コラム「春秋一話」

 年/月

2024年03年18日  第7240・7241合併号

適度な刺激で体も脳も活性化を

 電車に乗ると、ほとんどの人がスマホをいじっている。新聞を縦長にして読んでいる人や、本を読んでいる人はめっきり少なくなった気がする。
 私は、新幹線や特急電車での長距離移動の時はスマホを見ることはあるが、在来線の電車の中でスマホを見ることはほぼ皆無だ。
 では何をしているかというと、車窓から見える外の景色をただ純粋に見ている。見慣れた景色もあれば、初めて見る景色もある。それはそれで、自分の中では飽きないものだ。
 地下鉄のように外の景色が見えない時は主に2つのことをしている。1つは、車内の広告を見て、漢字の画数を数える。画数の多そうな字を見て数えるのだが、たまに「あれ?書き順どうだったっけ?」なんて迷うこともある。ちなみに現時点で遭遇した画数の多い漢字は、三鷹駅の「鷹」の字で、24画ある。また、パッと見た感じ、画数がそれほど多くなさそうで、意外に多いのが「競」の字で、20画ある。
 もう1つは、車内の注意表記に併記されている英文表記を見て、そこからアルファベットをピックアップして単語を作る、というもの。中学生の頃、英語のネイティブの講師が授業で時々やっていたもので、頭の体操にもなる。
 例えば、この時期特に、車内でよく見かける注意表記の文言(以下、英文横表記になり読みづらいことをご容赦いただきたい)。
 「注意 Caution 座席下のヒーターは熱くなる場合がございますので荷物や足元にはご注意ください。Heater below seat is hot.Be careful keep your belongings and feet away from the heater.」
 この英文表記から、アルファベットをピックアップして、いくつか英単語を作成してみると、「season」「hero」「fruits」「key」「awake」「play」「reason」「foot」「yet」「something」「anything」「action」「feel」「again」「flat」「these」「melon」「lemon」「farmer」「screw」「horse」などなど。長い文章だと必然的にアルファベットの数も種類も多くなるので英単語も作りやすいが、短い文章だとこれがなかなか難しい。
 振り返ってみると、普段、漢字を書く機会は昔に比べて格段に少なくなっている。英語を日常生活で使用する場面も、今はほとんどない。ニュースで耳にするくらいだ。このまま何もしないでいると、それこそ忘れてしまいそうだが、こうした些細なことでもやっていると、脳の刺激にもなるかな、と思う。
 体力面において、例えばジョギングなど、運動をすることは健康にも良い。しかし、普段使わない筋肉等は年齢と共に確実に衰えていく。
 以前は日々ジョギングをしていた。諸般の事情で、現在は毎日ではなく週に何日か走る、というレベルになっているが、走る速度を落とさないとさすがにしんどくなってきている。
 また、雨の日などは室内で踏み台昇降運動(いす等の台を置いて、足で前後に昇り降りを繰り返す)をしていた。先日、何年振りかにやってみたら、速さ自体はゆっくりにせざるを得ないが、なんとかできた。
 しかし翌日から、太ももやふくらはぎの筋肉が猛烈に痛くなり、一週間以上治まらなかった。それもそのはず、踏み台昇降は本来、10~30センチくらいの台で行うものだが、私は高さ50センチくらいの椅子で行っていた。
 人間、個人差はあるが、年齢とともにどうしても筋力や体力は衰え、記憶も低下し、判断力や適応力等も衰えていく。それを完全には防げないまでも、せめて衰えるスピードを緩やかにしていくべく、身体や脳に適度な刺激を与え続けることは必要だと思う。
 各地で高齢化が進んでいく中で、地域で若さや健康を保つための複合的なイベントが企画・開催されるなど、そうした取り組みへの機運がどんどん高まっていってほしい。(九夏三伏)

