「通信文化新報」特集記事詳細

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2021年4月12日 第7087号

【主な記事】

「グループコンダクト統括室」新設
お客さま本位の業務運営を
「郵便局が核」を徹底

 日本郵政の増田寛也社長は、3月30日の定例会見でガバナンス強化を目的とした組織新設を発表した。グループガバナンス強化の観点から各社からの「お客さま本位の業務運営に反する事象」、いわゆるコンダクト・リスクに係る情報を迅速に把握、グループとして一体的な対応を可能とするための態勢整備が必要とするJP改革実行委員会の提言を受け、4月1日付で日本郵政の中に「グループコンダクト統括室」を設置した。室長には日本郵政の河本泰彰専務執行役を充てる。また、3月24日付で発表した大幅な役員・社員の人事異動の目的については「グループを主導する日本郵政と郵便局を担う日本郵便を一体的に運営することにより、郵便局を核としたグループ運営を徹底させることにある」と述べた。

 今年の1月29日に開催された第8回JP改革実行委員会が上申した「ゆうちょ銀行のガバナンス等に係る検証報告書」中には、日本郵政に対しても提言があった。
 報告書には「グループガバナンス強化の観点から子会社からのコンダクト・リスクに係る情報を迅速に把握し、グループとして一体的な対応を可能とするための態勢整備が必要」とする旨が記されている。
 この提言を受けて、日本郵政の組織内に「グループコンダクト統括室」を設置した。
 グループガバナンス強化の観点から、持ち株会社としてグループ各社における業務、営業に関する申告等のリスク情報について、第一次的に受付けをしてリスク情報を迅速に把握し、グループの関係部署課の連携を強化、一体的に対応することを目指す。
 この態勢を実効的なものとし、施策を円滑に遂行するため室長に日本郵政の河本泰彰専務執行役を充てた。
 まずは、グループ各社との連携態勢を強化することによって、コンダクト・リスクの早期検知に努める。将来的にはシステムを活用したリスク検知手法の構築を行い、リスク情報に対してより広範囲かつ迅速確実に情報の把握が可能となるよう検討を進めていく。
 こうした取組みによって、迅速かつ適切なリスク対応を行うとともに、リスク管理の高度化を進める。
 さらに、かんぽ商品の不適正募集問題、ゆうちょ銀行の即時振替サービスにおける不正出金問題のような事象の根絶を図り、お客さまに安心して各種サービスを利用してもらえるよう努めていく考えだ。
 3月24日に報道発表した日本郵政、日本郵便の役員・社員人事(4月1日付)では、広範な両社間の兼務が特徴の一つとなった。
 増田社長は「この人事の目的は、グループ運営を主導する日本郵政と郵便局を運営する日本郵便を一体的に運営することにより、郵便局を核としたグループ運営を徹底させることにある」と強調。
 「日本郵政と日本郵便、それぞれの機能には、重複することが多々あるので、一体的に運営することによって、より効率的かつ効果的な運営が見込め、さらに組織風土を融合し、縦割り組織を払拭することにもつながるものと期待している」と述べた。
 「新支社長に求めるリーダーシップは」との記者からの質問では、「現場のフロントラインからは、支社ましてや本社は距離が遠く見える。フロントと支社ですら非常に距離があると言われているので、フロントと支社との距離をできるだけ縮めるように努力してもらいたいと思う」と要望した。
 「日本郵便の支社は、ゆうちょ、かんぽと一体化して郵便局を使っていくということになる。このため、前述の支社とフロントの関係は縦のような関係。ゆうちょ、かんぽを含めた郵便との具体的な話は横の関係になる」とした上で、グループと地元自治体、企業等との関係も加味しながら、それぞれの関係を円滑化することを期待した。

「お客さまの声」業務改善に
内部通報制度も見直し

 日本郵政の増田寛也社長は、昨年6月の定例会見で立ち上げを公表した「JP VOICEプロジェクト」の進捗状況を説明した。
 2019年12月に公表された、かんぽ生命保険契約問題特別調査委員会の報告書で、内部通報窓口等を通じて寄せられる社員の声の重要性が指摘された。
 さらに、2019年度には郵政グループに、約680万件もの声が寄せられており、このような事実を踏まえて、昨年6月にグループを取り巻く様々な声の活用、高度化を検討する「JP VOICEプロジェクト」をグループ横断で立ち上げて推進してきた。
 具体的にはプロジェクト内に8つのチームを設けて、グループ各社がお客さまからの声の分析のために共通で活用できるシステム基盤を構築し、声の傾向をとらえる、いわゆるテキストマイニングなどのツールの導入およびSNS等の外部の声の把握・分析に取り組み、いくつかの分析モデルを設計した。
 この仕組みにより、お客さまからの声を網羅的にフォローして、分析結果を分かりやすく抽出し、社内グループ会社間で共有できるようになったことから、声を確実迅速に業務改善に生かす基盤ができた。
 来年度は、さらなる作業の効率性向上と分析結果の高度化を目指し、AIを活用した分析モデルの構築に取り組む。
 その成果を通じて、グループ内のお客さま本位ではない業務運営の実態把握および是正を行い、継続的に良質な商品・サービスを提供できる態勢を構築していく。
 また、増田社長はグループの内部通報制度の見直し状況を公表した。 今年1月29日に開催された第8回JP改革実行委員会でまとめられた日本郵政グループの内部通報窓口、その他各種相談窓口の仕組み、および運用状況に係る検証結果報告を受けて、社員が安心して積極的に声を寄せられる制度へと再構築する。
 見直しは、JP改革実行委員会からの検証報告の範疇にとどまらず、より良い通報窓口の構築を目指すことにする。そのために、グループとしての改善方針を定め、マインド形成・信頼回復フェーズ、利便性向上フェーズ、中長期的検討フェーズの3つのフェーズを設定して改善に取り組む。
 第1フェーズは、具体的にはまず相談者、通報者保護の徹底を図るための施策に取り組む。
 すでに既定の改正に取り組んでおり3月31日に区切りが付くが、4月1日からは内部通報窓口で受付けた通報情報の共有範囲を厳格化することを明確にするとともに、社内窓口で受け付けた通報情報を社内に提供する際には、通報者の同意を取ることを徹底することとした。
 第2フェーズの具体的な取組みは、制度の利用者である社員に寄り添った分かりやすい制度を確保するとともに、適正な調査が行われるよう弁護士などを活用して調査を行う新たな制度の導入を検討する。
 さらに、ワンストップ相談・通報プラットフォームを導入することにより、相談内容に応じた窓口の選択と、高度なセキュリティシステムの導入による情報漏えい防止を実現し、内部通報制度の利便性を向上させる。
 なお、外部の人材を活用した新たな制度、およびワンストップ相談・通報プラットフォームについては、今年の夏ごろを目途に構築する予定。
 中長期的検討フェーズの第3フェーズでは、内部通報・ハラスメント相談を受け付ける人員の拡充やスキルの向上を図るとともに、JP改革実行委員会の提言以外の施策について検討していく。
 今後、社員の声からより幅広く早期にリスクの芽を検知することを通じて、真のコンプライアンス経営を実現し、お客さまによりよい商品・サービスを提供できる企業グループへの変革を目指す。


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