこと。そして、自分の立てた目標をあきらめないということだ。
 これは、「スポーツ」だけに言えることではない。仕事にも当てはまるだろうし、いろいろな場面で下す判断についても言えることだと思う。また、「練習」だけではなく、勉強してきたことはもちろん、「我慢」であったりすることもあるだろう。
 法、倫理・道徳に触れるものや組織の決め事に反するものは論外だが、それ以外については、あせらず、あきらめずに信じることを大事にしたいと思う。 (亜宇院翔)

2023年11月20日 第7223・7224合併号

デジタル・アナログが融合した年賀状を

 2024(令和6)年用年賀はがきが11月1日から全国で一斉に販売開始となった。今年の当初発行枚数は14億4000万枚と、前年比約12%減で、2003(平成15)年の約44億6000万枚をピークに減少傾向が続いている。SNSが普及し、スマホが主流となっている世の中で、年賀状を書く人が減っていることは致し方ないのかな、と思う。
 減少傾向に少しでも歯止めをかけるためにも、子どもたちに年賀状の存在を教え、その意義や楽しさを伝え、実際に書いてもらうことも大切だと思う。
 子どもの中でも特に幼児の存在だ。日本郵便は「お手紙ごっこ遊び」として取り組んでいる。これは、手紙を書く、切手風のシールを貼って模擬ポストに投函する、帽子をかぶり手紙バッグを身に付けた郵便屋さんがポストから手紙を取り出す、消印風スタンプを押す、手紙をクラスごとに仕分ける、手紙を届ける、配達完了後に配達数などを先生に報告するといった、遊びを通じて郵便屋さんの仕事、大人の世界、社会のルールの片鱗を知ることができる、というものだ。この経験と共に、文字に親しみ、読み書きを覚えていくことは、小学校に上がってからも大いに役立つと思う。
 日本郵便が主催する郵便教育セミナーが、今年もオンラインやハイブリッド形式で開催されている。その中で、画像生成AIを使って、画像とQRコードをミックスし、QRコードだと分かればスマホで読み取れるという謎解き要素を入れた年賀状を作成して送っているという実践事例があった。これはなかなか面白いなと思った。
 純粋に年賀状にQRコードを印刷するだけでも、受け取った相手がこれは何だろうと、スマホをかざしてみる、それだけでも面白いと思うが、QRコードはカラーのものもあれば、中心部等にイラストや文字を組み込んだもの、さらには一見するとそれとは分からないくらいイラスト化したQRコードもある。
 あるいは、おにぎりの海苔の部分をQRコードにするなど、QRコードそのものをイラストの一部としたものや、QRコード全体がハートや果物の形をしたものもある。
 これらを印刷した年賀状を送れば、受け取った相手も正月早々楽しくなると思う。「わざわざ年賀状でなくても、普通にQRコードをメールやLINEで送れば済む」なんて言う人もいるだろうが、デジタルとアナログが融合した形の、新たな年賀状のスタイルとして、これはお勧めしたい。
 QRコードといえば、各地で郵便局と行政等との連携施策の中で、郵便ポストにQRコードを貼り付け、スマホをかざすと防災情報や観光地紹介、行政の情報などが見られる、という取り組みが行われている。これは地元の人だけでなく観光客にも役に立ち、コンテンツも充実させることができるなど、良い取り組みだと思う。
 最近では書籍や新聞をはじめ、いろいろなところでQRコードが使われており、目にする機会も多い。
 年賀状は年の最初に届く贈り物。相手を思いながら動画を撮って、年賀状にQRコードを印刷して送る、相手が楽しくなるような動画を送る、あるいは好きな、届けたいメロディーを送る、ただでさえ忙しい年の瀬、手間もかかり面倒かもしれない。
 だが、「面倒くさい」「手間がかかる」からの脱却は、古き良き年賀状文化を受け継ぎ、未来へと伝えていくために必要なことだと思う。
 日本郵便のサイトには、さまざまなコンテンツも用意されている。それらもうまく活用しながら、受け取った相手をワクワクさせるような年賀状づくりを、いろいろな人にぜひ勧めてほしい。    (九夏三伏)

