「通信文化新報」特集記事詳細
2023年11月20日 第7223・7224合併号
【主な記事】
かんぽ生命保険
谷垣邦夫社長インタビュー
郵便局ブランドに支えられた一体経営を
伝統ある大事業の再生へ
6月の株主総会を経て、かんぽ生命の取締役兼代表執行役に就任した谷垣邦夫社長。かんぽ問題は落ち着いたものの、いまだに尾を引いている。社員のメンタル改善と落ち込んだ業績アップが課題。谷垣社長は「3事業一体経営が郵政グループの強み」として、日本郵便との連携を深める方針だ。日本郵政のかんぽ生命株式保有比率が50%を切り、新たな局面を迎えた。介護関係の新保険の開発や海外でのビジネス展開も視野に入れ、動き出す。課題解決や新たな取り組みについて聞いた。(永見恵子)
伝統ある大事業の再生へ
■就任以来、4か月余りが経ちました。就任時の気持ちと現在の感想について聞かせてください。
かんぽ生命は募集問題以降、募集品質の改善に取り組んできましたが、未だに営業が回復していない状況です。社長就任の打診をいただいた時は、かんぽ生命の再生に全力で取り組まなければならない、100年以上続く伝統ある大事業を何とか再生しなければならないと、身の引き締まる思いでした。
2019年12月の業務改善命令に加えてコロナ禍もあり、低迷の時代が数年続きました。着任して4か月余りが経ちますが、このような状況を抜け出し、明るい未来に向けて一歩を踏み出したいと考えています。
■これまでのご経験とかんぽ生命やグループの在り方は。
かんぽ生命だけでなく日本郵政グループの各社を経験してきましたので、各社の状況や特性を把握していることも、私の強みの一つです。
日本郵政グループは、人が生まれる前から亡くなった後まで、ずっと、一生に寄り添って、必要な金融サービスやお手紙、物流サービスを提供しています。トータルで人の一生を支えていくというコンセプトで社会に貢献してきました。
かんぽ生命は、郵政グループの持っている機能や「お客さまから信頼され、選ばれ続けることで、お客さまの人生を保険の力でお守りする」という当社の社会的使命をきっちり発揮して、末永く社会のお役に立っていきたいという気持ちでいます。
日本郵便と連携強化
フロントラインが核
■特に力を入れて取り組みたいことは。かんぽ生命をどのような会社にしたいですか。
ポイントは3つあります。1つ目は郵政グループは郵便局というブランドに支えられた3事業一体経営が今も昔も強みだと思います。かんぽ生命の強みもまさに郵便局の保険というブランドにあります。
日本郵便との連携なくして、かんぽ生命の再生はないと思っていますので、これまで以上に日本郵便との連携を強化して、グループが一体になって強い信頼を獲得していきたいと思います。
2つ目は、フロントライン重視の経営をやっていきたいということです。私は1989年に29歳で職員数106人の兵庫県の豊岡郵便局の局長になりましたが、毎日、悪戦苦闘の連続でした。特に、10年ぶりの大雪に見舞われ、1週間郵便が滞留した時には、これでクビだと覚悟しましたが、特定郵便局の局長さんたちの配達応援や社員の皆さんの団結で乗り切ることができました。実感したのは、郵政事業の核はフロントラインの皆さんだということです。
フロントラインとのコミュニケーションはこれまで以上に活発化していきたいと思います。前任の千田社長も「フロントラインミーティング」を行い、全国を飛び回っておられましたが、この取り組みは今後も継続していきます。フロントラインで何が起きているかをしっかり見ながら、本社全体の改革を行っていきたいと思います。
コロナ禍では、リモートでしかミーティングできなかったこともありましたが、すでに着任して3回、法人部門やリテール部門、全体事業部門の表彰の式典(5年ぶりに再開)を対面で行いました。社員の皆さんと直接、話ができ、対面の良さや大切さを本当に実感しています。
今後も可能な限りフロントラインに出掛けて行くとともに、東京にも来てもらい、社員と対面でミーティングを行っていきたい。そこで出た本当に良いアイデアを実現に繋げていきたいと思っています。
海外ビジネスの展開
収益源の多様化へ
3つ目は事業のウイングを世界に広げていきたいということです。かんぽ生命はこれまで国内の事業に注力してきましたが、今後は海外展開を含む収益源の多様化を推進していきたいと考えています。
6月にグローバルアトランティックという再保険会社と戦略提携を行うことを報道発表しましたが、海外との連携・提携を通してビジネスを展開していきたいと思っています。将来を見通した海外の成長領域への事業展開は、社内の若い世代のモチベーションにもなりますし、魅力的で励みにもなると思います。
海外展開については、他社生保の取り組みも参考にしつつ、しっかりと足元を固めることが重要になります。M&Aや子会社の創設も含めて、一方で、時には大胆な判断をしなければならない場面が訪れることを意識し、あらゆる選択肢を排除せず、検討していきたいと思っています。
■日本郵便から昨年4月から出向しているコンサルタントはメンタル面で悩んでいて、営業に行きづらくなっている人もいると聞きますが、回復しているのでしょうか。改善策は。
仙台でフロントラインの社員と話してきましたが、管理者の皆さんは本当に親身になってコンサルタントのメンタルに気を遣い、対話をしていただき、モチベーションは徐々に回復してきていると思います。100%ではないですが、仙台について言えば、成績も上がっています。皆さんに頑張っていただいていると思います。
当時は処分を受けて、前向きに仕事に取り組めなくなった社員もたくさんいたと思いますが、「後ろばかり見ていても仕方ない、お客さまに喜んでいただきたい」という前向きな声がだんだん戻って来ているという実感はあります。
お客さまだけでなく社員相互間で、丁寧な信頼に基づいたコミュニケーションをお願いしています。「部下であれ、同僚であれ、リスペクトの気持ちを持って接しましょう」とよく言っています。〝相手を認めながらやっていく〟そういうカルチャーを作っていこうと思っています。
2面へつづく
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