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2020年9月7日 第7056号

【主な記事】

JRと合築、駅窓口業務も
千葉県鴨川市に「江見駅郵便局」


 千葉県鴨川市にあJR江見駅(内房線)に、郵便局と駅が一体化した「江見駅郵便局」(若月功一局長)が8月31日に開局した。同時に駅の窓口業務も郵便局に委託された。合築と業務の一体運営は全国初のケース。同日、開局式が行われ、日本郵便やJR東日本の関係者、地域住民らが出席しオープンを祝った。若月局長は「地域の皆さまに愛される郵便局と駅になれるよう努力したい」とあいさつした。

 江見駅郵便局は、JR江見駅から約70メートルの所にある旧江見郵便局(1963年建設)の老朽化に伴い移転した。JR駅との合築となることから、名称に駅を加えた。JR江見駅(1922年に建設)も老朽化や耐震性の問題があった。江見駅の切符販売などの業務は、鴨川市から派遣された職員が行っていたが、昨年7月からはそれが廃止され、無人駅となっていた。
 今回の業務委託は、2018年6月に日本郵便とJR東日本が締結した「地域・社会の活性化に関する協定」に基づいたもので、合築と業務委託は、郵便局とJR東日本、自治体、地域住民が抱える問題をすべて解決できた。
 江見駅郵便局は、郵便局と主に駅通路となるJRとの共同利用の部分から成る。鉄骨平屋建て、延べ床面積約182平方メートル。エメラルドグリーンの屋根に、白い壁の明るいイメージ。
 設計者によると「JR江見駅の水色の屋根と白壁をデザインに取り入れた。屋根の色を見せるため一部を急こう配にした。濃い目のブルー系にしたのは、潮風で前の江見駅のように薄い色に変色することを計算したため。江見駅もできた当時はもう少し濃いブルーだったと言われている」という。
 郵便局窓口の一部にJR窓口があり、普通乗車券や特急券(指定席は取れない)の発行、定期券販売、Suica(無記名式の磁気タイプ)の販売、精算業務、発着の列車や運賃の案内などを行う。支払いは現金のみだが、隣にATMが設置されている。JR業務は9時~16時まで。郵便局では移転前と同様に、郵便・貯金・保険・物販業務を行う。
 開局式では、まず日本郵便の佐野公紀(きみかず)常務執行役員が「全国で初めての事例であり、責任は重大。地域のインフラを担うJRと郵便局の連携モデルを利用者の皆さまに盛り上げていただき、花開かせていただければありがたい。全国各地にこのモデルを展開できるようにしていきたい」とあいさつ。
 JR東日本の阪本未来子常務執行役員は「鉄道が開始されて約150年。駅は単に乗り降りする機能だけでなく、社会環境の変化に伴い顧客ニーズが多様化している。駅を地域の拠点として、楽しく魅力的なものにすることをグループの成長戦略にしている。郵便局の知恵を拝借しながら駅の新しい形、理想の形を具体化でき感無量。引き続き郵便局と地域の活性化に取り組みたい。また市とも防災、観光、コミュニティづくりの連携を深めていきたい」と述べた。
 来賓の亀田郁夫鴨川市長は「昨年7月から無人駅となり、経費は削減されたが、安全面や賑わいの創出など、地域からは心配する声があった。駅と郵便局の窓口業務の一体運営により、活力ある町づくりの後押しになるものと心強く思う。郵便局には災害時の行政サービスで力をいただいている。郵便局と行政は一つになって、活性化に向けて町づくりをしていきたい」と祝辞を述べた。
 この後、JR千葉支社長の中川晴美執行役員から若月局長に、委嘱状と駅長用の白い帽子(主にイベント時に使用するもの)が手渡された。若月局長は「私は個人的に乗り鉄と言われるほど鉄道が大好き。駅の窓口業務を委託され、喜びを感じている。地元の皆さまからアンケートを通じて、要望をいただいている。役に立てるよう励みたい。より愛される郵便局と駅になれるよう努力していきたい」と抱負を語った。
 関係者によるテープカットや新ポストのお披露目も行われた。ポストのラッピングは鴨川市からプレゼントされたもの。青を基調に、房総の各路線で1986年まで郵便物や荷物を運んでいた電車「クモユニ74012」をモチーフにデザインされた。
 この日は午前9時に開局。切手や切符を買い求める客でにぎわった。開局の日付印が押された一番切符を求める鉄道ファンもいた。
 JR駅業務について若月局長は「駅業務のサポートは近くのJR安房鴨川駅が中心となり行ってくれることになっている。開局後3日間はJR職員がつきっきりで指導してくれる。サポート体制は万全」と話している。若月局長は鴨川市出身。現在も家族とともに住んでいる。


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