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2021年2月15日 第7079号

【主な記事】

まちづくりで連携協定
東北支社が参加 福島県浜通り地域


 福島県浪江町(吉田数博町長)、双葉町(伊澤史朗町長)、南相馬市(門馬和夫市長)と日本郵便東北支社(古屋正昭支社長)ほか民間7社は、「福島県浜通り地域における新しいモビリティーを活用したまちづくり連携協定」を2月2日に締結した。東日本大震災からの復興並びに浪江町、双葉町、南相馬市が目指す、夢と希望のある未来の“まちづくり”を、各社の有する資源や先進技術、ノウハウを生かしながら、地域住民と共に創り上げていく。

 まちづくり連携協定を締結したのは3自治体と東北支社、日産自動車㈱(内田誠社長)、フォーアールエナジー㈱(牧野英治社長)、福島日産自動車㈱(金子與志人社長)、日産プリンス福島販売㈱(長島健博社長)、イオン東北㈱(辻雅信社長)、㈱長大(永冶泰司社長)、㈱ゼンリン(髙山善司社長)の8企業。2月2日に道の駅なみえ(浪江町)で締結式が開かれた。
 3自治体と8企業は地域住民と連携、具体的には新たな移動手段となるモビリティーサービスの構築、再生可能エネルギーの利活用による低炭素化の取組みと合わせ、コミュニティの活性化・強靭化の領域でも協業、持続可能な“まちづくり”の実現を目指す。
 吉田町長は「震災から10年、町の将来が見えない中、未だに帰還困難区域が町の8割を占め、昨年12月末時点で居住人口は1554人、町内の事業者数は171社。震災前と比べるとまだまだで、高齢者等交通弱者にとって交通の充実が求められている。協定締結で明るいニュースを地域の皆さまに届けることができる」。
 伊澤町長は「双葉町は未だに帰還困難区域、町民全体が避難を余儀なくされている唯一の町。2022年春頃に一部が解除となるが、全国的にはあり得ない状況にあるので、地方創生のモデルともなる。連携を機に一層の協力を」。
 門馬市長は「今後の日本のモデルとしての姿を示すことにもなる。自信を持って住み続けられ、誇りを取り戻すということでも期待している」と、それぞれ思いを語った。
 協定の概要は次のとおり。
▽3市町と日産自動車、イオン東北、日本郵便、長大、ゼンリンは、さまざまな交通手段、貨客混載、デジタル技術および自動運転技術等を活用し、過疎地や復興地域においても持続可能なモビリティーサービスの構築と、帰還・交流人口の段階的な増加に対応し得る持続可能な公共交通サービスの構築を目指す。また、3市町と日産自動車、イオン東北、日本郵便は、構成自治体内の生活利便性向上、経済、産業の活性化への貢献を目的とした移動や物流の実現を目指す。
▽3市町と日産自動車、フォーアールエナジーは、電気自動車の充放電統合的制御技術の応用と、定置型再生バッテリーの利用による、地域の再生可能エネルギーを有効に活用するエネルギーマネジメントシステムの構築を目指す。さらに、本技術を活用し、浪江町、南相馬市内の施設における再生可能エネルギーの利用率向上実現に努め、中長期的に域内全体の低炭素化の促進を図る。
 イオン東北は浪江町内の店舗を活用し、再生可能エネルギーの利活用や省エネルギーへの取組み等を通じ、脱炭素化に貢献する。日本郵便は浪江町、南相馬市内全体の低炭素化の促進を目的に、再生可能エネルギーの利活用およびエネルギー利用の適正化を目指す。長大はバイオマス発電のノウハウを生かし、浪江町、南相馬市に対し、防災計画等を考慮した低炭素化へのエネルギー計画を企画、提案する。
▽各社が有するノウハウや取組み、教育などの各種コンテンツを活用し、市町主催のイベントへの協力や企画提案、コンテンツ等の提供を通し、コミュニティ活性化や観光等各種事業に貢献、協力するとともに、まちの魅力向上や発信に努めていく。
▽災害時における電気自動車からの電力供給に関する情報提供をはじめ、店舗・拠点における地域のライフラインとして協力し、災害に関する情報共有と合わせ、防災・減災に寄与する活動を通し、まちの強靭化に向けて協力していく。
 東日本大震災、原発事故による避難指示の段階的解除に伴い、住宅や学校の整備、商業施設の再開などが進んできたものの、高齢化で自家用車の利用が難しく、移動に困る住民も多く、帰還も進んでいない。11者はこの協定締結を機に、震災から復興した地域における、新しいモビリティーを活用したまちづくりの実現を、共に推進していく。

