コラム「春秋一話」

 年/月

2021年7月19日第7101・7102合併号

「安いニッポン」いつまで続く

 2020年度の国の税収が想定を5兆円超上回り、過去最高の60.8兆円程度に達することが明らかになったと最近のニュース報道があった。これまでは18年度の60.4兆円が最高で、これを2年ぶりに更新するという。
 新型コロナウイルスの影響が懸念されたが、製造業など一部企業の業績が好調で法人税収が伸び、19年10月の消費税増税の効果が年間を通して出たことも税収全体を押し上げたとのことである。
 新型コロナウイルスの影響による業績悪化のニュースが多い中、意外なことと受け止めた方も多いのではないだろうか。旅行業界などはその影響が顕著な業界であるが、旅行会社大手のJTBが資本金を23億400万円から1億円に減資すると報道されたのは今年2月のこと。
 JTBはその時点で2021年3月期に約1000億円の損失が見込まれており、減資により損失を補填できることと資本金1億円以下となることで税制が優遇される中小企業となることが目的だ。
 東京商工リサーチによると同様に今年1億円以下に減資を行う企業は、スカイマークなど都内企業だけで前年比53%増の514社に上るという。2015年に経営再建中だったシャープが同様に減資を試みた際には「大きな企業なのに中小企業のフリをするのか」との批判が相次ぎ、断念した経緯がある。今回は新型コロナウイルスという事情から株主にも受け入れられたということなのだろうが、このように大変厳しい環境の中にも関わらず、法人税が過去最高となるという現実は一体何なのだろう。
 日本の株式市場が持ち直しているという話を聞く。今年2月に日経平均株価が3万円を超えた際、菅首相は「目標の目標のまた目標だった、感慨深い」と述べた。現在は3万円を下回っているが、菅首相が目標に見据えたのは1989年末の最高額だろう。それから30年間、日本の株価は低迷したままである。 一方、米国のダウ平均株価を見ると、1990年からの30年間で10倍になっている。一概に比較はできないが、この30年の間に日本が世界の中で後れをとってきたのは紛れもない事実だ。
 最近「安いニッポン」という本が話題になっている。新型コロナ感染が始まる前の2019年12月に日本経済新聞紙上で特集され始めた記事を再編集して、今年3月に出版されたものである。
 その内容は、年収1400万円はアメリカでは低所得層、ニセコなどの不動産を外国人が買い漁っている、薄給だったアニメーターが続々と中国のアニメ会社に転職しているといった衝撃的な話題が綴られている。
 コロナ禍前の一昨年まで海外からの観光客が日本へ押し寄せていた。日本製品の品質の良さや風光明媚さを目的に外国人が来ていたと思いたいが、実際は自国で購入するよりも日本で買う方が圧倒的に安いと実感できる国の人たちが押し寄せたインバウンド需要であった。日本の国内物価の安さとともに所得水準も、世界の中では決して高くはない水準になってしまったのが現実である。
 今年1月、連合の神津里季生会長とのオンライン会談で、当時経団連会長だった中西宏明氏が「日本の賃金水準がいつの間にかOECD(経済協力開発機構)の中で相当下位になってしまった」と語ったが、年功序列や終身雇用の見直し、就活ルールの廃止などを唱え、日本の経済界を先導した中西宏明氏が先日逝去された。
 経済界の稀有なリーダーを失った日本、これからこの「安いニッポン」はいつまで続くのだろうか。
(多摩の翡翠)

