コラム「春秋一話」

 年/月

2021年3月1日 第7081号

行動原理は定着しているか

 かんぽ不適正問題を端緒に、「創業以来の危機」に直面した日本郵政グループ。お客様は置いてきぼりとなり、社会の信頼を失い、3か月の業務停止命令という行政処分を受ける結果となった。
 その原因は「かんぽ生命保険契約問題 特別調査委員会」の報告にあるように、一部の募集人のコンプライアンス意識の低さのほか、高実績者に依存せざるを得なかった状況、上司も看過して不適正が黙認される雰囲気が醸成されたこと、営業目標必達主義の下で厳しい営業推進管理などがあった。
 また、本質的な問題として、根本的原因は追究されず問題が矮小化されたこと、さらに重層的な構造の中、郵便局の実態が把握されなかったことなどが指摘された。これらを受け、2020年1月に日本郵政グループの3社トップが交代。適正な営業推進態勢づくり、コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成、顧客や社員の声等からのリスク分析や内部統制強化等のガバナンス強化が図られた。
 このうち、重要な取組の一つに、経営理念の再度確認、原点に立ち戻る活動が挙げられる。グループ会社社員に「経営理念ハンドブック」を配付し、日本郵政グループの経営理念、経営方針、行動憲章、グループ各社の経営理念を再認識し、社員の行動のよりどころとしようというものである。
 多くの企業において、平時のほか、大きな問題が発生したときに、創業の精神、創業者の理念、あるいはその企業の存在する根本的意義に立ち戻る動きが見られる。企業といっても人の集合体であり、永続的に事業を行っていくために、これは重要な営みである。
 前島密翁が明治維新直後に作り上げた郵便制度。江戸時代の通信を担った飛脚などの関係者を巻き込み、新事業の財源にメドをつけ、短期間に郵便制度を作り上げたことに思いを致すと、現代人にしてみれば、郵便はむしろ古いメディアに属するが、その構想から実現までの尽力は、とてつもない努力の結晶である。
 前島翁は「縁の下の力持ちになることを厭うな。人のためによかれと願う心を常に持てよ」を信条としていた。この言葉の、日本郵政グループにおける今日的意義は何であろうか。それを探る一つのヒントは、「ハンドブック」が実際どのように活用されているかではないだろうか。
 経営理念を自覚し、しかも実施できているか。すなわち、社員自身の血や肉になっているか。まずは、会社幹部(役員、支社長等)が率先垂範しているか。中間マネジメント層は実践できているか。そして、社員一人ひとりが、頭で理解し、行動も起こしているか、お客様とは前島翁の精神で接しているか。
 他社の例を見ると、日本航空が経営危機に直面した際、高齢の稲盛和夫氏が再建を担った。その薫陶を受け、同社のサービスや商品に携わる全員がもつべき意識・価値観・考え方である「JALフィロソフィー」(フィロソフィーは、哲学、価値観といった意味を持つ)が同社社員自ら策定された。これを教育し、根付かせていった。
 「フィロソフィー」が浸透するに従い、仕事に対する姿勢、考え方が変わっていったという。会社として、継続して定期的に研修を行うほか、社員の自主的な勉強会も行われている。
 日本郵政グループでも、行動の原点について、改めて社員一人ひとり、とりわけ率先すべき立場の者が、自分ごととして、胸に手を当てて考えてみてもよいかもしれない。
(連環子)

