コラム「春秋一話」

 年/月

2024年02月19日 第7236・7237合併号

歌で見る通信などの歴史

 郵便物数の減少傾向に歯止めがかからない状況が続いている。年賀状についても同様で、翌年以降の年賀状を辞退する旨を記して送る「年賀状じまい」をした人が、2021年で約3割という調査結果もある。
 しかしその一方、年賀状じまいによって友人と音信不通になってしまい、後悔した、一抹の寂しさを感じているという人も中にはいるようだ。
 さて、年賀状も含めて、時代は変われども情報通信手段の中で重要な役目を果たしている手紙だが、電話もまた重要な役目を果たしている。電話が登場してからの歴史を振り返ると、ダイヤル式の黒電話が一般家庭に普及し、その後、プッシュ式の電話、親機と子機の電話、留守番電話機能付き、ファクシミリ機能付き等、進化をしていく。そしてポケットベルや携帯電話、PHSが登場し、今やスマートフォンやタブレット、パソコンが主流となり、自宅に固定電話が無いという人も増えている。
 その電話の進化に合わせるかのように、邦楽のヒット曲の歌詞の中にも電話などが登場している。いくつか挙げてみよう(「」内は歌詞のワンフレーズ)。
 ▽恋のダイヤル6700(フィンガー5/1973年)・・・「♪指のふるえをおさえつつ 僕はダイヤル まわしたよ」
 ▽悪女(中島みゆき/1981年)・・・「♪マリコの部屋へ 電話をかけて」
 ▽モニカ(吉川晃司/1984年)・・・「♪真夜中のスコール バックミラーふいにのぞけば 赤い電話ボックスの中から」
 ▽あなたを・もっと・知りたくて(薬師丸ひろ子/1985年)・・・「♪もしもし 私 誰だかわかる?」
 ▽恋におちて(小林明子/1985年)・・・「♪ダイヤル回して手を止めた」
 ▽バラードのように眠れ(少年隊/1986年)・・・「♪真夜中のベルが響くと 走り寄り 受話器つかんだ」
 ▽ポケベルが鳴らなくて(国武万里/1993年)・・・「♪ポケベルが鳴らなくて 恋が待ちぼうけしている」
 ▽SWEET 19 BLUES(安室奈美恵/1996年)・・・「♪部屋で電話を待つよりも 歩いているときに誰か ベルを鳴らして!」
 ▽渚にまつわるエトセトラ(PUFFY/1997年)・・・「♪私と 彼氏の 携帯電話がリンリンリン」
 ▽Automatic(宇多田ヒカル/1998年)・・・「7回目のベルで 受話器を取った君」
 ▽ミニモニ。テレフォン!リンリンリン(ミニモニ。/2001年)・・・「♪電話をかけましょう リンリンリン パカパカ電話パッカ リンリンリン」
 この中で、安室奈美恵の「SWEET 19 BLUES」の一節は、まさにこの頃、携帯電話が普及し始めてきた時代背景を象徴しているなと思う。
 また、通信手段が出てくる楽曲もある。
 ▽ちょこっとLOVE(プッチモニ/1999年)・・・「♪ほんのちょこっとなんだけど メールを送りますよ」
 ▽恋をしちゃいました!(タンポポ/2001年)・・・「♪デートの最後メール来た 『君が好きです』」
 ▽睡蓮花(湘南乃風/2007年)・・・「待ち受けにしている写メ 変顔で思わず吹き出して」
 ▽香水(瑛人/2019年)・・・「♪夜中にいきなりさ いつ空いてるのってLINE」
 写メは当時、画期的だった。今でも送れるが、SNSを利用する人が多いと思う。
 2024年2月5日付の通信文化新報に野田聖子衆議院議員のインタビュー記事が掲載されている。その中で、野田議員は郵便局への公衆電話の設置を提案されている。これは非常に素晴らしい考えだと思う。
 この先、デジタルはどう更に進化していくか。平時であれ緊急時であれ、郵便局は各地域に根差し、古いものも新しいものもうまく活用しながら、未来へとつなげ、地域を守っていってほしい。(九夏三伏)
 

