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2021年8月9日第7104・7105合併号

【主な記事】

内部通報制度を見直し
日本郵政 増田社長 
「外部専門チーム」導入

 日本郵政の増田寛也社長は、ウェブ上で定例会見を7月29日に開き、グループの内部通報制度の見直し状況に関して、外部の人材を活用した新たな制度「外部専門チーム」および「ワンストップ相談・通報プラットフォーム」を導入し、9月1日から運用を開始すると明らかにした。今回の新たな制度の導入により、通報者が外部専門チームによる調査を希望する場合には、社員が一切関わらない調査スキームの利用が可能になるとともに、情報漏洩のリスク低減、通報者保護の徹底を図ることが期待される。

「ワンストップ相談・通報プラットフォーム」も

 1月29日に開催された第8回JP改革実行委員会での郵政グループ内部通報窓口に係る検証結果の報告以来、社員が安心して積極的に声を寄せられる内部通報制度へと再構築していくことに取り組んできた。すでに6月9日の第11回のJP改革実行委員会でも改善計画を報告しており、外部の人材を活用した新たな制度については、通報の受付から調査結果の報告までのすべての過程を外部の人材で行う外部専門チームを導入することにした。
 これまでの社外窓口では、通報をいったん受けた後に、内容を社内の担当者と共有して社員が調査してきた。今回の新制度の導入によって、外部専門チームによる調査を希望する場合は、社員が一切関わらず、情報漏洩のリスク低減、通報者保護の徹底が図られることになると考えられている。
 また、これまで各部署が設置する窓口で受け付けていた相談通報を一元的に受け付けるポータルサイト「ワンストップ相談・通報プラットフォーム」を導入する。これにより、社員が相談通報した内容に合った適切な窓口の選択が可能となるとともに、情報システムの活用による安全な環境のもと、通報内容の機密保持、情報共有範囲の最小化実現が期待されている。
 増田社長は「今後も不断の見直しを行い、JP改革実行委員会からの提言の範疇に留まらない、より良い通報窓口の構築を目指す。引き続き社員の声はグループ経営にとって貴重な財産との基本認識の下で、社員の声からより幅広く早期にリスクの目を検知する等を通じて、真のコンプライアンス経営実現を目指す。お客さまによりよい商品、サービスを提供できる企業グループへ変革していく」と述べた。
 「社外調査はどのような体制で行われるのか。一方で難しさもあるが、それをどう補うのか」との記者の問いについて、増田社長は「外部の弁護士を中心としたチームとなる。弁護士事務所と契約して、外部専門チームを編成したい。詳細は弁護士と調整をしているが、いろいろ案件が出てきても対応できる体制を用意したい。運用を始めてからも修正するところは修正していきたい」と回答した。
 また「外部チームが一気通貫で全部調査をしていくが、その方が客観性や公平性は保てる。ただ、どうしても内部に事実関係を確認しなければならないので、さまざまな事実を確認する作業は内部のしかるべきところで行う。きちんと情報を提供していくような形にしていかなければならない」と述べた。
 増田社長は3月30日の定例会見で、グループの内部通報制度の見直し状況を公表する際に、1月29日に開催されたJP改革実行委員会でまとめられた日本郵政グループの内部通報窓口、その他各種相談窓口の仕組み、運用状況に係る検証結果報告を受けて、社員が安心して積極的に声を寄せられる内部通報制度へと再構築する方向性を示した。
 見直しは、JP改革実行委員会からの検証報告の範疇にとどまらず、より良い通報窓口の構築を目指すとし、グループとしての改善方針を定め、マインド形成・信頼回復、利便性向上、中長期的検討の三つのフェーズを設定して改善に取り組むことになった。
 増田社長は、利便性向上フェーズの具体的な取組みとして、利用者である社員に寄り添った、分かりやすい制度を確保するとともに、適正な調査が行われるよう弁護士などを活用して調査を行う新たな制度の導入に加え、ワンストップ相談・通報プラットフォームの導入を検討することを表明していた。
 そのほかの質疑では「トール社のエクスプレス事業売却は6月末の手続完了を目指すとのことだったが、進捗状況は」との問いに、増田社長は「トール社と(買手である)投資ファンドのアレグロと共同で、現在必要な手続きを進めている。オーストラリアとニュージーランド当局の承認取得が必要となるが、当初よりも遅れていて、それに伴い譲渡完了も遅れている。申請内容に問題があるわけではなく、当局サイドの事務的な処理の遅れが影響している。内容的には問題がないため、間もなく承認は得られると考えている。最短で8月末ということになろうと思っている」と答えた。


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