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2021年2月8日 第7078号
【主な記事】
ロゴマーク「郵政創業150年」を決定
[日本郵政]増田社長 今一度、原点に立ち返る
日本郵政の増田寛也社長は1月28日、オンライン上で定例会見を行い、「郵政創業150周年の節目に、今一度、原点に立ち返って、皆さまの生活全体を支える存在であり続けるために、グループ社員の気持ちを一つにして、お客さま一人ひとりに寄り添っていきたい」と述べ、郵政創業150周年を記念して作成したシンボルのロゴマークを披露した。ロゴマークは全国の郵便局、郵便ポストなどの装飾に使用するほか、各種ノベルティにも活用するなど、あらゆるものに展開していく。「お客さまに寄り添うあらゆる場面にマークをあしらっていく」ことによって、感謝の気持ちを伝える考えだ。
今年は郵便事業創業から150年となる節目であることから、日本郵政グループは「郵政創業150年」の年とし、シンボルとしてロゴマークを作成した。
花のデザインと、馴染みの〒マークを組み合わせている。
「郵政事業そのものや社員の多様性、商品・サービスを利用するお客さまの多様性を地域にそっと咲く花で表現した」という。これからの郵政グループを担う若手社員によるプロジェクトチームで検討、全国のフロントライン社員を含めたアンケートを実施したうえで決定した。
郵便制度150年記念貨幣が発行される運びとなったことについて、増田社長は、「大変光栄に思っている。郵便局で貨幣発行に関するポスターの掲示を行うよう現在、造幣局と調整検討を行っている」と説明した。1月22日の閣議決定を経て財務省からも発表された。貨幣の種類は、金貨(額面1万円)、銀貨(額面1000円)の2種類。独立行政法人造幣局から通信販売する。
また、ぽすくまをデザインした1円切手が4月14日に発行される。1シート(50枚・シール式)50円で200万シート限定。
増田社長は「今回は料額を1円としており、消費税率改定などに伴って発生した郵便料金の差額の埋め合わせ用として、旧料額の切手をお持ちの方に利用いただきたいと考えている。明るい色彩のデザインとなっており、小さなお子さまにも喜んでいただけるものと思う」と語った。
「ぽすくまの1円切手の発行経緯」の質問については、「昨年、新聞の声欄に目を通していたところ、私が確認しただけで3件ほど、新しいデザインの1円切手をぜひ発行してほしい旨の投書を目にした。従前の1円切手でも、不足分を貼ることについては、不便をかけていないと思っているが、葉書や封書を大事にされて、表面のデザインほか細部を大事にされている方々からの声だった」と説明。
「そういう潜在的なニーズが高いのではないかと思い、日本郵便に話した経緯がある。できるだけお客さまの声にお応えしたいということで、今回の切手の発行にもつながり、デザインを含めたご意見を皆さまから頂戴できるものと考えている」と答えた。
郵便創業の父、前島密翁の肖像を題材としている現行の1円切手については引き続き発行を継続していく。
前島翁の切手は、1947年に現在とは異なる原画で発行した。1951年に現在と同じ原画での発行となった。最初は「銭」の時代なので、1(円)の後に00の表示があり、1952年に00の表示を削除した。
経営の多角化を推進
「就任2年目の抱負と課題、グループの経営課題」についての質問には、「昨年はかんぽ問題の対応で相当ウエイトを割いた。引き続きこの問題が続いているが、お客さまへの対応は山を越しつつある。しかし、依然としてグループガバナンスの問題、そしてリスク管理の問題等々、まだ改善すべき点は山積していると思う」との見解を示した。
次期中期経営計画に向けた成長への取組みについては、「一番力を入れなければならないのは、リアルのネットワークである郵便局と、デジタルの技術、デジタルデータをどのように融合させるか。これに最も力を入れて取り組む。そして、完成形を作っていかなければいけないと思っている」と強調した。
業務分野については、コアビジネスの分野と新たに収益の柱として作り上げていかなければならないものがあり、コアビジネスは郵便物流と金融の2つに分かれる。
