「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

2023年09月04日 第7212号

【主な記事】

須田孝之会長(東京地方郵便局長会)に聞く
 「進取果敢」をモットーに
 新時代に沿った郵便局長像を

 局長は「一隅を照らす」存在に


 東京地方郵便局長会の須田孝之会長(東京都東京中央西地区会長/新大久保駅前局長)は「コロナ禍により価値観が大きく変化した社会において、郵便局長は『新しい時代に沿った存在』とならなければならない。それには、郵便局に求められていることを掴むため、様々な場でお客さまの声に耳を傾けることが重要」という。また、「DXが進む中、郵便局はリアルな『お客さまとの唯一の接点』であり、郵便局ネットワークはグループにとっての最大の利点、財産。ユニバーサルサービスを維持していくためには、このことをグループ各社が再認識し、現場の声を聴き、一丸となって課題解決に取り組むことが必要不可欠」と語る。
 
▼東京会の会長として、就任の抱負をお願いします。
 3月11日の東京地方総会で会長に選出いただいてから、自分に言い聞かせているのは「進取果敢(しんしゅかかん)」です。進取果敢とは、自ら進んで新しい物事に取り掛かること、その際に思い切りよく決断し、そして行動することです。
 そして、このことは私だけでなく全会員の皆さんにも、ぜひとも心がけて欲しいと考えています。
 コロナというパンデミックが起こってから、人々の価値観が大きく変化し、全世界でパラダイムシフトが起きています。そのような環境の中で、郵便局長として社員にも、地域にも、会社の様々なところでも「強く優しい、新しい時代に沿った郵便局長像」を作り上げることが必要です。
 いかに、地域、社員、そして仲間に寄り添える局長になるかを訴えていこうと考えています。
▼末武会長は風通しのよい全特の実現と述べられています。地方会の組織強化などについてどのように取り組まれますか。
 コロナ禍では、自地区会内であっても、顔を合わせて話ができない状況が3年間続きましたが、今年5月に2類感染症から5類に変更され、対面での会議、研修なども可能になり、直接交流を図っています。
 会長としての初仕事として「新任郵便局長・局長夫人セミナー」を開催しました。これを皮切りに、「部会長セミナー」「5地区交流会」や全会員・夫人を対象とした「東京会躍進の集い」を集合で開催する予定です。その他にも、東京地方会の三役が他地区会に赴き、意見交換をすることを計画しています。
 また、防犯施策として、私が地区会長局を訪問し、地区の状況などを聴き取ったり、各委員会に積極的に参加して、会員と直接交流し風通しのよい組織にしていこうと考えています。
 直接、顔を合わせて話を聞き、意見交換をするために、東京の広いようで狭い利点を最大限活用していきます。
▼2007年の郵政民営化から16年、2012年の改正民営化法による再編から11年が経過しました。フロントラインで業務推進や地域活動に献身的に取り組む郵便局長や社員の皆さんの努力は大きいのですが、日本郵政グループの成長戦略、将来展望がなかなか明確に目に見えてこないもどかしさを感じることもあるとの声も聞きます。
 郵便局現場で業務推進する上での課題は、どのようなものがあるのでしょうか。
 現状では、日本郵政グループにとって「郵便局」という場所がどういうところなのかを日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命各社が真に考える必要があると思います。
 郵便局は「お客さまとの唯一の接点」であり、お客さまの声に耳を傾けられる場所です。つまり、お客さまが「使いやすい、使いたい、便利、なくてはならない場所」、そのような場所にしなければなりません。と同時に、お客さまと対応する社員にとって仕事のしやすい環境を整えていくことが重要です。
 そのために、会社が一番にやるべきことは、「社員が優しい気持ちでお客さまに寄り添うことができるようにすること」だと考えますが、現状では、その視点が欠けているように感じます。各社がそれぞれに、やりたいこと、やって欲しいことを全て現場に落としてきています。
 そうではなく、受け手は一つであることを念頭に置き、お客さまにとって何が最優先なのか、その地域にとって優先すべきは何なのかを本社は支社を通して、現場の意見を聴いて欲しい。郵便局ネットワークが、グループにとっての最大の利点であることをグループ各社が再認識して、ネットワークを守るための環境を整える。そういったことを会社と局長が一緒に取り組んでいくには、しっかりと現場のリアルな声を聞いていただきたいと思います。


