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2022年2月21日第7132号

【主な記事】

「ローカル共創イニシアティブ」を開始
[日本郵政]ベンチャーや自治体に社員派遣
新規ビジネス創出で地域に貢献

 日本郵政の増田寬也社長は2月10日、中期経営計画「JPビジョン2025」に掲げる、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」を実現するための新たな取組みとして、「ローカル共創イニシアティブ」を開始すると発表した。グループ会社本社社員を、社会課題に先行して取り組む地域のベンチャー企業や地方自治体に4月から派遣することにより、新規ビジネス等を創出することを目指す。増田社長は「様々な団体や自治体への職員の派遣は、デジタル田園都市国家構想の実現に資するものであり、郵便局の役割や将来業務の拡大という意味でも重要なことにつながると思っている」と述べた。

 「ローカル共創イニシアティブ」は、公募によって選出したグループ会社本社所属の若手および中堅社員8人(20歳代~40歳代)を、4月から2年間、社会課題に先行して取り組む地域で、 経済の活性化、関係人口の創出、自治機能の維持・向上等に資するサービスに精力的に取り組んでいるベンチャー企業や地方自治体に派遣することによって、新規ビジネス等を創出することを目指す。
 派遣期間の間、社員は派遣先のベンチャー企業等とともに活動し、共同で事業モデルの検討を進める。本社では得難い貴重な経験を積むことにより、新たな事象に果敢に挑戦する起業家マインドを持つ人材の育成につなげるとともに、少子高齢化、地方格差、気候変動などの様々な社会的課題に向けた新規ビジネス等の創出を図る。
 増田社長は「日本郵政グループとしては、変化の激しい時代に突入した今、このような新たな取組みを積極的かつ主体的に行うことによって、持続可能な地域社会づくりおよび地域の生活の向上に貢献できる新たな役割を模索していく」と語っている。
 派遣先地域・組織などは以下の通り(①は社会課題②は仮説事業テーマ)。
▽宮城県石巻市・株式会社巻組/一般社団法人イシノマキ・ファーム/一般社団法人りぷらす=①空き家相続・ 障がい者雇用②空き家活用への投資・ソーシャルファ ームへの参画
▽石川県七尾市(能登半島)・株式会社ノトツグ=①廃業問題・ 事業承継②事業承継ファンドの組成・運用
▽三重県尾鷲市・一般社団法人Next Commons Lab=①自治体サービスの持続②ローカルコープ(住民出資型共助法人)組成・運営
▽奈良県奈良市・一般社団法人Next Commons Lab =①自治体サービスの持続②ローカルコープ(住民出資型共助法人)組成・ 運営
▽島根県雲南市・Community Nurse Company 株式会社/特定非営利活動法人おっちラボ=①高齢者サービス、生前贈与②郵便局の健康ステーション化、終活・みまもりサービスのアップデート
 各組織に1人、その他、一般社団法人 Next Commons Labの本部(東京)に1人派遣予定。運営事務局・アドバイザーは、特定非営利活動法人ETIC.
 今後とも、こうした取組みを積極的かつ主体的に行うことにより、持続可能な地域社会づくりや地域の人たちの生活向上に貢献できる新たな役割を模索していく。
 増田社長は、地方創生有識者懇談会の座長を務め、デジタル田園都市国家構想実現会議の委員にも任じられている。「昨年末には『郵便局が身近な公的拠点として地方創生の役割を果たしていきたい』と発言しているが、ローカル共創イニシアティブもその取組みの一環か」との問いには次のように答えた。
 「様々な団体や自治体への職員の派遣は、デジタル田園都市国家構想の実現に資するものであり、郵便局の役割や将来業務の拡大という意味でも重要なことにつながると思っている。デジタル田園都市国家構想を支えるものとして、郵便局の可能な部分は位置付けていきたいと思う。それによって、地方の郵便局の新たな業務の改革にも結びつけていければ幸い」。
 また「地方の郵便局が果たすリアルな役割は、人口減社会にあって、可能な限り残していきたいと考えている。そういう地域で、会社の経営理念である『地域に貢献していく』ということを勘案すると、行政が行っている公的証明書類の発行のみならず、人材紹介はじめ、様々な地域の相談や問い合わせにも、郵便局として、あるいは郵便局を介して、専門家に取り次ぐような形で役割を果たすことができると思っている」と強調する。
 そして「今の郵便局では、例えば試行的に始まっている、相続などの相談業務以外にも、就活や地域の困りごとへの相談業務を郵便局で対応できるようにしていくことが大事だと考えている」との見解を示した。
 さらに「デジタル田園都市国家構想に係る交付金も用意されているため、そういったものをうまく導入できると、郵便局の活動が活性化する。そういうことにも繋げられればと思う」と語った。
 日本郵政グループでの不祥事案件が発生していることから、郵政行政分野における総務省の監督態勢を強化し、専門家の助言を得て事業者のモニタリングを適確に進めることを目的として、「郵政行政モニタリング会合」が2月から新たに開催されることになっている。
 このことについて、増田社長は「総務省でモニタリング会合を開くことになった原因である様々な不祥事に対して、大変遺憾に思っている。郵便局を利用しているお客さま、そして国民の皆さまにお詫び申し上げる」と陳謝した。
 一連の不祥事に絡めた、支社人事権の強化の進捗状況についての質問には「本社、支社、フロントの郵便局はじめ現場に近い中にあって、きちんと機能すべき支社機能を一層充実強化させていくことの重要性」を説いた上で、「支社機能の充実強化に本格的に取り組むのは4月からということになる。数年がかりでやっていかなければならない部分があると思う。4月からの部分については、日本郵便中心に準備を進めている」と回答した。
 ゆうちょ銀行が硬貨の取り扱いで手数料を取ることになったことについて、「活動費を募金活動で賄っている公益法人などへの影響が大きいが、今後運用するに当たっての対応と受け止めは」の問いには、「お客さまからは多くの声をいただいており、様々な団体からの声も寄せられている状況。経営環境が厳しくなる中で、有料制に切り替える時期に来ていると、ゆうちょ銀行の方で判断して今回の変更に至った」と説明した。
 続いて「これまでにも各団体の活動について、ゆうちょ銀行のエリア本部、支店に相談していただいて、活動内容について申請をするという手続きがある。それによって、ゆうちょ銀行も社内の判断基準に従って、無料にするかどうかの判断をこれまでにも行っており、これからも丁寧に行っていきたい」と述べた。


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