2021年7月12日第7100号

子どもを産み育てやすい国か

 「子どもを産み育てやすい国だと思うか」と聞いたところ、「そう思わない」と答えた人が日本では61.1%にも達した。内閣府の「少子化社会に関する国際意識調査」から分かった。5年に1回、少子化対策に役立てることを目的に実施している。今回は昨年10月~今年1月にかけて日本、フランス、ドイツ、スウェーデンの29~49歳の男女を対象に行った。
 育てやすい国だと「思う」人は、日本では38.3%に過ぎないが、フランスは82.0%、ドイツは77.0%、スウェーデンは97.1%も占める。日本で6割以上になった「思わない」は、それぞれ17.6%、22.8%、2.1%と非常に少ない。
 育てやすいと思う理由では「各種の保育サービスの充実」「教育費の支援・軽減」「妊娠から出産後まで母体・小児医療が充実」「安心して育てられる環境整備」「フレックスタイムなど柔軟な働き方ができる」「育児や出産休暇が取りやすい」「育児休業中の所得保障の充実」などが日本と比べると大きく高い。日本が高かったのは「地域の治安がいいから」だった。
 「小学校入学前の子どもの育児における夫・妻の役割」では「主に妻が行うが夫も手伝う」が日本では49.9%を占めている。「妻も夫も同じように行う」はフランスで60.9%、ドイツ62.7%、スウェーデンでは94.5%にもなる。
 日本で育児を支援する施策として望むものは、過去の結果と比較すると「経済的負担を軽減する手当の充実や税制上の措置」「企業のワーク・ライフ・バランスの促進」「男性の育児休業の促進」「育児休業中の所得保障の充実」が増加している。
 日本の人口はこのまま推移すれば2065年には約8800万人になると推計され、少子高齢化が進展している。2020年の出生数は前年より2万4407人減少し84万832人。過去最少だ。合計特殊出生率も1.34と前年の1.36より低下した。厚生労働省が6月4日に人口動態統計を明らかにしている。
 また、総務省が2020年国勢調査の人口速報集計を6月25日に明らかにした(2020年10月1日現在)。日本の人口は1億2622万6568人。2015年の前回調査の1億2709万4745人から86万8177人ほど減少した。1920(大正9)年の開始(5596万3053人)から前回調査で初めて減少に転じたが、マイナス傾向は定着したといえる。男性は6136万14人、女性は6486万6554人。女性が350万6540人ほど多い。
 国際連合の推計によると世界の人口は77億9500万人。最多が中国(14億3900万人)、次いでインド(13億8000万人、アメリカ(3億3100万人)、インドネシア(2億7400万人)、パキスタン(2億2100万人)。以下、ブラジル、ナイジェリア、バングラデシュ、ロシア、メキシコと続き日本は11番目となっている。
 都道府県別では東京が1406万4696人、神奈川924万411人、大阪884万2523人、愛知754万6192人、埼玉734万6836人と続く。東京は54万9424人増加し、初めて1400万人を超えた。
 増加したのは9都府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、滋賀、福岡、沖縄)。首都圏4都県は人口の約3割を占め、この5年間で80万8000人増加した。一方、北海道(15万2848人減)など38道府県では減少している。全国の市町村(1719)では82・4%に当たる1416市町村で人口減少となった。東京圏への一極集中が相変わらず進んでいる実態が浮き彫りとなっている。
 厚生労働白書は高齢化と同時に65歳以上の単独世帯は31・5%に達し、2040年には約4割、900万世帯になると推計している。内閣府の高齢化社会白書では60歳以上のおよそ3人に1人が「家族以外に親しい友人がいない」という実態を取り上げている。高齢者の孤独が深刻となっていることを指摘する。
 少子高齢化社会はますます進展する。子どもが育てやすく、高齢者にも優しい社会の在り方を幅広い視点から検証し、有効な対策を考えることが求められる。


(和光同塵)

