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2022年7月25日第7154号

【主な記事】

進化する「みらいの郵便局」
実証実験始まる デジタル技術を駆使


 「JPビジョン2025」に盛り込まれている「デジタル郵便局」が「みらいの郵便局」として動き出す。東京都千代田区の「大手町郵便局」で7月14日から実証実験が始まった。リモートで金融相談ができるブースやセルフレジ、デジタル発券機など効率的で快適にサービスが利用できる機器を揃えた。今後は郵便局の大きさに応じて5タイプの実証実験を実施する予定。そこで得られる様々な意見やアイデアを取り入れながら、地域のニーズに合った「みらいの郵便局」に仕上げていく。

 「デジタル技術を駆使し、顧客の不便・不満・不安を解消しつつ、郵便局での体験価値を高める」をコンセプトに、「送る・受け取るをスマートに」「金融の手続をスマートに」「相談をもっと身近に」「贈る・買うをもっと楽しく」を実現する。
 担当の飯田恭久日本郵政執行役・グループCDO(JPデジタル代表取締役CEO)は「実証実験は進化していく郵便局の第一歩。いろいろなアイデアを具現化し、地域に合ったみらいの郵便局を具現化したい」と抱負を述べる。
 「送る・受け取るをスマートに」では、箱や封筒から証紙(切手)までできる「セルフレジ機」や、待ち人数をスマホで確認できる「デジタル発券機」がある。
 セルフレジは、郵便物の重さを自動で量り、必要な郵便証紙(切手)が表示されて購入でき、普通郵便と速達に対応している。レターパックや書留の封筒、ゆうパック用の小箱など8点もその場で買うことができる。セルフレジの隣にはポストが置かれていて、その場で差し出すことができる。
 郵便局では荷物や郵便物の差出とレターパックの購入が同じ窓口になっており、混んでいる場合は、レターパックを買うだけのために長い時間待たなければならないこともあるという。セルフレジの導入により、効率よく買うことができるうえ、郵便局の混雑も緩和される。
 デジタル発券機は、窓口に並ぶための番号札にQRコードがついており、それをスマホで読み取ることで、外からでも待ち人数が確かめられる。社員のタブレット端末にも待ち人数の情報が送られる。窓口の混雑状況が確認できるため、応援のタイミングも判断できる。
 データの蓄積により、どの曜日のどの時間帯が混雑するのか、予測が可能となり、業務運営の効率化につながる。デジタル発券機は2020年12月から新宿郵便局など9局に配備されている。
 「相談をもっと身近に」は、相談ブースでは専門の担当者にリモートで相談できる。セルフタイプ(ボックス型)と店舗社員を交えて行うタイプ(オープン型)の2種類を揃えた。相談は当面、日本郵便の社員が行うが、将来的にはゆうちょ銀行やかんぽ生命の担当者にも参加してもらい、グループ全体で活用できるようにする。
 リモート相談は、保険や投資信託、終活など生活に関わる内容を想定している。「郵便局に来ればいろんなことが相談でき解決してもらえる」と、地域で頼りになる存在を目指す。地域のニーズにもよるが、将来的には医療相談への展開、顧客のスマホやパソコンからのアクセスも視野に入れているという。
 「贈る・買うをもっと楽しく」としては、ロビーにタブレット端末が置いてあり、だれでも使うことができる。ロビーには郵便局で扱う商品も展示されており、気に入ればその端末から購入申し込みができる。
 デジタルサイネージも設置されている。普段はKITTEや大手町プレイスなど郵政グループの関連情報が掲示されるが、非常時には災害情報を掲示する。リラックスして過ごしてもらえるように、ゆったりしたソファーを配置。壁は木目調にした。
 天井にはカメラが設置されており、来客数や顧客の導線のデータが蓄積・分析され、今後のオペレーションに役立てる。
 みらいの郵便局と名づけた理由について飯田CDOは「中計ではデジタル郵便局としていたが、機械的なイメージを持たれることもあり、みらいの郵便局とした。郵便局の強みはリアルの郵便局やそこで仕事をする社員。デジタルと掛け合わせ、みらいの郵便局を実現したい。今できてないサービスをデジタル技術でできるようにする。物理的に郵便局でないとできないサービスもあるが、多くのサービスをスマホやパソコンで365日24時間、利用できるようにしたい」と抱負を語る。
 今年度は準備期間という位置づけ。2023年度はプロトタイプを作り、実証実験を行う。地域や大きさによってニーズが違うことからより実情に合ったものにするため、「都会のビジネス街の郵便局」「都会の商業地にある郵便局」「地方の商業地の郵便局」「地方の住宅地にある2~3小さな郵便局」「地方の中規模郵便局」など5か所の郵便局で実施予定。
 飯田CDOは「お客さまがそのサービスを使い、便利になったと思っていただけることが重要。全国画一的に展開するのではなく、地域に合わせて柔軟に展開したい」と話す。
 2024年度から実装していく計画。中計は2025年までだが、次期中計期間の準備として先を見据えた投資も行う。実装は段階的に行い、2026年、27年になる郵便局もある。
 JPビジョン2025の投資予算額は、窓口業務運営のデジタル化が100億円、共創プラットフォームが100億円となっている。


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