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2021年10月11日第7113号

【主な記事】

山岳エリアでドローン配送
JP楽天ロジ 実用化へ実証実験


 日本郵便と楽天が設立した「JP楽天ロジスティクス」(諫山親社長)は、山小屋の物資をドローンで運ぶ実証実験を8月から9月までの約2か月間、長野県白馬村の山岳エリアで行った結果を9月30日、発表した。実証実験の結果を基に、ドローンを山小屋の新たな輸送手段にならないか検討する。ドローン配送のソリューションを提供することで、山小屋の振興を図り、地方創生にも寄与する。

 実証実験は同村を含む11の企業・団体・自治体が参画する「白馬村山岳ドローン物流実用化協議会」が主催するものに参加する形で行われた。白馬村での実証実験は、楽天が昨年8月中旬から1か月にわたり行ったが、JP楽天ロジスティクス設立に伴い引き継がれ、今回が2回目となる。
 日本郵便も、オペレーション改革の一環として、2016年からドローンや配送ロボットの実証実験を行っており、連携を深める。
 実証実験の配送ルートは、白馬岳と登山口にある宿舎との往復約10キロ、高低差1600メートル。最大7キロが運べる機体(台湾製)を使い、生鮮食品や飲料、医療物資などを配送した。
 昨年の1回目は7人の補助者を含む10人以上で目視飛行(レベル2)したが、今回は補助員を配置せず2人体制の目視外飛行(レベル3)を実施した。運用の省人化で大幅なコスト削減となった。航空法改正により3月からは整地以外でも1メートルの高さから荷物を投下できるようになり、目視外飛行の下、国内で初めて物資の投下にも成功した。
 参加したのは、白馬館、白馬村振興公社、からまつ、白馬村、MountLibra(マウントリブラ)、eロボティクス、丸和運輸機関、カナモト、有限会社KELEK、先端力学シミュレーション研究所、JP楽天ロジスティクス。
 JP楽天ロジスティクスはドローンの遠隔監視や物流ソリューションを提供する。運用は、地元の事業者のマウントリブラに委託した。地元の事業者をドローンの運用担い手として育成することで地元の経済に貢献したいという。
 山小屋では必要物資はヘリの輸送に頼っているが、輸送費が高騰し経営難に直面しているという課題がある。山小屋の新たな物流インフラとして定着できるよう、来年以降、定時運行を目指す。JPロジスティクスの向井秀明ドローン・UGV事業部ジェネラルマネージャーは「山小屋進行を通じて地方創生を実現するためには、ドローンでのソリューションは重要。普及に努めたい」と話している。

 通信文化新報は、ドローン配送が地方創生につながるということで、主に山小屋でのビジネス化について質問した。

■ヘリでの輸送費が高騰し、経営難に陥っている山小屋もあるというが、その理由は。
 ヘリのパイロットの高齢化により、担い手が減っている。運行可能なタイミングや配送の容量も減っており、輸送単価を上げざるを得ない状況になっている。気候の変動を受けやすく、危険な配送になりがち。値上げは、そのような環境にあることも要因としてあると思う。

■ドローンでの配送は、ヘリの代替えになるのか、補完する役割のものなのか。スイカなどが山小屋に運ぶ映像が紹介されたが、7キロの往復輸送を重ねて山小屋の需要を賄えるのか。
 ヘリでの輸送とは基本的には補完関係にある。山小屋ではシーズン前にドラム缶の燃料や日持ちのする食料品などをヘリで運んでいる。山小屋では宿泊する人のニーズを読むのが難しいビジネスで、急に宿泊者が増えて食料がなくなった時に、ドローンを使っていただくこともできる。
 小分けしながら定期的に運んで、7キロまでの荷物を1日10往復すれば70キロの荷物が運べる。延べ10日なら700キロの配送が可能になる。
 これまで山小屋では1回に何百キロ、何トンという単位で荷物の輸送を考えていたところを、ドローン配送が入ることで、物資が足りなくなりそうになった時にオーダーできる。より利用しやすくなり、廃棄ロスも減る。そういった物流ソリューションも考え、サービスを展開していきたい。

■地元の新鮮な果物や野菜、特産品を運ぶにはとても良い手段だと思うが、ヘリと比べてコストはどのくらい違うのか。
 実証実験を通じて、ドローンの運用が2人で往復飛行ができることが確認された。ヘリの補完や代替になれる位のコストに下げていけると思う。
 「技術開発を更に進めて、ビジネスとして成立する」という展望の下、しっかりとソリューションを磨いていきたい。

■ヘリよりコストを安くできる見通しは。
 ヘリはチャーター代などのコストもある。勝てる日が来るよう試算を行っている。
(永見恵子)


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