2021年2月22日 第7080号

心の傷はずっと残るもの

 意図的にではなく言った言葉が、相手を傷つけてしまうことがある。
 小学校低学年の時のこと。担任の先生は女性だった。ノートに親が算数の計算問題を書いて、それを解いて答えを記入して、親に丸付け(採点)してもらって先生に提出すると、「よくできました」というスタンプを押してもらえる、という学習を毎日していた。
 ある時、私がノートを提出すると、先生はこう言った。
 ―これ、自分で(問題を)書いて自分で丸を付けたんじゃないの?―
 ショックだった。一生懸命頑張って、スタンプを押してもらうのが楽しみで、毎日やっていることなのに、どうして…
 帰宅後、母に話をしたら、母は自分が毎日ちゃんと問題を作成して書いて丸つけもしている旨を連絡帳に書いてくれた。
 翌日、連絡帳を先生に提出した。うろ覚えだが、「そっか、ごめんね」というようなことを言われたような気がする。
 小学校中学年の時にはこんなこともあった。担任の先生は男性だった。授業参観の日で、多くの保護者が教室に訪れる中、どの教科だったかは忘れたが、担任の先生が何かの質問をみんなにした。誰もわからずに、挙手する人もいなかった。私もいつもならすぐに手を挙げるところだが、パッと答えが思い浮かばずに、自分から挙手はしなかった。
 誰も挙手をしない中、先生が私を指名した。突然指名されたので戸惑ったが、まずは起立をして、自信は無かったが、こうかな…と思うことを答えた。すると先生はこう言った。
 ―お前の喉はガンか?―
 「えっ?」と思って呆然とし、そのまま着席した。そこから後のことは頭が真っ白になったような感じで、ほとんど覚えていない。
 ただ、家に帰ってきてから1人で泣いていたことだけは覚えている。
 その後、母が帰宅した。母によると、授業参観の後で行われた保護者会の中で、先生の私に対する一言が相当批判の的にさらされたようだ。母も私に「あれはひどいよ」って言ってくれた。
 翌日、すっきりしないまま学校へ行った。すると先生が来て、「ちょっと言い方は悪かったけど、もっと元気よく答えてほしかったんだ」というようなことを言った。それに対して私はどんな反応をしたのかもあまりよく覚えていない。
 それ以降、登校拒否になったわけでもなく、普通に登校はしていた。ただ、先生に対してはどこか壁を感じるようになった。自分からはほとんど先生に話しかけることも無くなった。
ふと昔を振り返った時、やはりいくつになっても思い出してしまう出来事だ。
 その後、中学、高校、大学を経て社会に出たが、その間に言葉で傷ついたことは何度もあった。
 しかし、自分自身も成長しているので、それなりには受け止められるようにはなった。ただやはり、傷ついた言葉は記憶から完全に消し去ることはできない。
 心無い言葉で、人によっては心が折れてしまうこと、トラウマになってしまうこともあるだろう。
 学校であれ職場であれ、集団の中では人と接することになる。
 人に言葉をかける、指導をする、注意をする、そうした場面も当然出てくるだろう。そうした時に、相手はどういう人なのか、温厚なのか、物静かなのか、はきはきしているのか、どんなふうに受け答えするのか、そうしたことを一歩立ち止まって考えて、相手に合わせて言葉をかけることが大事だと思う。
 もし本意ではないにせよ、相手を傷つけるようなことを言ってしまったならば、しっかりとフォローすることも大切だ。
 相手をいかに思いやれるか。難しいテーマだが、特にこれからの時代、必ずや必要になってくることだと思う。
(九夏三伏)

