「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

2020年12月7日 第7069号

【主な記事】

郵政民営化委でヒアリング
中間決算や中経の考え方

 第222回郵政民営化委員会(岩田一政委員長)が11月25日に開かれた。
 「日本郵政グループの2021年3月期中間決算」と「次期中期経営計画の基本的考え方」について、関係者にヒアリングが行われた。
 DX(デジタルトランスフォーメーション)を取り込んだ業務改善や配当政策、金融2社の株式の売却、ゆうちょ銀行の今後の利益について、意見や質問があった(以下、委員長Web会見での発表内容)。
 中間決算について、委員から「ゆうちょ銀行の純利益をみると、減少傾向にあり、このまま続くと6年後にはゼロになる。この傾向を止める手立てはあるのか」との質問に、ゆうちょ銀行は「減少の大きな要因は、利回りの低下により、資金利益が減少していることにある。対応として運用の多様化を進めている。プライベートエクイティや不動産投資など、現在はその種まきを進めているところ。次期中期経営計画で、その結果を出したい」と回答。
 配当については委員から「厳しい経営の中ではあるが、日本郵政とゆうちょ銀行は、かんぽ生命保険に近づくよう努力してもらいたい。総合力を発揮し、株主の皆さまからの信頼を向上させてもらい、民営化の評価を高めることに期待したい」という意見があった。
 日本郵政は「上場以来、安全配当を続けてきた。現在の利益水準から減配になると、株主に迷惑をかけることになる。減額の必要がないなら今後とも配当を維持し、株主の皆さまに評価してもらいたいと考えている」と回答した。
 金融2社の株式の売却については、委員から「株価が低迷している中、どのような条件なら売却に踏み切ることができるのか」との質問があった。 日本郵政は「株式の売却は50%を目指しているが、郵政民営化法の改正により、売却の期限がなくなった。市場の動向や資本戦略、より良いお客さまサービスを考慮しつつ、できるだけ早期の処分を前提に進めていく」という方針を示した。
 成長戦略について、委員からは「DXを進めるうえで、組織改正や業務の見直しが必要と思うが、人材不足が懸念される。対策はあるのか」との質問があり、日本郵政は「ITやデジタル人材の不足は懸念している。外部から適した人材を入れ、自社での人材育成が必要と考えている。郵政の中に専門の人材を増やし、経営にプラスになるようにしたい」と改善や対策に向けて前向きな姿勢を示した。
 郵便局の維持について、委員からは「過疎地の郵便局の維持のため、利用者にもある程度、受益者負担を求めてもいいのではないか」との意見があった。日本郵政は「特に過疎地では紙やマンツーマンに慣れ親しんでおり、5年の間に変えるのは難しい。自治体事務の包括受託手数料をビジネスベースとすることで、過疎地に住む人の負担をなくしたいと考えている」と答えた。
 国際物流事業については、委員からトール社を売却するということだが、どの事業を売却するのか。売却により、どのような効果が期待できるのか」という質問があった。
 日本郵便は「新型コロナウイルスの影響で、モノの動きが停滞し、BtoB主体のオーストラリア国内エクスプレス事業は赤字が続いている。売却後はアジアを中心とした国際物流事業を更に伸ばしていける」とした。
 また、委員から「日本郵便はEコマースの発展を成長に取り込む必要があり、これを国際物流の展開につなげていくことが大切だと思うが、どのような考えか」との質問に、日本郵便は「法人事業はゆうパケットが伸びている。国際的につなげていくか。インフラの構築や他の事業者も含めて、どのように取り組んでいくかについては、次期中期経営計画でもわかるようにしていきたい」と回答した。
 委員からは「物流インフラやEV(エレクトリックビークル=電動)など成長分野への投資を、ゆうちょ銀行が投資信託を組成することで対応することが考えられる」との意見もあった。
 国内の物流について、委員からは「新型コロナウイルスの影響でゆうメールが減少しているが、今後の課題は」との質問に、日本郵便は「ゆうメールはDMが中心で、新型コロナの影響により減少している。今後も大きく成長する分野ではなく、緩やかに減少すると予想している。ゆうパックは、Eコマース市場の将来性がある一方で、競争環境は厳しいマーケットであると認識している。AIなどデジタル技術を活用し、利便性を高めていきたい」と答えた。


>戻る

ページTOPへ