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2022年3月7日第7134号

【主な記事】

協業で持続的成長へ
[日本郵便]佐川急便と連携進む


 日本郵便と佐川急便は3月1日に記者会見を開き、昨年9月に締結した協業に関する基本合意の進捗状況について発表した。「飛脚ゆうパケット」やEMS(国際郵便サービス)を活用した「飛脚グローバルポスト」、郵便局カタログを「飛脚クール便」で届けるなど双方のサービスを活用した新サービスのほか、新たに幹線輸送の共同化や、不在配達の郵便局受取の実証実験も開始した。会見で日本郵便の小池信也常務執行役員は「協議は良好な関係で進んできた。次に進むものも出てくると思うが、オープンな気持ちで広くやっていきたい」と話す。

 協業に新しく加わった「幹線輸送の共同化」は、東京から福島県郡山まで(3月1日開始)と東京から九州まで(4月1日開始)の2路線。いずれも佐川急便のトラックが日本郵便の区分局に立ち寄る形で進められる。九州は横須賀港から門司港まではフェリーを使う。
 メリットは、共同化により輸送車両を減らすことができ、CO2の削減にも寄与できることがあるという。
 東京―郡山間(約230キロ)は、佐川急便の城西営業所で荷物を積み込み出発。新東京郵便局で日本郵便の荷物を積み込み、郡山郵便局で荷物を下ろす。
 トラックはこの後、佐川急便の郡山営業所に向かう。東京―郡山間の事例では、午後5時に佐川急便営業所を出発したトラック便は、共同輸送最終地の佐川急便郡山営業所には翌日の午前1時45分に到着する。
 佐川急便の荷物の不在受け取りを郵便局に指定できるサービスについては、4月から世田谷区や目黒区の住宅地にある数か所の郵便局で実証実験を実施。ニーズや利便性を検証する。検証は複数の地域で行う予定。
 基本合意締結時から協議を進めてきたゆうパケットの活用については、佐川急便が「飛脚ゆうパケット便」としてサービスを提供することになった。佐川急便で受け付けて日本郵便に届ける。既に昨年11月から首都圏の一部で始まっており、準備ができ次第、全国展開する。
 佐川急便の「飛脚クール便」を使った新サービスは、郵便局物販サービス「郵便局のカタログ販売」から始める。これまでは冷蔵品しか扱えなかったが、冷凍も扱う佐川急便のクール便を使うことで、冷凍商品の販売も可能になった。
 まずは郵便局カタログの特集「母の日ギフト」に、冷凍の「八天堂季節の4種詰合せ」を加え、3月1日から全国の郵便局で販売する。
 佐川急便では、EMSを活用した新サービス「飛脚グローバルポスト便」を2月1日から全国の営業所で始めた。世界120か国以上に展開する日本郵便の配送網を活用する。
 新サービスについて佐川急便の中川和浩取締役は「飛脚宅配便を提供しているが、飛脚グローバルポスト便とは違いがある。飛脚宅配便は料金が高いが、1週間程度で届く。グローバルポスト便は、料金は比較的安いが、日数は1週間から15日程度かかる。お客さまにとっては、選択肢が増え、利便性向上にもつながる」と話す。
 小池常務はこれらの取組みについて「Eコマース市場の拡大による小口配送が増加する一方で人手不足。いかに現在のサービスを維持しながら成長することができるかが大きな課題。両社の物流リソースを最大限活用し、成長を続けるため協議してきた」と話す。
 そのうえで「それらの課題は単独で対処するものではないということは世の中に浸透しており、競合しつつも一緒にできることはする。それは理に適っており、両社の担当者もそういう認識で議論してきた。とても良い関係の中で進めることができた」と強調した。
 佐川急便の中川取締役も「自社の力だけでなく、企業の垣根を越えてパートナーと連携し、社会課題を解決するということで、日本郵便と合意に至った。これに留めることなく今後とも日本郵便と手を携え、お客さまの利便性を高めるサービスの開発や効率的なネットワークインフラの構築、脱炭素、社会貢献といった幅広いテーマで引き続き協議していきたい。お客さまと社会に何ができるかを考え、持続可能な社会の実現に貢献したい」と述べた。


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