2021年2月15日 第7079号

好評の「地球の歩き方・東京」

 「地球の歩き方」というガイドブックをご存知の方も多いだろう。海外の観光名所や宿泊施設、現地で役に立つ細かい事情などを紹介する1979年刊行の定番ガイドブックである。約40年前、第1弾として「アメリカ」編と「ヨーロッパ」編の2冊が発行されたが、その後、世界各地を紹介するシリーズとして100タイトル以上が刊行されている。このシリーズに昨年9月、初の国内版として「地球の歩き方・東京」が刊行され、発売以来、既に7刷8万部とベストセラーとなっている。
 出版社によると「東京五輪を記念し、採算度外視で始まった計画、これで売れなかったら国内版は売れないと考えていた」と、当初は五輪をきっかけに日本各地から上京してくる観光客やビジネスマンの需要を狙ったそうだ。五輪の延期で当初の目論見は外れたが販売は好調である。
 これだけ販売好調な理由は海外版に親しんできた愛読者の需要を喚起したこともあるが、潜在的に国内の旅行需要が根強いことを物語っているのではなかろうか。しかし、昨年来のコロナウイルス感染拡大の影響を受けた観光需要の落ち込みは大きい。「鎖国状態」とまで表現される海外からの訪日客の激減、そして日本人の海外旅行の激減は深刻だが、意外にも旅行消費額に占める海外需要は低い。
 2019年の日本国内の旅行消費額は27.9兆円であるが、このうち訪日外国人の需要は4.8兆円(17.2%)、日本人の海外旅行需要は1.2兆円(4.3%)であり、全体の8割近くは日帰り旅行を含めた国内旅行である。昨年来コロナウイルスの影響で海外からの旅行者がほぼ0に近くなっているが、旅行業界にとって最も大きな打撃は国内旅行を控えた日本人の需要である。
 このような時期に国内の旅行ガイドブックがベストセラーになるのはどのような理由だろう。そのヒントが「地球の歩き方」事業をめぐる出版社の動向にも関係があるようだ。
 1979年刊行の「地球の歩き方」は出版社ダイヤモンド社の子会社であるダイヤモンド・ビッグ社が発行していた。同社は「地球の歩き方」をはじめとする海外旅行ガイドブックの出版を中心に事業を展開していたが、新型コロナウイルスによる海外旅行関連の事業が大きく変動したことを受け、学研ホールディングスの子会社である学研プラスという会社に今年1月に事業譲渡された。
 買収した学研プラスは「今後の二大成長戦略である“DX”と“グローバル”での拡大に寄与するものとして事業を譲り受けることとした」と述べている。学研プラスはここ数年の間に電子出版、デジタルサービス事業企業、教育のICT化ノウハウを持つ企業を吸収合併している。これらを総合すると、今後、デジタル技術をさらに発展させ、紙の出版物とデジタルとを組み合わせた旅行需要だけでなく様々なサービス展開を目論んでいるのだろう。
 「地球の歩き方・東京」の好調さはこのような企業戦略の方向が決して誤っていないことを証明しているのではないだろうか。コロナウイルスが早期に終息し、このような将来予想が現実のものとなり、国内旅行だけでなく海外旅行にも心置きなく出かけられることができるようになることを願いたい。
(多摩の翡翠)

2021年2月8日 第7078号

124年振り、2月2日の節分

節分や鬼もくすしも草の戸に(高浜虚子)
 くすし(薬師)とは医者のこと。新型コロナウイルス感染症の防止のため、2月2日となった今年の節分は、様々な行事も工夫を凝らして行われた。
 風物詩ともなっている千葉県成田市の成田山新勝寺の節分会、恒例の大相撲力士や歌舞伎俳優らを招いて、特設舞台で行われる豆まきは中止された。コロナ禍でも豆まきを安全にと、鬼の顔をプリントしたフェースシールドも発売された。

節分やよむたびちがふ豆の數(正岡子規)
 數は数の旧字体。節分会は立春前日に厄災を払い、一年の幸を祈る伝統行事。節分の夜、鬼を追い払う(厄を払う)ために、「福は内、鬼は外」と連呼し、一般的には年男が豆をまく。豆は「福豆」とも呼ばれ、家庭では父親が鬼に扮し、子どもが楽しんで豆を投げただろう。コロナの邪気も払いたい。
 健康を祈り数え年の豆を食べる風習のある地域もある。もともとは大晦日の行事で、新暦になり大晦日・元日と節分・立春が大きくずれたため、年取りの行事ではなくなった。年齢よりも一つ多くの豆を食べる風習は、その頃の名残である。
 節分とは季節の分かれ目で、もともとは立春、立夏、立秋、立冬の前日を指した。今では立春の前日を呼ぶことが多い。立春がずれると節分もずれることになる。
 地球が太陽を一周する時間は365日と6時間弱。端数があることから4年に1回、1日を増やして調整する。うるう年だ。1年間を二十四節気に当てはめて運用しようとすると、少しずつ誤差が生じ、その調整のため立春も動く。毎年、国立天文台が発表する。
 立春の日が2月3日(節分は2日)になるのは1897(明治30)年以来124年ぶりという。次に節分が2日となるのは2025年だそうだ。逆に約37年前の1984(昭和59)年は立春が2月5日で節分が4日だったそうだが、記憶にある人はいるだろうか。