2024年03月11日 第7239号

郵便局は公共・公的サービスの拠点

 少子高齢化、人口減少、市町村合併などによって、公共サービスを担う支所といった拠点、農協や銀行などの公的サービスの提供拠点、直売所や診療所という日常生活の維持に不可欠な拠点が年ごとに減少している。さらに地域交通の脆弱化も進み、高齢者を中心とした交通弱者が社会問題となっている。
 特に過疎地域は深刻な影響が出ている。こうした状況にあって全国に設置されている郵便局は、公共・公的サービスの拠点の受け皿として大きな役割を果たす可能性が非常に高く、その活用には大きな期待が寄せられている。
 大小120以上の島々、「天草五橋」により、九州本土と結ばれている熊本県天草市(馬場昭治市長、人口約7万人)。新鮮な海の幸に恵まれ、イルカウォッチング、南蛮文化やキリシタンの歴史を今に伝える観光スポットも豊富だが、25か所ある出張所を維持することが困難とし22か所を廃止、最寄りの23の郵便局に窓口業務を委託することにした(最寄りの郵便局がない3か所は存続)。
 住民票や印鑑登録証明書などの交付、体育館といった公共施設の使用申請も担う。天草市は出張所へ交代要員も含めて職員を配置し、年間約6800万円の経費がかかっているという。郵便局への委託は出張所機能を維持しながら大幅な経費削減が見込まれるとする。郵便局は地域に根差した身近な存在として、委託は市議会でも可決されている。
 今年10月1日からの開始へ向けて、委託先郵便局への回線工事や必要機器の設置などの整備と併せ、委託業務の協議・調整、郵便局と一緒になっての市民への説明などを実施、7月からは機器の動作確認や郵便局社員への研修を行い、10月の開始を目指している。
 市町村から委託を受けて実施する公共サービスは「地方公共団体の特定の事務の郵便局における取扱いに関する法律」に基づいて運用されるが、まだ実績は限定的な水準に止まる。
 地域拠点としての郵便局への期待は高まるが、主たる郵便事業は人口減少や手紙などの利用減などによって経営基盤は厳しい状況にある。郵便局ネットワークの維持には、金融2社からの委託手数料や交付金・拠出金制度のみでは早晩賄いきれない状況が懸念される。
 金融2社との資本関係を引き続き維持することは言うまでもないが、郵便局ネットワークを維持するためにも、郵便事業の厳しい状況を鑑みれば郵政三事業のみを前提とした財政基盤構造は限界に近い。
 制度設計に限界があるならば抜本的な見直しも検討されることが求められる。郵政関連法の改正が議論されているが、そこで最も重要なのは「法改正は利用者に対するサービスの向上を基準に考えなければならない」と長谷川英晴参議院議員は強調する。
 「郵便局ネットワーク、配達、決済、物販といった機能を活用しながら、いかに利便性を向上させるか、つまり利用者サービスの向上が基準。なおかつ会社経営にもプラスになるという視点で考えることだ。基準が経営状況を良くする、株主の利益を拡大することだけでは、郵政事業が果たすべき役割とは違う方向になる。地域の方々が不便さを感じていることに、郵便局がどのような支援ができるかという視点が重要」。
 郵便局の基本的な機能として三事業に加え、市町村などの公共・公的サービスも提供し、公的基盤としての位置づけを明確にする必要がある。「基盤的サービス提供業務」としての明文化も必要だろう。さらに、そうした機能を提供する郵便局ネットワーク維持のため、金融2社の株式売却益などを想定した基金の創設、政府による財政支援措置も求められる。(和光同塵)

2024年03月04日 第7238号

「見え方」を意識すると何かが変わる?

