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2020年11月23日 第7067号

【主な記事】

新規ビジネスを創出
[次期中経]基本的な考え方を公表

 日本郵政グループは、来年5月に発表を予定している「次期中期経営計画」(2021年~25年)の基本的な考え方を11月13日、中間決算と合わせて発表した。成長分野に事業転換していくタイムスパンや新型コロナウイルスの影響などを踏まえ、計画期間はこれまでは3年だったが、5年に延長した。DX(デジタルトランスフォーメーション/最新技術を活用した変革)や地域社会への貢献、顧客本位の業務運営を軸に、コアビジネスの価値を高める。策定に当たっては社員の声を積極的に盛り込むことも基本とした。

 次期中期経営同計画は、新規ビジネス進展を見据え5年スパンで策定するが、新型コロナウイルス感染症の収束などの環境変化を見ながら、2~3年後に見直す予定だ。
 計画の柱はコアビジネスの強化と新規ビジネスの創出。増田社長は「グループ全体として、安定的で堅実、コアビジネスになることをやっていきたい」と、グループ横断ビジネスの創出を強調する。
 郵便局の活用については、DXを取り込みつつも、グループの強みでもある郵便局のリアルネットワーク生かし、新たな価値の創造やサービスを生み出す。
 1月の就任時に、政策の一つとして掲げた「リアルとデジタルの融合」を一歩、具体化。郵便局と物流・金融ネットワークを核としたビジネスプラットフォームづくりを進めるという。
 増田寛也社長は「郵便局が築き上げた信頼に期待する層もいる。郵便局は全国の居住者情報を持っており、今から郵便局のようなリアルネットワークを作ることは行政でもできない」と郵便局の強みを語る。
 計画では、グループが持つ情報の活用を新サービス・既存サービスの充実に生かすことも盛り込む。増田社長は「グループ各社を横串でつなぎ、サービスにつなげられないかと思っている。これまでは、横の関係を生かし新しいサービスを作る意識が欠けていた。ゆうちょ銀行は投資信託、かんぽ生命は保険商品の契約情報をそれぞれ持っているが、横断的な情報は日本郵便でないとわからない状態にある。お客さま情報のデータベースを作り、それらの情報を有効活用し、より良いサービスを提供したい」と説明する。
 このほかにも郵便・物流データを活用することで、配達の最適ルーティングや要員配置などに生かす。荷物の追跡情報は、現在は1回限りの情報となっているが、それを活用し、新サービスにつなげられないかについても検討したいという。
 日本郵政と日本郵便は、トール社のエクスプレス事業(豪国内物流)の売却の検討について発表したが(11月5日)、Eコマース市場の拡大やアジアの成長を見越し、残る事業(ロジスティック事業、フォワーディング事業)の立て直しを進める。
 増田社長は「成長分野としては物流には期待が持てる。国内を固めつつ、国際物流をどうしていくかも問われている。トール社を国際物流事業の柱にすることは変わらないが、トール社の強みが生かせるようマネージングしていきたい。今までのようにトール社任せにはしない。また、不動産事業も自動運転の隊列走行の実現をにらみ、物流の終点・基点となる高速道路周辺の物流倉庫の整備も考えていくべき分野だと思う」と述べた。
 不動産事業については、収益は長い期間に投資し回収していくビジネス。安定的にリターンが期待できるものを中心に投資する。
 これまでにKITTEやJPタワー、郵便局とその周辺の再開発、マンション、高齢者住宅などに投資してきた。今後は、都心の老朽化した郵便局や社宅の開発にも取り組む。増田社長は「良い物件があれば、郵政グループが所有する物件以外のものにも、将来のコアビジネスになるよう育てていきたい」と語る。
 ゆうちょ銀行は、すでに認可されている「口座貸し越しサービス」の展開や住宅ローン(認可申請を取り下げた)の商品ラインアップの充実、投資一任サービスの導入、信託・相続などの高齢者向けサービスの実施を盛り込む。
 口座貸し越しサービスは、保証業務の提供先として予定していたスルガ銀行の子会社(SDP社、東京都中央区)は、親会社との提携解消により、頓挫している。次期中経では、住宅ローン審査、与信情報管理システム(信用情報調査や保証業務)を自前で構築することも盛り込む。その際の与信判断基準には、AIを活用する。
 住宅ローン業務は、ソニー銀行や新生銀行の媒介業務も継続しつつ、自らもサービスを提供する。自社商品を開発し、フラット35の直接取扱を始める。投資一任サービスは、資金運用には証券会社との提携により提供する。
 かんぽ生命は、青壮年層向けの保障性商品を充実させる。養老保険や医療特約を見直す。
 資本戦略には「日本郵政が保有する金融2社の株式の保有割合を50%程度とすること」を明記。5割以下にすれば新規事業の申請が事前届出制になる(ただし、公正競争上の問題は変わらない)。
 増田社長はかんぽ生命の株式売却について「もう少しで、届出でできるようにしたい。保障性商品のラインナップが増やせるようになるよう進めている」と話す。
 株価の下落と株式売却との関係について増田社長は「市場が会社の状況を正しく理解し、我々に厳しい評価を下した。それを変えていくには、一つは信頼回復。もう一つは金融環境が厳しくなっている中で、それを超えて将来に向けた方向性を示せば、投資家の評価も変わってくるという期待感を持っている。信頼回復に向けて一歩一歩進めることが大事。また新ビジネスが少しでも構築できると、お客さまから明るい材料として見ていただける。そうしたら、株式を売却したい」と説明する。
 ゆうちょ銀行は、9月末の株価は簿価の半分以下となり3兆円の減損処理を行った。日本郵政も一時は上場時売り出し価格の半分程度に落ちたこともあり、現在は6割程度。配当方針は決めていないというが「お客さまに評価されるものにしたい」という。


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