2021年7月5日 第7099号

中計は出たが具体的な道筋示せ

 去る5月に、日本郵政グループの新中期経営計画が「JPビジョン2025」(以下「中計」という)が発表されたのはご存知のとおり。今後5年間に進むべき方向を「共創プラットフォーム」を根本的な方針として据え、デジタル化を進め、更に地域・社会に役に立っていこうという姿勢を表明したものだ。
 中計発表後の関係者の受け止めは、会社が思ったとおりだったのだろうか、気になるところだ。
 日本郵政グループ労働組合(JP労組)は、会社の中計とは別に、組合が考える将来像を予てから示し、同組合の全国大会でも議論されている。働く社員の立場から見て、日本の経済、社会の変化、日本郵政グループの課題の大きさと、これまで経営に「煮え湯」を飲まされた宅配統合後のボーナスカットの経験も踏まえ、組合としてグループの将来を切り開いていかねばならないという姿勢が見て取れる。
 注目したいのは、日本郵政グループが包含する本質的な問題をJP労組が指摘していることだ。ゆうちょ、かんぽの2社は、歴史的低金利下で収益減、そしてコスト削減が必至だが、その費用の多くを占める日本郵便への委託手数料を減らせば日本郵便の収益が減少し、結果として郵便局窓口事業の経営が難しくなる構造。
 これは本来、会社が社員に理解させるべきことではないだろうか。それにとどまらず、このような課題に応えるための打ち手についても、社員に説得力を持った内容で説明する必要があろう。
 中計にはデジタル郵便局など様々な施策が盛り込まれているが、それらがどのように効果を発揮していくのか、会社や社員の生活が「良くなるんだ」という社員の実感を引き出す仕掛けが、会社の次の取組みとして求められる。それがあってこそ、社員が安心して日々の業務に励むことができるし、社外のステークホルダーも日本郵政グループの将来に対して肯定的な評価を行いやすくなるだろう。
 また、中計の中から読み切れないことをもう一つ挙げるとすれば、前述のゆうちょ・かんぽ・日本郵便という3社の置かれた構造の中で、どのように郵便局ネットワークを維持発展させていくのかという点を、分かりやすく説明しないといけないということだ。郵便局窓口事業の収益が減少すれば、コストを削減する必要がある。セグメント別の労働力数は不明だが、日本郵便では3万人相当分を採用抑制等により自然減させる計画だ。
 率直に、社員は要員削減の規模感に対して不安を抱くし、郵便局窓口の費用削減の観点からは、デジタル化すれば何でも解決するという性格のものでもない。むしろ、デジタル化されたサイバー空間の郵便局でサービスが今以上に便利になれば、来局者数が減少する可能性がある。
 郵便局数を簡単に減らせない中、どのコストを減らしていくのか、要員が減るなら2人局が増えるのか、要員のローテーションを柔軟に行うのか、それとも何か別の手があるのか等々、疑問はいくつも想起される。
 これに関連して、6月22日に日本郵便が発表した一部郵便局の窓口時間の短縮の取組みは、実施局が離島などに限られるとはいえ、今後取り得る現実的な選択肢を示したものと言える。
 今回の中計は5年間だが途中で見直しも予定されているし、今後5年間のIT投資計画は中計発表前の4月28日に個別に報道発表されていることを考えると、重要な方針については、それが華々しいテーマでなくても、準備を進め、機を逸することなく社内外に示していくべきだろう。


(ケーニヒスベルク)

2021年6月28日 第7098号

転居届は大切なもの

 家の片づけをしていたら、捨てずにとっておいた手紙や年賀状を見つけた。その中に、ある女性からの手紙が何通かあった。
 今から20年くらい前になる。当時、音楽雑誌のバンドメンバー募集のコーナーで知り合ったその女性と、もう1人男性との3人でユニットを組むことになった。女性がボーカル兼作詞を担当し、男性2人がそれぞれ作曲をする、というスタイルだ。
 ところが動き出してすぐ、私は不要ということになった。作る曲が今風でなく、方向性も違うからという理由だ。
 私も同じように思っていたので、納得してそのユニットから離れた。
 それから2年くらい経ったある日、突然その女性から手紙が届いた。封を開けて読んでみると、その後もう1人の男性と考え方の違いで結局活動を辞めたこと、改めて私の作った曲を聴き、詞を重ねてみたい、といったことが綴られていた。その他に、その女性が書いた詞も同封されていた。
 作詞に関してはプロのお墨付きをもらっているだけの能力があったので、その詞を読んで、やはりすごいなと思った。
 改めて一緒にやろうかという話になり、何年かぶりに会った。わだかまりなどもなく、自然にいろいろな思いやビジョンなどを語り合えた。
 それから、その女性とは事務的な内容についてはメールでやり取りしていたが、詞が完成した時には詞に手紙を添えて私宛に送ってきて、私も曲が完成した時にはカセットテープに録音し、その女性へ宛てて手紙を添えて送っていた。
 その後、その女性が病気を患ったこともあり、活動は実質停止状態となった。喪中が絡んだりして、年賀状のやり取りも止まってしまい、その後送った手紙が転居先不明で戻ってきたこともあり、やがて連絡も途絶えてしまった。
 ちょうどこの頃、携帯電話が世の中の主流になってきていた。私自身、友人や仕事で出会った人たちなどと、携帯電話の番号やメールアドレスを交換していた。
 時が流れ、環境も変わり、ふと「元気にしているかな」と思ってメールを送る。するとエラーで返ってくる。電話をかけてもつながらない、あるいは違う人の番号になっている。ほぼ全ての人と音信不通となってしまった。中には自分にとって大切な存在だった人もいる。今どこで何をしているのだろう、そんな風に思うこともしばしばある。だが今となってはもうコンタクトを取るすべも無い。
 振り返ると、ある程度の時期までは、親しい人の住所・電話番号を手帳等に記していた。しかし、携帯電話が普及するようになって以降、いつの間にか手書きで書き記すことがほとんどなくなり、携帯電話に主に電話番号とメールアドレスを登録しておくだけになっていた。機種変更する時も、新機種へデータを移行するだけだ。相手の住所は全く分からず、手紙を送ることもできない状態になっていた。
 郵便局では、転居・転送サービスがあり、転居届を出すと1年間、旧住所宛ての郵便物等を新住所へ無料で転送してくれる。私自身、引っ越したことを知らせていない相手から手紙が転送されて届いたことがあった。これがもし転居先不明で還付されていたら、連絡は途絶えていたかもしれないところだった。つながりを保ち続けるためにも、転居届を出すことは大切だと思った。
 郵政事業に携わる人たちにとっては、転居届の存在は当たり前のものだが、案外その存在を知らない一般の人も少なからずいると思う。年賀はがきの販売時期など折に触れて、「転居届を出すと1年間、旧住所宛てに届いた郵便物を新住所へ無料で転送します」と、お客さまにPRするといいと思う。
(九夏三伏)