 ある日、東京の都心に近いところへでかけた時のこと。午前10時頃、商店街を通り過ぎ、中小企業や個人事務所などが並ぶ地域に差し掛かると、向こう側から紺色のキャップをかぶった中年男性が乗る赤い自転車がやってきた。
 現在は、ほとんどの人が郵便配達=(イコール)赤いバイクを頭に浮かべるだろうが、配達を受け持つ郵便局の周辺地域などでは自転車を使って配達しているところもまだまだある。聞くところによれば、省エネでの経費節減や環境に配慮したCO2削減のためではないらしいが・・・。
 その自転車についてだが、2023年4月1日の道路交通法改正で、「自転車を運転するすべての人がヘルメットをかぶるよう努めなければならない」と年齢を問わず、ヘルメット着用が努力義務化された。
 警察官は白と黒のパトカーのデザインを模したスタイリッシュなヘルメットを着用。また、日本郵便の競合会社(今は協力会社というべきか?)のヤマト運輸の配達担当のヘルメット姿も見かけたが、日本郵便はどうだろうか。知人は20代とおぼしき担当者がヘルメットをかぶっているのを見たことがあるというが、私は自転車で配達しているところは幾度となく見ているが、ヘルメット姿を見たことは1度たりともない。
 警察庁が2023年7月に実施した着用状況の調査では、着用率の全国平均は13.5%。最高は愛媛県59.9%、最低は新潟県2.4%と都道府県格差が大きく、私が見かけた東京都は10.5%で全国22位だそうだ。
 ヘルメット着用は努力義務であり、過料などの罰則もないものだが、そもそも、事故が多発し、発生時の被害(受傷)程度を下げるため、命を守るために着用を求められているものだ。そのような中で、公道を使用して仕事をしている者が着用していないのはどういうことなのだろうか。
 郵便局のシンボル〝赤色〟は、自転車に限らず、自動車、バイクなどの車両、そして「ポスト」と、その注目度は高い。良いことでも、悪いことでも目に付けば、公的企業の事象として大きな反響がある。
 一時期、言い方は変だが、目の敵のように、ドライブレコーダーで録画された赤いバイクの歩道走行や交通違反などの様子の動画がSNSなどに多数アップされたことがあるのをご存じの方も多いのではないか。
 まさか、ヘルメットが支給されていないことはあるまい。だとすれば、担当者の勝手な理由で勝手に判断し、着用していないことになるが、法律に反していないとは言え、それをたださない会社に全く問題がないと言い切れるのであろうか。
 と、このようにヘルメットひとつ取っても、好むと好まざるに関係なく目を引き、経緯や理由に関係なく、「見え方」一つで、仮に「針小棒大」に語られても文句は言えないことを理解すべきだと思うが、いかがだろう。
 「見え方」とは見る側の捉え方で、対象を目に入ってきた情報だけで判断すること。その判断には無意識といえども、見る側それぞれの経験や見聞による潜在意識が影響するものだ。
 この見え方の〝え〟を〝せ〟に替えると「見せ方」になり、たった一文字だが意味が大きく違ってくる。見られる側が見る側の印象なり、受ける影響などを考慮して、見せる側として能動的、意図的に働きかけるものになる。テレビコマーシャルや広告などでは当然だが、日常生活や対人以外の仕事、例えば前出の配達など、作業的な仕事では意識する人は、ほぼいないだろう。
 そこで、見せ方、つまり「このように見てもらいたい。このように感じてもらいたい」ではなく、見え方「このようには見て欲しくない。このようには感じて欲しくない」、端的に言えば、ことさらに良い面をアピールするのではなく、フツーのことをフツーにすることを意識するとどうなるだろうか。
 今と何も変えることは無いという人もいるかもしれないが、一つでも、仕事や家庭での言動を変えることで、周りの人の反応も変わるかもしれない。(無手勝流)

2024年02月19日 第7236・7237合併号

歌で見る通信などの歴史

 郵便物数の減少傾向に歯止めがかからない状況が続いている。年賀状についても同様で、翌年以降の年賀状を辞退する旨を記して送る「年賀状じまい」をした人が、2021年で約3割という調査結果もある。
 しかしその一方、年賀状じまいによって友人と音信不通になってしまい、後悔した、一抹の寂しさを感じているという人も中にはいるようだ。
 さて、年賀状も含めて、時代は変われども情報通信手段の中で重要な役目を果たしている手紙だが、電話もまた重要な役目を果たしている。電話が登場してからの歴史を振り返ると、ダイヤル式の黒電話が一般家庭に普及し、その後、プッシュ式の電話、親機と子機の電話、留守番電話機能付き、ファクシミリ機能付き等、進化をしていく。そしてポケットベルや携帯電話、PHSが登場し、今やスマートフォンやタブレット、パソコンが主流となり、自宅に固定電話が無いという人も増えている。
 その電話の進化に合わせるかのように、邦楽のヒット曲の歌詞の中にも電話などが登場している。いくつか挙げてみよう(「」内は歌詞のワンフレーズ)。
 ▽恋のダイヤル6700(フィンガー5/1973年)・・・「♪指のふるえをおさえつつ 僕はダイヤル まわしたよ」
 ▽悪女(中島みゆき/1981年)・・・「♪マリコの部屋へ 電話をかけて」
 ▽モニカ(吉川晃司/1984年)・・・「♪真夜中のスコール バックミラーふいにのぞけば 赤い電話ボックスの中から」
 ▽あなたを・もっと・知りたくて(薬師丸ひろ子/1985年)・・・「♪もしもし 私 誰だかわかる?」
 ▽恋におちて(小林明子/1985年)・・・「♪ダイヤル回して手を止めた」
 ▽バラードのように眠れ(少年隊/1986年)・・・「♪真夜中のベルが響くと 走り寄り 受話器つかんだ」
 ▽ポケベルが鳴らなくて(国武万里/1993年)・・・「♪ポケベルが鳴らなくて 恋が待ちぼうけしている」
 ▽SWEET 19 BLUES(安室奈美恵/1996年)・・・「♪部屋で電話を待つよりも 歩いているときに誰か ベルを鳴らして!」
 ▽渚にまつわるエトセトラ(PUFFY/1997年)・・・「♪私と 彼氏の 携帯電話がリンリンリン」
 ▽Automatic(宇多田ヒカル/1998年)・・・「7回目のベルで 受話器を取った君」
 ▽ミニモニ。テレフォン!リンリンリン(ミニモニ。/2001年)・・・「♪電話をかけましょう リンリンリン パカパカ電話パッカ リンリンリン」
 この中で、安室奈美恵の「SWEET 19 BLUES」の一節は、まさにこの頃、携帯電話が普及し始めてきた時代背景を象徴しているなと思う。
 また、通信手段が出てくる楽曲もある。
 ▽ちょこっとLOVE(プッチモニ/1999年)・・・「♪ほんのちょこっとなんだけど メールを送りますよ」
 ▽恋をしちゃいました!(タンポポ/2001年)・・・「♪デートの最後メール来た 『君が好きです』」
 ▽睡蓮花(湘南乃風/2007年)・・・「待ち受けにしている写メ 変顔で思わず吹き出して」
 ▽香水(瑛人/2019年)・・・「♪夜中にいきなりさ いつ空いてるのってLINE」
 写メは当時、画期的だった。今でも送れるが、SNSを利用する人が多いと思う。
 2024年2月5日付の通信文化新報に野田聖子衆議院議員のインタビュー記事が掲載されている。その中で、野田議員は郵便局への公衆電話の設置を提案されている。これは非常に素晴らしい考えだと思う。
 この先、デジタルはどう更に進化していくか。平時であれ緊急時であれ、郵便局は各地域に根差し、古いものも新しいものもうまく活用しながら、未来へとつなげ、地域を守っていってほしい。(九夏三伏)
 