 スマートモビリティー
 実証実験を開始
 浪江町スマートモビリティーチャレンジ事務局参加団体(浪江町、南相馬市、双葉町、イオン東北、一般社団法人まちづくりなみえ、日本郵便、日産自動車、ゼンリン、4Rエナジー、長大)は、地域を支える新たなモビリティーサービスの導入に向けた実証実験を、2月8日~20日(予定)まで浪江町において実施し、住民や来訪者に向けたサービス受容性を検証する。
 新たなモビリティーサービスは、浪江町に暮らす人や浪江町を訪れる人の移動に関する課題解決に向けて取り組むもの。道の駅をモビリティーハブ(接続拠点)とし、町内の主要な場所を繋ぐ巡回シャトルと、自宅やハブと郊外の目的地とを結ぶスポーク車両を組み合わせた、ハブ&スポーク型の「町内公共交通」や、店頭購入もしくはWeb注文した商品の配達・受け取りを貨客混載で行うモビリティー「荷物配達サービス」などを、新たな公共交通として検証。全て電気自動車を使用して実施される。
 本サービス提供による利便性向上を模索し、過疎地においても持続可能となるサービスの提供を目指していく。また、将来に向けた自動運転技術の導入を見据えて、巡回シャトル運行においては、自動運転車両による走行実験も実施する。
 なお、本実証実験は、経済産業省「地域MaaS創出推進事業」の「先進パイロット地域」における取組みとして選定を受けている。実証実験の概要は次のとおり。

【ハブ&スポークサービス】
 2月8~20日(水、日曜除く)の8時15分~19時まで、浪江町中心部およびその周辺で実施。中心部の巡回シャトルには日産eNV200改2台を、周辺部のスポーク車両には日産リーフ3台を使用、宅配には既存の日本郵便車両も使用し、住民等のサービス受容性(巡回シャトルによるまちの中心部の回遊性、ハブでの乗り換えの利便性等)を検証する。また、イオン浪江店の店頭で購入した商品やWebで注文した商品の荷物配達サービスについて、貨客混載の有効性を検証する。
 町中心部を周回する巡回シャトルを高頻度で運行し、まちの中心部の回遊性を向上させる、道の駅をモビリティーハブ(接続拠点)とし、自宅などの周辺部との移動手段であるスポーク車両と巡回シャトルの乗り継ぎにより移動サービスを効率化する。さらに、イオン浪江店の商品の自宅への配達や、道の駅受取りなどにハブ&スポーク車両や日本郵便の既存の車両を用いた貨客混載でマルチユース利用を行う。
 巡回シャトルの利用では、各乗降所にデジタル停留所を設置。行き先を簡単に選べ、顔認証で簡単に本人確認ができるサービスを提供する。
 復興地域で今後、人口が増加していく過程で、タクシーのようなドアtoドアのモビリティーサービスは、各移動にそれぞれリソースが割り当てられて占有されるため、一般的にサービス効率を上げにくい等の課題がある。これをミニハブ&スポーク型サービスとすることで運行の効率化、多頻度化を図り、サービスレベルの安定や収益性向上の可能性がある。一方で、乗り換えなどの検証が必要となる。加えて、ハブtoハブ間のメイン路線は定型ルート、高頻度運行となるため、自動運転車両の導入効果が得やすく、自動運転車のためのインフラ整備を限定的にすることもできる。

【自動運転デモ】
 2月15~20日(水、日曜除く)の9~16時まで、浪江町中心部で実施。ハブ&スポーク型サービスを持続可能な仕組みとするための方策の一環として、町中心部を周回するルートを自動運転で走行。日産eNV200改2台を使用し、自動運転車両に乗車した時の受容性を検証する。
 日本郵便は「トータル生活サポート企業として、ユニバーサルサービスを提供しつつ、地域と寄り添い、地域と共に生き、地域を支えていく。福島県浜通り地域においても、避難指示解除に合わせた郵便・物流サービスの提供、郵便局の再開、福島県との包括連携協定に基づく首都圏当社拠点での福島県地域復興物産展の開催などを実施してきた。今年で創業150周年を迎え、これからも郵便・物流サービスと郵便局のネットワークを最大限に活用し、新たな取組みに挑戦し続けることにより、地域社会の発展と国民生活の安心の基盤づくりに貢献していく」としている。


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