2024年02月12日付7235号

家内安全、無病息災を祈る節分

    昭和38(1963)年に発行された「季節の行事シリーズ」


 豆をうつ声のうちなる笑かな〈宝井其角〉
 豆をまきながら「鬼は外、福は内」と叫んでいる声にも、笑いが混じっているように感じられる。家族での楽しいひと時だろうか。
 今年の節分は2月3日、豆を炒って鬼祓いをした家庭もあるだろう。しかし、今日ではこうした季節行事を楽しむ家庭も、もっぱら少なくなったかもしれない。
 節分とは古来、季節を分けるという意味。2月の節分が有名だが、実は年4回あることはあまり知られていない。季節の始まりの日である二十四節気の中の立春、立夏、立秋、立冬、これらは「四立」(しりゅう)と呼ばれるが、節分はその前日を指す。今年の立春は2月4日。国立天文台の観測で「太陽黄経が315度になった瞬間が属する日」とされる。
  かつて中国や日本では、文字通り立春から1年が始まるとされた。1年の始まりの立春の前日、いわば大晦日とも言える2月の節分が特に親しまれ、豆まきなどの行事の日として残った。豆まきで鬼を退治することで邪気を払い、新しい年の家内安全や無病息災を祈る風物詩の一つとなった。
 人好くて追儺の鬼の役を受く〈能村登四郎〉
 豆まきに欠かせないのが鬼。「福豆」と呼ばれる炒った豆を掛け声と共に鬼に投げて退治する。平安時代、大晦日に行われていた宮中行事の「追儺」(ついな)が起源と言われる。厄や邪気、疫病の象徴でもある鬼を追い払った。仏教では鬼は煩悩や欲望を持つ人の心に住み着き、災いのもととなると考えられてきた。
 あたたかく炒られて嬉し年の豆〈高浜虚子〉
 豆まきに炒ったものを使うのは、「鬼の目を射る(炒る)」から、また、後から芽が出てこないようにするためとの説がある。生の豆を使い、もしも芽が出たら「邪気が芽を出してしまうため」ということらしい。また、豆は五穀(米、麦、ヒエ、アワ、豆)の象徴で、農耕民族の日本人は、これらに神が宿ると信じてきた。「まめ」は健康という意味もあるそうだ。
 豆をまき終えた最後に、自分の年齢の数より一つ多く豆(福豆)を食べる習慣もある。2月の節分に一つ歳を取ると考えられていたため、「歳の数だけ豆を食べる」という風習が残ったという。自分の年齢の数だけ豆を食べると、身体が丈夫になって病気になりにくくなるとされた。「福」を体内に取り込むという思いが込められている。
 節分や親子の年の近うなる〈正岡子規〉  
 子規は5歳の頃に父を亡くしている。父はまだ40歳だったとされる。豆を口にしながら「亡くなった父の年齢に自分も近づいている」との感慨を詠んだのだろうか。
 節分や海の町には海の鬼〈矢島渚男〉
 250人を超す死者・安否不明者が出た能登半島地震から1か月以上、厳しい寒さの中、多くの人が避難所での生活を余儀なくされている。更なる支援の充実が求められる。石川県輪島市の古社、重蔵神社では3日、避難所の住民500人が参加し、恒例の豆まきが行われたというニュースが流れた。
 大規模火災の起きた朝市通りに近く、地域の心のよりどころだった神社は、本殿なども被害、境内にはがれきが山積し、開催も危ぶまれたが、少しでも日常を取り戻して欲しいとの思いを込め、地元の有志が実現させた。早く日常が戻る日を願う。自然災害に抗すべき人の力は弱いが、被災地への支援の気持ちを保ち続けたい。(和光同塵)