2024年02月12日付7235号

家内安全、無病息災を祈る節分

    昭和38(1963)年に発行された「季節の行事シリーズ」


 豆をうつ声のうちなる笑かな〈宝井其角〉
 豆をまきながら「鬼は外、福は内」と叫んでいる声にも、笑いが混じっているように感じられる。家族での楽しいひと時だろうか。
 今年の節分は2月3日、豆を炒って鬼祓いをした家庭もあるだろう。しかし、今日ではこうした季節行事を楽しむ家庭も、もっぱら少なくなったかもしれない。
 節分とは古来、季節を分けるという意味。2月の節分が有名だが、実は年4回あることはあまり知られていない。季節の始まりの日である二十四節気の中の立春、立夏、立秋、立冬、これらは「四立」(しりゅう)と呼ばれるが、節分はその前日を指す。今年の立春は2月4日。国立天文台の観測で「太陽黄経が315度になった瞬間が属する日」とされる。
  かつて中国や日本では、文字通り立春から1年が始まるとされた。1年の始まりの立春の前日、いわば大晦日とも言える2月の節分が特に親しまれ、豆まきなどの行事の日として残った。豆まきで鬼を退治することで邪気を払い、新しい年の家内安全や無病息災を祈る風物詩の一つとなった。
 人好くて追儺の鬼の役を受く〈能村登四郎〉
 豆まきに欠かせないのが鬼。「福豆」と呼ばれる炒った豆を掛け声と共に鬼に投げて退治する。平安時代、大晦日に行われていた宮中行事の「追儺」(ついな)が起源と言われる。厄や邪気、疫病の象徴でもある鬼を追い払った。仏教では鬼は煩悩や欲望を持つ人の心に住み着き、災いのもととなると考えられてきた。
 あたたかく炒られて嬉し年の豆〈高浜虚子〉
 豆まきに炒ったものを使うのは、「鬼の目を射る(炒る)」から、また、後から芽が出てこないようにするためとの説がある。生の豆を使い、もしも芽が出たら「邪気が芽を出してしまうため」ということらしい。また、豆は五穀(米、麦、ヒエ、アワ、豆)の象徴で、農耕民族の日本人は、これらに神が宿ると信じてきた。「まめ」は健康という意味もあるそうだ。
 豆をまき終えた最後に、自分の年齢の数より一つ多く豆(福豆)を食べる習慣もある。2月の節分に一つ歳を取ると考えられていたため、「歳の数だけ豆を食べる」という風習が残ったという。自分の年齢の数だけ豆を食べると、身体が丈夫になって病気になりにくくなるとされた。「福」を体内に取り込むという思いが込められている。
 節分や親子の年の近うなる〈正岡子規〉  
 子規は5歳の頃に父を亡くしている。父はまだ40歳だったとされる。豆を口にしながら「亡くなった父の年齢に自分も近づいている」との感慨を詠んだのだろうか。
 節分や海の町には海の鬼〈矢島渚男〉
 250人を超す死者・安否不明者が出た能登半島地震から1か月以上、厳しい寒さの中、多くの人が避難所での生活を余儀なくされている。更なる支援の充実が求められる。石川県輪島市の古社、重蔵神社では3日、避難所の住民500人が参加し、恒例の豆まきが行われたというニュースが流れた。
 大規模火災の起きた朝市通りに近く、地域の心のよりどころだった神社は、本殿なども被害、境内にはがれきが山積し、開催も危ぶまれたが、少しでも日常を取り戻して欲しいとの思いを込め、地元の有志が実現させた。早く日常が戻る日を願う。自然災害に抗すべき人の力は弱いが、被災地への支援の気持ちを保ち続けたい。(和光同塵)

