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2021年12月13日第7122号

【主な記事】

EC商品をまとめて配送
楽天市場での購入 利便性を向上

 日本郵政の増田寛也社長は11月30日の定例会見で、日本郵便と楽天グループ株式会社(東京都世田谷区・三木谷浩史代表取締役会長兼社長)が同日、EC分野での商品受け取りの利便性向上と配送の効率化に向けた共同の取組みを開始すると発表した。第一弾として、楽天は、スマートフォン向けアプリ「おまとめアプリ」を通じて、インターネット・ショッピングモール「楽天市場」の複数店舗で購入した商品のまとめ配送を指定できる機能を同日から提供開始した。

 日本郵便は、荷物の受け取り日時や場所を指定できるサービス「e受取アシスト」と同アプリを連携することによって、指定された日時・配達方法で複数の荷物を配送し、将来的には指定された全ての荷物をまとめて配送できるよう取り組んでいく。
 現段階では荷物のラストワンマイルの配送の場面で、特にECなどで多くの荷物がばらばらに配送されることがあり、受け取る人に対して大きなストレスをかけている場合がある。こうした問題を解消するため、11月30日から日本郵便で配送する荷物を対象に、楽天市場の複数の店舗の商品のまとめ配送を指定できる「おまとめアプリ」サービスの提供を開始する。
 楽天が提供するアプリ「おまとめアプリ」は、まとめ配送の日時設定機能に加えて、置き配や再配達を依頼する機能など、商品の受け取りに関する機能の集約を図っている。「おまとめアプリ」で注文した際の注文情報は日本郵便の「e受取アシスト」の受け取り変更サービスに連携し、指定した複数の荷物をまとめて配送する仕組みとなっている。
 新たな取組みによって、より簡単便利に都合の良い時間・方法で荷物を受け取ることができるようになる。
 また、日本郵便にとっては、荷物の再配達の削減が期待でき、配送業務の効率化につながることが期待されている。
 今後は対象を他の配送事業者や楽天市場以外のECサイト事業者にも拡大することで、ECにおける商品受け取りの利便性の向上、EC業界全体の配送の効率化を実現するオープンなプラットフォームの構築を楽天グループとともに目指して行く。
 物流分野での取組みは、ほかにも11月10日に発表した、神奈川県大和市の「Rakuten Fulfillment Center Chuorinkan(楽天フルフィルメントセンター中央林間)」の開設がある。この施設は日本郵便と楽天グループの合弁会社・JP楽天ロジスティクスが設置した「楽天市場」出店店舗向けの総合物流サービス「楽天スーパーロジスティクス」の物流センター。
 増田社長は「楽天グループとは今後も連携を強くして、お客さまにより一層便利なサービスを提供するよう努めてまいりたい」と述べた。
 日本郵便と楽天グループは、今後も利便性向上、地域社会への貢献、事業の拡大等の目的にお互いの経営資源や強みを効果的に生かしたシナジーの最大化を図っていく考えだ。

ドローン、配送ロボット連携
東京都奥多摩町で実証実験

 日本郵政の増田寛也社長は11月30日、日本郵便がドローンと配送ロボットを連携させ、郵便物などの配送の試行に着手すると発表した。新たな取組みとして、対象地区でドローンから配送ロボットへ郵便物などを受け渡し、配送ロボットが受取人宅へ配送する。この試行により、中山間地での省人化配送モデルの検証を行う考えだ。
 新たな実証実験は、株式会社ACSLと株式会社ZMP、東京都西多摩郡奥多摩町の協力を得て、12月1日から約1か月間、奥多摩町で実施する。
 今回の実験は日本初の試みで、ドローンと配送ロボットを組み合わせて、ドローン単体では運ぶことができない場所への配送を想定して行うもの。過去にはドローンや配送ロボット、それぞれ単体では実証実験を行ってきたところだが、12月1日からの実証実験は、ドローンと配送ロボットを組み合わせて行う。
 今回の実証実験では、まず奥多摩郵便局から中継地点まで配送物を運搬。中継地点から配送エリアへドローンで約2キロ飛行して輸送し着陸をせずに、連携機構へ配送物を受け渡す。配送エリアに設置された連携機構から配送ロボットへ配送物を受け渡し、配送ロボットが約200メートルの範囲内の複数世帯のお客さま宅まで公道を走行し配送する。
 ドローンと配送ロボットの長所を組み合わせることで、実際の配送への利用の幅がより広がることが期待されている。今後、法律改正など制度の整備が加速度的に進み、郵便物・荷物などの配送の高度化実現に近づくものと考えられる。
 増田社長は、「日本郵便は新しい技術と物流の融合を図る取組みをさらに強化していく所存」と述べた。
 日本郵便はこれまで、将来の配送の形を見越して、ドローンや配送ロボットなどの先端技術を取り入れた実証実験を積極的に行ってきた。
 ドローンでは2017年、長野県伊那市での実証実験を皮切りに、福島県の南相馬市、浪江町での郵便局間輸送を実施。2020年には東京の奥多摩町で初めての実際の荷物を郵便局からお客さまの自宅まで配送した。
 配送ロボットについては、2017年、福島県の実験フィールドでの走行実験を皮切りに、2020年に東京逓信病院から麹町郵便局までの信号機など含まれる約1キロの公道を走行し、荷物を配送している。


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