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2021年1月18日 第7075号

【主な記事】

ミヂカは新サービスに移行
[ゆうちょ銀行]即時振替を一部再開

 ゆうちょ銀行は、キャッシュレス決済サービスで不正送金や不正アクセスがあったことを受け即時振替サービスを停止してきたが、メルペイとLINEPayの2社については1月13日からサービスを再開した。mijica(ミヂカ)は来年夏までは利用できるが、来年春を目途に新たにブランドデビッドカードを発行する。同社ではこれまでの反省点を踏まえ、社内のリスクやセキュリティ態勢を整える。

 サービス再開条件は、「セキュリティ総点検チェック項目」(昨年11月9日公表)や全国銀行協会が作成した「資金移動業者等との口座連携に関するガイドライン」(昨年11月30日)、日本資金決済業協会の「銀行口座との連携における不正防止に関するガイドライン」(昨年12月3日公表)について決済事業者との間で確認することや、補償の負担割合の合意などがある。負担割合はゆうちょ銀行と事業者との間で個別に取り決めている(非公開)。
 メルペイとLINEPayはこれらが確認できたことから再開を決めた。PayPay、NTTドコモ、PayPal、ゆめカード、ウェルネット、Kyash、楽天Edy、ビリングシステムについても協議を続けており、確認と合意ができ次第再開する。
 ゆうちょ銀行は再開に伴い、同日付で「即時振替サービス規定」を改定した。補償については、記号番号等やID等が不当に盗まれた場合(警察への届出などの条件付き)は「第三者に不正利用され不正な電信振替があった場合、ゆうちょ銀行または収納加入者に対して当該不正な電信振替に係る損害の額に相当する金額の補てんを請求することができる」と補償が明記されている。
 全銀協のガイドラインでは「個人の利用者が自分に責任がなく被害に遭った場合は、銀行・資金移動業者等の双方が連携のうえ、補償を迅速かつ適切に行うことが必要である」と記載されており、ゆうちょ銀行では、苦情の受付をしてから決済事業者とどのように連携するかについて具体的な業務フローを作り、両者で確認している。
 ミヂカについては、来年春を目途にブランドデビッドカードに移行するが、会員専用サイトからのチャージや送金、新規申し込みは停止中で今後も再開しない。可能なのはデビッドチャージ、ゆうちょATMでの現金チャージや出金、海外ATMでの出金などがある。
 これまでに起きたキャッシュレスサービスの不正利用について、池田憲人社長は「安全性に対して、当行のリスク感度の不十分さや被害補償の解決に日時を要するなど、お客さま本位に欠ける業務運営により、お客さまや関係者にご迷惑をおかけしお詫び申し上げる。再発防止に努めたい」と謝罪した。
 経営責任を明確化するため、関係する役員5人は報酬を自主返納する。社長は月額報酬の10%の3か月分、副社長と営業部門担当の専務、常務は同10%の2か月分、コンプライアンス部門担当の常務は10%の1か月分、その他の関係執行役は文書による厳重注意処分となった。
 監査委員会の提言(昨年12月9日公表)を受けて取り組んだ「総合的な苦情・相談対応態勢の強化」や「セキュリティ検証態勢の強化」などの社内態勢の整備について公表した。
 利用者からの苦情・相談への対応については、1線(現場)と2線(コンプライアンスやリスク管理など)の連携がうまくいかなかったことから「お客さまサービス統括部」を新設し、苦情から解決まで一元的に管理する。また苦情・相談の一元管理の一環として、コールセンターに「キャッシュレス被害相談デスク」を3月を目途に設置する。監査委員からの提案を受けての改善だが、全銀協のガイドラインでも「利用者をたらい回しにするようなことがないようにする必要がある」と定めている。
 経営陣の関与の強化については、池田社長を委員長にした「サービス向上委員会」で、苦情や補償において重要な案件は経営陣が直接、個別に把握し、必要な対応を指示できる態勢とした。
 セキュリティ検査態勢の強化に対しては、新商品やサービスのセキュリティを審査する「プロダクツ・コミッティ(仮称)」を新設。2線でのサービス全体へのけん制機能を高める。また、リスク感度に問題があったことから、情報収集にも力を入れる。
 池田社長は「予測しなかったことが起きた。他社でどのようなことが起きているか。関係部署とも連携して、情報収集力も強化したい」と述べている。1線と2線の人事交流の拡大や外部機関や外部専門家とも連携し、情報収集に努める。
新商品やサービス導入後も経営陣の関与を強化する。
 リスク管理やシステム部門の執行役が、重点点検システムを定期的に選び、評価結果を検証する。不祥事の発生に備え、社内対応フローを明確化する。不祥事が発生した時に適切に情報開示を行うために、提携先との連携態勢も強化する。


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