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2020年12月21日 第7071・7072合併号

【主な記事】

新ビジネスモデルが課題
民営化委 金融株売却後の経営

 第223回郵政民営化委員会(岩田一政委員長)が12月9日に開かれた。前回の3年検証(2018年)での日本郵政グループの課題や指摘等に対する取組状況や、トール社の経営改善、キャッシュレス決済サービスのセキュリティ総点検の結果について関係者にヒアリングを行った。岩田委員長は「最終ゴール時の姿やビジネスモデルについて、経営者の情報共有は、今回の検証でも大きな論点になる」との考えを示した。委員からも「金融2社の50%を超える売却は、ビジネスモデルの十分な検討が必要」との要望があった。

 委員からは「次期中期経営計画の基本的な考え方を発表した社長会見で、日本郵政の増田寛也社長は、金融2社の保有割合をできるだけ早期に50%に引き下げたいと言っているが、法律では更に引き下げることが求められている。50%から引き下げた場合の経営のあり方に対するビジネスモデルはどうするのか。売却は十分にビジネスモデルを検討してから判断してもらいたい」との要望があった。
 日本郵政は「次期中期経営計画期間に、日本郵政の保有率が50%までの引き下げは早期に実施する。その後の処分については、金融2社の経営状態、ユニバーサルサービスへの影響、グループ一体性の確保、資金需要、市場動向、連結業績への影響を勘案しながら、検討していくとしか申し上げられない」としたうえで、「最も悩ましいのは、連結の業績が減少すること。ビジネスモデルは次期中経で検討することになるが、難しい課題」と回答した。
 前回の検証への取り組み状況について、委員からは「前回の検証で、コーポレートガバナンスの強化や利用者・消費団体との連携強化については強く指摘したにもかかわらず、かんぽ生命保険やゆうちょ銀行の不祥事があり、内容が甘かったのではないか」との質問があった。
 これに対して日本郵便は「不祥事が続いたことは反省すべきところ。コーポレートガバナンスの強化や顧客本位の業務運営の取組み、リスク管理が不十分だった。お客さまの声を経営者が共有できる機会を増やしている」と答えた。
 関連して「JP改革実行委員会の意見は、会社内でどのように共有されているのか」との委員の質問に、「内部通報やガバナンスの検証や委員の発言内容は早期に入手し、幹部と共有している」と回答した。
 会見では「コーポレートガバナンスの強化や顧客本位の業務について、指摘したにもかかわらず改善されなかったことの原因」についての記者の質問に、岩田委員長は「私は委員長になってからも問題意識を持ち指摘してきたが、民営化が実現したとき、日本郵政グループはどのようなビジネスモデルを展開しているのか。経営者間でコンセンサスが十分でない」との認識を示した。
 そして「例えば、情報の共有。最終ゴール案が明確に経営陣の間で共有されていなかったことが主要因ではないか。今回の検証の大きな論点だと思う。検討できないかと考えている」と述べた。
 トール社の経営改善について、委員からは「JPトール社の強みは、事業一体での運営があるようだが、今後どこを強化するのか。JPトール社だけで事業を運営するのか。日本郵便の収益貢献に必要なものは何か」と問われた。
 日本郵便は「トール社のフォワーディング事業はアジア発着の空港や港間の輸送を手配するため、あまり知られていなかったが、JPトール社はアジア発着のサービスを始めた。人員を育てることに力を入れ、ようやく収益が上がるようになった。国内輸送は、トールエクスプレスジャパンとウィンウィンの関係になれる。日本郵便の収益向上に貢献できる可能性がある」と回答。
 また、委員からは「トール社は同社内で一貫した物流サービスを提供しているが、他の黒字事業の収益減の要因になることはないのか」と質問があった。
 日本郵便は「エクスプレス事業は荷物を運ぶサービス。ロジスティクス事業は荷物を受けて提供するサービス。売却により、荷物の運び手と受け手が切り離されるが、別会社になり、新たな契約を結ぶだけで影響はない」と答えた。
 日本郵便は、トール社に対して日本郵政の市倉専務執行役(当時)を取締役として派遣(異動により6月に退任)した。現在は日本郵便の衣川和秀社長、米澤友宏上級副社長、小野種紀専務、若櫻(わかさ)徳男常務がトール社の取締役として就任。若櫻常務は現地に赴任している。
 2017年1月にはトール社の経営陣を刷新。今年1月には新社長にトーマス・クヌーセン氏を起用した。日本郵便からの取締役の派遣などを通して、トール社経営陣とのコミュニケーションやガバナンス強化などに取り組んでいる。
 前回の3年検証では、ゆうちょ銀行の限度額引き上げとセットで委員会から要望された「貯蓄獲得に関わるインセンティブ」について、委員からは「インセンティブの撤廃について他の金融機関から『公的年金の口座との振替になっただけ』という批判が出ている。検証から2年が経過したが、スピード感が感じられない。なぜ時間が掛かっているのか」という質問があった。
 日本郵便は「振替は顧客基盤の維持や投資信託の顧客基盤の拡充に関わること。基本給については、渉外社員の基本級は窓口社員と同じ水準にした。スピード感に欠けていることは申し訳ないと思っている。手当の見直しは社員の労働条件を変更することになるため、組合とは丁寧な折衝を繰り返してきた。来年4月にはできることになった」と回答した。
 来年4月からは、貯金インセンティブは、給与振り込みや年金受取の口座振り込み獲得に対する「ゆうちょ営業基盤手当」に代わる。口座振り込みの獲得数に応じて郵便局に手当が入る仕組み。手当は局員で割り振られる。同手当は、11月25日に開催されたJP労組の中央委員会(第21回)で了承されている。
 ゆうちょ銀行の不正送金などの問題に対しては委員からは「ミヂカの点検でモニタリング体制の構築や不正を検知した場合の対応体制の整備は大事で、早急に対応すべき」との質問があった。ゆうちょ銀行は「モニタリング体制の構築は、重要と認識しており、早期に改善したい。即時振替サービスは、態勢が整わない限り再開できないものと考えている。決済事業者と調整している。ミヂカは今後新たなサービスとするかについて、慎重に検討している」と回答した。


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