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2021年5月24日 第7093号

【主な記事】

郵政グループ3月期決算
連結当期純利益は前年度比13.5%減
トール社、事業売却の影響少ない

 日本郵政グループの2021年3月期の決算が5月14日、発表された。同決算期間中には昨年10月からの信頼回復に向けた業務運営の開始や、コロナウイルス感染症の拡大、日本郵便の子会社豪トール社のエクスプレス事業の売却などがあったが、それらは同グループの収益にとってプラスとマイナス両面があった。その結果、日本郵政の連結当期純利益は前年度比13.5%減(654億円)の4182億円。日本郵便は増収減益、ゆうちょ銀行は増収増益、かんぽ生命保険は減収増益となった。

 日本郵政の連結当期純利益は、前年比13.5%と大幅減になったが、日本郵便の豪トール社エクスプレス事業の売却に伴う674億円の特別損失(株式評価損)は、税務上の損金扱いとなったため、更なる減益は免れた。
 今回の税負担の軽減は、2017年に日本郵便はトール社の、のれんなどの減損処理を行ったが、税務処理の条件を満たしていなかったため処理されなかった。今回のエクスプレス事業売却ではそれが認められた。その金額が同程度だったため、日本郵便の当期純利益に及ぼす影響が少なかった。
 同連結経常収益は、前年度比1.9%(2297億円)減の11兆7204億円。同連結経常利益は5.8%(497億円)増の9141億円。減収の要因はかんぽ生命保険の保険契約の減少に伴う大幅な売上の減少。
 日本郵便の当期純利益は前年度比38.7%(337億円)減の534億円。経常収益は0.1%(20億円)増の3兆8453億円。経常利益は11.3%(189億円)減の1491億円。コロナ禍の巣ごもりでEコマースが伸び、ゆうパックは11.9%増加したものの、郵便物の減少を補うまでに至らなかった。物販やかんぽ生命保険からの手数料は減少した。
 ゆうちょ銀行の当期純利益は2.4%(66億円)増の2801億円、経常収益は8.1%(1471億円)増の1兆9467億円、経常利益は3.9%(150億円)増の3942億円。増益となったのは、年度当初と比較して資金利益が改善したため。新型コロナウイルス感染症の拡大により市場が混乱していたが金融政策により市場が急速に回復した。
 かんぽ生命保険は当期純利益は10.2%(154億円)増の1661億円、経常収益は5.9%(4251億円)減の6兆7862億円、経常利益は20.6%(591億円)増の3457億円。
 積極的な営業活動を控えたことから新規契約が減少し売上は減少したが、営業活動に伴う事業費などが減少したため、増益となった。
中経の初年度、グループ各社は減益を予想
 2022年3月期は、新たに始まる中期経営計画の初年度に当たるが、通期業績は各社とも減益を予想した。日本郵政の当期純利益は782億円減の3400億円(ゆうちょ銀行約89%、かんぽ生命保険49.9%で算出)、連結経常利益は前年度比1841億円減の7300億円。当期純利益は減益の予想だが、2022年3月期の1株当たりの配当は2021年3月期と同様に50円を維持する。配当性向率は前年度より11.2ポイント増えて59.5%。
 日本郵便の通期業績予想は、当期純利益は334億円減の200億円、経常利益741億円減の750億円。郵便物の減少やゆうちょ銀の送金決済件数の減少による手数料の減少が見込まれる。
 ゆうちょ銀行は当期純利益は201億円減の2600億円、経常利益が392億円減の3550億円。戦略的投資領域や外債投資信託などは拡大するものの、外国債の償還益や日本国債の収益は減少するとみている。
 かんぽ生命保険の経常利益は、当期純利益が481億円減の1180億円、経常利益は557億円減の2900億円。保険契約減少による収益減の一方で、営業活動費は増加し、減益を予想する。


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