2024年02月05日付7234号

年賀状の行く先は…

 残念ながら、今年も切手シートだけだった。1月17日、お年玉付年賀はがきなどの抽せん会が行われ、早速いただいた年賀状をチェックした。2等のふるさと小包は1万本に1本、1等の現金30万円は100万本に1本だから、100本に3本の3等お年玉切手シートだけというのも必然で、500枚強の中で16本のあたりは、順当なのかもしれない。
 ここ4、5年は、600枚前後やり取りしていたところ、諸事情により100枚ほど減らしたが、「あっ、この人出してない」ということが意外に少なかった。これまで、元旦に年賀状をいただき、出してなかったと慌てて返信、翌年は元旦に着くようにと、12月中に差し出すと、今度は相手から元旦に来ない〝いたちごっこ〟になった経験が何度もあるので、安堵したところだ。日本郵便によれば、今年の元旦の配達数は743百万通(対前年84.2%)で、前年から139百万通も減少しているというから、こちらも順当(500/600通=83%)なのかもしれない。
 それよりも気になったのは「本年をもって新年の挨拶を控えさせていただきます」と、いわゆる「年賀状じまい」のあいさつが思いの外、多かったことだ。確かに高齢になると終活の一つとして、年賀状を止める人が多いと聞く。今年はそれに加えて、昨年12月に発表された郵便料金の値上げが影響していることは否めないと思うが、いかがだろう。今年の秋には、63円のハガキが85円になる。単純に考えれば、今年は4枚(252円)出せたのに、来年は3枚(255円)しか出せないことになる。
 物価はどんどん上がっていくが、賃金がそれに見合うだけ上がらないとなれば、もともと手紙離れが嘆かれる世代は、ますますメールやSNSでの「あけおめ」になっていくだろう。事実、ある会社では『上司への年賀状は不要』とのお達しがあり、同期とはグループラインであいさつ。なので、年賀状は祖父母などに宛てた2、3枚だけという新入社員もいたそうだ。
 また、手紙でのやりとりの良さを知っている世代や絵手紙での交歓を楽しむ高齢世代も、すずめの涙ほどもない年金の上昇額では、生活を切り詰めてまでとは、考えないのではないか。
 私自身について言えば、仕事上の繋がりや仕事以外での交誼の感謝など年賀状は必要なものと考えている。さらに、会うこともままならない1年に1度だけのやり取りの相手もいるので、出来ることならば、ご縁を繋いでいたい。しかし、年末の物入り時期に4万円を超える出費は厳しいものだ。仮に今年と同じ収入ならば、500枚の3/4=350枚程度が現実的だし、物価がさらに上がったり、減収になれば、もっと減らすことを考えなくてはいけなくなるかもしれない。
 以前、年賀郵便は郵便局の一大イベントで何日もかけて準備し、アルバイトをたくさん雇用して処理していたが、現在は書状区分機の性能が上がり、短期間での処理が可能になったうえ、差し出し数の減少から、準備の負荷が減ったと聞く(とは言え、短期間であれだけの数の郵便物を正確に配達するのは大変なことと思う。)。
 であれば、素人考えで恐縮だが、これまで通常期と同じ料金でやってきた年賀郵便の値下げはできないものか。元旦配達という期日に向け、計画的に処理することができるのだから、通常よりも安い、例えば74円などにできないものだろうか。
 このままでは、年賀状は一部の人の趣味のものとなり、日本の風物詩とも言える文化がなくなってしまうのではないか。市井の人々の近況報告や旧交を温める機会が失われないように、一考してもらいたいものだ。(亜宇院翔)

2024年01月29日付7233号

選考基準・判断基準は多角的に


 昨年大みそかに放送された「第74回NHK紅白歌合戦」の出場者一覧を見たが、年々知らない名前が増えていく。選ばれてもいいはずなのに、選ばれていないアーティストもいる。出演が決まる選考基準が年々、よくわからなくなってきているなと感じる。
 日本レコード大賞もしかり。売上だけで決まるものではないが、このレコード大賞も納得いく結果のときもあれば、釈然としないときもある。一時期、ポップス・ロック部門と演歌・歌謡曲部門に分けられたこともあったが、後に元に戻されている。
 プロ野球で、その年最も活躍した先発完投型投手を対象に選ばれる沢村賞(沢村栄治賞)。完投数や勝利数、防御率など計7項目が選考基準となるが、必ずしも全部クリアしなくはいけないわけではない。
 1981年のシーズン、日本一に輝いた巨人。沢村賞はその巨人から、20勝(6敗)を挙げた江川卓投手ではなく、西本聖投手(18勝12敗)が選ばれた。成績を見ると、江川投手が受賞して当然と思われていた。
 当時は記者投票によって受賞者が決まっていたが、江川投手の入団時の経緯をよく思っていなかった記者たちが、江川投手には投票せずに西本投手に投票したことによると言われている。こうしたこともあり、翌年からは元先発投手OBらで構成される沢村賞選考委員会における話し合いによって選ばれるようになった。
 大相撲で大関や横綱昇進に際し、その昇進条件は、大関が「3場所連続で三役の地位にあり、その間の通算勝ち星が33勝以上」と言われ、横綱は横綱審議委員会の内規で「大関の地位で2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績」とある。
 横綱審議委員会設置後、連続優勝しなくても横綱昇進を果たした例が少なくなかったが、大関・北尾が一度も優勝したことがないまま横綱に昇進し(同時に双羽黒を襲名)、のちにトラブルにより廃業となった出来事を境に、横綱昇進へのハードルが高くなっている。これまでなら横綱に推挙されたであろう大関が、横綱に昇進しないまま引退するケースもあった。
 オリンピックの代表選考もよく話題となる。1992年バルセロナオリンピックの女子マラソン代表選考で、国内選考レースで良い結果を出した松野明美ではなく、国内選考レースに出場しなかった有森裕子が代表最後の一枠を手にしている。
 2000年シドニーオリンピック直前の選考会で、千葉すずが女子200メートル自由形で五輪A標準記録を突破して優勝したが、オリンピック代表には選ばれなかった。
 私は学生時代、ある組織の中で2年次に会長を務めた。前任は男性の強いリーダーだった。自ら立候補してその後を継いだが、1年上の人たちの存在が大きかったのと、同学年のつながりが強くなかったことなどもあり、今一つうまくいかないまま務めを終えた。
 次の会長を決める際、1年後輩に強いリーダー的存在の男性がいたが、彼も含めて誰も立候補しなかった。そこで推薦を募って決めることとなった。
 私はあえて、リーダーのタイプではない女性を推薦し、同時にそれまで1人だった副会長を3人にすることを提案した。タイプの違う3人が副会長になることで、会長をうまく支えていき、組織が上手く回ると思ったからだ。結果、その体制で組織はいい感じになっていった。
 何かを、誰かを選ばなくてはならない場面、非常に頭を悩ませる。慣例やセオリーなどをもとに選んで、異論なくうまくいけばいいが、そうでない場合も往々にしてある。型にとらわれず、新たな視点を取り入れるなど、多角的に選ぶことも大切だと思う。(九夏三伏)
  

