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2020年11月9日 第7065号

【主な記事】

信頼回復に向け郵便局へ
[日本郵政]増田社長 グループの役員が訪問

 日本郵政の増田寛也社長は10月30日、東京大手町の本社ビルで開かれた記者会見で、10月5日から開始した信頼回復に向けた業務運営に関して、増田社長を含めたグループ各社の役員が郵便局を訪問するなどして、継続してフォローする考えを明らかにした。また、10月29日から販売開始した「鬼滅の刃」年賀はがきが、翌30日午前8時の予約状況で12万セットに達したことについて、「当初の案内では12月4日からの届けとしていたが、できる限り前倒しできるように態勢を強化したい」との考えを示した。

 かんぽの保険契約問題に関して、お客さまへのお詫び活動と合わせて、信頼回復に向けた約束を確実に実践していくことをお知らせする活動を10月5日から開始した。「信頼していただけに裏切られた」「落胆が大きい」といった厳しい言葉が数多く届けられる一方で、「私たちのために誠実に邁進してもらいたい」「変革に向けて進んでいってほしい」といった意見も寄せられている。
 増田社長は「この活動を通じて、一人ひとりのお客さまとしっかりと向き合い、信頼回復に向けて取り組んでまいりたい。この活動は緒に就いたばかりで、引き続きお詫びが業務運営の中心になるよう考えているが、私も含めてグループ各社の役員が郵便局を訪問するなどして、継続してフォローしていきたいと考えている」と述べた。
 10月29日から年賀はがきの販売を開始したところ、申し込み開始前から多くの反響があった「鬼滅の刃」年賀はがきについては、30日の午前8時時点で12万セット、「嵐」年賀はがきについては7万8千セットの申し込みがあったことを受けて、増田社長は「大変多くのお申し込みをいただいた。改めてお申し込みいただいた皆さまに感謝申し上げたい」と語った。
 日本郵便は、サーバーを1.5倍に増強したうえで販売を開始したが、同日時点で一部の時間帯、朝およびお昼休み、夕方においてサイトにつながりにくい状況が続いていた。この点について「お客さまにはご迷惑をおかけしている。(2種類の年賀はがき)どちらも受注販売のため、申し込みいただいたお客さまには必ずお届けをする。『鬼滅の刃』年賀はがきについては、12月4日からのお届けとご案内しているが、これをできる限り前倒しできるように態勢を強化してまいりたいと考えている」と述べた。
 年賀状はSNSなどのデジタルコミュニケーションとは異なり、息の長さを感じられる特徴を持つことなどから、「#このつながりは、一生もの。」を今回のメインコンセプトに据えた。
 「即時振替サービスの不正利用は、ゆうちょ銀行1社の問題ではなく、他社を含めたサービス全体の問題。再発防止という観点で他社を含めた視点が必要」との指摘に対しては、「ご指摘の通り、ゆうちょ銀行だけで点検して対策を講じることでは不十分。他の決済事業者と協同して提供しているサービスなので、現在実施しているセキュリティの総点検も、こうした他の決済事業者と連携して行なっている。従って、今後講ずるべき対応策も、現在ゆうちょ銀行で主に対応策を考えているところだが、連携している他の事業者と一緒になって、セキュリティの向上策を構築している」と強調。
 なお「こうしたセキュリティの強化策は、利用者間で連携して対策を講じた後、さらに第三者による評価を受けることを以って完成品としてその内容を公表したいと考えている。11月上旬にも、ゆうちょ銀行から発表したいと思う」との考えを語った。
 「総務省で郵便局のDX(デジタルトランスフォーメーション)の研究会を立ち上げる一方で、JP改革実行委員会においても中期経営計画に向けた検討を進める方針だ。協調関係など現段階での見通しは」との質問については、「総務省が主導するDXの研究会は、郵政事業にとっても、大変意義のある有益なものではないかと思っている。このDX研究会の方で、有力な有識者の方々が参加されるようなので、必要であれば、また求められれば、協力をしてまいりたい」とした。
