「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

2022年7月4日第7151号

【主な記事】

再発防止策、効果の検証を
[総務省]モニタリングレポート好評

 総務省は6月17日、「 『日本郵政・日本郵便モニタリングレポート2022』~2021年度事業計画のフォローアップ等に基づく検証~」を公表した。郵政行政モニタリング会合(「デジタル時代における郵政事業の在り方に関する懇談会」の報告書の監督指針に基づき2月に設置)での専門的な議論を踏まえ、総務省が取りまとめた。レポートは、総務省の監督機能の強化や監督の透明性の向上、総務省と日本郵政グループの対話ツールの活用が見込まれている。


ガバナンス・コンプライアンス向上へ

 総務省は、かんぽ生命の保険商品の不適正募集をはじめ、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の保険と投信横断販売問題、切手横領事件、長崎の元局長現金搾取事件など相次いで不祥事が発覚したことを重視し、監督指針を示した。
 これに基づき、郵政行政モニタリング会合が2月に設置され、日本郵政や日本郵便に対するヒアリングや議論を重ねてきた。
 事業計画の認可に当たっては、総務大臣からの要請事項もあり、合わせて昨年度の計画の検証も行った。
 一連の不祥事で問題視されたのは、日本郵政グループのガバナンスやコンプライアンスの強化。それらの取組みをモニタリングするに当たっては「郵便局の組織構造・環境とリソースの制約といった特徴」「本社―支社―郵便局、持株会社と事業子会社、部門間の連携」「個別事案ごとに積み上げられてきた再発防止策の検証」を基本にした。
 郵便局の構造的な特徴として、「郵便局の多くは、郵便局が少人数で運営されており、不正の抑止に重要な内部牽制が必ずしも十分に機能しない可能性がある。このような郵便局の組織構造・環境とリソースの制約を踏まえた上で、不祥事案の防止・根絶に向けたガバナンス・コンプライアンス向上の取組みを強化する必要がある」と指摘する。
 本社―支社―郵便局間の連携では「ガバナンス・コンプライアンスに関する企画検討は主に本社レベルで行われ、本社では相応の施策が取り組まれてきている。これが支社、郵便局にまで浸透し、徹底されることで、不祥事案が防止される。本社で取り組まれた施策が、どのように支社、郵便局に伝達され、理解され、実行されているのかを含めて、フォローアップをしていく必要がある」としており、本社の決定が、組織の末端まで浸透することを求めている。
 持株会社と事業子会社、部門間の連携では「持株と事業会社の役割分担が適切に行われているかについて、各部門内の部分最適ではなく、社内の部門間での意思疎通・連携による組織やグループ全体としての全体最適が図られているかについては、留意すべき視点」としている。
 再発防止の検証では「総務省に報告されてきた再発防止策は、個別の不祥事案ごとに策定され、各部局の取組を網羅的に列挙し、その報告と評価についても、項目のうちいくつが実施されたかといった形式的なものになりがちであった」と問題点を指摘。
 今後のモニタリングでは「これまでに実施されてきた施策のうち何に効果があったかの検証、新たな施策に取り組む際の既存の施策のスクラップアンドビルド、実施されるそれぞれの再発防止策がガバナンス・コンプライアンス態勢全体の中でどのように位置づけられているのか、留意すべき視点」としている。

新しいかんぽの営業体制
課題発生がないか注視
 「着目する郵政グループの取組み」として、「取締役会や経営会議などのコーポレートガバナンス体制が機能しているか」「事業部門のリスク管理態勢のリスクの特定と評価」「管理部門・内部監査部門のけん制機能の強化」「デジタル化によるリスクの低減と検知機能の強化」「現場への着実な指示の徹底」「日本郵政と日本郵便の一体的な運営の推進、連携と役割分担」「データガバナンス・サイバーセキュリティの強化」の7項目を挙げる。
 コーポレートガバナンス体制の機能では、かんぽ生命の保険商品不適切募集では、取締役会への報告で「現場で起きている問題の端緒に気づけなかったこと」があったことから、取締役会や経営会議、社外取締役の役割などが十分に機能しているのかを確認する。
 事業部門のリスク管理態勢では、業務のリスク管理・コントロールの実施状況をみていく。4月から実施されている「新しいかんぽの営業体制」で新たな課題が発生していないかも注視する。
 現場への指示の徹底としては「巨大組織である日本郵政グループは、本社の施策を指示文書で周知しているが、それだけでは現場に浸透しない可能性があることを指摘。本社の取組みがどのように郵便局に伝達され、理解され、実行され、徹底されているのか、その状況を注視していく」。
 事業認可の際の要請項目として、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の株式処分について「ユニバーサルサービス提供責務の履行への影響を勘案しつつ、適切に対応すること」を盛り込んでいる。レポートでは「中期経営計画期間(2021―25年度)で、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の議決権保有割合を50%以下に引き下げる目標を掲げている。ゆうちょ銀行の日本郵政の議決権保有割合は89.0%。同銀行の株式処分を含む目標の達成に向けた、日本郵政グループの取組状況を注視する」。
 日本郵便に対しては「トール社はエクスプレス事業を売却し、収益規模は減少したものの、貨物需要の増加などにより営業損益は増益となった。日本郵便において、今後は、引き続きコスト削減に取り組むと共に、日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換による成長を図っていくこととしており、総務省としてはその取組状況に留意する」。
 郵便法の改正により、土曜休配や送達日数を3日から4日にしたことや不祥事が相次ぐ中での料金値上げについては「郵便の料金・サービスの見直しは、利用者の理解が十分に得られない可能性もある。物価の動向や利用者の受容可能性も踏まえながら、その料金・サービスの水準を検討すると共に、これを見直す際には、利用者に対する丁寧な周知・説明を行っていくことが求められる。総務省としては認可などの手続の際に確認を行っていく」。

総務省、年2回のヒアリング
幹部と定期的に意見交換
 最後に総務省の日本郵政グループの監督強化についても明記した。
 具体的な強化策として「日本郵政グループのガバナンス・コンプライアンス態勢に関しては、個別の不祥事案の発生ごとではなく、平時から定期的な報告を求める。
 概ね年2回程度を目途に、総務省による横断的なヒアリングを実施するほか、日本郵政グループの社外取締役や外部委員会有識者等へのヒアリングも、必要に応じ検討する」。
 「日本郵政株式会社法などの法令に基づき総務省が実施する本社・支社・郵便局などへの検査で、2022検査事務年度以降は本レポートの観点を反映する」「不祥事案の防止・根絶に向けては、各部門単位ではなく、取締役や執行役といった幹部レベルがそのリーダーシップを発揮し、グループや社内を 横断的に把握して取り組むことが重要。幹部レベルでの認識と取組み、総務省としての課題認識等について直接対話するため、日本郵政・日本郵便の幹部レベルと総務省は、平時から定期的に、ガバナンス・コンプライアンス態勢に関する意見交換を行う」。
更に「平時の監督強化について、監督指針を改訂することによって必要な事項を明記し、透明性や公正性の確保を図る。必要に応じ、監督指針を随時見直す」こととしている。


>戻る

ページTOPへ