2024年1月22日 第7232号

若い人たちが夢を持てる社会を

 2024年は元旦から悲惨なニュースで明けた。最大震度7を記録した能登半島地震だ。翌日には羽田空港で日本航空と海保の飛行機の衝突事故もあった。特に「激甚災害」に指定された能登半島地震は、津波や火災も発生、多く死者、避難者が出て、道路の寸断も続く。
 これから一段と寒さも増してくる。感染症の心配も指摘されている。被災者のことを思うと、いかばかりかと心が痛む。仮設住宅などを含めて、今後の生活に希望が持てる手厚い支援が求められる。
 冬の星地震のあとに燃えさかる<渡邊水巴>
    ◇ ◇ ◇
 今年は十干十二支で「甲辰(きのえたつ)」。甲は種子が厚い皮に覆われ芽吹く前の状態や物事に対し耐え忍ぶことを表すという。生命や物事の始まりも意味する。辰は「振るう」という文字に由来し「万物が振動し成長する」とされる。草木が成長して活力が旺盛になり、「これまで準備してきたことが形になる」など縁起が良いと言われる。
 辰年は政治の大きな変化が起きることが多いとされ、戊辰戦争(1868年)、日露戦争(1904年)が勃発、戦後では皇居前でデモ隊と警察が衝突した血のメーデー事件(1952年)も起きた。ロッキード事件(1977年)やリクルート事件(1988年)が発覚した。
 一方で、東海道新幹線の開業、東京五輪開催(1964年)、東京スカイツリー開業(2012年)、青函トンネル・瀬戸大橋開業(1988年)などもあり、20世紀最後の年(2000年)も辰年だった。
    ◇ ◇ ◇
 龍にまつわる伝説や神話は各地に残る。龍を祀る神社仏閣も全国に多く、とりわけ水源を守り、雨の恵みももたらす水神として崇められてきた。作物の実りに欠かせなく、篤く信仰されてきた。
 堂涼し一拍竜を目覚めしむ<伊藤汀人>
 初詣で誓いを心に刻んだ人も多いだろうが、総務省によると辰年生まれは1005万人(1月1日現在)。総人口1億2413万人(男性6037万人、女性6376万人)に占める割合は8.1%。男性は488万人、女性は517万人で、女性が29万人多い。
 出生年別では今年に48歳になる1976年生まれが180万人と最も多く、次いで72歳になる1952年生まれ、60歳になる1964年生まれが共に163万人。最も若い12歳になる2012年生まれは104万人、84歳になる1940年生まれの112万人より8万人少ない。少子高齢化が進む。
    ◇ ◇ ◇
 また、この1年間(2023年1~12月)に、大人の仲間入りをした新成人は106万人(1月1日現在の18歳)。総人口に占める割合は0.86%で、前年の18歳と比べ6万人ほど減少した。割合も0.03ポイント低下した。人口、割合の共に過去最低を更新している。
 男性は55万人、女性は52万人で男性が3万人多い(なお、新成人は2022年までは20歳、2023年は18歳、19歳および20歳、2024年は18歳が対象)。
 新成人について推計が開始された1968年からの推移では、第1次ベビーブーム(1947~49年)の49年生まれが成人となった70年が246万人(総人口に占める割合は2.40%)で最も多くなった後、減少に転じ78年には152万人となった。
 その後、再び増加傾向を続け、第2次ベビーブーム(71~74年)生まれが成人に達したときに200万人台(最多は94年の207万人)となったが、95年から再び減少に転じた以降は減少傾向を続けている。
 若者の社会や政治への関心が低いと言われる昨今だが、積極的にボランティア活動に参加する者も多く、若々しい感性が新たな活力を社会に生む。若者たちが夢を持てる社会でありたいと願う。
 成人の日をありがたく老の身も<山口青邨> (和光同塵)

