「通信文化新報」特集記事詳細
2023年11月06日 第7221号
【主な記事】柘植芳文参議院議員インタビュー
郵便局の原点に返ろう
岸田文雄内閣改造で総務副大臣を退任した柘植芳文参議院議員、任期中は海外出張も多く多忙な日々を過ごしたが、総務省を挙げて初めて「郵便局を活用した地方活性化方策検討PT」を立ち上げた。住民の最も身近にある郵便局を活用、地方に活力を取り戻す多くのメニューを提言した。また、2万を超える郵便局が、全国一律で同じサービスをする時代ではないとし、地域性に合わせてサービスの多様性を図り、収益を上げる構造を作る必要があるとする。さらに、少子高齢化、過疎化が進む現在、公共サービスが届かないところが多く出てくると指摘、国として公共サービスを明確に定義し、日本郵政グループが契約によって安定的に提供をしていく仕組みの必要性を強調した。そして、民営化から16年が経過し、政治として郵政事業の総括を行い、現在の4社体制から、日本郵政と日本郵便が一体となり、ゆうちょ銀行、かんぽ生命を傘下にする3社体制に見直すことも求められるとの考えを明らかにした。日本郵政グループで働く人に対しては、「郵便局の原点に返るべき」とし、「地域を元気にするということに、改めて思いを寄せて欲しい。それは一にも二にも、郵便局自体が元気を出すこと」と期待を語る。
信頼を保ち続ける
地域の活性化に大きな役割
■国会議員として10年、また今般は約1年にわたり総務副大臣を務められました。総務副大臣の在任中は「郵便局を活用した地方活性化方策検討PT」などが立ち上がり、郵便局窓口でのマイナンバーカードの普及や行政サービスの拡大等についての施策展開に尽力されました。
郵政省に入り、長いこと郵便局という現場で仕事をしてきた。退職して、解放されたという気持ちで、のびのびと過ごそうと思っていたが、様々な事情があって国政選挙に出ることになった。国会議員になっても極力、行政の立場での職は受けず、自民党の中で、郵政事業を支えていくと考えていた。
しかし、多くの皆さんから行政にもしっかりと関わっていかなければならないとの意見をいただき、局長会の会員の皆さんの声もあり、責任を果たしていかなければと思った。
また、郵政事業を外から見て、問題点を指摘してきたが、民営化になって16年を経た郵政事業を政府はどう見ているかというと、国会で質問しても通り一遍の回答しか返ってこない。それでは、行政はどのように考えているのか、内から見ることも必要と、総務副大臣の話が出たときに、テレコムと郵政を担当させていただければ受けましょうと答えた。政府の内から見た郵政事業を検証しようとの気持ちが強かったので。
総務省の郵政関係のセクションでは、想像した以上に郵政事業の実態が理解されていないと感じた。民営分社化以降のグループ各社の形態の推移にもあまり関心がなかったし、問題点も分かっていなかった。民営化は非常に奇怪な法律を作って進められたものなので、国民も自民党の議員の皆さんも含めて、外からは郵便局は何も変わっていないように見える。
外形的には郵便局が各地にあって、郵便局はなくさないとなっているし、実際に極端に郵便局の数は減っていない。三事業一体の窓口が存在して、地域に郵便局があるから何も変わってないと多くの人は思っているし、監督官庁の総務省もそれと同じように見ていた。民営化から16年が経ち、働く皆さんの将来展望、郵政事業が本来果たしていく役割をどういう形で成長させていくのか、民営化に喧伝された理念から離れていないか、そういうことを考えると乖離を感じざるを得なかった。
一気に解決することはできないが、総務副大臣として郵政について話す機会が多くなった。最も多かったのは自治行政局とで、郵便局が果たしている役割について話した。自治行政が抱えている「地方の疲弊」の問題、政府もこれには幾度となく政策を打ち、何とか活性化を図ろうしてきたが成功していない。
急速に進む少子高齢化、過疎化、都市部と地方の格差拡大、遅れているデジタル化など課題が山積している。住民の最も身近にある郵便局と力を合わせて、地方が何とか活力あるようにできないかと、総務省を挙げて初めて「郵便局を活用した地方活性化方策検討PT」を立ち上げた。
自治行政の担当者と様々に議論し、郵便局長が地域の中でどんなことを行っているか実例を話した。総務省が抱えている地方の課題とかなり一致するものがあり、既に郵便局長が積み重ねてきているとの話をした。郵便局が非常に行政に近い所にあると感じたと思う。様々なメニューを出してきて、一緒に力を合わせようとなり、非常に大きなことであった。
また、郵政関係を含め四つの審議会があり、民間の方や有識者と話をする機会を得た。感じたのは、皆さんがイメージする郵便局は、郵便配達をしている大きな郵便局(以前の普通局)ということ。窓口のみの小さな郵便局のことは、ほとんど分かっていない。しかし、郵政事業を支えているのは、最も根っこにある小さな郵便局、以前は特定郵便局と言っていたが、ここが地域と一体となって様々なことに取り組んでいるという話をしたところ、行政との協力も多様なことができるのではないかとなった。
皆さんとの話の中では「郵便局は強みがある」という言葉がいつも出てくる。強みというのは「地域のお客さまから郵便局は信頼されている」ということ。地域の皆さんが信頼するということは、「信頼に値することを地域の中でやっているから信頼される」ということである。
局長は転勤がないことが問題との批判も一部にある。しかし、転勤せずにその地に根づき、腰を降ろして地域の方々と一緒に物事を考える土壌を作っていることが、郵便局への信頼につながる。それが郵便局の強みだという話を何回もしてきた。
すると、審議会の皆さんの中には「今は民営化して十数年で、まだ郵便局にはブランド力がある。しかし、これがなくなってしまうと弱みになる。今、強みがあるからといって、いろいろなことを行政がお願いしているが、これらが全て崩れてしまうのではないか。民間企業なのだから、その強みがいつまで担保できるか分からない」と言う方もいらっしゃった。
そうしたふうに見られているように、三事業をベースとしながら先輩の局長の皆さんが行ってきた地域活動が、本当に昔のように根づいているか、民営化されたがために会社が公共的な仕事から抜け、収益を上げていくのだという方向に舵を切ったこともあり、現場の局長さんたちの心が原点から離れていくのではないかと、非常に心配している。
局長会にとっても極めて大事なことで、強み、信頼を得るベースをいかに保っていくか、改めて問われていると思う。地域の活性化では、郵便局が非常に大きな役割を担っている。
2、3面につづく
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