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2020年8月10日 第7052・7053合併号

【主な記事】

かんぽ電話相談窓口を開設
[日本郵政]増田社長 消費生活相談員が対応

 日本郵政の増田寛也社長は7月31日、東京・千代田区の大手町プレイス本社ビルで定例会見を行い、「消費生活相談員によるかんぽ生命保険等電話相談窓口」を開設することを明らかにした。公益社団法人全国消費生活相談員協会(増田悦子理事長)に委託、8月17日に開設する。「同法人が民間と契約を結ぶのはおそらく初めてではないか」と述べた。また「グループの内部通報窓口が適正に機能しているかどうかについて、JP改革実行委員会の横田尤孝委員(弁護士/元最高裁判事)に検証を依頼する。検証作業は、横田委員および同委員とともに業務改善計画の進捗状況等の検証を実施している弁護士で構成される10人程度のチームに実施してもらう」とし、今年6月8に成立した「公益通報者保護法の一部を改正する法律」の下、内部調査等に従事する者に対して刑事罰が導入されることを踏まえ、内部通報制度の改善を視野に入れながら対応していく考えを表明した。

内部通報制度の機能検証も

 日本郵政グループは、従来から各種のコールセンターを開設して顧客サービスに努めていたが、利用者がより安心して相談ができるようにするために、8月17日から、消費生活相談員による電話相談窓口を開く。消費生活相談員は、国家資格(消費生活相談員)を持つプロの相談員で、普段から金融商品を含めた様々な消費生活に関する各種相談に応じている。
 対応する相談業務の専門性が高い上、公正中立な立場から相談に応じていることから、公益社団法人全国消費生活相談員協会に委託して、相談窓口を開設することにした。同協会の増田理事長は、JP改革実行委員会の委員の一人。
 専門性、中立性の高い相談窓口を設けることによって、郵便局の利用者がこれまで以上に相談しやすい環境を整備するとともに、お客さまの声を業務改善につなげていく。増田社長は「相談窓口は当初3ブースで開始し、相談件数に応じて拡大を検討するなど柔軟に考えていきたい」と語った。
 一方、グループの内部通報窓口の運用状況の検証について、「内部通報制度は、職員が職場における不正等を通報したことで不利益を被らないように、事業者がしっかりと保護を行うことが求められており、それが基本だろうと思う」との認識を示し、「この観点から見ると、現在のグループの内部通報窓口の運用について、とりわけ通報者保護が徹底されているかどうかについて懸念を抱いている」と述べた。
 そして「公益通報者保護法の改正が行われ、内部調査等に従事する者にも刑事罰が導入されることになった。通報者保護がしっかり行われていないと、身元を特定されないように通報内容が抽象的になり、通報された担当部局でも具体的に調べるのが非常に難しくなる。このように制度がうまく機能しないことが、これまでにも多々あったのではないか」との考えを示した。
 公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)が、6月8日に参議院において全会一致で可決され成立。同12日に公布された。2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。
 こうしたことを踏まえて、グループの内部通報窓口が適正に機能しているかどうかについて、JP改革実行委員会の横田委員に検証を依頼することになった。検証作業は、横田委員および同委員とともに業務改善計画の進捗状況等の検証を実施している弁護士で構成される10人程度のチームに実施してもらう。検証結果を踏まえて、通報者保護に資する内部通報制度の仕組みを検討するとともに、JP改革実行委員会等に内部通報窓口の運用状況のフォローアップを依頼していく。
 今後のスケジュールについて、増田社長は「検証作業は、今年度いっぱいを予定している。制度は存在するが、運用が適切に行われていないものと考えられるため、過去の様々な事例に当たってもらいながら、現在の制度の形で良いのか、運用面でどの点を改善したら良いのか等々の話を聞かせていただく。改善点があれば現行の制度にさらに新たなものを付け加えることもある。現場等々にも見てもらい(今後のことを)考えたい」と語った。
 新型コロナウイルスの感染者が増えていることを踏まえた対策では、「様々なことを試みている。現場の郵便局についても、お客さまが訪れるので開局時間を再度調整することが必要になると思っている。ここ1、2週間で感染者が急激に増えつつあり、グループの感染者も4連休明けの週は増えた。状況に応じて必要な対策を強化することも考えている」と述べた。
 かんぽの問題で、日本郵便の衣川和秀社長と、かんぽ生命保険の千田哲也社長にも月額報酬の減額や厳重注意の処分が行われたことについて、意見を求められた増田社長は、「処分無しに職務を続けた方が、納得感を得られないと感じる方々が多いのではないか。今回、処分を受けたということを重く受け止めて、今後のことについて挽回するつもりで責任ある対応をしていただきたい。今後の会社の立て直しに全力を上げようということだと思う」との考えを語った。
 地方創生と郵便局についての質問では、「新しいビジネス、あるいは新しい役割を展開していく上で、特に郵便局の地方創生の拠点としての役割は重要だと考えている。政府の方も同様で、(7月17日に閣議決定された)『まち・ひと・しごと創生基本方針2020』の中に『郵便局』の文言が明記されている。自治体と郵便局はいろいろなところでつながり、取組みを行っているが、地方創生という観点からみると、今のところ少し薄い感じがしている」との認識を示した。
 その上で「地方創生の拠点として、いろいろなことに取り組んでおり、郵便局が行う事業で地方創生の交付金などを受けているが、郵便局側があまりそれを意識していないケースや、自治体の方も郵便局との話し合いが十分にできていないことがあるようだ。今回、基本方針の中で郵便局が明記されたことによって、地方創生についての観点を、郵便局を含む、我々のグループの中で共有し、自治体ごとに事情は異なるが、こちら側から自治体に話をしていくことが重要になる」と語った。
 また「政府が基本方針に『郵便局』の文言を入れたことを、政府サイドで自治体の方に伝えてもらうことで、何か成果を出したいし、そのことを民営化委員会にもアピールしたいと思う。現状の民営化については、様々な議論があるのは承知しているが、今の民営化の路線の中でも、郵便局が果たす役割はたくさんある。地方創生としての役割を踏まえた上で、みまもりサービスなど地方創生の関係でお手伝いできる仕事はまだまだあると思う。地元の名産品を売る物販サービスについては、優れたノウハウを持っている」と郵便局の潜在能力を評価した。
 そして「具体例をもっとアピールして、郵便局の良さや役割を政府の方に伝え、民営化委員会にバックアップしてもらうような形で意見書等に盛り込んでいただくようにアピールしていきたいと思っている」と述べた。


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