2024年02月05日付7234号

年賀状の行く先は…

 残念ながら、今年も切手シートだけだった。1月17日、お年玉付年賀はがきなどの抽せん会が行われ、早速いただいた年賀状をチェックした。2等のふるさと小包は1万本に1本、1等の現金30万円は100万本に1本だから、100本に3本の3等お年玉切手シートだけというのも必然で、500枚強の中で16本のあたりは、順当なのかもしれない。
 ここ4、5年は、600枚前後やり取りしていたところ、諸事情により100枚ほど減らしたが、「あっ、この人出してない」ということが意外に少なかった。これまで、元旦に年賀状をいただき、出してなかったと慌てて返信、翌年は元旦に着くようにと、12月中に差し出すと、今度は相手から元旦に来ない〝いたちごっこ〟になった経験が何度もあるので、安堵したところだ。日本郵便によれば、今年の元旦の配達数は743百万通(対前年84.2%)で、前年から139百万通も減少しているというから、こちらも順当(500/600通=83%)なのかもしれない。
 それよりも気になったのは「本年をもって新年の挨拶を控えさせていただきます」と、いわゆる「年賀状じまい」のあいさつが思いの外、多かったことだ。確かに高齢になると終活の一つとして、年賀状を止める人が多いと聞く。今年はそれに加えて、昨年12月に発表された郵便料金の値上げが影響していることは否めないと思うが、いかがだろう。今年の秋には、63円のハガキが85円になる。単純に考えれば、今年は4枚(252円)出せたのに、来年は3枚(255円)しか出せないことになる。
 物価はどんどん上がっていくが、賃金がそれに見合うだけ上がらないとなれば、もともと手紙離れが嘆かれる世代は、ますますメールやSNSでの「あけおめ」になっていくだろう。事実、ある会社では『上司への年賀状は不要』とのお達しがあり、同期とはグループラインであいさつ。なので、年賀状は祖父母などに宛てた2、3枚だけという新入社員もいたそうだ。
 また、手紙でのやりとりの良さを知っている世代や絵手紙での交歓を楽しむ高齢世代も、すずめの涙ほどもない年金の上昇額では、生活を切り詰めてまでとは、考えないのではないか。
 私自身について言えば、仕事上の繋がりや仕事以外での交誼の感謝など年賀状は必要なものと考えている。さらに、会うこともままならない1年に1度だけのやり取りの相手もいるので、出来ることならば、ご縁を繋いでいたい。しかし、年末の物入り時期に4万円を超える出費は厳しいものだ。仮に今年と同じ収入ならば、500枚の3/4=350枚程度が現実的だし、物価がさらに上がったり、減収になれば、もっと減らすことを考えなくてはいけなくなるかもしれない。
 以前、年賀郵便は郵便局の一大イベントで何日もかけて準備し、アルバイトをたくさん雇用して処理していたが、現在は書状区分機の性能が上がり、短期間での処理が可能になったうえ、差し出し数の減少から、準備の負荷が減ったと聞く(とは言え、短期間であれだけの数の郵便物を正確に配達するのは大変なことと思う。)。
 であれば、素人考えで恐縮だが、これまで通常期と同じ料金でやってきた年賀郵便の値下げはできないものか。元旦配達という期日に向け、計画的に処理することができるのだから、通常よりも安い、例えば74円などにできないものだろうか。
 このままでは、年賀状は一部の人の趣味のものとなり、日本の風物詩とも言える文化がなくなってしまうのではないか。市井の人々の近況報告や旧交を温める機会が失われないように、一考してもらいたいものだ。(亜宇院翔)

