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2022年5月23日第7145号

【主な記事】

純利益は5016億円
郵政グループ決算 上場以来の最高額

 日本郵政グループは5月13日、2022年3月期の決算を発表した。連結の当期純利益は前期比20.0%増の5016億円。上場以来、最高益となった。主な要因は、ゆうちょ銀行のプライベートエクイティファンドなどリスク性資産の運用益が大幅増となったことや、日本郵便の国際物流事業・トール社のフォワーディング事業が増益となったことがある。グループ連結では、減収増益。日本郵便は減収増益、ゆうちょ銀行は増収増益、かんぽ生命保険は減収減益となった。

 決算会見で日本郵政の増田寛也社長は「郵便ネットワークの価値の向上と地域を支える共創プラットフォームを目指し、グループ外企業との連携やグループ横断したDXの推進に取り組んだ。今後も協業や業務提携を更に拡大し、企業価値向上を目指したい」とコメントした。
 日本郵政の当期純利益は834億円増の5016億円。経常収益は3.9%減(4556億円)の11兆2647億円、経常利益は8.5%増(773億円)の9914億円。経常利益は、市場の好調により資産運用が伸びたゆうちょ銀行は増益。日本郵便は金融2社からの手数料や郵便物の減少などで売上は下がった。
 グループ連結の当期純利益の通期予想4800億円に対する達成率は104.5%。同経常利益9200億円に対する達成率は、107.8%。予想を大きく上回る結果となった。
 配当については、中期経営計画2025では「業績の動向にかかわらず1株当たり年間50円」と明記されており、2022年3月期と2023年3月期はともに1株年間50円とする。2022年3月期の配当性向率は37.9%。次期は45.7%。
 通信文化新報は配当について「中期経営計画には期間中は1株50円と書かれているが、2023年3月期の業績予想は約1000億円下がる見込みで、配当性向率も37.9%から45.7%となる。配当を固定しているため配当性向率が変動し、今期は45.7%と大きく増えている。経営者としてこの数字をどのように捉えているか」と質問。
 増田社長は「日本郵政の株主は個人株主が多い。郵政株は国民的資産と考えている方が多い。そういう皆様に対して安定的な配当をするのが上場した時からの株主への約束事項でもある。業績のブレに関わらず、中計期間はその約束に基づいて安定した配当を維持する。2022年3月期は、5000億円ものかつてない大台に乗り、業績が上ブレしたため、自社株取得も組み合わせて株主の期待に応えたい」と答えた。
 また、配当性向率45.7%という数字について増田社長は「配当性向、自社株取得、総還元性向があるが、株主の皆様にはご理解いただける水準。将来への投資に利益を振り向けることも考えておかなければならない。中計では投資枠を決めており、大きな投資もしていかなければならない。私どもが持つ剰余金を考えると投資は十分にあると思っている」と説明した。
 株主還元の一環として、同期は3500億円(4月購入の45億円を含む)の自社株買いを実施したが、決算が好調だったことから2023年3月期は上限2000億円の自社株買いを実施する予定。
 2023年3月期の日本郵政グループの通期業績は、日本郵政と各社は共に減収減益を予想する。日本郵政の当期純利益の通期業績予想は、20.4%減(1016億円)の4000億円。同経常利益は29.4%減(2914億円)の7000億円。
 減収予測の主な要因は、日本郵便の郵便物の減少やゆうちょ銀行の外貨調達コストの増加、かんぽ生命保険の新しいかんぽの営業体制に伴う事業費の増加などがある。

日本郵政の自社株買い 2年間で5500億円
 日本郵政は株主還元の一環として、2021年度と2022年度の2年間で、5500億円の自社株買いを実施。2021年度は2回にわたり上限いっぱいの約3500億円で3億8616万3000株を取得し、消却している。
 2021年度は、1回目は、昨年6月11日に約2500億円で2億7609万円500株を取得し、同月末に消却した。2回目は昨年11月1日から4月7日までに約1000億円で1億1007万2500株を取得。4月25日に消却した。
 2022年度も前年度の好調な決算を受けて、2000億円・2億7800万株を上限に自社株買いを実施する予定。投資家による株式の希薄化懸念を払しょくするという理由で、必要な株式以外は消却する方針。


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