わがこゑののこれる耳や福は内(飯田蛇笏)
 昨年は「鬼滅の刃」の映画が話題となったが、そもそも鬼とはどういうものだったのだろうか。地域によって民俗学的な背景があるだろうが、祖先の霊、人間の心情、さらには大和朝廷が支配領域を広げていく過程で反抗した人々ともされる。鬼伝説は各地に残っているが、東北地方に多い。鉄や砂金などの産地で、中央集権国家にとって支配下に置くことが重要だった。
 各地において道祖神、すなわち“境界”の守り神として信仰を集めたのが地蔵。境界のあちら側、いわば異境に鬼はいるとされた。あちら側は日常の秩序ではなく、神秘的な非日常が立ち現われるという観念が生じたが、同時に鬼は悪魔を払い幸せをもたらす神でもあった。秋田の「なまはげ」に代表されるように、来訪神としての鬼も各地に受け継がれている。鬼にちなむ祭りも多い。
 民俗学者の折口信夫は“かみ”と“おに”の同義説を出した。それらは「人間の心に動く哀切な両面」で、「われわれ自身が孤独な現代の鬼であることの証拠かもしれない」と、歌人の馬場あき子は『鬼の研究』(1971年)で述べる。
 また、鬼は「体制が付与し強制した烙印に過ぎない」「人間的なエネルギーの発散者」「鬼とはやはり人なのである」と、 大衆によって投影され受容されてきた鬼のイメージと実体とを探っていく。馬場は「目に見えぬ鬼とはいかに苦しみて尾根より行きし人のこころぞ」と詠う。
 語り継がれてきた鬼、人との関わりは深い。異形・魔物というイメージの強い鬼だが、実は人間性をときに代弁している。鬼は個々の人間の心の中に存在しているとも言えよう。鬼は「人間とは何か」を突き付けているのだ。

豆とりて我も心の鬼打たん(志太野坡)
 古くから季節の変わり目は、健康に注意をと戒められてきた。疫病や災害など人知を超えたものを払う祈りの節分も過ぎた。今一度行動を引き締め、コロナ退散といきたい。同時に己の邪念や私利私欲などを省みる、良い機会となったとしたら幸いだ。
(和光同塵)

2021年2月1日 第7077号

人口減少は諸悪の根源か

 昨年は5年に一度行われる国勢調査の年であったが、国内では人口推移の統計として国勢調査とは別に「人口動態統計」という調査が行われている。
 国勢調査が「静態統計」と呼ばれるのに対して、市区町村に出生、死亡、婚姻、離婚の届出が届けられた都度、その全数を行政側で調査票に転記し、これを厚生労働省がまとめ、月報、年報で公表されているため「動態統計」と呼ばれている。
 厚生労働省はこの取りまとめ結果を確定値で公表するとともに、毎年末に年間推計を公表している。
 推計項目は、出生数、死亡数、自然増減数、婚姻数、離婚数の5項目であり、自然増減数からその年の人口増減数を推計している。
 ところが、昨年12月21日に厚生労働省は2020年の年間推計を行わないことを公表した。年間推計値は前年の確定値に対して、当年10月までの速報値などを使い算出しているが、2020年は前年までと各種数値が異なっているという。
 具体的には、死亡数が10月までの累計で減少、婚姻件数が大幅に増減、離婚件数が昨年4月以降大幅に減少しているなど例年と異なり、これらのデータを元に機械的に算出した場合、実態と乖離することが想定され、1971年に推計を開始して以来初めて公表しないこととなった。
 ただ、この例年と異なる数値が新型コロナウイルス感染拡大と関係しているかについては分析できていないという。
 一方、2020年の国勢調査の結果は、一部が本年6月頃に「人口速報集計」として発表されるが、今回の調査でもどこまで人口減少が進んでいるか注目される。
 日本の人口が2011年から減少していることは、2015年の国勢調査で明確になった。
 2010年の国勢調査時に1億2800万人だった日本の人口は、5年後に1億2700万人と約100万人減少しており、これらの情勢から50年後の2065年には9000万人、100年後には5000万人とまで推計されている。
 さらに、2019年末の人口動態統計の推計値では自然減数が一段と進み、1年間で約50万人減少している。少子高齢化問題など「人口減少こそ諸悪の根源」と言われる所以である。
 しかし、今回の人口動態統計が推計不能となったように、不確定な要素は今後も現出する可能性はあり、また、今後の国内の政策によっても動向は変わる可能性を秘めている。
 そもそも日本では過去に人口増加が問題になっていた時期もある。
 明治維新期の1886年に3400万人程度だった日本の人口は終戦時には、およそ7200万人と倍以上になっている。戦前からの政府による海外移住の奨励、産児制限などの対策によっても人口増加を抑制することができず、1960年代には住宅難という新たな問題が発生し、郊外への住宅地開発が加速され、その都度「人口さえ減れば問題は解決する」と言われていた。
 ところが、1990年代になり人口減少の兆しが明らかになると、手のひらを返したように「人口減少こそ諸悪の根源」と言われ始めたわけである。
 人口動態統計の異常数値がコロナ禍によるものかは不明であるが、今回のコロナ禍により、テレワークなど働き方の変革や生活様式の変容など、これまでにない変化が日本に訪れている。
 この変化を契機に日本という国のあるべき姿が見直され、人口減少に伴う少子化、高齢化などを初めとした社会の諸問題について良い解が導き出されればと願う。
(多摩の翡翠)