2023年11月13日 第7222号

求められる経営形態の見直し

 2007年の郵政民営化から17年目に入った。郵政民営化委員会は、民営化の進捗状況を総合的に検証する審議の参考とするため、これまでの民営化への評価、今後の期待などについて意見を募集した。3年ごとに行われるが、今回は個人13件、団体12件の25件が寄せられ、内容を10月12日に公表した。
 個人では「民営化により郵便局のサービス低下が顕著」「民営化は誤り。インフラの民営化は国の破滅を招く。国営化・公営化を進めるべき」「郵便サービスが悪化。民営化は間違いであった」「民営化されて良くなったことは一つも思いつかない。再国有化を望む」といった意見が多くを占めた。
 「民営化で外資系へ利益が流れる。日本人の財産を守る努力を」「郵便サービスの簡素化・明確化には寄与」「いたずらに国外へ進出するのでなく、国内の大手と連携し配送ドライバー問題の解決を」との意見もあった。
 団体では「民営化へ向けた取組みが引き続き進展していくものと期待」(在日米国商工会議所)、「金融2社の全株式売却への具体的な説明」(農林中央金庫、全国銀行協会、第二地方銀行協会)、「新規業務は市場に与える影響を慎重に確認を」(生命保険協会)、「完全民営化の道筋の実行」(全国信用組合中央協会、全国生命保険労働組合連合会、全国信用金庫協会、全国地方銀行協会)などの意見があった。
 一方、全国郵便局長会は「民営化によるメリットを実感したことはない。利用者に不便・負担をかけている」「M&Aは大きな損失を計上。要員不足や処遇改善、耐震性能が不足する小規模郵便局の局舎改善の遅れなどに表出」などをあげている。
 そして「経営形態の見直し」「郵便局ネットワークを維持するため、日本郵政または日本郵便による一定数の金融2社の株式保有など一体経営を担保する仕組みの検討」「ユニバーサルサービスは国の合理的な負担を」「郵便局の利活用に政府の支援」などを求めた。
 日本郵政グループ労働組合は「絶対的な労働力不足」「郵便料金の見直し」「経営の自主性を高める」などを指摘した。実際に現場で業務を担う局長や社員の意見は、現状に対する実感だろう。日本郵政グループの成長戦略、将来展望が見えないもどかしさを感じるとの声も多い。業務推進や地域活動に献身的に取り組む郵便局長や社員の努力は大きいが、閉塞感に悩むこともあると思われる。
 郵便局長を長く務めた経験のある柘植芳文参議院議員は、民営化当時と社会構造も大きく変化していると指摘し、「少子高齢化、過疎化、都市部と地方の格差拡大、遅れているデジタル化など課題は山積。現在の社会構造では誰一人として『郵便局をなくせ』とは言わないと思う。当時も世論を総合すれば『民営化してもよい』という意見は少なかった」と振り返る。
 日本の経済成長は厳しい状況が続く。発達した資本主義諸国で実質GDPのゼロ成長が長く続いているのは日本だけだ。バブル崩壊からの失われた10年が20年となり、やがて30年にもなろうかとする。事の始まりは、2001年に発足した小泉内閣が主導した、いわゆる小泉構造改革にあったと指摘する経済学者がいる。
 2007年の郵政民営化で頂点を迎えたが「改革なくして成長なし」は実際に起こった事実と異なり「改革(と言えるか疑問だが)あって成長なし」だった。「官から民へ」という風が吹き荒れ、誤解に基づいた「官の無駄を無くせ」と〝本丸〟として強行されたが、民営化の納得できる説明は皆無、格差が拡大した。
 改めて、民営化の総合的な検証が求められる。郵政事業を熟知する柘植議員は「今のように複雑怪奇な制度、仕組みでは、事業の発展性は見えない。現在の制度は見直す方が良い」と強調する。方向性としては、日本郵政と日本郵便が一体となり、新たな日本郵政の傘下にゆうちょ銀行、かんぽ生命を置く3社体制が想定される。
 改正民営化法の成立の前、2010年に郵政改革法案がまとめられているが、3社体制による日本郵政の株式は財務省が3分の1超、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式は3分の1超を日本郵政が保有すると設計された経緯もある。
 自民党の「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(郵活連)でも、見直しが必要との声は多いという。見直しについて、柘植議員は「遅れれば遅れるほど傷口が大きくなる。このような状況が続くと、行政との連携や他の郵便局を活用した施策にも支障が出る。過疎地や弱い人たちに寄り添う機関がなくなってしまう。早く行わなくてはいけない」と危機感を持つ。
 民営化の基本的な制度に課題があるとすれば、業務推進に及ぼす影響は大きい。日本郵政グループの成長戦略、何にも増して地域の郵便局が生活に必要な基礎的サービスを提供し続けるために、現状の検証を含めて、改めて一体経営の強化、三事業一体、ユニバーサルサービスコストの在り方などについての議論が求められる。 (和光同塵)

