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2022年6月27日第7150号

【主な記事】

[日本郵政]株主総会
お客様本位の業務運営を
新しい事業領域も開拓


 日本郵政グループの定時株主総会が6月15日から17日までの3日間、東京都港区の「ザ・プリンスパークタワー東京」で開かれた。グループ全体で株主486人(日本郵政306人、ゆうちょ銀行107人、かんぽ生命保険73人)が出席。23人の株主(日本郵政11人、ゆうちょ銀行7人、かんぽ生命保険5人)が、不祥事の再発防止や土曜休配、経営などの課題について質問した。取締役の選任や株主総会資料の電子提供制度の導入に伴う定款の一部変更が提案され、原案通り承認された。

 日本郵政は17日に第17回定時株主総会を開催した。増田寛也社長が議長を務め、監査報告が行われた。佐竹彰監査委員長は「会社の状況を正しく示している」と認めたうえで「かんぽ生命保険の募集品質に関しては、お客さま本位の業務運営の徹底、日本郵便では郵便局長らによる高額犯罪や業務用カレンダー配布問題、お客様情報の目的外使用などの不適切取り扱いがあった事案に関して、再発防止策などの適正な対処がなされるよう、引き続き注視する」とコメントした。
 「株主総会資料の電子提供制度の導入による定款の一部変更案」と「取締役13人(新任1人)の一括選任案」が上程され、質問に移った。新任取締役は、ダイヤ精機代表取締役・日本郵便社外取締役を務める諏訪貴子氏。2つの議案は質問の後、拍手多数により原案通り承認された。
 質問では全国郵便局長会の後継者育成マニュアルの報道について「局長会は政治活動の必要性を唱えているが、現状と今後の対応についてどのように考えているのか」との質問があった。
 立林理常務執行役は「日本郵便社員と外部弁護士が精査したが、局長採用に全国局長会が関与している記述は認められなかった。60歳未満なら誰でも応募できる。応募の際には研修を受けることを要件とはしていないことを日本郵便のWebサイトに掲載。全国郵便局長会が実施する局長の後継者育成研修は、本社や支社の役員の講話は控えることにした」と説明した。
 不祥事について株主からは「不祥事の報道があり、問題ないと言い、更に報道されるとちょっとだけ問題があったとする。もっと報道されるともう少し出てきた。このようなことが繰り返されると、何か隠していると思われる。処分についても正直者が馬鹿を見るという印象を持つ。エリマネの局員が、局長や会社を信頼できない。現場での信頼感やる気をそがれるという話も耳に入ってくる。お客さまからの信頼は局員の信頼を確保することでもあり、取り組んでもらいたい」と要望した。
 早川真崇常務執行役は「かんぽの不適正募集では、業務改善計画で各種施策を実施し、ガバメントや内部統制の強化などお客さまからの信頼回復に努めてきた。グループ一体的に対応するため、日本郵政内にグループコンダクト統括室を設置。リスク情報を受け付け、お客さま本位の業務運営に反することに対する早期検知にも取り組んでいる」と強調。
 「信頼回復のため、一人ひとりが行動を見つめ直す。経営理念の実現に向けて行動として実践していくことが必要。今年は信頼を勝ち取るための重要な年と意識している。グループ全体として信頼を勝ち取り、不祥事撲滅に努めたい」と話した。増田社長も「先頭に立ち実効性のある再発防止策を進め、お客さまからの信頼回復に努めたい」と述べた。
 エッシェンシャルワーカーについて、株主は「5000億円もの純利益を上げているのに、配当の増配や社員の臨時ボーナスも出さない。コロナ禍でマスクを配るなど、コロナに掛かった社員もたくさんいると聞いている。役員は現場の社員がどういう生活や暮らしをしているかご存じなのか。窓口社員も配達社員も元気さが感じられない。エッセンシャルワーカーには手当を出すべきではないか。社員が元気になる元。役員のポケットマネーでよいので、現場に配ってもらいたい」と要望した。
