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2022年3月21日第7136・7137合併号

【主な記事】

「グループコンダクト向上委」新設
JP改革委を引き継ぎ
「JP行動宣言」に助言

 第14回JP改革委員会(梶川融座長=太陽有限責任監査法人代表社員会長)が3月9日、Web上で開催された。「グループガバナンスと内部統制の更なる向上」「顧客本位の事業運営の徹底と組織風土改革」「日本郵政グループの持続的な成長」の3つのテーマについて、委員とグループ各社の社長との間で意見交換が行われた。今回が最終となり、今後は「グループコンダクト向上委員会」を設置。引き続き専門家による経営への助言や検証をしてもらう。

 日本郵政の増田寛也社長は「様々な提言をいただき、多くの器を作った。魂を入れ、どう実行するか責務として取り組んでいかなければならない。郵政民営化法で許されている範囲で精一杯やりたい」と抱負を語った。
 かんぽの営業再開の条件や内部通報制度の検証、ゆうちょ銀行の不正送金問題(即時振替サービスなど)の検証などを担当した横田尤孝(ともゆき)委員(青陵法律事務所・弁護士)は「この2年間、様々な事項について、多角的に勉強させてもらった。最大の課題は4月からの新しいかんぽの営業体制。かんぽの再生を期した大きな決断だと思う。様々な困難に遭遇したとしても目的遂行のために全力を尽くしてもらいたい」と前置き。
 そのうえで「社員がその必要性や重要性を理解し、希望を持って従事しなければならない。現状を正しく認識し、展望や希望を持って進めていくことが大事。社員がどこまで腹落ちしているかにより、困難にぶつかった時、乗り切ることが違ってくる。研修は社員の心の底に響くものでなければ変われない」とコミュニケーションの大切さを強調した。
 新営業体制について、かんぽ生命保険の千田哲也社長は「4月以降が正念場。対話だけでなく行動で示したい。社員が納得感を持ち、元気で前を向き、みんなで頑張る。そこに喜びを感じる会社に変わっていかなければならない。マーケットが成長し、社員が成長する、マネジメントも成長しながら支える。フロントを絶対に孤立させない」と話している。
 日本郵便の衣川和秀社長も「新しいかんぽの体制はトラブルや混乱が起きないよう、ゆうちょ銀行やかんぽ生命も一緒に郵便局のサポートをしていきたい」と新体制に臨む。
 ガバナンスについて野村修也委員(中央大学法科大学院教授)は「日本郵政グループは、例えると3つのコートで別々のプレーが行われ、それぞれ監督がいて、コートの脇には社員や幹部がいる。プレーする人とコートの外の人は分断されている。言われたことはやるが腹落ちしていない」と問題点を指摘する。
 ゆうちょ銀行の池田憲人社長は「お客さまが原点。社員から社長への意見を毎週もらっている。苦情を分解してお客さま本位に立つと、苦情は何を求めているのか。委員からのご意見を取り入れながら、我々なりの態勢を作ってきた。ゆうちょらしいブランドに仕上げてきている。大きなブランドであることに誇りを持ってやっていく。本社から見てフロントはお客さま。さらにバージョンアップして継続的なものにしていきたい」と抱負を述べている。

多様な人材の発掘を
JPキャストで情報発信

 野村委員は「自分を殺して、決まった仕事をその時間だけする。仕事が自己実現の場になっていない。多くの人がいる組織で、中には古典芸能に詳しい人や俳句で著名な人、書道の世界では名が通っている人がいるかもしれない。高齢者向けのビジネスを展開する時に、お客さまに情報発信ができる。そういった提案をするだけでワクワク感が生まれる」と指摘。
 「発想の転換をすれば莫大なパワーを発揮する組織に変われるのではないか。自分のスキルや個性が会社のためになるかもしれないと思った時に、帰属意識が生まれ、愛社精神が高まり、コンプライアンスも自然に受け入れられる。そういった好循環を生むために、組織・風土改革の中心に据えてバージョンアップしてもらいたい」と提案する。
 この提案に対して、増田社長は「グループには多様な人がいる。素晴らしい技能を持った人材もいると思うが、見えてこない。JPキャストも立ち上げた。外に見せていきたい」と話す。
 衣川和秀社長は「会社があるのは自らの責任を果たしている社員がいるから。才能や個性を持った人の強みをどう引き出していくのか、社員の声を聞きにいかなければならない」と人材発掘に前向きなコメント。
 JP改革委員会では公共性と収益性についての議論もあったが、梶川座長は「民営化から時間が経過していて、社会や経済、金融環境も変化している。ユニバーサルサービスは最低限受けられるパブリックサービス。内容を再確認し再定義する必要がある」と述べた。
 そして「受益者のリテラシーが変わってくると『そこまでは必要ないので、そのコストを他に回してもらいたい』という人もいる。本当の意味の受益者に対するユニバーサルサービスを検討し続けることが必要なのではないか。ユニバーサルサービスの再定義とその負担について、整理することが持続的な成長につながる。それによりDXも生きてくるのではないか」と発言した。
 JP改革委員会は最終回を迎えたが、増田社長は「第三者の目線は大事」として、新たに「グループコンダクト向上委員会」を設置する。
 4月以降に「JP行動宣言」を作成することから、専門家から助言をもらう。
 横田委員が行ってきた検証についても、新設される委員会に引き継がれる。


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