2024年1月15日 第7231号

「慢心・過信・油断」と「他山の石」

 昨年12月、2023年の10大ニュースが発表されている最中に、新たなニュースが世間を騒がせた。パーティー券問題とダイハツの国内全工場の生産停止問題だ。そんな中、元旦に能登半島地震が発生、人々の関心や報道の中心がそちらにシフトしているように見えるが、渦中にいる人は落ち着かない日々が続いているのではないか。
 ダイハツの問題では、自身に落ち度はなくとも、影響を受けた従業員や直接取り引きがある部品メーカー423社、さらに間接含めると8000を超えるといわれる取引先の人たちは、憤まんやるかたない思いであったのではないだろうか。
 問題の端緒はダイハツが昨年4月、内部通報をきっかけに不正があったことを確認したこと。その後の第三者委員会の調査で1989年に不正行為が認められ、以降、2014年頃から増加し、親会社であるトヨタ自動車などのOEM生産を含め64車種174件の不正を確認したとし、奥平総一郎社長は「責任は経営陣にある」と先月20日に記者会見した。
 このように内部通報や告発が元で問題が発覚し、事件にまで発展したケースは昨年だけでも、ビッグモーター、ジャニーズ、自衛隊など枚挙にいとまがなく、企業だけでなく、スポーツ界、政界、芸能界、どこの組織でもあり得る話になってしまった。
 なぜ、こんな世の中になってしまったのだろうか。この根底にあるものはなにかと考えていくと「慢心」「過信」「油断」の3つの言葉に行き着いた。
 慢心=自分自身に対して過度の自信を持つことや自分が優れていると思い込むことを指す。
 過信=価値や力量などを実際よりも高くみて、信頼しすぎること。
 油断=ものごとや相手に対して「大丈夫だろう」などと、たかをくくり、気を緩め注意を怠ること。相手を見くびっていたり、自分の能力を過信している時の表現。
 これらは、いずれも良い意味ではなく戒めの言葉として使われることがほとんどであり、いわゆる不祥事が発生した際の要因として、説明者が口にしているように思える。おそらくは、自分の立場に「慢心」し、周囲の者を「過信」して、自分の言動に「油断」が生まれたというところだろう。
 しかし、不思議なのは、諸処の問題を起こした当事者たちは、同じような状況下で、同じような事案を起こし、社会的な制裁を受けたという先人を見聞きしたことはなかったのであろうか。それとも、知ってはいたが「自分は違う」と考えたのであろうか。さらには、その当時、周囲に諫めたり、意見したりする者はいなかったのであろうか。
 そこで、頭に浮かぶのが「他山の石」だ。これは故事成語の一つで、中国最古の詩集『詩経(しきょう)』の「他山石可以攻玉(他山の石以って玉を攻〔おさ〕むべし)」に由来する。「他の山から採掘した質の悪い石でも、碇石(といし)に使えば、自分の玉(宝石)を磨くのに役立てることができる」という意味。そこから、他人の誤った言行(よその山の質の悪い石)は、自分の成長のための学びや戒めになる(自分の玉を磨くために役立てる)となったという。ちなみに「他山の石とせず」という使い方をされることがあるが〝せず〟で否定すると「他人の誤りを見ても、自分の行動を改める参考にはしない」という意味になってしまうので要注意。
 問題を起こさないように、組織として、一人ひとりに指導・教育したとしても、受けた側に「他山の石」の気持ちがなければ、「のれんに腕押し」「糠に釘」だ。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という諺もある。新年にあたり自分の胸に手を当てて、考えてみようと思う。 (無手勝流)