2023年11月06日 第7221号

「餅は餅屋」と「左官の垣根」

 2022年9月、日本郵政グループは中期経営計画に掲げる、「共創プラットフォーム」の一環として、グループを退職した元社員の活躍を期待したアルムナイネットワークを構築した。人的リソースをより充実させるための人事改革の取り組みの一つとして、グループをよく知り、社外で新しい経験・知見を培った人(退職者)に再び活躍してもらおうというものだ。
 また、同年11月には組織風土改革の取り組みとして「グループ内外の人事交流促進」を掲げ、多様で柔軟な働き方の進展とともに、副業への関心も高まっているとし、「戦略的副業」のひとつとして、グループ外の副業人材を受け入れるために公募を行った。
 その後の情報はよくわからない(見落としているだけかもしれない)が、耳にした時は、前者は「餅は餅屋(もちはもちや)」を連想させ、後者は「左官の垣根(さかんのかきね)」を思い起こさせたものだ。
 「餅は」は、餅は餅屋が作ったものが一番美味しい。つまり、「どんなものでもその分野の専門家が最も優秀である」という意味のことわざ。江戸時代に「貸餅屋」という、希望した日に道具を持って餅をつきに来てくれる職業があり、正月に忙しくて餅を準備できない人々が、貸餅屋に餅つきを頼んでいて、貸餅屋がついた餅が美味しかったことから転じたという。商売にはいろいろな専門があるのだから、専門家に任せるのが良いということだ。
 一方の「左官の」は、壁塗りを専門とする左官職人であっても、垣根を作ることまでは上手くできないことから、「ある専門家がその専門外のことをやっても、素人と同じで、うまくいかない」という意味だという。ちなみに「左〝官〟」とは、古代日本で宮廷の建築・土木・修理を一手にひきうけた木工寮(もくりょう)の属(官位の一つ)として付いた名だという。
 確かに、当時は経験に勝る知識・技能はなかったのだろうから、うなずけるものだが、先人の考えややり方だけを「良し」としているならば問題だ。様々な考えを広く柔軟に受け入れることを避けていては、発展も進歩もない。ましてや、現代のように情報が溢れ、道具が進歩している時代では言わずもがなである。なので、新しいことに果敢に挑むことは必然のことだ。
 しかし、「忘れていけないことがあること」を肝に銘じておかなければ、まさに「絵に描いた餅」で終わってしまう。その忘れていけないことはたくさんあるが、いくつか思いつくままに挙げてみる。
 まずは「お客さま(利用者)があってのものである」こと。いくら素晴らしいアイデアでも、利用する人にとって有用性があるものでなくてはいけない。多少の煩瑣やデメリットがあったとしても、最終的に良いものとして受け入れられなくてはいけない。
 次に「郵便局での負担を考慮すること」。新しいことをするためには、新しい知識や技能が必要になる。いくら良いものでも、その業務に携わる者にとって、負荷だけが増えると「やらされ感」でうまくいかなくなる。一つ増えるなら、別の一つを減らすことだ。
 「全国全局で必要か検討すること」。郵政省時代、ほとんどの無集配特定郵便局では外国小包は受付けておらず、近隣の普通郵便局を案内されたと記憶している。それでも、利用者には理解は得られていた(と思う)。時代が違うと言われればそれまでだが、サービス(商品)によっては一律で導入しないことがあっていい。
 他にも、収益面などいろいろなことが思い浮かぶが、継続性と結果に拘った取り組みとして成功を祈念する。 (無手勝流)

