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2021年3月8日 第7082号

【主な記事】

脱炭素社会の実現に貢献
[日本郵政]増田社長 温室効果ガスを46%削減

 日本郵政の増田寛也社長は2月25日のウェブ定例記者会見で、「気候変動問題への取組みとして、政府が表明している目標と歩調を合わせ、2050年のカーボンニュートラル(脱炭素社会の実現)を目指す長期の目標を掲げたい」との考えを述べ、2030年度までに2019年度比で温室効果ガスを46%程度削減する戦略が必要との認識を示した。電力について従来よりも環境負荷の少ない再生エネルギーに段階的に切り替えていく。郵便物や荷物の配送時に使用する車両については、すでにEVカーや電気自動車などの導入を進めており、その一層の拡大を図る。さらに、社会環境の変化に対応した安定的な配送業務の確保のため、ドローン配送や配送ロボットの活用も積極的に取り組む考えだ。

 2020年10月26日の第203回臨時国会の所信表明演説で、菅義偉首相は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言した。
 温室効果ガス排出を全体としてゼロにすることは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を差し引きゼロを達成することを示す。
 10月30日の第42回地球温暖化対策推進本部では、2050年カーボンニュートラルの議論が行われ、地球温暖化対策の各種計画・戦略の見直しを加速し、全閣僚一丸となって取り組むよう菅首相から指示が出された。
 日本郵政グループはこれまでも、事業活動を通じて排出する温室効果ガスの削減に取り組んできた。今後も、次期中期経営計画の発表に合わせグループとして、政府が表明している目標と歩調を合わせて2050年カーボンニュートラル化を目指す長期目標を掲げる。
 増田社長は「2050年よりも前の時点で中期的なマイルストーンとなる目標も必要と考えている。多くの国際機関等がパリ協定等の1.5度シナリオ、いわば産業革命以前よりも気温上昇を1.5度以内に抑えるというシナリオに基づく目標の設定を求めている」と強調した。
 2015年に開催された、パリ気候協定会議(第21回UNFCCC締約国会議)では、気温を1.5度以下に保つことによって、気候への最悪の影響を避けることができるとの意見が支持され、1.5度シナリオが世界基準として採択された経緯がある。
 「日本郵政グループとしても、これを意識した中長期的な目標、例えば2030年度までに2019年度比で温室効果ガスの46%程度の削減を設定して、この達成のための戦略を提示する必要があると認識している」との考えを表明した。
 この目標達成には「わが国における再エネの普及など、カーボンニュートラルへの転換が相当程度進むことが必要となる。日本郵政グループも持てる経営資源を活用して、わが国および世界のカーボンニュートラル化の後押しをして、その達成を目指していきたいと考えている」と述べた。
 さらに「日本郵政グループは多くの施設、車両、社員を有して、全国で事業を行っている。環境負荷の軽減について積極的に取り組むことは、われわれが求められる社会的責任を果たす上で必要であるとともに、わが国のカーボンニュートラルへの取組みを促進するうえでも、大きな意義があると考えている」と意義を強調した。
 「2019年度比で2030年度までに46%減との目標を掲げているが、どのようなシナリオに基づいて作成したのか」との問いには、「2050年に向けたカーボンニュートラルを実現するためには、1.5度シナリオが掲げられている。それを達成するためには、全体として2030年度には19年度比で46%削減をするという一つの路線がある」と説明。
 「日本郵政グループとしても、2050年に向けて1.5度シナリオに沿うような形でCO2の削減を図っていくために、2030年度で46%削減とした。車両の関係、施設から排出される二酸化炭素(CO2)を考慮して、EV化やさまざまな取組みを行う。調達する電力を変えていきたいが、再生エネルギーになると安定性とコストの問題がある。今後はそういったことをきちんと詰めて、次期中期経営計画の中に可能なものは盛り込みたい」と語った。
 「小さな拠点としての郵便局の価値を高めていくために、気候変動への対応に向けて考えている各局の取組みは」の問いには、「郵便局に対してソーラー施設を設置するなど、再生可能エネルギー由来のものに切り替えていく声がグループ内で出てきている。防災拠点としての機能を強化すべしとする意見も同様。いずれも社内の中で、それをどう実行していくのかを検討しているところだ」と言明。
 「2万4000局あるので、いっぺんに切り替えるわけにはいかず、まずはモデル的なところを切り替える可能性もある。防災機能を強化するには、自治体ほかとの連携を図りながら、郵便局の機能を強化するということも必要になると思うので、他の機関との連携も考えつつ、防災拠点としての機能を強化していきたい。日本郵政グループ全体でも、日本郵便でもそのような考え方のもと内部で議論している」と語った。
 「2050年カーボンニュートラルは一般的には困難と考えられるが、目標を掲げることで、日本郵政グループという大きな組織として社会の変化の後押しをしていく狙いがあるのか。巨大な物流網を構築する計画を持つ日本郵政グループの貢献についてうかがいたい」との問いもあった。
 これに対しては「2050年のカーボンニュートラルを政府が国際的に表明したというのは大きなことだ。日本郵政グループは大変大きな組織であり、地域に貢献していくことを基本理念で掲げている。このため、こうした政府の方針にできるだけ沿う形で、後押しをしていくという使命があるのではないかと考えている」と答えた。
 その上で「2050年の政府目標に沿う形で日本郵政グループもできるだけ、実現の後押しをしていく社会的使命がある。一方、実現していく上では、飛躍的なイノベーションがなければならない等により、日本郵政グループだけではなく、社会全体、産業界全体が実現に向けて、それぞれ役割を果たしていく必要があると思う」とした。
 そして「今のところ、実現の見込みは立っていないというのが実情だが、きちんと節目節目に向けて目標を立て、それを実行していくということから2050年の姿が見えてくるのではないかと思っている」との考えを示した。


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