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2021年9月13日第7109号

【主な記事】

中長期的検討フェーズに
日本郵政 増田社長 内部通報制度の見直し

 日本郵政の増田寛也社長=写真=は、ウェブ上で定例会見を8月31日に開き、グループ内部通報制度等の見直しのスケジュールについて、第2フェーズが同日付で終了し、9月1日から第3フェーズに移行していくと発表した。第3フェーズは中長期的検討フェーズとして、認証制度の取得や第3者評価スキームの導入、窓口担当者のスキル向上に加え、JP改革実行委員会の提言の範疇に留まらない施策を順次検討して実施をしていく。増田社長は「引き続き内部通報制度の改善を通じて、真のコンプライアンス経営の実現をし、お客さまにより良い商品サービスを提供できる企業グループへ変革することを目指してまいりたい」と決意を表明した。

 日本郵政グループは、マインド形成 ・信頼回復フェーズ(第1)、利便性向上フェーズ(第2)、中長期的検討フェーズ(第3)の3つのフェーズを設定し改善に取り組んでいる。7月の定例会見で発表された外部専門チームとワンストップ相談プラットフォームの9月1日からの導入によって、第2フェーズが8月31日で終了した。
 内部通報制度の見直しとして導入を決めた2つの取組みのうち、社員が一切関わらない調査スキームを統括する外部専門チームの体制については、現段階で約40人の外部弁護士等で構成されるチームを組成する。
 具体的には、通報の受付調査・調査結果の報告を担当するチームを中心に据える。通報者の話を聞いて内容を深く理解できる一定水準の傾聴スキルを備えた産業カウンセラー、デジタルフォレンジック調査(注)の技術者を含めた体制となる。
(注=フォレンジック調査は、いかなる操作が行われたのかをデータによって解明するもの。消滅したデータや管理情報も対象とする。すでに削除したデータなどから重要な情報を検出し復元することが可能となるのが特徴)
 外部専門チームにおいては、9月1日の導入以降、関連調査等を実施することに加えて、モニタリング的手法を活用したグループ各社の実態調査や通報内容の傾向等、コンプライアンス経営に活用するためのデータ分析の実施等を予定している。さらに、この外部専門チームとの連携強化のために9月1日付で日本郵政のコンプライアンス調査室の名称を、内部通報制度管理室に変更して改組する。内部通報制度管理室では、従来の内部通報に関する調査に加えて、新たな改善策の企画、内部通報制度の評価スキームの検討などを行う。
 すでに新体制に移行している日本郵便を含む各社コンプライアンス部門との連携についても強化を図る。各部署が設置する窓口で、それぞれ受け付けていた相談通報を、一元的に受け付けるワンストップ相談通報プラットフォームの導入準備状況については、プラットフォームを活用して調査を実施する各社コンプライアンス部門の担当者向けの説明会の実施およびマニュアルの配布によって、システム操作についての理解を深めている。
 社員に対しては7月、8月の2回、グループ各社のポータルサイトを通じた周知活動を実施するとともに、ユーザーマニュアルの配布も完了している。利用開始となった9月1日には、4社長連名によるトップメッセージの発出に加え、増田社長の動画メッセージの発信も行い、全グループ社員に対して、改善策導入の趣旨を改めて伝えた。
 増田社長は「これらの改善策の導入を通じて、社員が安心して積極的に声を寄せられる内部通報制度にしてまいりたい」と抱負を語った。

局長異動を拡充
 長崎市の長崎住吉郵便局、愛媛県愛南町の深浦郵便局での不祥事についての受け止めと再発防止に関する問いに対して、増田社長は「長崎住吉郵便局、深浦郵便局においては、大変高額の犯罪が発生し、こうしたことによって郵便局に寄せられる信頼感を著しく棄損した。大変重く受け止めている。ご利用する皆さま方に深くお詫びを申し上げたい」と陳謝した。
 今後、同様の事案が発生しないような対応策を検討していることを明らかにしたうえで、現段階で検討中の次の4つの対応策を示した。
 ①各社、とりわけ日本郵便の支社の人事に関する態勢を強化する②親子間で局長職を引き継ぐ、あるいは親族も含めて局長職を引き継ぐ事例が見られるが、牽制が効きにくくなることが想定されるため、間に支社の社員などの第3者を入れる③5年に一度、将来的にはより短い期間で、局長を最低でも1か月間程度交替させ、牽制を効かせるように緊張感を持ってもらう④局長の異動の拡充を図っていく
 ③については8月から一部の支社で先行試行している。今年度中に全支社に試行を広げて、その評価反省を行ったうえで、来年の4月からは正式な実施を予定している。当面は5年に一度、1か月程度の内容でスタートする。年間3500人程度が対象となる予定だ。
 ④の異動拡充については、現在の異動数は年平均600人程度だが、タイミングを考えながら日本郵便がより人数を増加させるよう検討する。
 増田社長は「いずれも来年度から確実に実行していきたいと考えているが、それよりも前にできることについては、今年度中に試行を進めていきたい」と述べた。


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