「通信文化新報」特集記事詳細
2022年3月14日第7135号
【主な記事】
「JPショールーム」開設
JP未来戦略ラボの第一弾
2023年度に事業化へ
Eコマースの商品をリアル店舗で気軽に体験してもらおうと「JPショールーム」が2月28日から3月26日まで、東京中央郵便局と神奈川県横浜市の都筑郵便局に開設された。日本郵政グループ内の若手社員で構成する「JP未来戦略ラボ」(日本郵政の増田寛也社長直轄の組織)が提案する第一弾として試行的に行われるもので、2023年度内の事業化を目指す。リアルとデジタルを融合した郵便局の新たな価値を創造する。
JPショールームは、商品を見てみないと購入の決断がつかない高額商品や、パソコンやスマホでは十分に確認できない色味、体験してみないと分からない商品などをネット販売事業者から提案してもらい展示した。
今回は、郵便局ネットショップと楽天市場に出品されている家庭用ミニプロジェクターやソーダサーバー、水拭き付きお掃除ロボット、体組成計、ウエルネスボールなど8点を展示。
気になる商品があれば、二次元バーコードで商品サイトにアクセスでき、購入することもできる(商品は配送)。
ショールームにはAIカメラが設置されており、展示商品に興味を示した人の年齢や性別、視線などを分析し出店者にフィードバックする。ビジネスモデルは、マーケティングへの参加費のみで、売上からのフィーは必要ない。
試行サービスを提案したのは、JP未来戦略ラボ(昨年7月設立)マーケティング班(グループ各社からの7人で編成)。JPショールームのもう一つの目的は、商品を売ることを主目的にしない体験型サービス「RaaS(Retail as a Service)」の実験の場。
RaaSは、新しいコンセプトの店舗で、アメリカのベンチャー企業「b8ta」が始めた。2019年には日本法人が設置され、翌2020年からは新宿や有楽町でサービスが始まった(米の店舗は先月、閉鎖)。
RaaSの利点について、JPショールーム提案者の一人でもある日本郵政JP未来戦略ラボの小田直樹担当部長(日本郵便物販ビジネス部課長兼務)は「一般の店舗だと、販売員の人が声を掛けてきて、それをプレッシャーに感じる人もいる。ショールームはその会社のものしか置いてないため、他のメーカーのものを見ることができない。日本ではこのモデルの店が少ない。ビジネス化できれば、郵便局の空いたスペースを活用できるのではないかと思う」と話す。
JPショールーム全体のビジネスとしては「テストマーケティングやEコマースでは商品の良さが伝わらない商品、生産量が少なく一般の店舗においてもらえない商品などを展示する。一定のニーズがあるのではないか。AIカメラから得た統計情報を基に、メーカーと一緒にオリジナル商品を作り、郵便局ネットショップで売ることも考えられる」という。
2022年度は1年で最大10局で試行を行い、2023年度中の事業化を目指す。
JP未来戦略ラボは、共創プラットフォームなど、グループ各社単独ではできない事業にチャレンジしてみようと、グループ内から30人(専任は7人)が集められた。 増田社長直轄の部署として運営されている。小田担当部長は日本郵便の物販ビジネス部に在籍のままで同ラボの仕事もしている。
新事業へのチャレンジについて小田担当部長は「増田社長からは『失敗を恐れずとにかくチャレンジしてみろ』と言われている。既存の事業では、収益も含めて目の前の課題解決が求められるが、ラボではリスクを取りながらもグループの未来を見据えたチャレンジができる。新しいビジネスモデルにも挑戦できるので、ラボでの仕事はチャレンジ精神のある人にとっては良い機会となる」と話す。
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