「通信文化新報」特集記事詳細
2022年2月21日第7132号
【主な記事】
ゆうちょ銀行 かんぽ生命
PCAFに加盟
カーボンニュートラルを推進
ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険は、国際イニシアティブ「Partnership for Carbon Accounting Financials(PCAF)」(金融機関向け炭素会計パートナーシップ。加盟は2022年1月現在、世界50か国以上200以上の金融機関)に加盟した。ESG投資を進めるうえで必要となる投融資先のGHG(CO2やメタンなどの温室効果ガス)排出量の測定・開示を標準化する団体で、加盟により日本郵政グループは、投融資を通じたカーボンニュートラルを更に後押しする。
ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取組みを進めている。
金融機関が投融資を通じた温室効果ガスの削減を進めるに当たり、GHG排出量の測定・開示などが必要となる。一方で、投資先やそのサプライチェーン全体の温室効果ガス削減への取組みを評価するためのデータの計測や評価方法が課題となっている。
日本では投融資ポートフォリオのGHG排出量は、東京証券取引所のプライム市場への移行が決定している上場企業については、サステナビリティ報告など、気候関連財務情報開示タスクフォース「TCFD(2015年12月のG20の要請を受けた金融安定理事会・FSBの下に設置された民間主導のタスクフォース)」提言に準じた開示は進んでいるが、非上場企業や中小企業などでは開示が義務化されていないものの、今後は求められることになる。
ゆうちょ銀行はTCFD提言に賛同し、気候変動リスクのシナリオ分析や管理体制の高度化などに継続して取り組んでいる。
加盟を機にPCAFのデータベースを活用し、投融資で必要となるGHG排出量を測定する能力を更に向上させる意向。
また、ゆうちょ銀行は、国内のPCAF加盟者で作る「PCAF Japan coalition」(2021年11月設立)にも参加し、他金融機関との知見・課題の共有・連携を進める。投融資を通じたGHG計測・開示の普及・浸透に貢献したい考えだ。
かんぽ生命では、TCFD、気候変動イニシアティブ「JCI(Japan Climate Initiative)」などの気候変動に関する組織にすでに加盟している。PCAF加盟と共に、気候変動の国際的なイニシアティブ「Climate Action 100+」にも参画した。
100+は、世界の温室ガス産業排出量の8割以上を167の企業が占めていることから、投資家がネットワークを作り、共にこれらの企業と対話しながら、排出削減を働きかけていくという国際組織。167社のうち、日本には製造業を中心に10社がこの対象となっており、国内加盟者がこれらの企業と対話を続ける。
かんぽ生命は「環境保護への貢献」をテーマとした投資を推進しており、これらの組織を通じて脱炭素社会実現に向けたESG投資をさらに積極的に進める。
環境整備で内外の投資の呼び込みへ
2050年のカーボンニュートラルは世界的な目標。日本政府も同じ目標を共有している。世界では洪水など異常気象による災害が頻発し、脱炭素化への取り組みは喫緊の課題となっている。
世界中の機関投資家や金融機関はこの目標に呼応し、ESG投資を通じて、企業の脱炭素化を促す取組みを進めている。世界のESG投資資金は3000兆円とも言われ、巨額なマネーが脱炭素に集まっている。
日本は環境などの分野で高い技術を持っている企業も多く、ESGへのポテンシャルが高い。官民が協力し、ESG債券の評価情報の提供など投資環境を整備することで、国内外からの投資を呼び込もうとしている。
世界のサステナビリティ情報開示に関する国際的な基準や枠組みは、TCFDをはじめ、GRI(オランダのNGO団体)、IIRC(イギリスの民間非営利組織)、SASB(アメリカの民間非営利組織)などがある。
日本ではこれらの情報開示機関の設置が遅れており、国内外の投資家が投資を自ら判断するための正確な情報が十分に開示されていない。そのため、環境技術を持つ企業や脱炭素を進める企業はあるものの、投資が思うように進んでいないのが現状だ。
金融庁は昨年1月、これらの整備のため「サステナブルファイナンス有識者会議」を立ち上げた。2050年のカーボンニュートラルを「経済と環境の好循環」につなげ、国内外の成長資金が、日本企業の取組みに活用されるよう、また金融機関がその機能を発揮できるよう環境を整備するのが目的。
昨年6月には同会議の報告書「持続可能な社会を支える金融システムの構築」がまとめられ、「サステナビリティ情報開示」「ESG評価・データ提供機関の設置」「ESG関連債プラットフォームの構築」などの整備が提案された。
ESG評価はデータを提供する機関によって基準や手法が異なり、評価結果に違いが生まれるという問題が解決していない。
また、海外投資家を呼び込むには客観的に正確な評価を英語などの言語で情報発信をすることも必要になる。
グリーンボンド(環境配慮型債券)の日本での発行額は2020年で約1兆円と欧米や中国と比べて低い。
海外では証券取引所にESG関連債専用プラットフォームがあり、外部評価の開示やESG関連情報の収集や比較ができるデータハブの提供もしているという。
日本もこれらの国々にキャッチアップできるよう、同会議では「グリーン国際金融センター」「ESG評価・データ機関」などの整備に向けて、引き続き議論が続いている。
>戻る
