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2020年9月14日 第7057号

【主な記事】

達成度を数値で評価
[JP改革実行委]信頼回復への約束


 第5回JP改革実行委員会(座長:山内弘隆・一橋大学経営管理研究科特任教授)が9月3日、開かれた。「お客さまの信頼回復に向けた約束」の達成度を数値で評価することや、内部通報窓口の運用状況の調査・検証、業務運営計画の進捗について、日本郵政グループ各社社長との意見交換が行われた。お客さまの信頼回復に向けた約束の進捗管理や達成評価は、同委員会が担当し、第1回目の評価は、早ければ12月末に公表される予定。

 信頼回復に向けた約束は、すでに策定した「国民の信頼回復に向けた公約」を馴染みやすい表現にするため、国民を“お客さま”、公約を“約束”に改めたもの。
 約束は5つある。①お客さまに満足してもらえるよう丁寧な対応をする②お客さまの声をサービスに反映させるため、声に耳を傾ける③社員の専門性を高め、正確でわかりやすい説明をする④法令・ルールを遵守し安心できる高品質のサービスを提供する⑤お客さまのニーズを踏まえ、喜んでもらえる商品・サービスを提供する。
 達成度評価は、それぞれの約束に対して「お客さま満足度」「社内浸透度」「活動の達成度」「委員評価」各5点満点、合わせて20点満点。
 約束は5つあるので、全体評価は100点満点となる。
 お客さま満足度と社内浸透度はアンケート形式で行われ、5段階評価(「そう思う」「ややそう思う」「どちらともいえない」「あまりそう思わない」「そう思わない」)。両アンケートは3月、6月、9月、12月の四半期ごとに実施される予定で、早ければ12月に実施予定。
 活動の達成度は、目標値に対する達成割合を1~5の数値にする。実行委員会がKPI(重要業績評価指標)と目標値を設定した。
 主なKIPは「かんぽ商品3年保有率94%」、「お客さまアンケート実施件数10万件」(新規)、「新設チャネル相談件数2500件」(新規)、「お客さまの感謝・賞賛件数12万件」、「ファイナンシャルプランナー2級取得率100%」、「意向確認のためのツール活用率100%」(新規)、「不祥事件・不詳事故発生件数0件」、「証券事故発生件数0件」、「かんぽと投資信託アフターフォロー率100%」(新規)、「ゆうちょ、かんぽ、郵便物流商品サービス改善数・各10件ずつ」など。
 これらの項目に1年後の目標として、例えば、ファイナンシャルプランナー2級取得率を35%に設定。現状は23.4%で、もう一頑張りすれば達成できる。
 かんぽ商品3年保有率は目標86%。現状も86%なので維持すれば達成できる。
 不祥事件・不詳事故発生件数は、現状では合わせて34件。1年間の不祥事0件を目指す。
 KPI項目作成に携わった横田尤孝(ともゆき)委員は「これが妥当なのか自信が持てない。実際にやってみて考えながら実施していくことを前提にしたい」と話している。
 営業目標やKPIについて、野村修也委員(中央大学法科大学院教授・弁護士)は「第一線の営業社員が数値を持ち、民間企業だから実績も上げなければならない。社員は本音では数値を高く積み上げた人が評価されると思っている。顧客本位の業務運営との板挟みになると、最悪の事態を招く。数値の示し方、評価の仕方、KPIの作り込みは十分に整っていないと思う。これらは社員との交渉もあり、経営陣が一方的に決められるものではない。時間が掛かる」と問題点を指摘した。
 委員会評価は、ヒアリングや現場視察、資料などの検証、外部機関の評価の比較参照などを総合して、評価を行う。達成度と委員会評価は半年ごとに実施する。
 日本郵政は、約束を社員に浸透するため、「約束ポスター」や「約束チラシ」を作成。ポスターは郵便局やゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の支店に掲示。チラシは郵便局の利用者に配布する。また、チラシは「お客さま本位の営業活動」について説明するツールとしても活用する。
 社員に対しては「経営理念ハンドブック」を配布。経営理念の浸透を図る。現場の声を経営に生かすために、「ご意見箱」を開設するほか、社風改革に関する意見を募集する。策定した「約束」を社員に浸透するため、増田寬也社長がその目的や活用の仕方を説明するメッセージビデオを作成。全社員に向けて発信する。
 ビデオについて横田委員は「各社のトップからもメッセージを発信してもらいたい。約束は各社でメッセージの内容が違うと思う。お客さまや社員に心に届くようなものを発してもらいたい」と要望した。
 実行委員会では評価アンケートの集約・分析に多くの事務作業が予想されることから専用の事務局設置を要望している。
 日本郵政は、グループの内部通報窓口について、運用が適正に機能しているかどうかの検証を同委員会に依頼した。弁護士でもある横田委員(青陵法律事務所)が、弁護士らで構成するチームを編成。「社員の声への対応状況の検証」や「通報者保護のための内部通報制度仕組みの検討」を行う。
 6月に公布された一部改正された公益通報保護法により、通報者が特定できないように担当者には、刑事罰も視野に入れた守秘義務が課せられるようになった。
 法改正に向けた体制の整備も課題となっている。検証は今年度中に終える予定。
 業務改善計画に盛り込まれている営業時の録音については8月24日から2470局1万3000人を対象に実施されている。
 実行委員会では「本格実施に当たり、録音の目的を周知徹底するなど、周到な準備が必要。お客さまの同意が得られない状況を確認するなど、今後の実施状況を慎重に見極めたい」としている。
 野村委員は録音について「郵便局を訪問した時、録音に不安感を持っている社員がいた。自分のやり方でよいのか、わからないまま録音されていく状況があれば、現場が安心できるような工夫が必要だと思う。特別調査委員会が示した提言は机の上で作ったもの。現場の声を聞きながら、目指しているものを道筋にして、柔軟な対応が必要」と現場に沿った対応を要望した。
 実行委員会の最後に増田社長は「委員からの提言については取り込めるようにしていきたい。内部通報制度で危険なサインをキャッチできるようになる。通報以前の段階で、社員の葛藤を受け止めることができる仕組みが大事。また、正しい数値目標と評価をどう結び付けるか。人事評価の根幹に関わっていることで時間をかけて制度を作りたい」と述べた。
 日本郵便の衣川和秀社長は「目標の示し方や評価の在り方は工夫したい」、ゆうちょ銀行の池田憲人社長は「お客さま本位の業務運営と業績の板挟みは経営していて一番つらいこと。そうならないような仕組みを作っていきたい」、かんぽ生命の千田哲也社長は「自分で考え、行動する。社員一人ひとりが誇りを持って活動できるようにしていきたい」と今後の取り組みについて意見を述べた。


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