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2020年12月21日 第7071・7072合併号

【主な記事】

郵便局ネットの強化を
有識者委が提言へ 5Gの基地化も

 郵便局ネットワークの活用策を探ろうと有識者による「郵便局ネットワーク強靭化委員会」の第5回会合が12月15日に開かれ、「郵政バリューアップ戦略」として報告書をまとめ、総務省や金融庁、郵政民営化委員会、日本郵政グループ、全国郵便局長会、JP労組、全国簡易郵便局連合会などに提言していくこととなった。金融業務の上乗せ規制の解消やユニバーサルサービスの維持、郵便局ネットワークの強化、郵便局を5G基地局として活用、郵政グループ主導による地域金融機関の再編などを内容としている。

 「郵便局ネットワーク強靭化委員会」は8月から多様な視点による郵便局ネットワークの在り方などを検討してきた。近々まとめられる報告書の概要は、制度の見直し、共助連携型のオペレーション・システム(JP共助連携ネットワーク)の構築、郵便局を5G基地局として活用、デジタル化・情報産業化の推進、地域金融機関再編への対応などが内容となる。
 委員会発足に当たっては、柘植芳文参議院議員が「郵政事業が民営化され13年が経過するが、かんぽ問題はもとより、郵便、貯金とも内在する大きな課題を抱えており危機的な状況。旧郵政民営化法と新たな改正郵政民営化法での整合性がなく、3社の株式売却により“郵政グループの一体感を経営の中で活かす”という事業本来の方向性が見いだせない現状。民営化委員会等でしっかり検証し、法的に不備な点は政治、経営の一体性は経営者が責任を持ち対処し、郵政事業の危機を乗り越えなければならない」とのメッセージを寄せている。
 制度については、2万4000の郵便局ネットワークが、人材、情報等を十分に活用していないと指摘、現状ではユニバーサルサービスの維持に支障をきたす恐れがあるとし、多くの法的規制の解消を求めている。また、郵便局を社会的資本として明確化、国の政策遂行の基本に据えることとしている。
 JP共助連携ネットワークの構築は、全国の郵便局、ゆうちょ銀行営業所、かんぽ生命支店などを結び、都市部の繁忙局に来た人の相談に、画像や音声で対応する。また、地方の郵便局に来た人の専門性が高い金融商品などについての要望も、待ち時間なく的確に回答する。2人局を含めて郵便局ネットワークの有効活用、ユニバーサルサービスの3事業一体の安定的な提供、外部提携による新規ビジネスの展開などに資するとしている。
 郵便局の5G基地局は、5兆円を投資と通信会社へのリース。国債等の償還で毎年22、23兆円ある収入の一部を投資、通信会社へリースすれば年間1000億円の収益を確保できるとする。
 郵便局の基地化によって全ての地域で1年以内に5Gが利用できるようになれば、遠隔医療の実現やテレワークの推進などによって地域を活性化、地方創生への一助となる。郵政グループの収益力を構造的に改善するとともに、資本市場への強いメッセージとなる。
 デジタル化の推進では、配送などの生産性向上やお客さま情報のデータベースをつくり有効活用することなどが内容。また、地銀再編では①合併は行わない②人員整理は行わない③経営者の変更は行わないを3原則とし、郵政主導で多様な選択肢を提供するともに、地域活性化ファンドへも参加するとした。
 こうしたことを内容とする報告書は、近くまとめられ関係方面に提言していく。なお、委員会は齋藤豊氏(元国民新党事務局長、元横浜中央郵便局長)、勝野成治JPビズメール社長、会計評論家の細野裕二氏、元日本総研専務執行役の下稲葉耕治氏、中江紳悟日立製作所特別顧問(元東北支社長)、下地幹郎衆議院議員、通信文化新報の永冨雅文相談役がメンバーとなっている。


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