 志摩俊臣常務執行役は「生活に欠かせないサービスをしており、社員は休むことなく、現場で業務を継続していただいた。役員一同感謝しており、誇りに思っている。賃金で処遇すべきという気持ちはある。会社の経営状況を勘案し、モチベーションが上がるようにしたい」と答えた。
 株主から「IT化が進み、郵送が減っている。郵便・物流事業をどう先に進めるのか」との質問に、西口彰人常務執行役は「未来の郵便局はデジタル郵便局になる。アプリで窓口と同じサービスを受けられる方向で取り組みたい。お客さまからは昨年は全体で50万件を超える声をいただいている。苦情も1割程度あり、それらを分析して新しいサービスに反映させたい」と説明した。
 不当な要求について株主から「反社会勢力からの不当な要求については、毅然として対応するとあるが、政府からの不当な要求は毅然とした対応ができるのか。採算が取れない投資案件を財務大臣が紹介した場合、お断りできるのか。楽天株は半値、トール社のエクスプレス事業は紙くず同然で売却した」と質問した。
 早川常務執行役は「市民社会の秩序を乱すことや安全に脅威を与えることには断固として反対する。2007年の犯罪対策閣僚会議で政府の指針や都道府県の暴力団排除条例に基づき実施する。反社会勢力の違法な要求には暴対法で、社員の安全確保のため組織として対処する。不当要求には適切に対処していきたい」と説明した。
 資産については株主から「アメリカFRBの金利は3回上がり、消費者物価も上昇。円安も進んでいる。ポートフォリオを見ると、関連会社の株式、有価証券がほとんど。資産価値は下がっている訳だが、今後の対応は…」と説明を求めた。
 西口常務執行役は「ゆうちょ銀行株の保有割合が高い。市場環境やアメリカの金利の影響を受け易い経営環境にある。中期経営計画では3事業の強化や新たなビジネスの開拓にも取り組んでいる。強みである郵便局ネットワークにDXを組み合わせ、オープンプラットフォームを構築し、企業に参加してもらう。楽天グループとの協業を通じて、安価で高品質なサービスを提供し、楽天の通販のお客さまにも利用してもらう。新しい事業領域の開拓に取り組み、資産的にも事業収益的にも幅広い立ち位置に立てるよう努力していきたい」と述べた。
 ウクライナ支援切手の発行について「海外ではウクライナを支援する切手が、バルト3国やスペイン、クロアチア、来月にはカナダでも発行される。日本も発行してはどうか。年間のスケジュールが決まっているが、平和を祈念する切手やフレーム切手もあるのでは」と要望。日本郵便の金子道夫専務取締役兼専務執行役員は「現在は計画はないが、次回の計画の中で可能かどうか、検討したい」と答えた。
 配達時の郵便ポスト投かんについて、株主からは「郵便ポストからの盗難はそちらの問題、と言われた。『通信の秘密』の問題もあり、ポストの中にしっかりと投かんしてもらいたい」という要望があった。金子専務執行役員は「郵便ポストにはきちんと投かんするよう、日常的に指導している。正しい投かんを徹底したい」と述べた。
 また「土曜休配だが、繁忙期には例外を設け、土曜も配達したらどうか」「配達が大幅に遅れる所が出ている。郵便離れが加速するのではないか。DMは他事業者が根こそぎ持って行っている。配達日数の短縮を再検討する必要がある」という意見もあった。
 このほか、書面でも質問があった。株主から「増田社長は郵政株を保有していないのはなぜか。保有してもらいたい」との要望に、増田社長は「役員株主会に入会することにより、就任中も保有することが可能だが、インサイダー取引回避の観点から入会時に会社の重要事実を取得していないことが要件となる。2020年1月の就任以来、この要件を満たす機会がなく、入会を控えている。その要件に合致する機会を捉え、入会を進めたい。企業価値向上にインセンティブを発揮できるよう、業績連動型株式報酬制度を導入している。株主と同じ目線を持ち職務を遂行できるものと考えている」と説明した。


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