「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

2023年09月11日 第7213号

【主な記事】

「この味を待っていた」
千葉県南部連絡会 幻のソースが復活

ソースを手にする松本さんとチラシを持つ志保沢局長


 「焼きそばに合う」「あじフライがとても美味しくなる」「この味を待っていた」―。ふるさと小包として千葉県南部地区連絡会(山口義続統括局長/七浦)の各局で7月24日から取り扱いが始まった「インディアンソース」が地元で大きな話題を集めている。


 「小さい時はソースといえばサラサラなウスター(インディアンソース)」と志保沢直希局長(木更津幸町)が語れば、白石公一局長(木更津大久保)が「焼きそばを焼いて焦げた時の香りがすごい。本当に屋台の味。台所が屋台になります」と太鼓判を押す。
 「懐かしい」「あの時の味だ」と地域の皆さんは口々に語る。富津や木更津、君津などの上総地域では、インディアンソースは各家庭の食卓に普通にあった。また、地元のお祭りの焼きそばの屋台でも、よく使われていたという。
 1746年創業の製造元「カギサ醤油」が2003年に廃業して以来、商品が手に入らなくなっていたことから、「幻のインディアンソース」とも称されている。257年の歴史を持つカギサ醤油は、醤油メーカーとして日本で初めてウスターソースを作った。それが今からちょうど100年前の1923年のこと。100年目の今年の7月にふるさと小包としての取り扱いが始まった。
 復活劇の立役者は地元の農業法人、株式会社アフリット。「このソースで育って来たというお客さまが珍しくない」と取締役の松本洋俊さん。「かつて、親、子ども、祖父母で囲む食卓にはいつもインディアンソースがあった」と懐かしむ。
 粘度が低くサラッとしているオリジナルのウスターソース。12種類の希少スパイスを贅沢に使用。スパイシーだが甘みもあってさっぱりしている。後味も良いと昔から定評がある。往年のインディアンソースのことを覚えているシニア世代、55歳以上の男性がメインのお客さま。
 商品バリエーションはオリジナルとレーズンソースの2種類。レーズンはオリジナルの味をベースにレーズンのコクと甘みをプラス。とんかつやチキンカツなどの揚げ物の衣によく馴染むように粘度が高い。女性の受けが良く、購入する年齢層も低い傾向にある。
 現在ブルーベリーソースを開発中で、年内にも店頭に並ぶという。アフリットが栽培しているブルーベリーが材料。アフリットはインディアンソースのロゴの商標登録を取得したことから、今後はドレッシングやドリンクなど、ソース以外の多品種展開を計画しているという。


 縁が重なった復刻までの道
 インディアンソースは紛れもない庶民の代表格の味だが、由緒の正しさも併せ持つ。ドラマの題材ともなった、天皇の料理番として知られる秋山徳蔵氏の目に留まり、在りし日のカギサ醬油は宮内省(現在の宮内庁)御用達になった。
 復活を遂げるまでにいくつもの偶然が待ち受けていた。建設・不動産を営む、アフリットの親会社の株式会社ケンソーは地域密着企業として、カギサ醤油の土地と建物、インディアンソースのレシピを数年前に譲り受けた。
 その数年後、経営に参画した松本さんが加工食品のOEM展示会で、ソースメーカーに出会いソースに関心を抱いた。松本さんが帰社後に報告した際に、初めてインディアンソースのレシピを会社が保有していることを知った。
 取引先から相談を受けていたレーズンの使途を考えていた親会社は、レーズンを原材料とする新たなソースの開発も含めて、インディアンソースを復刻することを決めた。
 待ちに待った復刻の日は2022年の5月。松本さんは、製品開発と販売の責任者として奮闘し、1年の月日を掛けて開発。とりわけ味の再現には苦労したという。完成後に「どのように販売していこうか」と思案し、焼きそばをテーマにした販促イベントを開催するに当たって相談したのが「木更津焼きそば」。
 木更津焼きそばは、地元の知る人ぞ知る名物店。店主は、子どものころからインディアンソースが食卓に当たり前のようにあり、お祭りの屋台で食べていたインディアンソースの味が舌に染みついていることから、一念発起して、焼きそば店を開店したほどの情熱を持っていた。
 しかし、目当てのインディアンソースは販売が終了しており、当然ながら手に入らなかった。いろいろなソースを全国から取り寄せて試行錯誤している中、ある日松本さんがインディアンソースを持参して訪ねると、驚いた様子で「なぜあなたが持っているの?」と聞いたそうだ。早速、店主がインディアンソースを使って焼きそばを作って試食したところ、「そう。この味!」と太鼓判を押した。
 松本さんは「発売当初は、売れるかどうかが不安だった。昔の味を知っている根強いファンもいたので、そういうお客さまの期待を裏切らないようにしたいという思いがあった。販売開始後1年を経過し、皆さんに受け入れられたと考えている。口コミから評判が広まり、地域に愛される商品として認められ、本当に安堵している」と語る。
 南部連絡会は、インディアンソースの復活を後押しするように動いた。志保沢局長は、木更津部会(鶴岡俊之部会長/木更津桜井)の郵便・物販担当副部会長。2021年に関東支社の無人販売の施策を利用して、プロサッカー選手のカレン・ロバートさんがオーナーのローヴァーズFCへ施策を持ち掛け、グッズの無人販売を展開してもらった。
 これを見たケンソーの専務が、当時開発中のインディアンソースが完成したら、取り扱ってもらえないかと打診。これがきっかけとなり、復刻した2022年から無人販売で取り扱うことになった。郵便局を訪れた多くの人がインディアンソースを見つけた途端、立ち止まり喜んだという。
 その後、志保沢局長は3日間の局長交替制で木更津市の隣、富津市の青堀郵便局に行くことに。青堀はカギサ醤油の社屋があったお膝元、取り扱いの話を持ち掛けた。青堀での販売はもちろん好調だった。「皆さんに喜んでもらえるなら、と設置の要望があった木更津市、君津市内の6局でインディアンソースを置くことになった」。
 志保沢局長は「無人販売で地域の皆さんに喜んでもらえた。今回ふるさと小包として販売されることになり、各局にパンフレットを置くことによって知名度もより高まる。出だしは順調。無人販売を展開していた時に、多くのお客さまがインディアンソースを見つけて驚き、喜んでくれた。郵便局で購入できるようになれば、地域の皆さんの幸せに繋がる」と話す。
 以前、デザイン関連の仕事に就いていた志保沢局長は、立体的な販促POPを作成した。白石局長は「まさにプロの仕上がり」と称賛する。印刷用データを全局に送り、さらなる販売の支援を模索しているところだ。


>戻る

ページTOPへ