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2021年1月11日 第7074号

【主な記事】

武田良太総務大臣新春インタビュー
ユニバーサルサービス堅持を
郵便局データの活用も


 武田良太総務大臣は昨年9月の就任以来、精力的に仕事をこなす。スピードも伴い、就任22月目には大臣主催の「デジタル時代における郵政事業の在り方に関する懇談会」が立ち上がり、郵政事業の将来像の議論が始まった。菅内閣の優先事項である携帯電話の料金値下げでも成果を上げている。少子高齢化とデジタル化がクロスしたところに新たなビジネスシーズが隠れている。DX(デジタル・トランスフォーメーション)を睨んだ郵便局の役割や、通信分野で起きている劇的な変動などについて武田大臣に聞いた。(永見恵子)

■過疎地において、地方自治体の支所や地域金融機関の支店が閉鎖される中、郵便局の役割はますます高まっていると思います。デジタル時代を迎えて、郵便局は地域でどのような役割を果たしたらよいのでしょうか。
 あまねく2万4000の郵便局ネットワークとユニバーサルサービスは、社会福祉の面からみても、特に過疎地という面からは、堅持していくことが必要ではないかと思う。
 地方自治体も財政運営が厳しく、支所を閉鎖する時に、代行業務を郵便局が請け負う。また、金融機関の口座書き換えなどの代行業務も担っている。全国に点在する2万4000局のネットワークを有効活用することにおいて、新事業の着手に成功しているのではないかと思う。


■「デジタル時代における郵政事業の在り方に関する懇談会」においても議論が始まっていますが、ビジネスが変容している中、大臣はデジタル時代の日本郵便・郵便局の役割をどのようにお考えでしょうか。
 デジタル時代の新たなビジネスについては、日本郵政の増田寛也社長にも申し上げていることだが、郵便局が持っているかけがえのない虎の子の財産であるデータをもっと先進的に使っていかなければならないと思う。今のままだと宝の持ち腐れになってしまう。
 デジタル時代は、物からデータに価値が移っていく。データをしっかり保有している郵便局は強い。相当な潜在力があり、力を発揮できると思う。データを基準にどういうことができるのかについて、真剣に考えトライしていくことが重要だと思う。
 新たな社会構造の中で、郵便局のデータを活用し、それを新たなビジネスにしていくことは、郵便局にとっても必要。これが地域の活性化や社会福祉の充実、経済、郵便局の発展にもつながる。積極的にビジネスモデルを求めて、挑んでいく姿勢が重要になってくると思う。


■総務省はタイ、ベトナム、ミャンマー、ロシア、インド各国と「郵便分野における協力に関する覚書」を締結し、郵便システムの海外展開を進めていますが、通信や放送分野も含めて、総務省の海外インフラ展開の今後について、ポイントを聞かせてください。
 光海底ケーブルをはじめとした通信基盤整備、医療・農業でのICTの利用、郵便などの分野において、成果は出してきたと思う。
 4月に「総務省海外展開行動計画2020」を策定したが、郵便システム、5Gシステム、光海底ケーブル、データセンター、医療・農業ICTを選定し、3年間重点的に推進することになっている。官民連携が不可欠で、その枠組みとして、「デジタル海外展開プラットフォーム」を今年度内に設立するように準備をしている。
 昨年12月10日には政府全体で2021年から5年間のインフラシステムの海外展開の方向性が示された。政府全体の方針との整合性を取りながら、インフラシステムの海外展開を進め、国際競争力強化に貢献してまいりたい。


■第五世代移動通信システム(5G)の先にある「Beyond5G(6G)」を見据えた日本の産業力強化については。
 ポストコロナを見据えてICTの需要は高まる。5Gでは国際競争力に負けてしまったと言われる人がいるが、負けたことを悔やんでもしょうがない。日本の技術を2030年に向かって持てる力を全てぶつけて、巻き返しを図らなければならない。この分野での国際競争に打ち勝つ気概を持たなければならない。
 日本の特徴として、民間の努力だけで、競争させようとしてきた。このような政府の姿勢を改めて、しっかりと官民一体となり、戦略的に国際競争に臨んでいくことが、これからの我々に必要なことではないかと思う。
 研究開発はBeyond5Gの要素技術の確立が不可欠でこの5年間の取り組みが重要になると考えている。官民の力を結集し、巻き返しを図り、産業競争力をつけていきたい。


Beyond5Gに向けての国際競争力の強化と携帯電話料金の引き下げを目的に、NTTはNTTドコモを完全子会社化しましたが、通信市場における公正競争について、総務省としてどのように考えていますか。
 NTTドコモの完全子会社化は大きなニュースになり、他の携帯事業者からは懸念の声が示されているのは事実。現在はNTTの固定電話が圧倒的だった時代とは環境が違う。競争がかなり進展してきた。プラットフォーマーの台頭により、グローバル競争が進展したことなど、いろいろと環境が変わったということで、様々な角度からNTTがTOBを行うことについて検討したが、「問題ない」とされた。
 総務省としても公正競争確保のための制度整備も行ってきた。NTTドコモの完全子会社化については、NTTが肥大化・巨大化し過ぎるということで、公正競争が担保されないのではないかという声に対して、有識者会議を立ち上げ、客観的にこれを見つめる会合を開き、議論を重ねている。
 関係者にヒアリングを重ねながら公正競争の確保の観点から、年度内をめどにとりまとめたい。


■NTTドコモの完全子会社化と時期を合わせて、ドコモは自らのサービスで低廉な携帯電話料金を発表、他の事業者もこれに追随するなど、武田大臣が真っ先に取り組んだ携帯電話料金値下げについては、一定の成果が見えてきました。その基本的な考え方を改めて聞かせてください。
 携帯電話料金の高止まりが続いてきた原因は、モバイル市場に公正競争環境が生まれていなかったことや、事業者が寡占状態にあること、乗り換え時の複雑な手続きや手数料などにより自由な選択が阻害されていたことがある。
 携帯端末の契約数は1億8500万台、日本の人口より多い。生活インフラとしてあるべき姿は何であるかを考えると、低廉化を目指し、健全な市場に生まれ変わらなければならない。その環境づくりに着手してきた。
その甲斐もあり様々な事業者が新たなサービスプランで低廉化や手続きの簡素化、手数料の無料化を進め、良い方向に向かっている。今後も注視していきたい。


【武田総務大臣略歴】福岡県出身。52歳。早稲田大学大学院修了。衆院福岡11区・当選6回。亀井静香衆院議員の秘書を経て、2003年11月に初当選。前国家公安委員会委員長、前内閣府特命担当大臣(防災)、前国土強靱化担当、前行政改革担当。趣味はゴルフ、ヨット。総務大臣就任後は趣味の時間は取れていないという。健康法はしっかりと睡眠を取ること。


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