2024年01月29日付7233号

選考基準・判断基準は多角的に


 昨年大みそかに放送された「第74回NHK紅白歌合戦」の出場者一覧を見たが、年々知らない名前が増えていく。選ばれてもいいはずなのに、選ばれていないアーティストもいる。出演が決まる選考基準が年々、よくわからなくなってきているなと感じる。
 日本レコード大賞もしかり。売上だけで決まるものではないが、このレコード大賞も納得いく結果のときもあれば、釈然としないときもある。一時期、ポップス・ロック部門と演歌・歌謡曲部門に分けられたこともあったが、後に元に戻されている。
 プロ野球で、その年最も活躍した先発完投型投手を対象に選ばれる沢村賞(沢村栄治賞)。完投数や勝利数、防御率など計7項目が選考基準となるが、必ずしも全部クリアしなくはいけないわけではない。
 1981年のシーズン、日本一に輝いた巨人。沢村賞はその巨人から、20勝(6敗)を挙げた江川卓投手ではなく、西本聖投手(18勝12敗)が選ばれた。成績を見ると、江川投手が受賞して当然と思われていた。
 当時は記者投票によって受賞者が決まっていたが、江川投手の入団時の経緯をよく思っていなかった記者たちが、江川投手には投票せずに西本投手に投票したことによると言われている。こうしたこともあり、翌年からは元先発投手OBらで構成される沢村賞選考委員会における話し合いによって選ばれるようになった。
 大相撲で大関や横綱昇進に際し、その昇進条件は、大関が「3場所連続で三役の地位にあり、その間の通算勝ち星が33勝以上」と言われ、横綱は横綱審議委員会の内規で「大関の地位で2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績」とある。
 横綱審議委員会設置後、連続優勝しなくても横綱昇進を果たした例が少なくなかったが、大関・北尾が一度も優勝したことがないまま横綱に昇進し(同時に双羽黒を襲名)、のちにトラブルにより廃業となった出来事を境に、横綱昇進へのハードルが高くなっている。これまでなら横綱に推挙されたであろう大関が、横綱に昇進しないまま引退するケースもあった。
 オリンピックの代表選考もよく話題となる。1992年バルセロナオリンピックの女子マラソン代表選考で、国内選考レースで良い結果を出した松野明美ではなく、国内選考レースに出場しなかった有森裕子が代表最後の一枠を手にしている。
 2000年シドニーオリンピック直前の選考会で、千葉すずが女子200メートル自由形で五輪A標準記録を突破して優勝したが、オリンピック代表には選ばれなかった。
 私は学生時代、ある組織の中で2年次に会長を務めた。前任は男性の強いリーダーだった。自ら立候補してその後を継いだが、1年上の人たちの存在が大きかったのと、同学年のつながりが強くなかったことなどもあり、今一つうまくいかないまま務めを終えた。
 次の会長を決める際、1年後輩に強いリーダー的存在の男性がいたが、彼も含めて誰も立候補しなかった。そこで推薦を募って決めることとなった。
 私はあえて、リーダーのタイプではない女性を推薦し、同時にそれまで1人だった副会長を3人にすることを提案した。タイプの違う3人が副会長になることで、会長をうまく支えていき、組織が上手く回ると思ったからだ。結果、その体制で組織はいい感じになっていった。
 何かを、誰かを選ばなくてはならない場面、非常に頭を悩ませる。慣例やセオリーなどをもとに選んで、異論なくうまくいけばいいが、そうでない場合も往々にしてある。型にとらわれず、新たな視点を取り入れるなど、多角的に選ぶことも大切だと思う。(九夏三伏)
  