2021年1月25日 第7076号

あの日の郵政事業 1月

▽平成4年(1992)1月27日=郵政省は自治省との合意に基づき、自治体が郵便局に設置した専用ファクシミリを利用して、住民票の交付請求ができる新サービスを開始すると発表した。申込みの翌日には、請求者に自治体から郵送される。まず、3月から兵庫県津名町の5郵便局、4月から北海道新十津川町の2郵便局で開始となった。

2021年1月18日 第7075号

丑年生まれは1066万人

 丑年に生まれた人は1月1日現在で1066万人。総務省統計局の推計で、男性は517万人、女性は549万人。総人口1億2556万人(男性6110万人、女性6446万人)の8.5%を占め、十二支の中では3番目に多い。ちなみに最も多いのが子年の1138万人、次いで亥年の1122万人。
 年齢別では、第1次ベビーブーム(昭和22~24年)世代で、今年に72歳となる24年生まれが211万人と最多。第2次ベビーブーム(46~49年)の48歳になる48年生まれが203万人、60歳になる36年生まれが149万人と続く。最年少の平成21年生まれで12歳を迎えるのが106万人、12年生まれで84歳になる109万人より3万人も少ない。なお、96歳となる大正14年生まれは19万人。
 また、新成人(1月1日現在で20歳、平成12年生まれ)は124万人。男性は64万人、女性は60万人。男性が4万人多く、女性100人に対して105.6(人口性比)となっている。総人口に占める割合は0.99%。前年に比べると2万人ほど増え、0.02ポイントの上昇。2年振りの増加・上昇となったが、総人口に占める割合は11年連続で1%を下回っている。
 推計を開始した昭和43年からの新成人の推移を見ると、第1次ベビーブーム世代の24年生まれが成人に達した45年が246万人(総人口に占める割合は2.40%)と最も多くなった後、減少に転じて53年には152万人(同1.33%)となった。その後、50年代後半から再び増加傾向となり、第2次ベビーブーム世代が成人に達した平成6年の207万人(同1.66%)をピークに減少傾向に戻り、23年からは総人口に占める割合も1%を切っている。
 今年の新成人は21世紀の始まりとともに歩んできた。インターネットやSNSなど情報革新の波に洗われ、大きな変化の中で育ってきた。新型コロナウイルス感染症の影響で、今年は成人式がオンライン開催や中止となった自治体も多い。新たな門出に晴れ姿を見せられないのは辛い思いだろうが、これも糧にして逞しく生きて欲しいと願う。
 十干十二支では今年は「辛丑」(かのとうし)。「辛」は思い悩みながら、痛みを伴う幕引きを意味し、「丑」は発芽直前の曲がった芽が硬い殻を破ろうとしている状態で、命の息吹という。「辛丑」は変化が生まれ、新たな生命が萌し始めることで、新しいことにチャレンジするのに適した年ともされる。
 ひと巡り昔の「辛丑」は60年前の昭和36(1961)年。戦後社会も大きく変わりつつあった。首相は所得倍増計画を打ち出した“経済”の池田勇人。高度経済成長の初期として、3年後の東京オリンピック開催に向け、経済は活気づいていた。テレビ、洗濯機、冷蔵庫の“三種の神器”も急速に家庭に普及しつつあった。人々は「上を向いて歩こう」(坂本九)、「スーダラ節」(植木等)、「銀座ドドンパ娘」(渡辺マリ)、「銀座の恋の物語」(石原裕次郎、牧村旬子)といった流行歌を口ずさんだ。
 NHK朝の連続テレビ小説も始まる。初回は獅子文六原作の「娘と私」。スキー客が100万人を突破、登山者は224万人にのぼりレジャーブームと言われた。大鵬、柏戸が同時に横綱に昇進、“柏鵬時代”が幕開けた。一方で少年少女の睡眠薬遊びが社会問題に。気象用語の「不快指数」もこの夏から使用が始まった。
 海外ではソ連のユーリイ・ガガーリンを載せた有人宇宙船が地球一周に初成功。「地球は青かった」の言葉を残す。アメリカでは第35代大統領にジョン・F・ケネディが就任、史上最年少の43歳、ニューフロンティア精神を強調。しかし、東ドイツは東西ベルリンの境界に壁を構築、冷戦の危機は世界を揺るがせた。
 1億総中流社会の形成への弾みとなった高度経済成長、多くの矛盾や公害などの社会課題も生じた。ただ、生活が豊かになるのではとの高揚感もあった。若かりし頃に当時を生きた者の単なる郷愁と言われるだろうが。
 60年が経った今、再び東京オリンピックが開催されようとしている。しかし、厚いとされた中流層も崩壊したと指摘され、非正規の増加による格差社会、貧困も自己責任という社会の在り方を今一度考えさせられる状況だ。価値観も多様化している。
 さらに、昨年から世界を覆うコロナ禍が今も続く重苦しい状況を思えば、新たな生命の萌芽という「辛丑」の意味にもすがりたくなる。人と牛との付き合いは長い。牛は従順な家畜として昔から親しまれてきた。「角を矯めて牛を殺す」のように、些末なことに捉われて物事全体をだめにしてしまうことなく、「牛の歩みも千里」と努力を怠らなければ成果があがることを信じて、コロナ禍を克服、明るい展望が開けることを望みたい。
(和光同塵)

