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2021年12月20日第7123・7124合併号

【主な記事】

現場本位のプロジェクトを
[JP改革委]不動産、業務改善計画

 第13回JP改革実行委員会(梶川融座長=太陽有限責任監査法人代表社員会長)が12月13日、大手町プレイスで開かれた。「日本郵政グループの不動産事業」や「かんぽ生命の不適正募集に対する業務改善計画の進捗への評価」などについて、委員からの評価や要望などがあった。委員からは「管理が強化された結果、現場の社員が委縮してしまわないか」「改革が猛スピードで進み、社員に伝わっているのか」など、現場の状況を心配する声が相次いだ。

管理強化による萎縮に懸念
 業務改善計画では、会社側の改善については、かんぽ生命保険と日本郵便がそれぞれ、1件ずつ実施できていない案件がある。かんぽ生命保険は解約請求時のチェックの強化について、これまでコンサルタントが行っていたチェックを専用のコールセンターで対応することした。解約請求は窓口のほか、書面でも行う。ダイレクトチャネルでの解約は来年4月までには実施する予定。
 日本郵便の未達事項は、新たな営業目標(販売額)の設定(現在は顧客の訪問回数を基にした活動目標を設定)。営業目標と営業手当は労使交渉中。目標は来年4月までには決定する予定。同進捗状況を検証した横田委員は「概ね計画通りに実施されており、一定の区切りの段階なった」と評価する。
 募集管理体制の強化と自己検証の仕組みについては、かんぽ生命保険、日本郵便ともに「1線、2線、3線の部署間の連携と相互牽制による効果測定により改善を図るという自己検証の仕組みが整備され、募集管理態勢もPDCAサイクルが回り、同計画の主要施策の実効性が期待できる」という結果。
 募集時の録音について横田委員は「1万7670件(11月現在)の募集件数のうち、98%が録音を実施した。苦情率は2%。募集件数が当初の想定より少なくなっているが、録音率は高く、録音への抵抗感が次第に低下している」と分析する。
 野村修也委員(中央大学法科大学院教授・弁護士)からは「上からの管理がかなり強化されている印象。現場が委縮してしまいそうな勢いで、いろいろな施策がある。あまり強いと現場の心理的安全性が低下してしまう危惧がある。現場は管理体制の強化だけではたまらない。現場を巻き込んだプロジェクトが立ち上がってこないと改革は成功しない。社員が明るく、楽しく改革に取り組める施策を組み込んでもらえればと思う」と要望した。
 成功した事例として、明治安田生命保険が不祥事を起こした後、Jリーグのスポンサーになり地元密着のプロジェクトを作ったことを挙げた。店頭では社員がチームのユニフォームを着て、顧客と楽しい会話をして、コミュニケーションした結果、信頼も回復し売り上げも上がったという。
 増田悦子委員(全国消費生活相談員協会理事長)は「猛スピードで改革が進んだが、これが40万人の社員にどこまで伝わるか。丁寧に説明することが大事。時間を掛けてやっていくしかない」と意見を述べた。
 不動産事業は、日本郵政不動産の岩崎芳史社長が事業内容を説明した。
 岩崎社長は「日本郵政グループの収益の柱となるよう成長させたい」と述べ、2025年度の営業利益の目標を150億円に置いていることを明らかにした。2020年度から5年間で5000億円の投資を行い、2025年度末には資産規模1兆円にする計画。2025年までには業界10位、次の5年間で7位を目指す。
 横田委員からは「人口動態や自然災害などもあり順調に行けるかどうかは何とも言えない。柔軟に対応してもらえればと思う。国民の財産を引き継いだこともあり、公共的な役割を果たしていくことも必要」と要望した。
 岩崎社長は「全国に地質部の社員が350人位いる。災害時にはいち早く出動して修復を行っている。建物には災害時に避難所として使えるホールも作っている」と回答。
 野村委員からは「箱のイメージが抜け切れていない。これからはソフトの時代。ソフトをカスタマイズするといった発想の転換をして開発を進めるべき。箱に何を付けるのかではなく、グループのDX政策の中に箱を置くことが重要」と指摘する。
 最後に増田社長は「社員が参加してよかったという実感ができる場を作りたい。これまでコンプライアンスの強化などがあり、あれはダメ、これはダメという机の上での研修を数多くこなしてきた。4月から営業活動を再開したが、現場の社員の足は重くなっている。社員の意見を尊重しつつ、地域で何かやろうということには、精一杯応えられるよう心して取り組みたい」と述べた。


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