2023年12月18日 第7227・7228合併号

流行語で振り返る2023年

 毎年恒例の「2023ユーキャン新語・流行語大賞」(現代用語の基礎知識選)が12月1日、発表された。年間大賞に選ばれたのは「アレ(A.R.E)」。
 「アレ(A.R.E)」は、プロ野球・阪神タイガースの今シーズンのスローガン。選手たちが優勝を意識しないようにと、岡田彰布監督が優勝を「アレ」という言葉で表現した。阪神タイガースはセ・リーグで優勝し、パ・リーグで優勝したオリックス・バファローズとの「関西ダービー」と称された日本シリーズを制し、38年ぶりの日本一に輝いた。
 その他に選ばれたトップテンの新語・流行語は「新しい学校のリーダーズ/首振りダンス」「OSO18/アーバンベア」「蛙化現象」「生成AI」「地球沸騰化」「ペッパーミル・パフォーマンス」「観る将」「闇バイト」「4年ぶり/声出し応援」。選考委員特別賞が「I’m wearing pants!(アイム・ウェアリング・パンツ)」。
 新しい学校のリーダーズは、4人組のダンス&ボーカルユニット。体の各部位を使って全力で踊るパフォーマンスで注目され、中でも首振りダンスはTikTokで人気となっている。動画で拝聴し、すごいなと思った半面、あまり首を激しく振るのは危険なのでは、と思ってしまった。
 「OSO18/アーバンベア」は、2019~23年にかけ、家畜を襲撃していた雄ヒグマのコードネーム。人間が熊に襲われる被害が相次ぎ、最近では山中に限らず、人が暮らす街中に出没する「アーバンベア」と呼ばれる熊が増えている。
 「蛙化現象」は、好意を寄せている相手が自分に振り向いた途端に、好意が覚めてしまう現象を表した言葉。SNSが主流の現代を反映した言葉なのかな、と思った。
 「生成AI」は、ネット上の膨大なデータを学習することにより、指示通りに新たな文章や画像等を生み出すことができる人口機能。これまででは考えられないようなものをいとも簡単に生み出せる一方で、フェイク情報が拡散してしまうリスクも含んでいる。
 「地球沸騰化」は、国連のゲテーレス事務総長が、世界の月間平均気温が過去最高を更新する見通しであることを受けて発言した言葉。日本でもこの夏、過去最高の猛暑に見舞われたのは記憶に新しい。
 「ペッパーミル・パフォーマンス」は、3月に開催されたWBCで、日本代表のラーズ・ヌートバー選手が行った、コショウ挽きを回す動作。「チームのために身を粉にして働く」という意味が込められており、多くの人が真似をした。
 「観る将」は、将棋界で今年10月に誕生した藤井聡太八冠の活躍を受け、これまで将棋に興味のなかった人たちがテレビやネット中継で対局を観戦して楽しむこと。ある意味、スポーツ観戦的な感覚なのだろうか。
 「闇バイト」は、高額報酬と引き換えに、詐欺や強盗などの犯罪を部分的に代行すること。若者を中心に、気軽に応募して、犯罪に巻き込まれるケースが続発。犯罪の首謀者が、応募してきた人を簡単に使い捨てていることも見逃してはならない。
 「4年ぶり/声出し応援」は、新型コロナが5類に分類されたことを受け、それまで自粛していた大きな声を出しての応援が可能になるなど、各地で中止されていたイベントも制限なしのスタイルで復活。声を出さない応援も、普段は聞こえない競技の生の音が聞こえるなどのメリットがあり、応援のスタイルは広まったと思う。
 2020年以降のコロナ禍による暗い雰囲気がいくらか晴れてきた一年だったかなと思う。2024年はさらに世の中が明るくなり、皆さんが心穏やかに楽しく過ごせる良い一年になりますように。 (九夏三伏)

