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2021年12月20日第7123・7124合併号

【主な記事】

金子恭之総務大臣インタビュー


 10月に発足した第一次岸田内閣で金子恭之総務大臣が就任した。衆議院選挙を経て、第二次岸田内閣(11月10日発足)で引き続き務める。内閣が掲げる「デジタル田園都市国家構想」の要はデジタルと地方創生。両方を担う総務省の役割は大きい。金子大臣の政治信条の「地方の繁栄なくして国の繁栄なし」は、同構想の目指すところでもある。政策を進めるに当たり、地域の生の声を聞くことを基本に置く。北海道での行政相談員との車座対話(12月6日)を開催。金子大臣を本部長とする「総務省デジタル田園都市国家構想推進本部」も設置(11月12日)された。同構想では、デジタルで誰一人取り残さない社会の実現を目指しており、全国にある郵便局も役割の一端を担うことが期待されている。(永見恵子)

地方の繁栄なくして国の繁栄なし
デジタル田園都市国家構想を推進

■岸田内閣は、デジタルで地方を活性化し世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」を政策の柱の一つに掲げています。テレワーク・ドローン宅配・自動配送などの実現のため地方からデジタルの実装を進めるということですが、実現に向け総務省が注力するデジタル化の取り組みについて聞かせてください。
 人口減少や少子・高齢化などの課題に直面している地方こそ、様々な分野でデジタル技術を活用するニーズがあります。
 地方からいち早くデジタルの実装を進め、これらの地域課題を解決し、地方と都市の差を縮めることを通じて地方を活性化する「デジタル田園都市国家構想」の実現は、岸田内閣の最重要政策の一つであり、総務省としても、大きな役割を果たしていきたいと考えています。
 同構想を強力に推進するため、私を本部長とする「総務省デジタル田園都市国家構想推進本部」を立ち上げました。今年度補正予算案では、同構想を実現するための主な施策として、条件不利地域における5G等の携帯電話等エリア整備事業、課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証、データセンター、海底ケーブル等の地方分散によるデジタルインフラの強靭化事業などを盛り込んだところです。
 「地方の繁栄なくして国の繁栄なし」の考えの下、デジタルの実装で都市と地方とが物理的な距離を乗り越えてつながることにより、活力ある地域づくりが実現するよう、引き続き全力で取り組んでまいります。

■同構想では「誰一人取り残さない社会の実現」を掲げており、高齢者や被災者等へのデジタル活用支援を行うということですが、全国津々浦々に拠点を持つ郵便局に期待することは。
 総務省では、国民の誰もがデジタル社会の恩恵を受けることができるよう、民間企業や地方公共団体等と連携し、デジタル活用不安のある高齢者等向け、オンラインによる行政手続などスマートフォンの利用方法に関する助言や相談等の講習会を今年度から全国展開しています。
 来年度は、地域等の実情を踏まえた多様なニーズに対応するため、携帯ショップなど教わる場所が身近にない地域に対して講師派遣を行う予定です。デジタル活用支援など郵便局にもご協力いただくことを期待しています。

■「2万4000の郵便局は、貴重な財産」と評価され、歴代の総務大臣、日本郵政の社長はこれを維持していくとしています。しかし、特に委託制度を採っている簡易郵便局は、過疎地を中心に減少しています。法律には民営化時の過疎地の郵便局の維持が明記されており、維持の方向ならば工夫や対策が必要だと思います。
 直営の郵便局は自治体の受託事務などで維持のための努力をしていますが、過疎地については、行政事務委託費を地方交付税で措置するなどの支援策も想定されます。また、簡易局は受託条件を緩和して、例えば起業する複数の地域おこし協力隊員が郵便局の業務を請け負い、基礎的収入として活用するなど、地域の実情に合わせた工夫が必要だと思います。郵便局の現状と維持、活用についてどのようにお考えでしょうか。
 全国津々浦々に約2万4千局のネットワークを持つ郵便局は、地域の重要な生活インフラとしての役割を担う国民共有の財産であり、郵便・貯金・保険からなる郵政事業のユニバーサルサービスの提供を引き続き維持していくことが必要です。 
 地元である熊本においても、山間部から離島まで郵便局の果たす役割は大きいと感じており、特に簡易郵便局については、過疎地等におけるサービスの提供に重要な役割を果たしていただいていると認識しています。
 他方、少子・高齢化、地域経済の疲弊やデジタル化の進展など、郵便局を取り巻く環境は大きく変化しています。
 これを踏まえ、総務省としては、拠出金・交付金制度により郵便局ネットワークの維持を引き続き下支えしていくとともに、デジタルを活用した実証実験などを通じ、郵便局が新たなサービスを生み出せるような環境の整備などに取り組んでまいります。
 郵便局が、引き続きユニバーサルサービスを安定的に提供し、それぞれの地域においてこれまで以上に積極的な役割を果たしていけるよう、しっかり支援を行ってまいりたいと考えています。

■同構想を支える通信ネットワークについてですが、総務省が導入を促進しているローカル5Gは、企業や地方自治体が、柔軟にネットワークを構築できるメリットもあり、産業界の関心も高いものがあります。今後、市場は拡大することが期待されますが、コストなど克服すべき問題もあり、普及促進に向けた取組の方針について教えてください。
 ローカル5Gは、デジタルの実装によって活力ある地域づくりを目指す「デジタル田園都市国家構想」を実現する上で大変重要な基盤の一つであり、総務省では、ローカル5Gを効果的かつ円滑に導入できるよう技術的な見地等から支援するための実証、ローカル5Gの導入を検討する企業や団体等に対して、オンラインセミナーや導入計画策定支援の実施などに取り組んでおります。
 また、より利用しやすいローカル5G向けの周波数を新たに開放することなどにより、導入コストの低廉化を促進しているところです。これに加え、今年度補正予算案では、地方のニーズを踏まえつつ、実際の環境に近い形での大規模実証等を行うこととしています。
 引き続き、関係企業、自治体等と協力しながら、ローカル5Gの普及展開を一層強力に推進してまいりたい。

《参考データ》
■一時閉鎖中の簡易郵便局の数=▽2016年・285局▽2017年・294局▽2018年・335局▽2019年・376局▽2020年・421局
■郵便局の行政事務受託の数=▽行政事務受託354団体(9月末現在)▽包括行政事務受託15団体(11月1日現在)
【金子恭之総務大臣プロフィール】熊本県のあさぎり町出身。早稲田大学商学部卒。衆議院議員。郵政民営化に反対した故・園田博之衆院議員の秘書などを経て、20000年の衆議院選挙で初当選。国土交通副大臣(2008年8月)、衆議院災害対策特別委員会委員長、2018年10月からは自民党政務調査会会長代理、昨年10月からは衆議院災害対策特別委員会委員長を務めるなど要職を歴任。当選8回。


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