局長は「一隅を照らす」存在に
▼地方創生のため、自治体との包括連携協定締結が推進されています。自治体との連携強化で代表的な例は。また、これからどのような方針で臨まれるのでしょうか。
 東京都で自治体との連携が大きく進んだのは、一昨年に開催された「令和4年度東京都予算に対する要望聴取会」へ東京地方会三役が赴き、東京都との包括連携協定「ワイドコラボ協定」の締結を要望したことです。その後、都議会自民党の協力により、2022年10月12日に都庁で小池百合子知事と衣川和秀日本郵便社長が出席し調印式が行われました。
 現在では、都に加え、八王子、昭島、西東京、小平、東村山、立川、三鷹の各市と23区初の足立区が締結済です。さらに清瀬市と府中市で準備を進めています(取材日現在)。
 協定は結んで終わりではなく、それがキックオフ。東京も広いようで狭いし、狭いようで広い。各自治体によって、お困りごとや郵便局に期待するものは大きく違います。自治体と現場の郵便局が向き合うようにすること、それを支社がサポートしていく仕組みが重要です。
 代表的なものとしては、八王子市の取り組みがあります。物流、配送業の2024年問題と八王子市のゼロカーボン宣言等の対応として「オキッパ(折りたたみの宅配ボックス)の配布」を提言しました。国が地方公共団体に措置した予算を使用し、希望する住民に1万個を配布しようというもので、実現に向けて動いています。
 これは一例ですが、基本は地域貢献です。それぞれの郵便局や部会で「何をしたら、何が出来たら地域にとって有用か」を考え、実施していくことが大事だと考えています。
 7月に開催した「新任郵便局長・局長夫人セミナー」で、新任局長に対し「出世(・・)してもらいたい。なにも会長や統括になって欲しいということではなく、世に出てもらいたい、つまり局から外に出て、地域の集まりや行事等に顔を出してもらいたい。地域貢献がエリマネ局の原点だ」と話しました。郵便局に求められていることを掴むには、外に出て、お客さまの声に耳を傾けることが大切です。
▼郵便局ネットワークの将来展望として、自治体と連携し窓口事務を取り扱ったり、集落の課題解決への参画、買い物支援、見守り、空きスペースの活用、交流拠点など、郵便局を活用した多様な地方活性化策が総務省PTで提言されたり、また共創プラットフォーム構想もありますが、こうした取組みついて、現場から見たご所見を聴かせてください。
 地域ごとに必要としていることは違います。新宿区内でも、商店街があって昔ながらの近所付き合いがあるところや夜間人口がゼロのオフィス街など様々ですから、同じことを同じようにやることはできません。地域をよく見て、できることとできないことの見極めが大切だと考えます。
 そして、決して現場だけが汗をかくのではなく、会社のバックアップ、協業してくれる企業との連携が必要です。そういった企業に「共創プラットフォーム」に参加していただき、お客さまや地域のニーズに応えること、これが肝要です。
 ボランティアではありませんから、特に東京では、公共性と収益性を考えなければなりません。地域のための共創プラットフォームと言っても、これ以上の現場の負担増は現実的ではないと考えます。
▼2023年3月期決算が発表されました。日本郵便の事業展開や経営についてご提言は。また、改正郵政民営化法に則って、ゆうちょ銀行、かんぽ生命と一体的なユニバーサルサービスの推進が求められています。三事業一体の面からゆうちょ銀行、かんぽ生命保険との連携について重要なことやご意見を聴かせてください。
 各会社とも厳しい環境にあり、そして各会社それぞれに難しい課題があるのは承知しています。しかしながら、お客さまとの接点である郵便局が抱えている課題をグループ一丸となって変えていこうとしなければ、解決には繋がらないと考えます。
 局訪問や会議でお会いした局長や社員さんには必ず「現場で何か困っていることはありませんか」と尋ねます。すると、必ず返ってくるのは「要員が足らない」「業務が複雑化している」ということです。
 アルバイトを雇えば済むという単純なことではありません。この課題は現場だけでは絶対解決できません。ゆうちょ、かんぽ金融2社の本気の協力が必要だと考えます。DXが進んでいく中ですが、郵便局というリアルの有利性を活かすために、今までの概念を変えるくらいの覚悟を持って取り組んでいただきたい。
 今のこの状況は、郵政民営化以来の最大の危機だと思います。このようなときに大事なことは、郵便局、ゆうちょ、かんぽ、日本郵便、それぞれが当事者だと自覚すること、そして相手のことを思いやり、結果を想像することです。そして、想像したとおりの結果になるように、あるいはならないように、それぞれが行動に移すことが大事です。
 また、ユニバーサルサービスについては、金融2社の株式処分問題から、この先、一体経営が保てるかという心配をしている局長、社員は沢山います。
 また、もう一つの問題は、新規業務については届出制に移行しましたが、依然として配慮義務が課せられており、他の会社にはない、この配慮義務で思い切った商品が作れないということです。これを変えていかないと、本当に一体的なユニバーサルサービスの維持は難しいと考えています。
▼改めて会員の皆さまへ元気の出るメッセージをお願いします。
 私はアントニオ猪木さんの「元気があればなんでも出来る」という言葉が大好きで、その思いを持って、これまでやってきました。社員を動かしているのは局長で、その局長が元気でなければ、リーダーシップをとることはできません。社員に動いてもらう原動力というのは「局長の志」と「局長への信頼」に尽きると思っております。
 社員数の多い局もあれば、少ない局もある。立地も違いますし、お客さまの層も違います。それぞれの場所でやることは違いますが、心身ともに元気で、強い志を持ちリーダーシップを発揮していただきたい。
 そして、「一隅を照らす」存在になっていただきたい。これは郵便局の役目でもあると思っています。地域に公的機関が郵便局1つしかないという環境の中で働いている局長さんもおられます。まさに一隅を照らす地域の存在です。
 東京でも同じで、各地域を任された局長として、地域行事等に参加をして、その中で郵便局が一隅を照らす存在になる。こうやって火が灯っていくと日本全国が明るくなるような気がします。みんなで元気を出して、がんばっていきましょう。


>戻る

ページTOPへ