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2021年5月24日 第7093号

【主な記事】

日本郵政保有49.9%に
かんぽ生命が自社株買い

 かんぽ生命保険は5月17日、日本郵政などが保有する同社株式1億6290万6300万株を3588億8257万8900円で取得した。日本郵政が実施する他社株式処分信託を経て、議決権ベースでの日本郵政の保有割合は49.9%となる予定。
 郵政民営化法上の上乗せ規制(新規業務には郵政民営化法上の認可が必要。日本郵政が議決権ベースで同社の保有を2分の1以下にすれば、同規制は緩和される)が外れ、新規業務は認可から事前届け出(保険業法の認可は必要)となる。新商品やサービスが提供しやすくなる。
 かんぽ生命保険は5月14日に開いた取締役会で、自己株式取得を決めた。目的は郵政民営化法で定められた上乗せ規制を外すことをはじめ、株主還元、資本効率の向上がある。同社取締役で利害関係者の日本郵政の増田寛也社長を除く全員一致で決まった。
 自己株取得に当たっては、日本郵政が保有する株式のほか、少数株主の保護と市場の公平性を担保するため、時間外取引でも取得することにした。
 取引は東京証券取引所の自己株式立会外買付取引(ToSTNe-3)で行われ、かんぽ生命保険は1株2203円で、日本郵政から1億6274万6400株、市場からは15万9900株を買い付けた。
 5月17日時点での日本郵政のかんぽ生命保険株式の保有は50.04%となった。日本郵政の保有率を50%以下にするための調整として40万株と、かんぽ生命が市場で買い付けた15万9900株分の株式、合わせて55万9900株を株式処分信託で売却する。
 日本郵政は持株会社(保有率50%超える)から主要株主(保有50%以下)になるには、保険業法上の認可が必要で、認可取得後に株式処分信託(信託先は三井住友信託銀行)を設定する予定。
 かんぽ生命保険の株式売却は今回で3回目。2015年11月4日の上場時(売出価格2200円、初売り2929円)、2019年4月4日(株価2375円)。自己株取得は2019年(約925億円)に続き2回目となる。
 かんぽ生命の株式は、新型コロナ感染症やかんぽ問題で株価は低迷し、昨年3月27日には上場以来の最安値、1137円を付けた。その後、株価は徐々に回復、今回の自己株取得時には上場時の売出価格を上回った。
 かんぽ問題は、保険商品の需要が保障性商品にシフトしているにもかかわらず、郵政民営化法上の上乗せ規制により、新商品が投入しにくい状況が続いたことも原因の一つ。現場では目標達成のため無理な営業を強いられた。
 新商品について、かんぽ生命保険の千田哲也社長は「人生100年時代。そのニーズに応えるためにも、これからは求めやすい保障性重視の商品に転換していきたい」と述べている。
 来年4月からは、日本郵便の渉外社員、1万3000人の出向も始まり、人件費950億円も重くのしかかる。新商品の販売も含めて一刻も早い人材の有効活用が望まれている。日本郵政では保険業法の主要株主の申請の準備を急いでいる。


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