「物流については、コロナ禍にあってモノの動きがかなり増えてきている部分があるので、当面人は動くが、モノと情報はもっと動くということだと思うので、そういう社会的要請に対応していくと同時に、物流分野をさらに磨き上げて収益の柱にしていきたい。この目標達成には、DX(デジタルトランスフォーメーション)などを使うというのが必須になってくる」とした。
金融2社については「低金利下での厳しい環境は変わらないと思うので、リスクを消去しながら、運用をきちんとやっていくのが大事。大変厳しい環境にあるのは他の金融機関も同じ。地銀とはもっとお互いに補完、協調し合うところを見つけて、地域経済に貢献していくような、そういう関係を作り上げていきたいと思う。メガバンクとも然り」と述べた。
そして「新規事業や不動産などに注力して経営の内容を多角化していきたい。いずれにしても、そうした事柄について、現在検討の最終盤にかかってきている。次期中期経営計画の中でより具体的な姿を明らかにしていきたい」と展望を語った。
「将来的な農業団体や農協との連携、農業ビジネスについての考え」の問いには、「農業といっても形態が地域によって相当異なる。稲作、果樹、野菜、酪農、畜産等、それぞれによって相当違う。現在、私が理解しているところは、局長の頑張りによる各郵便局単位でのいろいろな取組み。また、支社単位で系統立てて規模範囲を広げ、農業団体と物販などを中心に連携をして取り組んでいるところがある」とし、「新しいビジネスを進めていくうえで、農業との連携というのは一つの材料になりうる。これから有力なものに育て上げられるだろうと思っている」と語った。
また「分野にもよるが、酪農、乳製品も含めて、一戸当たりの所得が相当上がっている。施設園芸や花、果樹、乳製品等々、農業というのも非常に変わってきている。そういったところと組んで、多様なことができないのかという問題意識を持って、次期中計の新規ビジネスなり、全体としての物流の強化の中で取り組めないかと考えている」と述べた。
さらに「農業団体の幹部の方と会って、勉強会をする方向で今動いているところ。現在行われているものをより広げて、日本郵便だけではなく、グループ全体としてより魅力的なもの、そして農業従事者にとっても、われわれにとっても、双方にメリットがあるものを、きちんと仕掛けるということを目指す。郵政グループと農業団体との勉強会を幹部レベルで作って、実際の成果につなげていきたいと考えている」と構想を語った。
新型コロナウイルス感染症拡大の中、日本郵政グループ(4社)でも、1月26日までに915人の社員の感染が確認されている。全国の感染者の増加に比例して、グループ社員の感染者も増加している傾向にある。 グループでは昨年からお客さまが郵便局等を安心して利用してもらえるように、窓口へのビニールカーテンの取り付け、訪問等の自粛、非対面配達の実施などの対策の徹底をして感染拡大防止に努めている。
増田社長は、今回の緊急事態宣言を受けて、新たに追加した主な対策5点を挙げた。一点目は「前回の緊急事態宣言期間中も実施していたが、郵便局等の混雑緩和のため、大量硬貨による預け入れや、書き損じ葉書の交換等、時間を要する取扱いについて、時間変更をお願いするポスターを郵便局に掲載するほか、ホームページに掲載」して協力を求めている。
2点目は「会議、研修等において、会社が主催する意見交換会、そして懇親会は禁止している。緊急事態宣言が発令された地域(自治体独自の宣言も含める)においては、プライベートの懇親会も原則禁止、その他の地域は自粛としている」。
3点目は「本社社員はテレワークの積極的な推進により、出勤抑制7除雪ボランティアで活躍割以上を目標としている」。
4点目は「出張など他県にまたがる移動は自粛。特に緊急事態宣言が発令された地域への移動はプライベートも含め原則禁止としている」。
5点目は「集合を伴う研修、イベント、セミナー、講演会等は禁止。そして可能なものはオンライン等で実施している。やむを得ず会議を開催する際は、適切な感染防止対策を講ずることを前提に、必要最低限の人数、時間としたうえで、開催することとしている」。
そのうえで、「新型コロナウイルスの終息が見えない中で、社員の安全とユニバーサルサービスの業務継続に全力で取り組み、この難局を乗り越えていく所存」と改めて述べた。
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