2021年1月11日 第7074号

企業にとって経営理念とは

 本紙に「変化を読む経営」を連載している小宮コンサルタンツCEO小宮一慶氏の講演を、10年ほど前に当時の郵便事業会社東京支社での支店長会議の中で聞いたことがある。その講演の中で、就職活動をしている学生に「良い会社の見分ける方法」を伝えているという話がとても印象深かった。
 その方法とは、就職活動の面接の際に、相手からの質問に答えるだけでなく、こちらから次の3つの質問をしてみると、そこが良い会社かそうでないかがわかるというものである。その3つの最初の質問が「御社の経営理念は何ですか」である。面接担当者が「弊社の経営理念は…です」と即答できれば、その会社は間違いなく良い会社と言っていいだろうということである。
 経営理念をどのように扱っているか、経営理念を定めていない会社、経営理念はあるが掲げられているだけの会社、経営理念を社員がきちんと受け止めている会社など、世の中に多くの会社があるが、社員が自分ごととして実践しているとまでになるとそのような会社はなかなかないのではないだろうか。
 経営理念についてよく紹介される企業として、米国の「ジョンソン・エンド・ジョンソン」がある。日本では、綿棒、バンドエイド、リステリンなどで有名だが、この会社でよく知られているのが「我が信条(アワー・クレド)」と呼ばれる企業価値基準を示した企業理念である。
 そこには、顧客、社員、地域社会、株主に対する「全社員が担う4つの責任」を明記しており、全社員が常に携帯し意識して実践していると言われ、1982年に米国で発生したタイレノール毒物混入事件の対応などはその企業理念が企業のトップから全社員に浸透していることを示した事例としていまだに様々な機会に紹介されている。
 国内でよく紹介される事例として、稲盛和夫氏が創業した京セラの経営理念がある。京セラの経営理念は「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」であるが、それを実践していく行動指針として「京セラフィロソフィ」という信条があり、それをまとめた手帳を全社員が携行しているという。
 一昨年夏の営業自粛から一年を経て、昨年10月から業務運営を再開した日本郵便であるが、新たな年にどのような展開が見られるだろうか。
 本紙新年号のインタビューで日本郵政株式会社の増田寛也社長は「経営理念に立ち返ろう」として次のように述べている。
 組織自らが招いたことで不振に陥った際に、必要なことは原点に返ることです。改めて経営理念を見つめ、「何のために会社は存在するのか」「何のために仕事をするのか」に立ち返り、自らの行動が反していないかを都度確認することです。
 インタビューの際、増田社長は自身の内ポケットから「経営理念ハンドブック」を取り出し、日本郵政グループの全社員がこの冊子を携行し、常に自分たちの会社の存在意義、会社の目的を意識してほしいと話をされていた。
 40万人を超える日本郵政グループの全社員が、この経営理念を意識して実践していけば、信頼回復はそれほど困難な道のりではないだろうし、さらに大きく発展していくことも決して難しいことではないだろう。新しい年の確実な実践を期待したい。
 さて、冒頭の小宮一慶氏の3つの質問の残りの2つだが、2つ目は「御社の主な取引企業はどちらですか」であるが、これに対して企業名に敬称の「様」をつけて答えるかどうか、そして3つ目は「あなたは毎日出社する際にワクワクしていますか」というもの。
 入社希望の学生からこの3つの質問をされて、企業の面接担当の方はどのように答えるだろうか。


