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2022年7月25日第7154号

【主な記事】

福嶋浩之副会長(全国郵便局長会)に聞く


 東京地方郵便局長会の福嶋浩之会長(東京多摩南地区会長/八王子並木町)は5月22日に開かれた全国郵便局長会(末武晃会長)通常総会で副会長に就任した。郵便局長として大事にすべきものは、いつにあっても「地域と郵便局の関わり」と「郵便局で働く社員」。そして、時代の変化に合わせて新しい事業分野や新しい手法を取り入れること。そのために、会員の声に耳を傾け、より風通しの良い組織を目指して取り組むと語る。
=インタビュー・編集長 奈良一彦=

東京は全国の縮図
「お客さまのために」を大切に

■まずは全特副会長としての抱負を聞かせてください
 抱負といいますか、私の一番の役目は、会員一人ひとりの意見をしっかり聞き、解決すべき課題を全特役員会や会社に意見具申していくことだと考えています。
 今は、コロナの関係で対面での意見交換がしづらい状況にありますので、時間外にZOOMでいろいろな意見を聞くようにしています。
 若手、中堅、ベテランなど、ある程度グルーピングしながら、それぞれの世代が抱える課題等を聞くようにしています。東京会で聞いた内容を、全国の皆さんとの意見交換の場で役立てていきたいと思っています。
 ZOOMですと移動の手間もなく、話す時間もその分多く取ることができるなど、よい面がありますね。また、時間外に自宅などでリラックスした状況で自由に発言してもらうと、話が弾み会員の皆さんがどのような考えをお持ちなのかということがよくわかります。
 普段、なかなか会えない会員の皆さんと話をすることができるので、今後も続けていこうと思っています。
 また、全特では、これまでも役員が全国各地の地区会を回り、会員の皆さんから話を聞く機会を設けてきましたが、風通しのよい組織づくりに向け更に増やしていこうとしています。これまでお邪魔した地区会では、その地域特有の悩みがあるのはもちろんですが、全体で共通のものがあったりと大変興味深いですね。
 私のいる東京という場所は、全国の縮図だと思っています。人が住んでいないオフィス街もあれば、多摩地域のような自然と都会が融合しているところもありますし、島しょ部や過疎に悩む地域もあります。そのため、環境が異なる地域の方であっても理解できるような内容を発言するように心がけています。

■長く郵便局長として勤務されています。また2007年10月の民営化から間もなく15年になります。激動とも言える時期を越えられてきたと思います。
 郵便局経営にあたり、どのようなことに心を砕かれてきましたか。
 局長として一番に考えていかなければならないことは、地域と郵便局の関わり、郵便局で働く社員、この二つが大事だということです。確かに民営化により翻弄されてきましたが、民営化されようが国営だろうが、それぞれの地域に郵便局があって社員がいて、そこにお客さまがいらっしゃるという構図は変わりません。それさえ押さえていれば、進むべき方向を間違うことはないと思います。
 郵政省時代に、「だから親方日の丸はダメなんだよ」と言われたことがありました。私にとって一番言われたくない言葉でした。今でも「お客さまから『国営だった頃のことが抜けてないね』と言われた」と耳にすることがあります。正直、それが一番辛いですね。国営か、民間かという組織形態の問題ではなく、「お客さまのために働く」ということが大切です。「お客さまのために働いていない」と言われたら、我々はきちんと反省しなければならないと思っています。

■社員を大事にという話がありました。最近の社員の中には、積極的に昇職を望まない者がいたり、地域基幹職と一般職といった垣根があったりで、社員育成もご苦労が多いのでは。
 郵便局を維持、運営する上で、社員のモチベーションを維持することはとても重要です。問題は、一般職から地域基幹職に転換できる人数枠が限られていることです。今は昔以上に社員一人ひとりの価値観が大きく異なっています。入社時には、転勤を伴わない一般職を望んでいても、仕事をしていく中で管理者を目指す社員もいます。そのような場合は地域基幹職に転換する必要がありますが、その人数枠が限られているため希望を適えられない社員がたくさんいます。やる気を持った社員が、その能力を生かせるポジションで働けるような職場でなければ、「お客さまのために働く」ことはできません。
 また、自分は今のままの役職でいいと考えている社員もいます。そういった様々な考えを持った社員を一つにまとめ、より良いサービスをお客さまに提供していくためには、管理者としてのコーチング能力を高めていく必要がありますし、粘り強くコーチングしていくことが大事だと思います。