2021年6月21日 第7097号

「Z世代」が担う日本の将来

 最近「Z世代」という言葉を様々なメディアで目にする。「世代」という言葉を辞書で調べると、「親・子・孫など、同じ血筋を引いたそれぞれの代」という意味と「時をほぼ同じくして生まれたり、時代的経験などを共有したりしている一定の年齢層。ジェネレーション」の二つの意味がある。日本国内でよく使われる「団塊(だんかい)の世代」は2つ目の意味で使われており「Z世代」も同様である。
 「団塊の世代」という言葉は1976年に発表された堺屋太一氏の小説「団塊の世代」により名付けられたものだが、1947年から1949年の3年間に生まれた約800万人の加齢とともに、オイルショックを経た日本経済がどのように変容していくかを描いた未来予測小説である。いまこの物語を振り返ってみると1976年当時に経済企画庁の官僚だった著者が描いた未来が、社会の中で現実のものとなっていたことがわかる。
 高度成長期を支えてきた団塊の世代であるが、バブルの崩壊を境に日本経済は大きく変容し、2025年にはこの世代が後期高齢者となることにより医療保障制度が懸念される問題が大きくクローズアップされている。
 最近話題となっている「Z世代」は、1990年代後半から2015年頃までに生まれた世代を指すと言われている。1980年代以降、バブル世代、就職氷河期世代、ゆとり世代など、日本の社会情勢を背景にした名称で呼ばれてきたが、この「Z世代」はこれまでのように日本の時代背景を投影した呼び方ではなく、アメリカで生まれた概念がそのまま使われている。
 アメリカでは戦後の人口増世代をベビーブーマー世代と呼んでいるが、日本の団塊の世代が戦後の3年間に生まれた世代を呼ぶのに対して、アメリカのこの世代は1946年から1964年までの20年ほどの間に生まれた世代を指している。
 アメリカの人口は日本のように第二次大戦後の3年間だけ極端に増加したということはなく、この20年間ほど微増ないしは横ばいで推移しており日本とは異なる。アメリカではこのベビーブーマー世代に続く世代を、ジェネレーションX、ジェネレーションY、そして1990年代後半から2015年頃までに生まれた世代を引き続く形でジェネレーションZと呼んでいる。
 この呼び方が日本でも使用されたということであるが、これまで日本では世代の呼び方を社会情勢に合わせていたのに、何故この世代だけアメリカで使われた呼び方をそのまま使用することになったのだろう。
 世界的にデジタル化が加速してきたのは90年代後半であるが、「Z世代」が育ってきた時代はさらにデジタル化が進み、生活の中でデジタルを活用することが当たり前の真のデジタルネイティブ世代、SNS世代とも呼ばれ、他者との関係性にも変化が現れる。
 これは世界の先進国ではどの地域でも同じであり、デジタルネイティブの世代は個人中心の考え方からダイバーシティ(多様性)やインクルージョン(一体性)という考え方に基づき、他者との関係性を重要視するようになってきたと言われている。
 戦後の高度成長が終わり、バブル崩壊からの終わりの見えない失われた時代、そして世界的なパンデミックなど、混沌とした現代の日本。かつて団塊の世代が高度成長期を担ったように、新たな世代である「Z世代」がこれからの日本の将来を担い、希望をもたらすことができるのか、注目していきたい。
(多摩の翡翠)

