「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

2023年10月16日 第7218号

【主な記事】

不動産事業は第二の収益源
郵便料金値上げも検討
日本郵政 増田社長

 日本郵政の増田寛也社長は、9月29日に東京都千代田区大手町の本社ビルで開催した定例会見で、収益の拡大を図るための方策に関する質問について、不動産事業をはじめとする新事業、物流シフトによる競争力強化、金融2社からの収益確保等を柱に挙げ、「収益を確実に上げていくためには今まで主に取り組んでいた分野プラス新しい分野への取り組みをきちんと成功させることが必要」と述べた。
 
 増田社長は「(新規分野は)まず不動産事業。好立地のところに不動産を保有しているが、容積率等々を見ても徐々に活用しているという状況ではない」と述べたうえで、現在、会計上「郵便窓口事業」にセグメント分類されている不動産部門を独立させる方針を示した。収益の柱にしていくために、さらに取り組みを強化していく。
 一方「不動産開発のため、投資事業になるので、グループ内の体制強化と不動産資産の活用が必要となるが、ケースによってはグループ外の土地も取り込み、不動産を第二の収益源として強化していきたい。グループ外の不動産については他社デベロッパーと共同での取り組みとなる」との見通しも示した。
 コアとなる郵便・物流については「コアビジネスといわれているものの中で、大事なのは日本郵便がどれだけ競争力と収益力を高められるかということ」と強調した。
 そして「郵便・物流の分野では、年末の販売では15億枚を割る見通しの年賀状をはじめとした郵便物の減少傾向が著しく、物価高騰によるコスト増などから、値上げの検討をしている。値上げのお願いをしつつ、郵便の収益も改善していくと同時に、やはり我々が持っている全体の資源のシフトを物流の方へ移し替えていく」との方針を述べた。
 「激しい競争だが、荷物をより多く取る。そこをテコに収益を持ってきたい」との考えを示し「新たな発想で、例えばポストの有効活用、それから2輪で機動的に運べるような商品を開発する。それで物流の収益を上げていく。こちらの分野では競合するのは大きなところでは、ヤマト運輸、佐川急便。協力するところは協力するが、料金体系などによって収益力を高めていく」との方向性を語った。
 競合が激しい、ゆうパックなどの主力商品の分野では、基本料金が10月から引き上げられる(ヤマト運輸や佐川急便は4月からの引き上げ)。
 楽天市場の商品の配送受託について「楽天グループとの提携前は、ゆうパックの中で楽天関連のものが7.5%ほどだったが、現在では12%くらいまで割合が上がってきている。これをもっと上げていこうと思っている。その取り組みも大体、道筋が見えてきた。ゆうパックの個数を増やし、収益増加に繋げたい」と述べた。
 また、持ち株比率の低下による配当収入の減少は否定できないものの、急激な円安傾向等厳しい経済環境下にある中でも確かな運用等によって、ゆうちょ銀行やかんぽ生命の収益増を望むとともに、公共公益的分野の収益化の可能性にも期待を寄せた。
 増田社長は「公益性と収益性をどのように両立させるかは難しい問題だが、できるだけそのバランスをよく見ながら、公共公益的な役割を十分果たして収益を上げて行きたい」と述べた。


>戻る

ページTOPへ