2023年10月23日 第7219・7220合併号

熱中症対策のさらなる広がりを

 記録的な猛暑となった今年の夏。今年の6~8月にかけて、全国の平均気温が平年比+1.76度と、これまで最も高かった2010年の+1.08度を大きく上回り、気象庁の統計開始以降最高となった。
 ラニーニャ現象の影響が残ったことで太平洋高気圧の張り出しが強かったこと、エルニーニョ現象、地球温暖化の影響、偏西風の蛇行など、いくつもの要因が重なって猛暑になったと思われる。
 さて、最近よく、千葉県の勝浦市が避暑地として報じられている。これまで100年以上、最高気温が35度を越える猛暑日を観測したことがなく、これまでの最高気温は1924年8月23日に記録した34.9度となっている。
 勝浦は海に面しており、涼しい風が吹いてくる。地形の影響もあり、海上で冷やされた空気が陸地を吹き抜けることで、涼しく感じられる。
 避暑地と呼ばれる場所はいくつもあるが、例えば長野県の軽井沢では最高気温の記録こそ1946年7月16日に記録した34.2度だが、今年の真夏日は7日だけとなっている。
 群馬県の草津は最高気温が30度を超えることが珍しく、これまでの最高気温は2022年6月29日に記録した32.0度となっている。今年は7月25日と29日に30.2度を観測したが、それ以外は30度に届いていない。
 豪雪地帯として知られる青森県の酸ケ湯では、観測史上唯一の真夏日となる30.8度を1978年8月3日に記録していたが、今年8月10日に2位となる30.7度を記録した。
 そうした中、観測史上一度も真夏日を記録していない地点が2か所ある。北海道のえりも岬と、福島県の鷲倉だ。
 えりも岬は、これまでの最高気温が2020年8月29日に記録した26.7度だったが、今年8月27日に28.5度を観測して記録を塗り替えた。ちなみに、えりも岬の最高気温ランキングの1~7位までと9、10位がすべて今年8月に観測された。
 鷲倉は、これまでの最高気温が2021年8月6日に記録した29.4度(同日16時以降~11日15時台まで6日に渡って欠測時間帯があるが、6日は16時以降に30度を超えることは考えにくく、翌日~11日15時台までは近隣の最高気温は全て6日のそれを下回っていることなどから、鷲倉が30度を超えたとは考えにくい)となっている。今年8月31日に2位となる29.3度を記録したほか、28度台を今夏で4回観測している。
 さて、本紙でも報じたが、宮城県名取市では、環境省・気象庁から熱中症警戒アラートが発表された際に、危険な暑さから身を守り、誰でも自由に休憩が取れるよう、冷房設備を有する市内の公共施設等を「クーリングシェルター」に指定して、一般に開放する取組みを実施しており、この取組みに名取市内の9郵便局が参加した。
 その店や施設に、涼むためだけにはなかなか入りづらいと感じる人もいるかもしれない中で、これは良い取組みだと思った。実施形態や名称等はさまざまだが、他にもすでに取り組んでいるところも多くあり、各地にも広がりを見せている。
 名取市内の郵便局の場合、包括連携協定の一環としての思いを込めた取組みとなるが、来年以降も猛暑に見舞われる可能性は大いにあるので、さらに広がっていってほしいと思う。
 また、臨時出張所的なものを局前など周りの迷惑にならない範囲で設置し、椅子をいくつか並べ、扇風機やうちわなどを置いて「涼み処」みたいにするのもいいかもしれない。その際、使わなくなった家具類を解体して再利用し、例えば長椅子を作るなど工夫を凝らせば、低コストで環境にも優しい取組みとなると思う。 (九夏三伏)