2021年6月14日 第7096号

加速する少子高齢化社会

 晩婚化や出産を控えざるを得ない経済状況、一方での医療技術の進歩などに支えられた高齢化、少子高齢化社会の進展が加速している。
 日本は2011年頃から人口減少の局面に入っている。このまま推移すれば2065年には約8800万人になると推計されている。
 合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子どもの数)が1.36(2019年)。人口維持に必要とされる2.08を大きく下回っている。一方で高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合は28.9%で世界最高だ。
 総務省が5月4日に4月1日現在の子どもの数(15歳未満)を明らかにしているが、昨年から19万人ほど減少し1493万人となった。
 1982年から40年連続で減少、過去最少だ。男子が765万人、女子が728万人。年齢別では12~14歳が324万人、9~11歳が314万人、6~8歳が298万人、3~5歳が292万人、0~2歳が265万人。年齢が低いほど少なくなっている。
 総人口は1億2541万人で、子どもの割合は11.9%、昨年より0.1ポイント下がり、こちらも過去最低。1950年(35.4%)に3分の1を超えていたが、第1次ベビーブーム(1947~49年)、言わば団塊の世代が誕生した後は、出生数の減少に伴い低下を続け、65年には約4分の1になった。
 70年代前半には第2次ベビーブーム(71~74年)の団塊ジュニアの出生を反映して、僅かに上昇したものの75年からは再び低下し、97年には65歳以上(15.7%)を下回る15.3%となり、それ以降47年連続で低下している。
 また、昨年からの新型コロナウイルス感染症の拡大によって、2020年の妊娠届が減少している。厚生労働省が5月26日に公表したが、87万2227件で、前年の91万6590件と比べると4.8%減少した。
 今年1月も7万6985件と前年の8万2835件から7.1%の減。今年の出生数は80万人を割り込むのではないかと指摘される。
 妊婦や胎児への影響への不安から、妊娠を控える傾向にあるとされる。ますます少子化が加速する。
 国連人口統計年鑑(2019年版)によると、人口4000万人以上の33か国で、日本は最も低い水準。諸外国は韓国12.2%、イタリア13.3%、ドイツ13.6%、中国16.8%、フランス17.7%、イギリス18.1%、アメリカ18.6%などとなっている。
 高齢者(65歳以上)は3630万人で28.9%を占める。1950年には411万人、4.9%だったが、割合は一貫して増加している。少子高齢化が一段と進んでいるのが現状だ。2013年には団塊ジュニアが出産適齢期の上限とされる39歳を過ぎた。
 少子高齢化は人口減少による経済活動の縮小や現役世代の社会保障の負担増などにより、長期的には社会の活力を削ぐ、バブル崩壊に伴う“失われた20年”などへの対応に追われ、政治は有効な手を打ってこなかったとの指摘もある。しかし、人口増が全てを解決してくれるのだろうか。
 地球環境への負荷を考えても、経済の成長と人口増加が無限に続くことが良いとは限らない。SDGsへの関心も高まっている。地域で資源を回す循環型の持続可能な社会の仕組みを構築すべきだろう。自然との共生など田園回帰の若者も増えているという。
 経済成長や人口増が社会の活性化につながるとの頸木から外れ、一人ひとりが幸せに生きるとは何か、成熟した社会とはと考えることも重要だろう。
 高齢者を支えると同時に子どもを育てやすい環境の整備も急がれ、こうした分野で働く人の待遇改善や新たな事業の形成が求められる。地方創生に地域の拠点としての郵便局ネットワークの活用も期待される。
 日本と面積が近く、経済的に豊かとされるドイツは約8000万人、フランス、イギリスが約7000万人。また、子育てしやすい環境の整備、合計特殊出生率が回復したフランスやスウェーデンでは、出産・育児手当といった経済的支援と同時に、保育の充実や就労の両立支援が有効とされている。
 日本の保育や介護に携わる人の収入や労働環境は厳しい。これらの分野の需要は必ず拡大する。少子高齢化社会の進展が著しい日本、国家予算の使い方、企業の公平な税負担などの解決、非正規雇用の拡大による格差是正が急務だ。
(和光同塵)