(多摩の翡翠)

2021年1月4日 第7073号

今週はお休みです

今週はお休みです

2020年12月21日 第7071・7072合併号

流行語で見る令和2年

 毎年恒例となっている「2020ユーキャン新語・流行語大賞」(現代用語の基礎知識選が)が12月1日に発表され、年間大賞には「3密」が選ばれた。
 「3密」は、新型コロナウイルス感染拡大につながるとされる「密集」「密接」「密閉」を表しており、東京都の小池百合子知事が感染を避けるために取るべき行動として、会見でよく口にしていた言葉だ。
 オンラインで表彰式に参加した小池知事は「3密をさらに確認していただきながら、協力をお願いしたい」とコメントしている。
 他に選ばれたトップテンの新語・流行語は「愛の不時着」「あつ森(あつまれどうぶつの森)」「アベノマスク」「アマビエ」「オンライン○○」「鬼滅の刃」「GoToキャンペーン」「ソロキャンプ」「フワちゃん」。
 「愛の不時着」は日本でも配信された韓国ドラマ。「あつ森」は、任天堂から発売された無人島を舞台にスローライフを楽しめるゲーム。
 「アベノマスク」は、新型コロナウイルス感染症流行を受け、全国で発生しているマスク不足を解消しようと、時の安倍内閣が全世帯へ配布した布製マスクの俗称。
 「アマビエ」は、疫病に際して、自らの姿を描き写した絵を人々に見せよ、と予言し、海に帰って行ったとされる妖怪。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、「疫病退散にご利益がある」とクローズアップされ、広まっていった。
 「オンライン○○」は、新型コロナウイルス感染拡大を受け、密を避ける観点から、研修や会合等で密閉された空間に多人数が集まらずに、インターネットを活用して自宅や勤務先等でシステムを導入して、WEB上で画像と音声でやり取りをするもの。オンライン会議、オンライン研修、オンライン飲み会などが話題となった。
 「鬼滅の刃」は、漫画家・吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)による漫画で、週刊少年ジャンプに連載されたほか、アニメ化・ドラマ化もされ、今まさに大ブームを巻き起こしている。
 「GoToキャンペーン」は、国内の観光等の需要を喚起し、コロナの影響による休業要請でダメージを受けた経済を復興させることを目的とした、政府による経済政策。最近では、旅行による人の移動が感染拡大につながっているという指摘も多い。
 「ソロキャンプ」は、お笑い芸人のヒロシさんが1人でキャンプをしている動画が話題となったことから広まった。「フワちゃん」は、今年最もブレイクしたと言われるユーチューバー芸人。テレビで見ない日はないくらい、引っ張りだことなっている。
 こうして見ると、新型コロナウイルスに関係した言葉が多くなっているのが、今年の流行語の特徴だ。コロナのことばかりの1年だったな、と思ってしまう。
 さて、令和2年を振り返ると、コロナ以外では安倍晋三首相が辞任し、菅義偉新内閣が誕生したこと、アメリカ大統領選挙でバイデン氏が勝利したこと、小惑星探査機「はやぶさ2」が計画通りにカプセルを地球へ帰還させたこと、芸能界ではお笑い第七世代と呼ばれるお笑い芸人たちが台頭してきたこと、それくらいしか思い出せないことが寂しい。
 令和3年は、延期となった東京オリンピック・パラリンピックの開催も予定されている。新型コロナウイルス感染症拡大が早く終息し、新しい生活様式も踏まえながら、すべての国民にとって安心・安全に暮らせる1年となることを願ってやまない。(九夏三伏)

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