2023年10月16日 第7218号

ワールドカップで思い出すこと

 今月9日、日本はアルゼンチンに敗れ、予選リーグでの敗退が決まった。そう、ラグビーW杯フランス大会の話しだ。
 8月にはバスケットボール、9月にバレーボールの大会が行われたが、W杯と聞いて直ぐにサッカーが頭に浮かぶ人は少なくないはずだ。1930年にウルグアイで第1回が開催されてから、間もなく100年と歴史があり、日本でW杯という言葉を頻繁に耳にするようになったのは、Jリーグの発足がきっかけだったように思う。
 日本でも韓国との共催という形で2002年に開催され、初めて予選リーグを突破し、大いに盛り上がったが、記憶に残っている大会といえば、2018年のロシア大会だ。日本はベスト16止まりと今一歩、残念な結果に終わったが、その戦いぶりは印象深いものであった。
 日本は、予選リーグでコロンビア、セネガル、ポーランドとすべてが格上のグループHに組み込まれた。初戦はコロンビア。4年前のブラジル大会で対戦し、1―4と大敗した相手だが、試合開始早々に相手選手が退場となるなど、波乱含みの展開。〝ハンパない〟大迫のゴールがあり、2―1でW杯史上初めて、アジアが南米を破り「サランスクの奇跡」と呼ばれた。
 続く第2戦はセネガルと対戦。リードされては追いつくという展開で2―2で引き分け。勝ち点4でセネガルと並びグループ首位に立った。
 そして迎えた6月28日。相手は2連敗で既に予選敗退が確定していたポーランド。日本は引き分け以上で決勝トーナメント進出が決まる一戦だが、先制されてしまう。同時刻には他会場でセネガル×コロンビア戦が行われており、コロンビアが先制、両会場ともこのままのスコアで終了すれば、日本が決勝トーナメントに進出できる。
 すると、西野監督は「攻めないこと」を指示し、1点負けている日本がボールを廻しながら時間を消費し、観客席からブーイングを浴び試合が終了した。
 結果、グループHはコロンビアが2勝1敗で1位。日本とセネガルが1勝1敗1分け、得失点差=0、総得点数=4、直接対決の結果=引き分けで並んだが、警告や退場数によるフェアプレーポイントで日本が2ポイント優位になり(日本4/セネガル6)、日本が2位で決勝トーナメントに進出した。フェアプレーポイントが順位判定の決め手となったのは、W杯史上初めてのことだった。
 この試合をテレビで見ていた人は、試合終了のホイッスルが聞こえた瞬間、ホッとした?唖然とした?うれしかった?それとも、悔しかった?どんな感想を持っただろうか。
 あの戦い方については、いろいろな論評があるが、あの時、チームの中では他人に自身の運命を委ねることの是非は勿論、ほかにも様々な思いが交錯したのだと思うし、少なくとも、次の4つのことは、監督だけでなく、チームに関わる全ての人の頭の中にあり、葛藤していたのではないだろうか。
 ①代表としての使命を全うすること=決勝トーナメントへ進出し、1つでも多く勝利すること②代表としてのプライドを保つこと=地区予選を突破したチームとして、世界の中で恥ずかしくない戦い方すること③チームの一員として為すべきこと=個人の感情を排し、チームの方針の中で役割を果たすこと④個人として、自分の目的を達し、満足感を得ること。
 結果としてはベスト16に入れたが、選択した結果で得られたものだけでなく、失ったものもあるのではないだろうか。それは目に見えるものだけじゃなく、見えないものもあるだろう。
 もし、自分が監督だったら、選手にどんな指示を出しただろうか?自分が選手だったら、疑問を持たずに監督の指示に従うことはできただろうか?組織に属する以上、方針に従い目標を達成するために、置かれた立場で為すべきことは何か考え、行動することは必然。それが嫌ならば、組織に属する意味はない。 (無手勝流)

2023年10月09日 第7217号

少子・高齢化社会と無縁墓の増加

 今年の秋の彼岸は、秋分の日(9月23日)をはさんで20日(彼岸入り)から26日(彼岸明け)。先祖を偲んで墓参りをした人も多かっただろう。ただ、墓を維持するのも、都市部への人口移動、核家族化の進展などで現在は苦労が多い。公営墓地・納骨堂の約6割が無縁墓との調査結果が明らかになった。
 総務省が「墓地行政に関する調査―公営墓地における無縁墳墓を中心として―」を9月13日に公表した。現状や課題について考える初の調査だ。公営墓地や納骨堂を運営している765市町村のうち、約6割に当たる58.2%で管理する縁故者がいなくなり、放置された無縁墓があるという。また、管理費の滞納は238市町村で発生し、総額で4億4798万1283円に上る。
 こうした無縁墓は雑草の繁茂や墓石の倒伏で、墓地の荒廃や不法投棄の温床となって環境悪化や近隣の使用者とのトラブルの原因になりかねない。自治体にとっては樹木伐採の手間や費用を要する。土砂の流出で墓の内部に空間ができ、蜂が巣を作って被害が出たり、道路工事で予定ルートを変更した例もある。
 しかし、過去5年間(2016~2020年度)で無縁墓の撤去に着手した市町村は6.1%に過ぎない。今後、改葬(撤去)の意向がある市町村も22.1%に止まるが、無縁墓の解消には多くの障害がある。
 祭祀を承継する者がいないことを断定できず撤去をためらったり、墓石の保管場所の確保が難しいなどがあげられる。継承者を把握できない理由では、江戸時代以前から存在しているが当時の資料がない、戦争によって帳簿の一部が焼失といったことも見られた。大正時代に設置された墓地だが、誰が管理しているか不明の区画が90.7%も占めるとの例もあった。
 全国に墓地・納骨堂は88万4000か所あるという。今回の調査はその3.5%に過ぎない。「調査で分かったのは氷山の一角、今後さらに無縁墓は増加する」と専門家は指摘する。
 一方で、墓じまいをしようとしても、高額な費用に悩まされる。合葬式施設を整備し改葬費用を免除、必要な経費のローン助成をしている自治体もあり、無縁墓の防止に一定の効果があった例もあるが、まだ一部に止まっている。
 2005年に初めて死亡数が出生数を上回り、2007年以降、その差が年々拡大するなど人口減少が急速に進んでいる。こうした人口減少・多死社会は今後も進展すると見込まれる。2040年には死亡数が168万人とピークを迎え、2053年には人口が1億人を下回ると予想されている。
 9月18日の敬老の日に合わせ、総務省は9月17日、65歳以上の高齢者の推計(9月15日現在)を公表した。3623万人と前年に比べ1万人の減、1950年以降初めての減少だが、総人口に占める割合は29.1%と過去最高となった。減少は65歳を迎えた人より亡くなった65歳以上が多かったためだ。
 75歳以上も2005万人と初めて2000万人を超える。いわゆる「団塊の世代」(1947年~49年生まれ)が2022年から75歳を迎えているためと考えられる。80歳以上も1259万人。初めて人口に占める割合が10%を超え10.1%になった。10人に1人が80歳以上だ。
 65歳以上が占める割合は今後も上昇する。国立社会保障・人口問題研究所は第2次ベビーブーム期(1971年~74年)の世代が65歳以上となる2040年には34.8%、2045年には36.3%になると推計している。
 一方で、65歳以上の就業者数は19年連続で増加し、912万人と過去最多になった。就業者総数(15歳以上)に占める割合も13.6%と過去最高、およそ7人に1人が高齢就業者だ。また、65~69歳の就業率は50.8%、70~74歳33.5%、いずれも過去最高。日本の高齢者就業率は主要国の中でも高水準となっている。さらに、非正規の職員・従業員の割合は76.4%を占める。
 無縁墓の対策もさることながら、生きている高齢者が人権や尊厳を保障され、長寿をみんなが喜べる社会でありたいと願う。食料品の高騰や生活必需品が値上がりする一方、年金だけでは生活は厳しい。健康を心配しながらも働かざるを得ない社会は如何なるものか。  (和光同塵)