2021年6月7日 第7095号

中期経営計画の更に上を目指せ

 5月14日、2020年度決算と共に、日本郵政グループの新しい中期経営計画である「JPビジョン2025」(中計)が発表された。お客様の信頼回復を第一の取組として、「共創プラットフォーム」を方針として打ち出し、これまでの郵便局ネットワークというリアルの資産に加えて、デジタル化を推進し、グループ外の企業等と連携することで価値を創造し、より豊かな生活・人生を実現させていくというものである。
 昨年11月に中計の「基本的考え方」を事前に公表し、グループ社員にも意見を募集するなど、これまでにない開かれた姿勢で策定された。また、対象期間も5年として、3年よりも長期の視点に立った意欲的な見通しでもある。
 発表後の世の中の反応はどうか。金曜日の発表後、週明け月・火曜日の日本郵政の株価は、中計や決算の結果を反映したというよりは、株式市場全体の中での動きに影響されたもののように見える。大手紙の報道を見ても、中計本来の経営の方向・取組ズバリというより、金融2子会社の株式処分の方が注目されたようである。
 中計の内容については論点が数々あるが、いくつか考えてみたい。
 第一に、リアル×デジタルの郵便局の価値について。デジタル郵便局という考え方は、コアビジネスとデジタル化とを相乗させて伸ばすという意味で王道と言える。では、デジタル郵便局とは、どのようなサービスなのであろうか。実際にお客様が「これは便利、使える!」と思えないと前途は開けない。
 現在でも、ゆうパックのスマホ割、再配達の申し込み、電子内容証明郵便の受付などはネット対応しており、ゆうちょダイレクトもウェブで提供している。まさかそれらを束ねましたで終わりとはならないであろうが、具体的で魅力的なデジタルサービスを期待したい。デジタル面でも、競合他社との違い、メリットを感じられるようにしたいところである。
 第二に、会社ごとに労働力減少の具体的数値を何人分と発表している点。これはこのグループにとっては思い切った決断と言えよう。採用減により無理なく減らすというのは理解しやすいし、賛同は得やすい。
 このうち日本郵便では、郵便物は今後も継続して減少する、金融2社から受け取る手数料は減少するという厳しい経営環境の下で、労働力減の詳細な内訳は不明であるが、郵便局ネットワークは維持しなければならないのであるから、窓口局は、二人局を増やすのであろうか。何らかの柔軟な運営方法を実施するのであろうか。方向性について、少なくとも社員には更に丁寧に説明すべきであろう。
 最後に、目標である着地の数字について。25年度の日本郵便の営業利益では、郵便・物流で330億円、郵便局窓口で50億円と、20年度実績からいずれも大幅減である。これだけ立派な計画を実践しても、また楽天と提携してもこの水準しか見通せないのは、相当な厳しさである。定性的な面では、今回の中計の取組内容は正鵠を得ている。しかし、5年後の目標値が「追い付いていない」点の評価は分かれるところであろう。
 世の中には、中計を発表したのに市場にほぼ無視される大企業もあると聞く。日本郵政グループは今回の中計を理由に株価が理不尽な動きとならなかったことは幸いと思うが、叡智を結集して策定したせっかくの中計である。完遂し、否それ以上に実施し、計画を上回る数字を達成することで、グループの更なる発展につなげることを期待したい。      
(連環子)

