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2021年6月14日 第7096号

【主な記事】

スタンプラリーで地域貢献
渋沢栄一ゆかりの地と郵便局を巡る
東京都北区内郵便局


 日本資本主義の父「渋沢栄一」の生涯を描いたNHK大河ドラマ「青天を衝け」が好調だ。晩年を東京都北区にある飛鳥山に住居を構えた。ゆかりの地である北区では様々なイベントで盛り上がっている。
 東京都北部地区連絡会(藪﨑智哉統括局長/北豊島二)は、ドラマの放映に先駆け北区とタイアップして「北区エコー年賀」や「渋沢栄一フレーム切手」を昨年に発売し好評だった。
 このたび北区内の全41郵便局は、北区との連携事業の一環で「北区内郵便局×渋沢栄一プロジェクト(KPSP)」を立ち上げ、「渋沢栄一翁ゆかりの地と郵便局を巡るスタンプラリー」を実施し、地域の活性化に貢献している。
 飛鳥山に設置された東京都内では初となる「大河ドラマ館」のオープンに合わせ、当初は2月20日にスタートする予定だったが、コロナ禍でスタンプ台紙の作製やプレゼント賞品の準備に時間がかかり、4月20日からのスタートとなった。
 一般に大河ドラマが放映されると、ゆかりの地は観光客・訪問客が増加し、経済効果も莫大。だが、コロナ禍では従前のプロモーションでは通用しない。藪﨑統括局長は「街を見渡すと店のシャッターが閉まっている。せっかく渋沢栄一で北区が脚光を浴びているのに、何かやらねばとの思いがあった」と語る。
 また「コロナ禍の終息にはまだ時間がかかると予想され、県外からの観光客が十分見込めないなら、近隣地区の観光客を誘致する『域内観光』による地域活性化が必要ではないかと考えたのがきっかけ」と話すのは、王子郵便局の芳之内晃樹局長。
 さらに、芳之内局長は「コロナ対策と消費促進の両立には観光客分散化が重要で、スタンプラリーは効果的。ラリーそのものによる増収は多くは見込めないが、地域に来てもらって、歩き・動き回るうちに消費などによる収入や愛着が期待できる。リピーターになってもらい、移住・定住といった効果も生まれる」と夢は大きい。
 ラリーで地域を散策してもらい、地域の活性化に役立つとの思いから、全41局が足並みを揃えて実施できる取組みに行き着いた。とは言え、スタート前の反応が心配だった。ところが、その心配もよそに、4月20日にスタートし、26日には部会別に設けた全3コースを達成した人がいたという。「意外と盛り上がっていて、スタートして良かった」と藪﨑統括局長は笑顔で話す。
 「ゆかりの地の4か所が緊急事態宣言で閉館したので、急きょ飛鳥山の観光案内所に4か所分のスタンプを集めて対応した」と苦労話をするのは、王子部会の大島壽子副部会長(上十条)。
 大島副部会長は、北区や北区観光協会との交渉役として今までにも様々な協働に尽力しており、信頼は絶大。このプロジェクトでも、観光協会から北区のウオーキングアプリの「あるきた」とコラボしたらどうかと提案をもらった。北区も地域振興をしていくなかで、郵便局が協力してくれるとありがたいと話している。
 1万部作製したラリー台紙は、北区内全郵便局に設置されたスタンプ押印台上に置いてあり、スタンプのデザインは3コースで別々のものを使用。スタンプを集めると、部会達成賞(「ぽすくまファイルとコースターのセット」または「ぽすくまはがきとコースターのセット」のどちらか1つ)とコンプリート賞(マスクケースと渋沢君缶バッジ2個)がもらえる。
 プロジェクトチームでは、この盛り上がりは2024年の新1万円札が発行されるまで続くので、今後も色々と考え、第2弾のフレーム切手を発行したり、他のゆかりの地と姉妹地区を締結し、互いの地方創生に貢献したいとアイデアは尽きない。
 藪﨑統括局長は「連携協定締結は重要だが、締結後は地域にどう貢献していくかがさらに重要。締結にこだわらず、地域を手伝える方法もある」と話し、具体的には「郵便局のパンフレット一つでも置かせてもらったり、地元のものを活用し広め、極力地元の業者を使ったりと、地域貢献は小さなことからでも始められる。また、どこの自治体も高齢化が進んでいるので、見守りや終活などの色々な相談ができる」と地域貢献への意欲を語る。
 ゆかりの地4か所のスタンプは現在、飛鳥山公園の観光案内所に集めており、1か所で押印できる(取材時)。飛鳥山公園は、渋沢栄一が晩年の30年間にわたり居を構えた。園内には「渋沢資料館」「晩香廬」「青淵文庫」などがあり、春に咲き乱れる桜の名所。
 また区内の「お札と切手の博物館(国立印刷局)」は、お札・切手・証券など、国立印刷局が製造した各製品など様々な資料が展示されている。明治5年、渋沢栄一は初代紙幣頭(現在の理事長にあたる)に就任した。「旧古川庭園」は、国の名勝に指定されており、園内に咲くバラは見事。「田端文士村記念館」は、芥川龍之介をはじめ文士・芸術家たちの資料が展示してあり、大正期に渋沢邸で開かれた園遊会に、田端の芸術家が招かれた。
 スタンプラリーに関する問い合わせは、事務局(電話03-3914-2705。土日休日を除く9時~17時)へ。


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