2024年1月22日 第7232号

若い人たちが夢を持てる社会を

 2024年は元旦から悲惨なニュースで明けた。最大震度7を記録した能登半島地震だ。翌日には羽田空港で日本航空と海保の飛行機の衝突事故もあった。特に「激甚災害」に指定された能登半島地震は、津波や火災も発生、多く死者、避難者が出て、道路の寸断も続く。
 これから一段と寒さも増してくる。感染症の心配も指摘されている。被災者のことを思うと、いかばかりかと心が痛む。仮設住宅などを含めて、今後の生活に希望が持てる手厚い支援が求められる。
 冬の星地震のあとに燃えさかる<渡邊水巴>
    ◇ ◇ ◇
 今年は十干十二支で「甲辰(きのえたつ)」。甲は種子が厚い皮に覆われ芽吹く前の状態や物事に対し耐え忍ぶことを表すという。生命や物事の始まりも意味する。辰は「振るう」という文字に由来し「万物が振動し成長する」とされる。草木が成長して活力が旺盛になり、「これまで準備してきたことが形になる」など縁起が良いと言われる。
 辰年は政治の大きな変化が起きることが多いとされ、戊辰戦争(1868年)、日露戦争(1904年)が勃発、戦後では皇居前でデモ隊と警察が衝突した血のメーデー事件(1952年)も起きた。ロッキード事件(1977年)やリクルート事件(1988年)が発覚した。
 一方で、東海道新幹線の開業、東京五輪開催(1964年)、東京スカイツリー開業(2012年)、青函トンネル・瀬戸大橋開業(1988年)などもあり、20世紀最後の年(2000年)も辰年だった。
    ◇ ◇ ◇
 龍にまつわる伝説や神話は各地に残る。龍を祀る神社仏閣も全国に多く、とりわけ水源を守り、雨の恵みももたらす水神として崇められてきた。作物の実りに欠かせなく、篤く信仰されてきた。
 堂涼し一拍竜を目覚めしむ<伊藤汀人>
 初詣で誓いを心に刻んだ人も多いだろうが、総務省によると辰年生まれは1005万人(1月1日現在)。総人口1億2413万人(男性6037万人、女性6376万人)に占める割合は8.1%。男性は488万人、女性は517万人で、女性が29万人多い。
 出生年別では今年に48歳になる1976年生まれが180万人と最も多く、次いで72歳になる1952年生まれ、60歳になる1964年生まれが共に163万人。最も若い12歳になる2012年生まれは104万人、84歳になる1940年生まれの112万人より8万人少ない。少子高齢化が進む。
    ◇ ◇ ◇
 また、この1年間(2023年1~12月)に、大人の仲間入りをした新成人は106万人(1月1日現在の18歳)。総人口に占める割合は0.86%で、前年の18歳と比べ6万人ほど減少した。割合も0.03ポイント低下した。人口、割合の共に過去最低を更新している。
 男性は55万人、女性は52万人で男性が3万人多い(なお、新成人は2022年までは20歳、2023年は18歳、19歳および20歳、2024年は18歳が対象)。
 新成人について推計が開始された1968年からの推移では、第1次ベビーブーム(1947~49年)の49年生まれが成人となった70年が246万人(総人口に占める割合は2.40%)で最も多くなった後、減少に転じ78年には152万人となった。
 その後、再び増加傾向を続け、第2次ベビーブーム(71~74年)生まれが成人に達したときに200万人台(最多は94年の207万人)となったが、95年から再び減少に転じた以降は減少傾向を続けている。
 若者の社会や政治への関心が低いと言われる昨今だが、積極的にボランティア活動に参加する者も多く、若々しい感性が新たな活力を社会に生む。若者たちが夢を持てる社会でありたいと願う。
 成人の日をありがたく老の身も<山口青邨> (和光同塵)

2024年1月15日 第7231号

「慢心・過信・油断」と「他山の石」

 昨年12月、2023年の10大ニュースが発表されている最中に、新たなニュースが世間を騒がせた。パーティー券問題とダイハツの国内全工場の生産停止問題だ。そんな中、元旦に能登半島地震が発生、人々の関心や報道の中心がそちらにシフトしているように見えるが、渦中にいる人は落ち着かない日々が続いているのではないか。
 ダイハツの問題では、自身に落ち度はなくとも、影響を受けた従業員や直接取り引きがある部品メーカー423社、さらに間接含めると8000を超えるといわれる取引先の人たちは、憤まんやるかたない思いであったのではないだろうか。
 問題の端緒はダイハツが昨年4月、内部通報をきっかけに不正があったことを確認したこと。その後の第三者委員会の調査で1989年に不正行為が認められ、以降、2014年頃から増加し、親会社であるトヨタ自動車などのOEM生産を含め64車種174件の不正を確認したとし、奥平総一郎社長は「責任は経営陣にある」と先月20日に記者会見した。
 このように内部通報や告発が元で問題が発覚し、事件にまで発展したケースは昨年だけでも、ビッグモーター、ジャニーズ、自衛隊など枚挙にいとまがなく、企業だけでなく、スポーツ界、政界、芸能界、どこの組織でもあり得る話になってしまった。
 なぜ、こんな世の中になってしまったのだろうか。この根底にあるものはなにかと考えていくと「慢心」「過信」「油断」の3つの言葉に行き着いた。
 慢心=自分自身に対して過度の自信を持つことや自分が優れていると思い込むことを指す。
 過信=価値や力量などを実際よりも高くみて、信頼しすぎること。
 油断=ものごとや相手に対して「大丈夫だろう」などと、たかをくくり、気を緩め注意を怠ること。相手を見くびっていたり、自分の能力を過信している時の表現。
 これらは、いずれも良い意味ではなく戒めの言葉として使われることがほとんどであり、いわゆる不祥事が発生した際の要因として、説明者が口にしているように思える。おそらくは、自分の立場に「慢心」し、周囲の者を「過信」して、自分の言動に「油断」が生まれたというところだろう。
 しかし、不思議なのは、諸処の問題を起こした当事者たちは、同じような状況下で、同じような事案を起こし、社会的な制裁を受けたという先人を見聞きしたことはなかったのであろうか。それとも、知ってはいたが「自分は違う」と考えたのであろうか。さらには、その当時、周囲に諫めたり、意見したりする者はいなかったのであろうか。
 そこで、頭に浮かぶのが「他山の石」だ。これは故事成語の一つで、中国最古の詩集『詩経(しきょう)』の「他山石可以攻玉(他山の石以って玉を攻〔おさ〕むべし)」に由来する。「他の山から採掘した質の悪い石でも、碇石(といし)に使えば、自分の玉(宝石)を磨くのに役立てることができる」という意味。そこから、他人の誤った言行(よその山の質の悪い石)は、自分の成長のための学びや戒めになる(自分の玉を磨くために役立てる)となったという。ちなみに「他山の石とせず」という使い方をされることがあるが〝せず〟で否定すると「他人の誤りを見ても、自分の行動を改める参考にはしない」という意味になってしまうので要注意。
 問題を起こさないように、組織として、一人ひとりに指導・教育したとしても、受けた側に「他山の石」の気持ちがなければ、「のれんに腕押し」「糠に釘」だ。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という諺もある。新年にあたり自分の胸に手を当てて、考えてみようと思う。 (無手勝流)