2023年12月11日 第7226号

12万5000年で最も高い気温

 今年は過去12万5000年間で最も暑かった年になる。欧州連合(EU)の気象情報機関のコペルニクス気候変動サービス(C3S)が11月8日に公表した。世界気象機関(WMO)も11月30日、世界の平均気温は記録のある1850年以降で最も高くなることが確実と発表した。既に産業革命前より約1・4度上昇しているという。2024年はさらに暑くなる可能性があるとする。
 国連気候変動枠組み第28回締約国会議(COP28)が、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで11月30日から12月12日までの日程で始まったタイミングだ。ここ数年、世界各地で破滅的な暴風雨、洪水、熱波、山火事などが発生、いずれも地球温暖化が要因とされる。温室効果ガスの排出削減へ向けて実効性のある対策が急務だ。
 世界は産業革命前に比べ、平均気温の上昇を1・5度に抑えることを目標としているが、国連環境計画(UNEP)が11月20日に明らかにした報告書は、各国が2030年に向けて掲げた温室効果ガスの削減目標を達成しても、今世紀末までに平均気温は約3度も上昇と指摘する。1・5度達成には2030年までに43%、2035年までに60%の削減が必要とされる。今年10月末までに1・4度の上昇となれば既に限界に近い。
 温暖化と異常気象の関連は、科学的に明らかになってきている。この夏は欧州や米国、北アフリカで猛暑が続いた。日本も例外ではなかった。氷河にも多大な影響を及ぼしている。エベレストがあるヒマラヤ山脈の冠雪が30年で3分の1近く消失。グリーランドの氷河の後退が20年前の5倍の速さで進む。南極西岸の棚氷も急速に後退。冬の海氷面積が観測史上最少になった。氷河は気候変動にいち早く反応するとされる。
 グリーンランドの氷が全て融解すると海面は7㍍も上昇する。平均水位は1993年の観測開始以来、最高になっている。海面の上昇はマングローブ林や湿地、サンゴ礁などにも影響、生物多様性を失わせる。湿地や森は炭素を吸収する大きな役割を果たす。〝地球の肺〟と呼ばれる南米アマゾン川流域の熱帯雨林の伐採も進み、地表の気温が上昇している。
 南米最大で世界最高所にあるペルーとボリビアの国境にあるチチカカ湖の水位も急激に下がり、記録的な低さになっている。アフリカでも多くの国が干ばつに悩まされ、さらに、記録的な山火事も各地で頻発。ハワイ諸島や北アメリカ、地中海沿岸の火事は記憶に新しい。10月にカナダで発生した火事は日本の約4割に当たる面積が焼失した。
 一方で、韓国やインド、リビアなど水害が相次いだ。リビア東部では9月、ダニエルと名付けられたサイクロンが大洪水をもたらし、死者は1万1300人を超えた。もはや気候変動が「未知の領域に突入した」と専門家は警告する。再生可能エネルギーの拡大、化石燃料の縮減などが待ったなしだ。
 身近なところでは、秋の味覚のサンマが不漁、水揚げ量は5年連続で低水準、それに加え小ぶりだという。海水の温暖化の影響とされる。フグやブリも北海道が豊漁との異変が報じられた。夏の異常な高温、少雨によってコメの一等米も激減した。日本は2021年に温室効果ガスの排出は1990年と比べ8%しか減っていない。欧州各国は20~47%削減。日本のさらなる強化が求められる。
 奇しくもCOP28が開幕した同日、日本郵便と日本郵便輸送は、燃料電池小型トラック(FC小型トラック)を、東京都内で郵便物運送に導入した。水素を燃料とし、カーボンニュートラルの取り組みの一環。当面、新東京郵便局、東京国際郵便局と23区東部の郵便局間を結ぶ。こうした動きが全国に広がることも期待される。(和光同塵)

2023年12月04日 第7225号

あせらず、あきらめずに信じること

 今年も既に12月。もういくつ寝るとお正月…。いや、その前にクリスマスがある。いずれにしても、冬になったということだが、今年は9月、10月も暑い日が続き、いったい秋はどこに行ってしまったのだろうと感じている人が多いのではないか。
 秋と言えば、「行楽の」とか「食欲の」「読書の」など「〇〇の秋」と形容されるが、私にとっての今年の秋は「スポーツの秋」だった。と言っても、自分がやるのではなく、もっぱら〝観戦〟するほうなのだが。
 特に力が入ってしまったのが、野球では、阪神タイガースの18年ぶりのセ・リーグの〝アレ〟と38年ぶりの日本一。11月19日に決勝戦が行われたアジアプロ野球チャンピオンシップで日本が優勝したこと。そして、海の向こうで、MBLロスアンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が、日本人初のホームラン王と2回目のシーズンMVPを満票で獲得したことに尽きるだろう。
 また、野球以外では、7人制ラグビーで男子チーム、女子チームともに2024年パリ・オリンピックのアジア予選で優勝し、出場権を獲得したことと、11月26日に宮城県で開催された「クイーンズ駅伝(第43回全日本実業団対抗女子駅伝競走大会)」で日本郵政グループ女子陸上部が準優勝したことが記憶に新しい。
 ここに挙げたものは、野球、ラグビー、陸上競技といずれもチーム競技である以外の関連性がなく、脈絡が無いように感じられるかもしれない。確かに競技そのものの関連性はないが、私にとっては共通点があるものだ。
 阪神タイガースは、オリックスバファローズとの日本シリーズで3勝2敗と王手をかけたが3敗目を喫し逆王手。そして迎えた最終戦では、あせらずに自分たちのペースで試合を進めて日本一を勝ち取り、ファンの38年間のあきらめない(あきらめの悪い?)声援に応えた。
 アジアチャンピオンシップでは、韓国との決勝戦が延長戦となり、1点先行され後がなくなった。あせりがでそうなところであったが、練習を積んだいつものプレーを確実に決めて同点、そして逆転で優勝した。
 大谷選手は8月下旬に右肘靭帯損傷が判明したあとも、打者としては出場を継続し、ホームラン王を獲得した。
 7人制ラグビーは15人制と同じ広さのグラウンドで前半と後半7分ずつで行われるスピーディーな展開が魅力な競技。女子は中国と対戦。先制されるも逆転し、後半へ。終了間際まで攻め込む中国をしのいで、優勝した。
 香港との決勝戦に臨んだ男子は、前半、リードを許す苦しい展開だっが、後半、同点に追いつき、試合終了のホーンが響いた後のラストワンプレーで、逆転のトライを決めて優勝。
 クイーンズ駅伝は、1区で25チーム中12位とやや出遅れたが2区で6位、3区では2位にジャンプアップ。4区5区で少し順位を落としたが、最終6区で逆転、準優勝した。
 野球、ラグビー、陸上。競技は違えど、いずれも根っこにあるものは、自分が練習で培った力とチームメイトを信じて、あせらずに行動したこと。そして、自分の立てた目標をあきらめないということだ。
 これは、「スポーツ」だけに言えることではない。仕事にも当てはまるだろうし、いろいろな場面で下す判断についても言えることだと思う。また、「練習」だけではなく、勉強してきたことはもちろん、「我慢」であったりすることもあるだろう。
 法、倫理・道徳に触れるものや組織の決め事に反するものは論外だが、それ以外については、あせらず、あきらめずに信じることを大事にしたいと思う。 (亜宇院翔)