2021年5月31日 第7094号

協力し助け合える関係を

 かつて集配業務をしていた時のこと。同じ班に当時、大変お世話になった副班長がいた。その人は労働組合の重鎮で、仕事がとてもできる人だった。
 ある時、私が配達をしていて、とあるマンションに郵便を配達しようとした。そのマンションは3階建てで、1階に集合受け箱が設置されていて、いつもそこに郵便物を配達していた。
 その集合受け箱の中の1つが、それまで表示されていた名前と部屋番号が無くなっていることに気が付いた。引っ越したのかな、と思い、マンションの階段を上ってその部屋の前まで行った。
 すると、ドアノブに、新規入居者へ向けた電気・ガス・水道関係の申込書が袋に入ってぶら下がっていた。電気メーターを見たところ、完全に止まっていた。
 これは間違いなく引っ越したなと思って帰局後、配達原簿を修正した。とはいえ、転居届が出るかもしれないので、暫しその人(Aさん)宛ての郵便物は保管をしておいた。
 1週間を過ぎた頃、転居届は出ていないので、班長に相談し、Aさん宛ての郵便物は保管していたものも含めてその後、転居先不明で還付処理をしていた。
 すると数日後、Aさんから「住んでいるのに勝手に還付しやがって!」との強い苦情申告が来ていると、課長から言われた。一瞬「え、なんで?」と思った。事情が良く分からないまま、気が重いけれどもAさんのところへお詫びに行かなくては、と思った。
 その時だった。そのやり取りを聞いていた副班長が「あ、いいよ行かなくて。これは俺が行ってくるから」と言ってくれた。自分としてはその言葉に甘え、お願いすることとした。
 その日の帰局後、ほどなくして副班長が戻ってきて、多くは語らずに「あの件は大丈夫だから」とだけ言ってくれた。私は「すいません、ありがとうございます」と応えた。副班長は時間ギリギリだったこともあって、必要なことを済ませると、すぐに退勤して行った。
 同じ班の先輩たちの話で、その後に分かったこと。「Aさんは非常にたちの悪い人物である」「今までにも郵便局や郵便配達に関する苦情が何度となくあった」「借金を抱えているらしく、よく失踪する」。
 この時、なぜこういうことが起こったのかというと、借金の取り立てから逃れるため、引っ越したことを装い、前述のようにもぬけの殻に見せかけ、実際はどこかに身をひそめていて、ほとぼりが冷めた頃に戻ってくる腹積もりだった、ということらしい。
 後日、副班長に改めてお礼を言ったところ、「(Aさんは)かなり荒っぽい、たちの悪い奴なんだよ。でも俺は昔からよく知ってる奴だから。大丈夫、気にしなくていいよ」とのことだった。
 こうして事なきを得たわけではあるが、もし私が直接Aさんと対峙していたら…と考えると、何とも言えない不安にかられる。
 その後、私なりに「引っ越したのかな、というケースに遭遇したら、可能な限り管理人や管理会社に聞いて確認してみる」「時間が経ってから転居届が出るケースもあるので、当該者宛ての郵便物は1か月くらいのある程度長い期間で保管をしておく」など、対応策をいろいろと考えた。
 仕事をしていると、予期せぬ場面に遭遇することがある。自分がトラブルに巻き込まれるかもしれない、あるいは同僚がそうなるかもしれない。
 同じ部署、セクションで普段仕事をしている間柄で、何かトラブルが起こった際に自然に助けてあげられる、あるいは助けてもらえる、そうした人間関係を日頃から築いておくことは大切だなと思った。もちろん自分が先輩・同僚に甘えてばかりではいけないが…
(九夏三伏)

2021年5月24日 第7093号

令和への改元から2年

 2019年5月1日の令和への改元から2年経ち、改めて日本の元号、改元について調べてみた。
 元号はもともと年号と呼ばれていたものだが、明治維新の際に正式に元号という呼び方になった。改元とは元号(年号)を変えること、改めることを指すが、日本では1300年以上の歴史の中で248回に及ぶ改元が行われている。
 私たちの年代では昭和から平成、そして今回の令和への改元しか記憶にないが、日本の歴史ではこれほど長い伝統あるものとなっている。
 日本の最初の元号は「大化」である。飛鳥時代、中大兄皇子(後の天智天皇)と中臣鎌足(藤原鎌足)が朝廷の実力者・蘇我氏を討ち、天皇を中心にした国家づくりを始めた「大化の改新」の際に制定されたものである。中国(当時は唐)に派遣されていた遣唐使が日本に持ち帰ったものであり、中国をモデルにした国づくりをしようとした意思表示と言われている。
 その後、大化、白雉(はくち)と続いたものの、すぐには根付かず、途絶えた時期もあり、現代まで続く元号のスタートは701年を元年とする「大宝」である。この年、大化の改新から半世紀以上を経て「大宝律令」が完成し、国家統治の基本となる法典が整備され、その中に「公文書などでは年号を用いよ」という一条が定められ、以後、途切れることなく現在に至るまで元号が使われ続けている。
 このような経緯のある元号であるが、モデルとなった中国では、ラストエンペラー溥儀(ふぎ)で有名な清朝が滅亡した1911年の辛亥革命により廃止され、他の東南アジア各国においても元号を使用している国はなく、現在、元号を制定しているのは世界で日本だけである。
 これまでに改元が248回行われているが、元号制定時の天皇から今上天皇までは約90代であり天皇一代に一元号でないことがわかる。
 明治維新前までは、災害が起こったときや慶事があったときなど様々な理由で改元され、また、室町時代の初期には、天皇家が南朝と北朝にわかれて争い、それぞれに別の元号を立てていることなどから多くの改元が行われてきたが、江戸時代最後の元号となる慶応から明治に元号が変わる際に、明治政府は、改めて天皇を中心とした国家づくりを目指すため天皇一代につき元号を一つとする「一世一元の制」を定めた。
 しかし、この制定も終戦後の日本国憲法の皇室典範には元号を定める規定がなく、昭和という元号が慣例として使用されていたため、昭和天皇の高齢に伴い、昭和54年に「元号法」が定められ、「一世一元の制」など元号の決め方について明確化された。
 1989(昭和64・平成元)年、昭和天皇の崩御による皇位継承により元号は昭和から平成に変わるが、その後、2016(平成28)年、現在の上皇から正式に生前退位の意向が表明された。2019年4月に「令和」が事前公表され、5月、約200年ぶりに天皇の譲位に伴う改元が行われ現在に至っている。
 令和改元から2年、昨年からの新型コロナウイルスの災厄が大きくクローズアップされ、医療機関の逼迫やワクチン接種の遅れなど日本の対策が他国に比べて劣っているとの批判の声が聞かれるが、それらの批判に対して国内で暴動などの行動として表面化することは今のところない。これも伝統と文化に根ざした日本という国だからだろうか。
 コロナウイルスが早期に終息し、再生とともに令和が希望の元号として親しまれる日が来ることを願う。
(多摩の翡翠)