2023年10月02日 第7216号

郵便局ファンを増やすために

 日本は人口減少と少子高齢化が一層進んでいる社会であることは、既に広く認識されている。社会に与える影響として、需要面では、消費が減少するし、供給面では、今や労働力人口も減少に転じ、労働力の確保が難しくなっている。日本郵便はじめ多くの業種で聞く「人が集まらない」という声がその証左だろう。
 郵便局を利用するお客さまが減少していることも耳にするが、これは、まさに需要減少によるものがあるだろうし、金融業務のようにネットバンキングなど来局しなくても用事を済ませることができるようになった技術進歩の要素があろう。郵便の窓口の来局者はそれでも横ばい又は増えたという話が比較的多い気がするが、これは、郵便物数自体は減少し続けているものの、荷物の取扱いは増加していることや、サービスのラインナップが増えていることもあるのかもしれない。
 郵便局の主要サービスは民営化以前から長らく郵便・貯金・保険の三事業であり、それは今も同様だ。しかし、こういった社会の変化があることを踏まえると、更に郵便局をご利用いただくためには、より一層の工夫が必要となる。
 既にこれまでも、日本郵政グループは三事業以外に郵便局でのサービスを拡大しつつあり、みまもりサービスのように「郵便局らしい」地域密着の取組を行っているほか、地方公共団体の事務の受託といった点では、国も法律改正を行い、郵便局が取り扱える範囲が拡大するなど追い風がある。収益性という点では三事業に及ばないまでも、地道に郵便局のファンを増やしていき、本業に繋げていってほしいところだ。
 郵便局の商品サービス以外にも、お客様に向けて様々な活動を行っている。若い層のファンを増やすための「ズッキュン郵便局」も8月に東京・渋谷で行われたことは記憶に新しい。「みんなの郵便局」も、各地で子供向けに開催され、郵便局に親しんでもらうための良い機会だ。「ふみの日イベント」も、年賀状など季節に即した内容で、各地で開催される。
 更に広く一般に向けては、郵政博物館の常設展、企画展が開催されているし、毎週日曜日のFMラジオ番組「サンデーズポスト」は日本郵便が提供し、手紙の良さを独自の形で訴求している。
 また、「ぽすくま」も出番が多く、各地の行事に出るほか、9月の誕生日イベントの配信や、YouTubeで視聴可能なぽすくまの動画やアニメの蓄積があり、日本郵便のホームページからもアクセス可能だ。
 このほか、大宮エリーさんによる手紙講座のSNS配信が毎月行われている。
 これですべてを網羅していないが、ざっとみただけでも、かなりの施策を擁していると言えるだろう。
 では、足りないものは何だろうか。まず、社外向けの広報、周知活動は十分だろうか。世の中に数あるイベントや行事の中で、存在感を示すのは中々の苦労がある。
 しかし、巨大グループの力をいかに上手に使えるか、問われてもよかろう。もしかして、縦割りでそれぞれの企画が走っていないだろうか。それでは力を出し切れていないし効果も不十分だ。ファン組織やファン同士のつながりの拡大など、お金をあまりかけなくても効果的に情報拡散し、盛り上げられる方法の深掘りを期待したい。
 次に、社員への浸透はどの程度だろうか。先ず隗より始めよ、だろう。お客様との何気ない会話でも、こういった「引出し」がいくつかあれば、ちょっとした話題作りにもなり、郵便局ファンを増やす一助になるだろう。
 この夏、日本郵便では社内広報室という組織が設置された。組織の大きさを活かし、社内向けの広報力を高め、社員の認識度合いも引き上げていき、新たなお客様の開拓に繋げていってほしい。          (コン・ブリオ)

