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2022年5月23日第7145号

【主な記事】

「ハガキ出し運動」を検証
看護大学と連携(鳥取県伯耆連絡会)


 少子高齢化が進み人口に占める高齢者比率が年々増加の一途をたどる今日、労働力不足対策で企業は就業可能年齢を引き上げたり、年金財源対策で国は年金制度を改正、老齢基礎(厚生)年金の繰り下げ受給年齢を引き上げたりと、様々な対策に乗り出している。
 そういった中、鳥取県倉吉市の小鴨シニアクラブ協議会(北村隆雄会長/会員170人)が実施している「ハガキ出し運動」が、高齢者の健康づくりや介護予防に効果があるのではないかと注目した、鳥取看護大学看護部看護科の小石真子准教授が、協議会と連携、今後1年間にわたって調査・研究を実施することとなった。
 鳥取県中部に位置する倉吉市は、20世紀梨の栽培が盛んで、市内に梨の記念館がある。江戸時代は稲作が盛んで、田んぼの除草に使用する農機具「太一車」は、小鴨地区の中井太一郎が発明し、昭和30年代まで全国で使用され、世界にも広がったという。
 高齢化率は全国平均より高く、その割合は年々上昇傾向にある。令和2年12月末には33.9%と過去5年間で10%以上も上昇した。
 そのような倉吉市で活動する小鴨シニアクラブ協議会は、2020年4月、コロナ禍で活動が制限されたことをきっかけに、メンバーのフレイル(虚弱)予防のため「ハガキ出し運動」を推進している。通信文化新報でも紹介したが、昨年3月に鳥取県伯耆地区連絡会(菅田秀明統括局長/尾高)が感謝状を贈呈、同11月には中国支社から講師を招いて絵手紙教室を開催するなど、その活動には枚挙に暇がない。
 この度、地域で生活する人々の健康の保持増進や予防活動を踏まえた看護ができる看護学生の育成を行いながら研究を実施している小石准教授が、この活動を聞きつけ「シニアクラブ会員のハガキ出し運動に関する地域活動と生活満足度について」というテーマで、細田武伸准教授や鳥取短期大学の近藤剛教授らと共に調査・研究を実施することとなった。
 小石准教授は「大学が差し出したフレイルに関するアンケートを北村会長が大学まで持参し、クラブで実施している運動を発展させるにはどうしたらよいかと相談してきた」ことがきっかけと話す。この運動への参加状況、健康活動、生活自立の実態、生活満足度などを捉え、今後の健康づくりや介護予防活動を検討する資料とするため調査し、調査終了後に結果を公表するという。
 小石准教授から研究の目的、方法などの説明を受けた北村会長が、3月29日に代表して大学と同意書に調印。クラブの活動拠点である倉吉市小鴨公民館で4月20日に説明会が行われ、北村会長、シニアクラブのメンバー約30人、小石准教授をはじめ、活動を支援している鳥取県社会福祉協議会事務局の新貞二次長、倉吉市生活産業部地域づくり支援課の山本英明課長、金本忠継課長補佐、総務部企画課の成瀬龍二主事、小鴨公民館の廣谷啓一管理委員長のほか、ケアマネージャーなど多くの関係者が出席した。
 小石准教授は、研究の目的、今後1年間のスケジュールなどを出席者に説明。それによると、4、5月にアンケートを実施・集計。8月に、日々行ったことを記録、日記的に活用する「小鴨健康づくり手帳」の作成。生活の中で必要な情報や小鴨音頭の歌詞を盛り込んだ内容とするという。さらに、11月2日に「小鴨音頭披露レクレーション」を、近隣の小鴨川丸山河川敷で密を避けて、関係者で踊るイベントを実施する。
 「小鴨音頭」は、昭和40年ころから地域に親しまれており、もともと2番の歌詞までしかなかったが、今回新たに北村会長が3番を作詞、小石准教授がこの3番の踊りに介護予防的な動きを加え普及啓発するという。11月のイベントまでにシニアクラブの踊り指導者が振付を指導する。
 説明会に同席した運動を支援する新次長は、シニアバンクコーディネーターとして高齢者支援をしている立場から「小鴨シニアクラブ協議会は、北村会長を中心にハガキ出し運動をはじめ、様々な活動を徹底して行動している。書くことは『考え』、出すことは『動く』。このような活動は介護予防になる」と述べた。
 山本課長は「市としては検証実験について、公共的課題への資金援助、人的支援を始め看護大学と連携しながらできる支援はしていく。行政の立場で言えば、介護保険制度だけが高齢者対策ではなく、介護状態になる前の対策が必要」とハガキ出し運動の今後の効果に期待を寄せた。
 郵便局としても手紙文化普及の観点から支援しているが、あいにく当日所用で出席できなかった湯谷貴之局長(倉吉西倉吉)は「今後も郵便局としてできる限りの支援をしていく」と強調した。 


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