2021年5月17日 第7092号

役職や立場に関わらず提言を

 かつて、本務者として郵便配達をしていた。その後退職し、暫し郵政から離れた後、ゆうメイトとして都内の郵便局に勤務した時のことだ。
 最初、出勤時間は9時30分だったが、その後9時出勤となった。その初日、9時ちょっと前には所属する班のところへ向かった。
 そして9時になると、何やら聴いたことのある音楽が流れてきた。そう。郵便体操だ。ラジオ体操みたいな伴奏で、「今日も元気に郵便体操をいたしましょう!」というアナウンスが流れ、「足を大きく横に開いて、大きく背伸びの運動」から始まる。
 本務者だった頃は毎朝、当たり前のように郵便体操をやっていた。当時は同じ職場の人たち、嫌々ながらも絵に描いたようにかったるそうに皆さん郵便体操をやっていた。ただ見た限り、やっていない人はいなかった。その郵便体操が終わると、作業に取り掛かっていた。
 私も9時出勤となってからは必然的に郵便体操をしていたが、別に嫌なわけではなかったので、それはそれでよかったが…。ただ、同じ班に1人、頑として郵便体操をしない人がいた。当時の某組合の幹部でもあったその人は「こんな中途半端な時間に郵便体操をやれというのはおかしい」との思いで、課長や課長代理等が注意しに来ても、頑なに郵便体操をやらずに黙々と道順組立をしていた。
 私も非常に違和感を抱いていた。「何で9時に郵便体操をやるのかな。8時の始業時間とともにやるべきものではないのかな」と。
 そんな日々が続く中、私はさらにあることが気になるようになった。9時に出勤してくる組立てのパートさんたちの存在だ。普通、9時出勤ですぐに仕事に取り掛かるが(記憶は定かではないが、パートさんたちのミーティングは職員・ゆうメイトが配達に出発した後の時間帯に行われていたようだ)、9時から郵便体操が始まるので、出勤して来ても特に何もせずに郵便体操が終わるのを待っている。さらに、郵便体操に引き続いて班ミーティングを行うので、何もしない時間が続くことになる。
 その後、私は班長に依頼され、8時出勤となった。8時から職員たちと一緒に仕事が始まる。郵便物の抜き出し、大区分、道順組立、という流れで仕事をしていた。
 そして9時になると郵便体操の音楽が流れ始め、課長や課長代理らが郵便体操をやるように呼びかける。やはり違和感はぬぐえない。私はゆうメイトの立場ではあったが、思い切って課長に次のような話をした。
 ▽9時から郵便体操をすると、9時に出勤してくるパートさんたちが何も作業ができない状態になっている▽9時という時間はほとんどの人が大区分を終えて道順組立をしている。転居・一部転居、転入情報など、班のなかで確認しながら集中して作業をしている時間帯。そこを一律に9時に郵便体操をすると、組立作業が強制的に中断させられ、集中力も途切れて誤配やトラブルの原因にもなる―という内容だ。
 課長はその間、頷きながら話を聞いていた。すると翌週月曜日、8時の始業直前に課長代理が大きな声で「今日から最初に郵便体操をやります。それから作業に入ってください」といった周知を行い、その日から8時に郵便体操をするようになった。某組合の有力者も、のびのびと郵便体操をしていた。組立てパートさんも9時に出勤してきて「あれ?郵便体操って無くなったの?」と一瞬キョトンとしていた。
 組織は例えば社長を中心に部長、課長、係長、一般社員、アルバイトなど、いろいろな立場の人で構成される。その中で、役職等に関わらず、疑問に思ったことを提言していくことは大切だと思う。
(九夏三伏)

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