2023年09月18日 第7214・7215合併号

「4年ぶり」をきっかけにして

 5月8日、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが2類から5類に分類された。6月後半ころからは、暑さの影響もあるのか、通勤電車の車内もマスクを外している人が増え、ひそひそ話から普通に会話し、普通に笑いあう姿を多く見かけるようになった。
 仕事帰りの居酒屋もテーブルの上のパーテーションがなくなり、声高らかに乾杯している御仁にはコロナを引きずっている様子はうかがえない。
 また、旅行者、特に円安が相まって海外からの観光客が増えている光景を目にすると、コロナ禍前と100%同じとは言えないものの日常の生活は戻ってきているように感じるが、いかがであろうか。
 一方、イベントなどの特別なこと、日常的でないことはどうだろうか。コンサートや野外フェスは平時に戻り、声出しがOKになった。8月に行われた高校野球の応援も戻った。そして、各地のお祭りもお決まりのように「4年ぶり」という説明付きで開催され、多くの人で賑わっている。浅草の三社祭然り、徳島の阿波おどり然り。
 このような大規模なものばかりではなく、小さな神社や地元のお祭りも同様だ。私の住む地域でも、いくつかの町の自治会が合同で開催する盆踊りが4年ぶりに行われ、会場は子どもから大人、お年寄りが集まり、炭坑節やドラえもん音頭が賑やかに流れた。
 また、これも4年ぶりとなるお祭りの神輿渡御の準備が進められているが、こちらはこれまでと、どこか様子が違う。
 自治会などが主体となり、営利を目的としていないこのような行事は、いわゆる〝ボランティア〟に依ることがほとんどで、そのベースは近所付き合いにあることは言わずもがなである。
 しかし、コロナ禍での行事の中止や縮小などで付き合いが希薄になったり、ここ3年の転入者とは付き合うきっかけすらなかったことが影響し、必要な人数、言い方は悪いが人手が集まらない。
 そもそも、少子高齢化が進み、人が集まらなくなっているところに、都心に近い所では、一軒家が減りマンションが増え、世帯数は増えても、自治会参加者は減る一方。そこにコロナ禍の影響だから、以前と同じように開催することが出来なくなって当たり前だと言えよう。
 神輿は出したいが人が足りない。で、どうするか。伝手を辿って、よその地域からの手伝いをもらう話も出たが、「地元のみんなでやってこその祭り」という声もある。結局、同じにやろうとするから無理があるということで、人数に合わせたやり方に変えることにしたとのこと。
 やれ、伝統がどうのとか、今時の者はとか、周りからいろいろと言われるかもしれないが、「言いたいものには言わせておけ。祭り本来の目的やあるべき姿を損なわなければ、時代に合わせた変化はあって然るべき」という結論だ。
 神輿に限ったことではないが、確かに目的が同じで、結果が同じかそれ以上のものがあるならば、これまでのやり方に拘泥する意味はない。
 「決められたことだから」と抵抗する向きもあるかもしれないが、決めた当時はそれで良くとも、時間の経過とともに陳腐化するのは当たり前であるし、技術の進歩や環境の変化もある。さらには、時代によって求められる役割までもが変わることさえある。
 伝統を守り、苦しくとも愚直に決められたことに取り組むことを全て否定するものではないが、かのダーウィンは進化論で「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるのでもない。唯一生き残るのは、変化できるものである」と述べている。
 踏み出すチャンスはいつでもあるのかもしれないが、タイミングを見極めることも大切だ。そして、なにより踏み出せるかどうかは自分次第だろう。 (亜宇院翔)

