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2022年5月23日第7145号
【主な記事】
国定勇人衆議院議員インタビュー
総務省(旧郵政省)キャリア官僚から新潟県三条市長を経て国政に打って出た。昨年10月の衆議院選挙で初当選。2月には1年生議員ながら、大臣経験者ら国会議員の重鎮が名を連ねる「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(郵活連、山口俊一会長)の事務局次長に抜擢された。参議院議員の柘植芳文事務局長の下、郵活連の運営を支える。地方では超高齢化と人口減少が進む中、頑張っている郵便局。その活用や果たす役割について聞いた。
(永見恵子)
高い地域貢献への情熱
郵便局長を生かす環境整備を
「郵便局のブランド価値が保持されているのは、突き詰めれば局長の努力にある。会社はそこを評価しないできた。頑張ったことが報われる、そういう環境を整えることが一番大事。不祥事をあげつらうよりも局長のポジティブな情熱やエネルギーをほめる環境を作った方がいい」
国定議員は、郵活連事務局次長就任のあいさつで、このように今後の展望を語った。
郵活連事務局次長に就任
東京・神田神保町で生まれ育った。1997年に旧郵政省に入省。本省で6年間勤務後、三条市に出向した。
その後、市長を4期14年間務める。行政地方に携わった17年間は、地元の郵便局長と定期的な意見交換も行ってきた。前市長が郵便局長との意見交換会について前向きに取り組んできたこともあり、2006年に市長就任後もそれを継承した。
「意見交換は郵便局の実情を聞かせてもらう良い機会だった。現場の局長さんの話を聞いていて感じたのは、地域貢献へのモチベーションが高いということ。『自分たちが地域貢献せずしてだれがするんだ』という意気込みを皆さん持っていた」
昨年10月の衆議院選挙で初当選。2月に郵活連が新体制となり、事務局次長に就任。国会議員となり、郵便局を支援できることも広がった。
「三条市長当時から、地域貢献という局長のポジティブな思いを仕組みとして生かせる環境を整備しなければと思っていて、一緒にやりましょうと言ってきた。地方の首長としてできることは限られていたが、国会議員となり、郵活連の事務局次長も拝命した。局長のモチベーションとそれを発揮できる環境とのギャップを埋めるお手伝いができればと思っている」
価値の高い郵便局 今こそ活用すべき
地方は人口減少が課題の一つ。特に中山間地では過疎化に歯止めが掛からない。国定議員の地元でも、加茂市七谷地区の農協の直売所は撤退することが決まり、来春には生活必需品が買える小売店が地域にない状態になる。
長岡市栃尾地区では農協は撤退、小学校は廃校となったが、郵便局は残っている。国定議員は、生活基盤を支える機能を郵便局に求め、2月の予算委員会で郵便局ネットワーク維持のための公的支援を訴えた。
「教育、文化、小売り、農業、ガソリンスタンド…。住民が生きていくうえで必要なものがなくなってきている。郵便局は残っている。25年前の入省時の郵便局は2万4700局、25年経った今でも2万4300局が維持されている。すごいことだと思う」
「郵便局は局長が歯を食いしばって頑張ってくれた大切な財産。その価値は25年前よりははるかに高くなっている。今こそこれを活用すべき。郵便局の利活用というポジティブな課題と向き合い、後押しする環境も整ってきている」
郵便局は、郵政民営化法上の規制のある金融2社と比べて、自由度は高い。何でもできるはずなのだが…。
「市町村の行政サービスの受託はもちろんだが、高齢者が多い地域での農産物の集荷のお手伝いや御用聞きなど、郵便局は窓口だけでなく何でもできる。生活を支える基盤全てを代替できる良いチャンスだと思う。少し飛躍するかもしれないが、郵便局はあれだけ多くの拠点がある。防犯など交番的機能を持ってもよいと思う」
郵便や金融、一部では行政サービスも担っている。特に生活サービスの需要が見込まれる過疎地の郵便局は2人局が大半。
「人口の少ない地域では、郵便局が『あれもやります。これもやります』といったところで、毎日多くの人が押し寄せ、3事業どころではないとは絶対にならない。郵便局がどれだけのサービスが引き受けられるか。局長が一番わかっている」
「一定の判断は現場の局長にゆだねないと。そしてその頑張りを肯定すべき。勘ぐる姿勢から始まるとアウトだと思う。また何でも全国一律にしようとするから進まない。それも改めるべき」