 そして「JP改革実行委員会の山内弘隆座長のもとで、分科会的に研究者の皆さま方が集い、成長戦略についていろいろと議論いただいている。先般の議論の中でも、これからわれわれグループの目指す姿として、共創プラットフォーム構想の話があった」と説明。
 「両者はオーバーラップする部分もあると思う。JP改革実行委員会の方では、われわれが作成途上である中期経営計画を睨んで、より具体的に経営に資する提案をいただけるのではないかと考えている。設置の場所や目的は多少異なり、総務省の方は大臣主導で、DXを中心に様々な検討を進めていくとうかがっている。いずれにしても広い視点で見ると、郵政グループ全体にとって、将来の成長に向けた提言が受けられるので、検討いただいた点をいかに融合させて次期中期経営計画はじめ、その先の経営に反映させていくかについては、提言内容を見ながら丁寧に考えていきたい」と述べた。
 「郵便法の改正案が10月30日に閣議決定されたことに対する考えは」の質問については、「内容は主に土曜日を休配にするなどのものであり、改正法の大きな趣旨は、『働き方改革』の関係から、土曜日、深夜にわたる労働を止めようということだ。そのことによって、社員の働く環境をより向上させようということが主眼となっている。会社としても、これまで実現を望んできたものであり、法律改正が必要となることから、総務省で法案を提出する決断をいただいた。国会の審議の中で、必要性等について様々な議論が行われるため、そうした議論に誠実に対応してまいりたい。会社としては、法律案の今臨時国会での成立をぜひともお願いしたい」と語った。
 「キャッシュレスが進む中でグループ各社のシステム連動の可能性は」との問いには、「各社員が金融窓口等の現場で複数の端末を持たざるを得ない状況にあるが、端末をできるだけ一元化することはこれから必要になると思う。1つの端末で様々な機能を果たすことをできるだけ実現したい。会社の基幹システムについては、長い歴史の中でそれぞれのグループ会社が作り上げてきたため、全体を統一するのは得策ではないと思う。それぞれの業務が大きく異なるので、別々に新しいものにグレードアップしていった方が良いのではないか。ただ、全体としてお客さま情報について、基本的なデータベースを作っていくということなどは今後、良いサービスを提供するうえで必要になると考えている」との見通しを示した。
 「来週で上場して5年になるが振り返りを」との問いについては、「上場して企業グループがより多くの株主、そして市場からの監視にさらされるということは、一層の緊張感を持って経営し、日々の販売業務などに当たるうえでも社会で受け入れられるようなことをきちんと提供していくきっかけとなるはずだった。残念ながら、必ずしもそういう形にはなっていない。昨年来の不祥事など様々な問題が生じた状況に直面し、非常に多くの批判にさらされている。株価についても非常に厳しい状況になっている。株主、特に少数株主の皆さまは当社の成長を信じて株主になっていただいたので大変申し訳ないと思う。それ以外の多くの国民の皆さま方にも適切なサービスを十分提供しきれていない」と総括。
 「この5年間の中で、より成長を遂げることができなかったことを、改めてグループトップとして痛感している。何とかこれを切り替えなければならないというのが私の役割かと思っている。5年間の歩みの中でプラスの部分もあったかと思うが、きちんとした反省のうえに立って次に進んでいかなければいけない。そのためには、2007年10月に民営化しているが、それ以降あるいはさらにその前に遡って、引きずっている体質の問題もあると思うので、どうやって変えていくべきかを日々模索しているところであり、来年からの中期経営計画に繋げていきたい。膿のようなものを今年中に出し切って、新しい年に次の計画とその実行に臨みたいというのが率直な思いだ」と語った。
 最後に「郵政グループについて地域で期待をしていただいているお客さまがいらっしゃることも事実。そういう期待に懸命に応えようとしている多くの社員が数多くいることも事実。これは大きな救いであり、宝だと思う。そういう社員にこれからの出口をきちんと明示して、それに向かって共に進んで行けるような展開を図っていきたい」と締めくくった。


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