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2021年5月17日 第7092号

【主な記事】

5年間で4300億円投資
[郵政グループ ]戦略的IT関連で

 日本郵政の増田寛也社長は4月28日、ウェブ上で定例会見を開催し、今後5年間の成長を支える戦略的なIT投資の見込み額が、グループ全体で4300億円規模に達することを発表した。現在、次期中期経営計画の策定作業の最終段階にあり、5月に予定されている発表に先立つ公表となった。これまで、IT関連投資については、外部に詳細な数字を公表していない。

 グループDX(デジタルトランスフォーメーション)推進等のため、今後5年間(2021年度~2025年度)で、日本郵政グループ主要4社(日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命)は、約4300億円の戦略的なIT投資の実施を見込む。
 ビッグデータとアルゴリムに基づく次世代型の業務プロセス、データドリブンによる郵便・物流事業改革(郵便・物流事業のDX推進)に、およそ1800億円を投資し、より便利な差出・受取サービスおよびオペレーションの効率化を行う。
 安心・安全を最優先にした質の高い金融デジタルサービスの充実(デジタルサービスの拡充)には、約2300億円を投じ、セキュリティ対策/不正防止、通帳アプリの機能拡充、お客さま接点のデジタル化に取り組む。
 リアルの郵便局ネットワークと「デジタル郵便局」の融合(デジタル郵便局の構築等・窓口業務運営のデジタル化)には、200億円を投資する。
 デジタル郵便局の構築等(グループお客さまデータ基盤•各パートナーとの連携•データ分析/AI活用・スマホアプリ〈グループプラットフォームアプリ〉)に100億円程度、窓口業務運営のデジタル化(タブレット活用、各種手続のデジタル化•コンサルティング強化•デジタルデバイドへの対応)に100億円程度を見込む。
 4300億円に上る投資は、戦略的な投資や経費の額であり、従来の事業の安定的なサービスを継続するためのシステム更改・維持・保守費用については含められていない。
 増田社長は「DX投資は、きちんとした積上げでやっている。今回の5年間の投資と従来の投資でやっていかなければならない。メインフレームの更改や保守管理のものを含めると、当然これから5年間で1兆円を超えるくらいの投資をIT全体でやっていかなければならないかと思う。ボリューム感を考えると、今回、今までにない新たな分野の投資とすれば、4300億円というのは適正な数字ではないかと考えている」との見方を示した。
 「データドリブンは従来の取組みと何が違うのか」との問いには、「荷物を受け付けた段階で、内部的には配達先のルーティングや、どういった体制で荷物を届けた方が良いかが、AI等を活用して全部できていくことが大きい。お客さまに対しても、荷物を受け付けたところで、何時に届くかというが伝わるような形にしていきたい」と強調。
 「内部的に効率化して、全体として経費を抑制するということになり、最適な体制を取るということにもつながる。情報がいち早くつながることによって、お客さまにとっても、再配達によらずに一番受け取りやすいところに変更できるようにしていきたい」と回答した。
次期中期経営計画では、リアルの郵便局とデジタルの融合が柱となるため、このテーマに沿った投資が行われる。
 リアルの郵便局でデジタル化を進めて、ペーパーレス化などによる利便性を向上させていくとともに、デジタルサービスにアクセスできないお客さまの結節点として、リアルの郵便局ネットワークを活かしていく。
 また、デジタル郵便局の概念を構想する。リアルの郵便局とは異なり、スマホやPC上のデジタル郵便局となるもので、24時間365日郵便局の多様なサービスを提供する。
 いつでもどこでも、より便利に近くのお客さまへサービスを提供できるよう、スマホアプリやウェブサイトを構築していく。このリアルとデジタル2つの郵便局が一体となってお客さまのライフステージやライフスタイルに合わせたサービスを提供する。
 お客さまデータの活用も推進する。総務省の「デジタル時代における郵政事業のあり方に関する懇談会」からも、日本郵政グループのデータ活用について提案を受けている。
 日本郵政グループは膨大なデータを持っているが、各社・事業ごとにデータベースが分かれており、十分に活用できていなかった。個人情報保護に十分配慮しつつ、データを一体的に整備し、すべてのお客さまに新たな価値を提供するデータ基盤に発展させていく。
 グループDXを支えるデジタル基盤の構築にも取り組む。郵便局窓口でのデジタル接点(窓口タブレット)、お客さまスマホへのデジタル郵便局窓口、物流状況の連絡、パートナー企業と連携したワンストップサービス等を実現するデジタル基盤を構築する。
 これまでの専用線から成る基幹ネットワークに加えて、今後はクラウドやモバイル機器を活用していくとともに、インターネット、モバイルネットワークも加えたネットワークを構成する。また、連携パートナーとつながるインターフェイスの整備も行っていく。
 セキュリティ高度化への取組みとして、安心安全を最優先にセキュリティ水準の高度化を図って行く。扱う情報の機密レベルに応じたセキュリティ対策を高度化するために、総務省が推奨する三層対策(βモデル)※1を採用し、クラウドとオープンネットワーク※2を活用したゼロトラスト環境に対応していく。
 DX実現のための人材育成・体制強化を図る。外部人材の受け入れとして、まず4月に楽天から完全移籍で執行役を迎えたところだが、さらなる外部人材の受け入れを図る。また、内部人材の育成により、DX推進体制を強化していくことにしている。
〈※1セキュリティ三層対策=情報の機密性にあわせ、管理環境を三層に分け、接続の制限、マルウェアの侵入、情報の持出しを防御。※2クラウド・オープンネットワーク活用=利用者認証(多要素)、利用機器、接続ネットワーク、利用情報の権限制御(ゼロトラスト型セキュリティ)、サイバーセキュリティの統合管理・監視(SASE)を実現•BYOD(私的IT資産の業務活用)を可能としたセキュリティ対策の実現•EDR(エンドポイントのセキュリティ管理ツール)等で、サイバー攻撃の検知、対処、復旧を実現〉


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