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2021年5月3日 第7090・7091合併号

【主な記事】

カーボンニュートラル化推進へ
[日本郵政・日本郵便]東京電力と戦略的提携
EV専用充電器を郵便局に整備


 日本郵政と日本郵便、東京電力ホールディングス(東京都千代田区、小早川智明社長)は4月23日、カーボンニュートラル化推進に向けた戦略的提携について発表した。郵便局にEV車用の急速充電器や太陽光発電パネルを設置するほか、郵便車両のEV化も促進する。これらの事業を通じて地域の脱炭素化や防災対策に協力する。まずは、静岡県の沼津郵便局と栃木県の小山郵便局で、これらの実証実験を行う。秋ごろをめどに始めて約1年間、事業化に向けて検証を行う。

 今回の提携では、全国に郵便局ネットワークを持つ日本郵政グループとエネルギーに技術とノウハウを持つ東京電力グループの強みを生かし、再生エネルギーや地域のカーボンニュートラル化の促進に取り組む。
 合意内容は、▽東京電力グループが郵便局に急速充電器を設置。配送車の充電に利用するとともに、住民にも充電ステーションとして利用してもらう(有料)▽郵便局に太陽光発電設備を設置し、再生エネルギーも含めたエネルギーの効率化を図る▽EV車や太陽光発電による蓄電池などを活用し、地方自治体と協力しながら、停電や災害時に活用してもらう▽両社の経営資源やノウハウを活用し地域のカーボンニュートラルや災害時の電力供給に貢献する。
 日本郵便では、配送車両のEV化を進めており、2020年度にはEV四輪車を1567台、EV二輪車2238台を大都市中心に導入した。更に2021年度~2025年度の5年間でEV四輪車1万2000台、EV二輪車2万1000台を地方都市も含めて配備する計画だ。
 今回、郵便局に配置される急速充電器(200V)は、普通の充電器(100V)フル充電で7時間かかるところを、30分ほどで四輪車の蓄電池の約8割の充電が完了できるという。
 午前中に配達を終えた車両は昼食時を活用して充電。フル充電の状態で再び配達できる。急速充電器は郵便車両が利用していない時には、地域の人に有料で利用してもらう。
 急速充電器は、実証実験でも有料にして、利用状況について検証する。高速充電器の価格は200万円~300万円と高価。現在首都圏を中心に設置されている急速充電器の利用料は1分間、15円~50円だという。実証実験中の価格は未定。
 「EV車で遠出した時の補充電源」や「マンション内や屋外などで充電設備がない駐車場に駐車している車両の充電」などの需要を見込んでいる。災害時には郵便配達用のEV車両を避難所などに派遣し、電源として活用してもらう。
 急速蓄電池は1070ある集配局(東京電力エリアでは約300局)での展開の可能性が考えられる。日本郵政の増田寛也社長は「実証実験の結果を見ながら横展開していきたい」と話す。
 太陽光パネルは今回の実証実験では沼津郵便局だけに設置する。パネルが設置できる屋上スペースにもよるが、太陽光発電で郵便局全体の電力の1割から2割を賄う計画。東京電力では「太陽光パネルはイニシャルコストも掛かるため、郵便局全体の省エネも含めて、全体最適化したものを提案したい」という。
 実証実験では、急速充電器の運用方法、コスト高といわれる再生エネルギーのコスト抑制や費用対効果についても検証する。
 今後の展開について諫山親副社長は「双方の経営資源を活用し、カーボンニュートラルを促進していきたい。両社で国の支援や技術動向などの情報換をしながら、機動的に対応したい」と話している。
 増田社長は「日本郵政グループは温室効果ガスの削減目標を2030年度までに2019年度比で46.2%削減を目指している。目標達成のためにも、郵便局ネットワークを活用し実現していくことが大事。再生可能エネルギーの主力電源化や車両のEV化など、郵便局を地域社会のカーボンニュートラル化の拠点として、取り組みを進めたい。東電との戦略的提携により、直接的、間接的にCO2の削減が一層進むことを期待している」と脱炭素の目標達成に郵便局を活用することを強調した。
 東京電力の小早川智明社長は「郵便局おいて、国内カーボンニュートラル化を革新的に進めようと、戦略的提携を積極的に締結した。全国でサービスを展開する多くの経営資源を有する日本郵政グループとタッグを組んでいけることは意義深く、光栄に思う。我々は脱炭素社会実現に向けて2030年度までに2013年度比で半減を目標とし、2050年に向けても総力を挙げて取り組んでいる。培った知見やノウハウを生かし地域のカーボンニュートラル化に貢献したい」と抱負を述べた。


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