2023年09月11日 第7213号

関東大震災から100年

 1923(大正12)年9月1日午前11時58分、大きな揺れが首都圏を襲った。関東大震災だ。相模湾を震源とするマグニチュード(M)7・9の直下型地震。今年で100年を迎えた。関東大震災では、東京都のみならず埼玉県、千葉県、神奈川県、山梨県など広範囲に震度7や6強の地域が広がり、北海道道南から中国・四国地方にかけても震度5から1を観測した。
 発生は正午直前、昼食の用意を多くの人が行っていたこともあって、大規模な火災が生じ、折から日本海を通過していた台風の強風にも見舞われ、東京や横浜の市街地を焼いた。全体の死者は10万5000人、しかし9割近くが火災による犠牲とされる。建物の倒壊による死者は1万人超。
 激しい揺れによる土砂災害も箱根や鎌倉、三浦半島、房総半島の南部などで発生した。神奈川県の海沿い根府川駅では、ちょうど通りかかっていた列車が駅舎、ホームもろとも土石流により海中に転落し、100人以上の死者を出した。
 さらに、津波が襲う。伊豆大島、静岡、熱海、千葉の館山などでは約10㍍に達した。地震によって全半潰、消失、流出、埋没した住家は37万棟に上る。建物倒壊、火災、土砂災害と津波、複合的に被害をもたらした。
 関東地方は三つのプレート(岩盤)が重なる複雑な地形にある。陸側の北米プレートにフィリピン海プレートが、さらにその下に太平洋プレートが沈み込む。北米プレートにフィリピン海プレートが沈み込んでいる場所が相模トラフ。相模湾から太平洋沖まで300㌔に及ぶ。
 関東大震災は相模トラフを震源とする海溝型地震。相模トラフの中で、神奈川県小田原市付近から房総半島まで130㌔、幅70㌔、深さ10~20㌔に及ぶ断層が動いた。現在も海のプレートが陸側のプレートに年間数㌢ほど潜り込んでいる。
 未曾有の被害をもたらした関東大震災から100年の節目、内閣府などでは特設ページを設け、関連資料や報告書などを掲載するとともに、各種団体による関連行事についても紹介している。自治体や民間団体、学会においても、関東大震災100年をテーマとする様々なイベントが開催されている。
 こうしたイベントに参加することで、関東大震災の記憶、教訓を継承し、防災意識を高めることが期待される。首都直下地震をはじめ南海トラフ地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震など大規模災害のリスクに直面する現在、防災について考え、災害に備える機会としたい。
 国立映画アーカイブは、関東大震災前後に撮られた記録映像を地域ごとに時系列で閲覧できるウェブ上のコンテンツ「震災タイムマップ」などを9月1日から公開した。所蔵の記録映画フィルムなどの資料を紹介するサイト「関東大震災映像デジタルアーカイブ」で行っている。
 また、関東大震災の被災者らを追悼する東京都慰霊協会は、震災翌年の1924年に当時の小学生が体験を綴った作文と絵を、デジタル化してDVDにまとめた。現代の小学生が作文を朗読。大災害の恐ろしさを子どものまっすぐな表現で伝えている。
 1960(昭和35)年には9月1日が「防災の日」と定められた。関東大震災のようなM8級の地震は約200年間隔とされるが、政府が想定している首都直下地震はM7級。これは30年以内に南関東で起こる確率は70%とされる。死者は最大で2万3000人と予測する。
 「天災は忘れたころにやってくる」と言ったのは物理学者の寺田寅彦とされる。「天災を経験した者は、その恐ろしさを覚えているが、時がたち次世代になると災害への備えや意識が疎かになりがちとなる。そうした頃に、また天災が起きる」との戒めだろう。寅彦は『科学と文学』で「歴史は繰り返す。法則は不変である。それ故に過去の記録はまた将来の予言となる」と述べている。
 年月とともに記憶から消えていくが、災害を語り継ぐ大切さを忘れてはならないだろう。避難場所の確認、防災用品の用意、情報伝達の確立といった災害への備えとともに、災害に強い街づくりなどに知恵を集めることが求められる。 (和光同塵)

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