2023年12月18日 第7227・7228合併号

流行語で振り返る2023年

 毎年恒例の「2023ユーキャン新語・流行語大賞」(現代用語の基礎知識選)が12月1日、発表された。年間大賞に選ばれたのは「アレ(A.R.E)」。
 「アレ(A.R.E)」は、プロ野球・阪神タイガースの今シーズンのスローガン。選手たちが優勝を意識しないようにと、岡田彰布監督が優勝を「アレ」という言葉で表現した。阪神タイガースはセ・リーグで優勝し、パ・リーグで優勝したオリックス・バファローズとの「関西ダービー」と称された日本シリーズを制し、38年ぶりの日本一に輝いた。
 その他に選ばれたトップテンの新語・流行語は「新しい学校のリーダーズ/首振りダンス」「OSO18/アーバンベア」「蛙化現象」「生成AI」「地球沸騰化」「ペッパーミル・パフォーマンス」「観る将」「闇バイト」「4年ぶり/声出し応援」。選考委員特別賞が「I’m wearing pants!(アイム・ウェアリング・パンツ)」。
 新しい学校のリーダーズは、4人組のダンス&ボーカルユニット。体の各部位を使って全力で踊るパフォーマンスで注目され、中でも首振りダンスはTikTokで人気となっている。動画で拝聴し、すごいなと思った半面、あまり首を激しく振るのは危険なのでは、と思ってしまった。
 「OSO18/アーバンベア」は、2019~23年にかけ、家畜を襲撃していた雄ヒグマのコードネーム。人間が熊に襲われる被害が相次ぎ、最近では山中に限らず、人が暮らす街中に出没する「アーバンベア」と呼ばれる熊が増えている。
 「蛙化現象」は、好意を寄せている相手が自分に振り向いた途端に、好意が覚めてしまう現象を表した言葉。SNSが主流の現代を反映した言葉なのかな、と思った。
 「生成AI」は、ネット上の膨大なデータを学習することにより、指示通りに新たな文章や画像等を生み出すことができる人口機能。これまででは考えられないようなものをいとも簡単に生み出せる一方で、フェイク情報が拡散してしまうリスクも含んでいる。
 「地球沸騰化」は、国連のゲテーレス事務総長が、世界の月間平均気温が過去最高を更新する見通しであることを受けて発言した言葉。日本でもこの夏、過去最高の猛暑に見舞われたのは記憶に新しい。
 「ペッパーミル・パフォーマンス」は、3月に開催されたWBCで、日本代表のラーズ・ヌートバー選手が行った、コショウ挽きを回す動作。「チームのために身を粉にして働く」という意味が込められており、多くの人が真似をした。
 「観る将」は、将棋界で今年10月に誕生した藤井聡太八冠の活躍を受け、これまで将棋に興味のなかった人たちがテレビやネット中継で対局を観戦して楽しむこと。ある意味、スポーツ観戦的な感覚なのだろうか。
 「闇バイト」は、高額報酬と引き換えに、詐欺や強盗などの犯罪を部分的に代行すること。若者を中心に、気軽に応募して、犯罪に巻き込まれるケースが続発。犯罪の首謀者が、応募してきた人を簡単に使い捨てていることも見逃してはならない。
 「4年ぶり/声出し応援」は、新型コロナが5類に分類されたことを受け、それまで自粛していた大きな声を出しての応援が可能になるなど、各地で中止されていたイベントも制限なしのスタイルで復活。声を出さない応援も、普段は聞こえない競技の生の音が聞こえるなどのメリットがあり、応援のスタイルは広まったと思う。
 2020年以降のコロナ禍による暗い雰囲気がいくらか晴れてきた一年だったかなと思う。2024年はさらに世の中が明るくなり、皆さんが心穏やかに楽しく過ごせる良い一年になりますように。 (九夏三伏)

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