特別交付税で支援も
地方自治体の首長や総務官僚として知識や経験、人脈、国会議員としての立場を生かした提案もできる。総務省主管の地方交付税もツールとして活用できる。
国定議員は特別交付税と公的サービスを結び付けた「行政サービスメニュー」のセレクトという画期的なアイデアを用意している。
「交付税には普通交付税と特別交付税がある。特別交付税は普通交付税を補完する存在だが、国の政策誘導的な側面もあり、郵便局が使える政策ツールにならないかと考えている。行政の代わりに公的なサービスを郵便局が担えば、特別交付税を受け取る権利が得られる」
「制度の整理をする必要はあるが、例えば、生鮮産品を売る小売店がない過疎の地域で、郵便局がその場を提供するケース。住民が生活するうえで必要不可欠な場を提供するため、公的なサービスとして位置付けられる。バスの待ち合わせ場所の提供、公民館機能の提供など地域により様々なものが考えられる」
行政サービスの代替業務と特別交付税について、例えば過疎地では、自治会が管理する集会所はあるが、公民館はない所もある。公民館は社会教育法に定められ、文化的・教育的施設として運営されている。運営費は参加者の負担金だけでは賄いきれないため、交付金が拠出されている。過疎地に新たに公民館を建てることは経費的にも難しい。郵便局が公民館運営業務の一部を担えば、間接的に特別交付税が受け取れる仕組み。住民の楽しみも増える。
「まずは国が、民間に任せられる行政サービスメニューを100個ほど作る。メニューを単位化し、1単位いくらという特別交付税の金額を決める。例えば郵便局の一角を生涯学習施設として活用しワークショップを開けば、規定の単位が得られ、市町村を経由して特別交付金が郵便局に下りてくる」
「メニューの中で地域にどのようなニーズがあるのか、郵便局で何ができるか。支社で現場の局長にヒアリングすることによりサービスを作り上げる。頑張れば頑張るほど特別交付税がもらえる仕組みで、郵便局の社員のやりがいにもつながるのではないか」
郵便局、自治体、住民の三方よし
「過疎地での郵便局の行政サービスの受託は、郵便局、自治体、住民の三方よし」だという。
過疎地の支所は1つだが、郵便局は複数ある。ここでいう三方よしとは、地方自治体はコスト削減、郵便局は維持費が増える。
住民はサービスを受けられる場所が近くになり利便性が向上するというもの。
三条市には「下田(しただ)サービスセンター」という住民サービスを担う役所のブランチがあるが、その地域には郵便局は3局ある。
センターは7人の職員で運営しているが、利用者は少ない。
市役所なら7人分の人件費が必要だが、郵便局3局に業務を任せれば、3局分の経費で済む。その地区は福島県境にも集落があり、センターまで40分ほど掛かるが、八木前郵便局なら車で20分ほどで行ける。
アナログの良さ 企業の提案も活用
社会がデジタルやDXに突き進む中、郵便局はアナログ。
そこに人がいることの良さをどこまで生かせるのか。
「郵便局の強みは全国津々浦々にあるネットワークといわれているが、それはアナログとして残っているからだと思う。全国2万4300局のアナログ主体のネットワークは、ものすごい価値を持っている。だからその活用を提案してくる企業もあると思う。全部自分たちでしようと思い込まないことだ。デジタルはツールとして使うのは良いが、アナログの良さを殺してしまうのは良くない」
【国定勇人(くにさだ・いさと)衆議院議員】
衆議院議員。比例北陸信越ブロック。一橋大学商学部卒。1997年郵政省入省。
2003年から3年間、新潟県三条市に出向し、市長公室長、総合政策部長などを務める。
2006年11月に同市長選に34歳で出馬。最年少の市長となる。以来4期務める。
昨年10月、衆議院選挙で初当選。二階派。
2月からは「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」事務局次長。地方を守る会代表世話人、総務省災害時の情報伝達の共通基盤の在り方に関する研究会構成員。
「柘植事務局長の下で頑張ります!」
柘植事務局長の下で、郵活連の運営を支える。国定議員は「郵便局の隅々まで熟知している柘植先生とご一緒に仕事をさせていただくことは、私にとってこんなに頼もしいことはございません。少しでもお役に立てるよう柘植先生の下で一生懸命頑張ります」とコメント。
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