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2023年11月20日 第7223・7224合併号
【主な記事】
一体経営の仕組みを
全国郵便局長会 民営化委で意見
第266回郵政民営化委員会(山内弘隆委員長)が10月11日に開かれた。かんぽ生命保険の新規業務(一時払い終身保険)の審議や、「郵政民営化の進捗状況についての総合的な検証」で意見を提出した8団体のヒアリングが行われた。新規業務は「調査審議は必要ない」という意見が取りまとめられた。
新規事業は10月2日にかんぽ生命保険から総務省と金融庁に届出があったもので、総務省と金融庁から同委員会に意見を求められていた。「調査審議は必要ない」と結論を出した理由について、山内委員長は「委員会の方針に則り、収支見通しを基に審議した結果、適正な競争関係、利用者の役務を阻害すると認められる事情は認められない。利用者利便性の向上に資すると考える」と説明した。
ヒアリングには全国郵便局長会、日本郵政グループ労働組合、生命保険協会、全国生命保険労働組合連合会、全国銀行協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、日本ロジスティクスシステム協会が出席した。
生命保険関係について、委員からは生命保険協会の「かんぽ生命を公正かつ自由な民間の生命保険市場に迎え入れ、活力ある経済社会の実現に繋げていく観点から、日本郵政によるかんぽ生命株式の完全売却を適切なスピード感をもって着実に進めていただきたい」という意見に対し、「適切なスピード感とはどのようなイメージか」という質問があった。
同協会からは「市場環境やその他の要因を考慮したうえで、売却が進むと認識しており、直ちにとは考えていない。スケジュールを示して、早急に売却を進めてもらいたい」との答えがあったという。
日本ロジスティクスシステム協会のヒアリングでは、委員から「日本郵便はどのように進化するのが事業者として社会全体にとって望ましいのか」という質問があった。同協会は「日本郵便はプラットフォーマーとしてのポテンシャルがあり、トラック輸送や貨物情報を集めて、マッチングさせるようなビジネスをしてもらいたい」と回答。
日本郵政グループ中期経営計画の取り組み状況と進捗について、委員からは「各社の施策の成果の検証をアウトプット指標を見ながら検証することが大事。全体のKPI(業績評価の指標)、それぞれの事業のKPIをどう考えるのか」という質問があった。日本郵政は「KPI解像度が低いのは認識している。中計の見直しに当たり、個別の施策がどの位、成果を上げたかをわかるようなKPIに設定したい」と答えたという。
全国郵便局長会から、「金融2社の株式を日本郵政または日本郵便が保有することの検討」という意見が出ていることについて、通信文化新報は質問した。山内委員長は「委員会としてはご意見として賜るが、取り上げることはない」と話している。
通信文化新報はユニバーサルサービスと公正競争について「人口が減少し、地域の金融機関は採算の取れない所から撤退しているが、ユニバーサルサービスが課せられている郵便局と金融2社は撤退できない。民営化当時と比べて社会環境が変化しており、コスト負担を伴うユニバーサルサービスの提供は他社との競争上、ハンディとなっていると思う。日本全体の金融包摂を担っていることを評価するとともに、郵政側から見てコスト面でもイコールフッティングではなくなっていることについて、認可や届出の際の公平・公正競争、適正競争の判断に、委員会として考慮することについてどのように考えるのか」と質問した。
山内委員長は「考えていかなければならいない大事な問題提起だと思う。結論が出てはいないが、今日は金融関係団体から競争と一緒にやってコストを下げる部分はたくさんある。社会構造が変化して少子高齢化の中で、どうしたらよいかは、ある程度はそこに答えがあるのではないかと思う」と答えた。
以下、提出された意見。
【全国郵便局長会意見】
①郵便局を日本郵政グループ各社のすべての出先店舗としネットワークの維持を図るとの意味合いから日本郵政と日本郵便を統合し3社体制とすることや、現在の法律の下では将来的にはゆうちょ銀行とかんぽ生命保険は日本郵政との資本関係がなくなる仕組みとなっていることから、今後も安定的な委託手数料収入を得て日本郵便を安定的に経営し、郵便局ネットワークを維持するために、日本郵政又は日本郵便による、一定数のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の株式の保有など、一体経営を担保する仕組みについて引き続き検討していただきたい。
②金融2社に、郵便局ネットワークを維持し全国津々浦々へのユニバーサルサービス提供を義務付けるならば、一企業の経営努力によるものではない、国としての合理的なコスト負担、サービス維持の方策を引き続き検討いただきたい。
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