■局長会として地域の清掃活動に取り組まれています。地方会全体で取り組んでいるのは全国でも珍しいと聞きました。
 東京会では全国初の試みとして、去年の10月から毎月第二土曜日を地域の清掃活動日として取組みをスタートさせました。
 当時、かんぽ問題など郵政に関わる様々な問題が取りざたされていたため、「我々局長が地域のためにできることを始めよう」と、役員会で検討し実施することを決定しました。最初は、郵便局の赤いビブスを着るのが恥ずかしいという局長さんもいましたが、清掃活動を続ける中でお客さまから激励や感謝の言葉をいただき活動を続ける励みになりました。また、ポストをきれいにするのも、我々の役目の一つだということも、続けていく中で定着してきました。
 活動を重ねるごとに、単マネ局や東京支社の皆さんも参加される方が増え、今では局長夫人会の皆さんも参加しています。無理なく、長く続けることが大事なので、参加できる時に参加できる場所で、みんなで汗を流してもらえればいいと思います。この活動が長く続き「東京の郵便局が毎月第二土曜日に地域活動をしている」と、普通に言われるようになれば良いと考えています。

■包括連携協定が全国で広がっています。今後の方向性、特に東京ではどのように進めていくべきとお考えでしょうか。
 東京会は東京都と包括連携協定を結びたいとの強い思いを以前から持っていました。その思いを持ち様々な活動を続けてきた結果、東京都と具体的なお話もできるようになり、締結に向けてスタートをしたというところです。
 私がいる東京多摩南地区では2019年3月の八王子市との締結が最初でした。包括連携協定の締結は、地域にお住まいの方々に対し、郵便局としてどのような貢献ができるのかを行政と一緒になって探ることが重要なので、定期的に打合せを行い具体的な実施項目について真剣に議論しています。
 郵便局の収益だけを考えるのではなく、郵便局が持つ公益性も考える必要があると思います。公益性と収益性のバランスを考慮した上で、しっかりと判断していかなければならないと思います。

■デジタル郵便局という構想がありますが、まだ馴染みが薄く、お客さまは社員がいるリアルな郵便局に信頼を置いているようです。この点については、どのように感じられていますか。
 デジタル郵便局は「お客さまが便利になる」「郵便局で働く社員も仕事が楽になる」、この二つのキーワードが不可欠です。例えば、郵便局にお見えになったお客さまの購入履歴や保有商品等の情報が瞬時に得られるようになり、ご本人の志向にあった、より的確な商品案内ができるようになることが理想形だと思います。
 また、本人確認をマイナンバーカードで行うようにすれば、郵便局での手続きもスムーズになるでしょう。そのためにも国が進めるマイナンバーカードの普及も行政と連携し、お手伝いしていくことも必要だと思います。マイナンバーに関しては郵便局でも電子署名ができるように法改正もされており、デジタル化の流れは一層進むと思います。
 デジタル化と言っても、導入時の研修に時間がかかるような難しいシステムでなく、簡単にできるスマホのアプリのようなものの応用を考えていくべきだと思いますし、業務上の事故、ヒューマンエラーというものは必ず起こりますから、そういうものを自動でチェックし防止できるシステムでなければならないと思います。

■座右の銘、好きな言葉を教えてください。
 私は、「不易流行」という言葉が好きです。実はもっと好きな言葉があります。その言葉は「逃げるな」です。「何か問題があっても絶対に逃げない、逃げたいけど逃げない」、自分がふと後ろ向きになりそうな時、立ち止まりそうな時には「逃げるな」という言葉を頭に浮かべ、前に進むようにしています。

■全国の会員の皆さんへメッセージをお願いします。
 全特は、会員の処遇改善などの取組みが重要だと思います。会員の処遇改善等に対する声をしっかり聞いて、それを会社に持っていく、そういうことだと思います。
だから、どんどん意見を出していただきたいです。ツイッターやフェイスブックで不平や不満をつぶやくのではなく、直接、全特や私に言っていただければ、もっと早く会社に持っていけると思います。もっともっと風通しの良い組織を目指して頑張っていきたいと思います。


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