2023年11月20日 第7223・7224合併号

デジタル・アナログが融合した年賀状を

 2024(令和6)年用年賀はがきが11月1日から全国で一斉に販売開始となった。今年の当初発行枚数は14億4000万枚と、前年比約12%減で、2003(平成15)年の約44億6000万枚をピークに減少傾向が続いている。SNSが普及し、スマホが主流となっている世の中で、年賀状を書く人が減っていることは致し方ないのかな、と思う。
 減少傾向に少しでも歯止めをかけるためにも、子どもたちに年賀状の存在を教え、その意義や楽しさを伝え、実際に書いてもらうことも大切だと思う。
 子どもの中でも特に幼児の存在だ。日本郵便は「お手紙ごっこ遊び」として取り組んでいる。これは、手紙を書く、切手風のシールを貼って模擬ポストに投函する、帽子をかぶり手紙バッグを身に付けた郵便屋さんがポストから手紙を取り出す、消印風スタンプを押す、手紙をクラスごとに仕分ける、手紙を届ける、配達完了後に配達数などを先生に報告するといった、遊びを通じて郵便屋さんの仕事、大人の世界、社会のルールの片鱗を知ることができる、というものだ。この経験と共に、文字に親しみ、読み書きを覚えていくことは、小学校に上がってからも大いに役立つと思う。
 日本郵便が主催する郵便教育セミナーが、今年もオンラインやハイブリッド形式で開催されている。その中で、画像生成AIを使って、画像とQRコードをミックスし、QRコードだと分かればスマホで読み取れるという謎解き要素を入れた年賀状を作成して送っているという実践事例があった。これはなかなか面白いなと思った。
 純粋に年賀状にQRコードを印刷するだけでも、受け取った相手がこれは何だろうと、スマホをかざしてみる、それだけでも面白いと思うが、QRコードはカラーのものもあれば、中心部等にイラストや文字を組み込んだもの、さらには一見するとそれとは分からないくらいイラスト化したQRコードもある。
 あるいは、おにぎりの海苔の部分をQRコードにするなど、QRコードそのものをイラストの一部としたものや、QRコード全体がハートや果物の形をしたものもある。
 これらを印刷した年賀状を送れば、受け取った相手も正月早々楽しくなると思う。「わざわざ年賀状でなくても、普通にQRコードをメールやLINEで送れば済む」なんて言う人もいるだろうが、デジタルとアナログが融合した形の、新たな年賀状のスタイルとして、これはお勧めしたい。
 QRコードといえば、各地で郵便局と行政等との連携施策の中で、郵便ポストにQRコードを貼り付け、スマホをかざすと防災情報や観光地紹介、行政の情報などが見られる、という取り組みが行われている。これは地元の人だけでなく観光客にも役に立ち、コンテンツも充実させることができるなど、良い取り組みだと思う。
 最近では書籍や新聞をはじめ、いろいろなところでQRコードが使われており、目にする機会も多い。
 年賀状は年の最初に届く贈り物。相手を思いながら動画を撮って、年賀状にQRコードを印刷して送る、相手が楽しくなるような動画を送る、あるいは好きな、届けたいメロディーを送る、ただでさえ忙しい年の瀬、手間もかかり面倒かもしれない。
 だが、「面倒くさい」「手間がかかる」からの脱却は、古き良き年賀状文化を受け継ぎ、未来へと伝えていくために必要なことだと思う。
 日本郵便のサイトには、さまざまなコンテンツも用意されている。それらもうまく活用しながら、受け取った相手をワクワクさせるような年賀状づくりを、いろいろな人にぜひ勧めてほしい。    (九夏三伏)

ページTOPへ